セブン-イレブンが販売期限が近づいた商品にnanacoボーナスポイントを付与

4月24日、セブン-イレブンは販売期限が近づいた商品にnanacoボーナスポイントを付与する、「エシカルプロジェクト」を5月11日から全国に拡大すると発表しました。

食品ロスを減らす取り組みが日本全体で進められており、セブン-イレブンの「エシカルプロジェクト」もその流れに沿うものです。

nanacoボーナスポイントの付与率は5%と低く、nanacoカードでの購入が条件で、お客さんのお得感はほとんどありません。食品ロス削減の効果についても、あまり期待できないかもしれません。

販売期限が近づいた商品に5%のnanacoボーナスポイントを付与

4月24日、セブン-イレブンは販売期限が近づいた商品にnanacoボーナスポイントを付与する、「エシカルプロジェクト」を5月11日から全国に拡大すると発表しました。

エシカルとは、倫理的、道徳上という意味の形容詞です。近年は「エシカル ○○○○」といった形で使われることが増えており、環境保全、社会貢献に繋がるという意味が強くなっています。

「エシカル消費」という言葉は、環境保全、社会貢献に貢献する商品を買い、そうでない商品は買わないという、消費者の消費行動を意味する言葉です。

セブン-イレブンが販売期限が近づいた商品にnanacoボーナスポイントを付与することは、食品ロスの削減に繋がるため、エシカルであると言えます。

セブンイレブンは2019年10月30日から12月末まで、北海道と四国の店舗において、販売期限が近づいた商品にnanacoボーナスポイントを付与する実証実験を行っています。

実証実験で成果が確認されたことにより、全国に拡大することとなりました。

セブン-イレブンの「エシカルプロジェクト」では、販売期限の5時間前(チルド弁当など、一部商品は販売期限の9時間前)から商品に対象シールが貼られます。

お客さんが対象シールの商品をnanacoカードで購入した場合、店頭価格(税抜)に対して5%分のnanacoボーナスポイントが付与されます。

対象商品となるのは、米飯、調理パン、麺類その他、デリカテッセン、スイーツ、ペストリー、パンの7カテゴリです。

なぜ5%のnanacoボーナスポイントを付与するのか

セブン-イレブンは販売期限が近づいた商品をnanacoカードで買うと、5%のnanacoボーナスポイントを付与します。

セブン-イレブンが5%のnanacoボーナスポイントを付与する理由は、食品ロスを削減するためです。

食品ロスを減らさなければならないというのは、世界的な流れです。人口の増加、格差の拡大などにより、食品の価値が高まっています。食品ロスは以前にも増して、もったいないものとして見られるようになっています。

食品ロスを削減する取り組みは日本でも行われています。2019年10月には、「食品ロス削減推進法」が施行されています。「食品ロス削減推進法」とは、食品ロスの定義、基本的な方針、施策などを盛り込んだものです。

セブン-イレブンが5%のnanacoボーナスポイントを付与するのも、食品ロス削減を推進する日本全体の取り組みに沿うものです。

5%のnanacoボーナスポイント付与は食品ロス削減に効果があります。

消費者の中でも、食品ロスを削減しなければならないという意識が高まっています。セブン-イレブンの店舗で「エシカルプロジェクト」のシールを見れば、お客さんも食品ロスの削減に協力してくれます。

食品ロスは加盟店の利益とも関係があります。

セブン-イレブンの加盟店は店舗数の増加、時給の上昇などにより、収益性が低下しています。また、食品ロスの損失は多くを加盟店が負担しており、加盟店の収益性を低下させる要因の一つです。

5%のnanacoボーナスポイント付与により、食品ロスが減れば、加盟店の収益性を高めることにも繋がります。

5%のnanacoボーナスポイントはお客さんにとって魅力的か

セブン-イレブンが販売期限が近づいた商品に付与するnanacoボーナスポイントは5%で、かつ、nanacoカードで買い物をすることが条件です。

販売期限が近づいた商品を買うお客さんの立場では、セブン-イレブンの5%のnanacoボーナスポイント付与は魅力的であるとは言えません。

値下げした食品をよく買う店舗はスーパーマーケットです。

スーパーマーケットでは、販売期限が近づいた弁当、惣菜などの商品が、半額程度で販売されています。家族の食事を安く揃えたいお客さん、一人で多くの量を食べたいお客さんにとって、スーパーマーケットの値下げ商品はお得です。

セブン-イレブンの5%のnanacoボーナスポイント付与とスーパーマーケットの値下げを比較すると、セブン-イレブンにはお得感がほとんどありません。

セブン-イレブンには、nanacoボーナスポイントを多く付与することが難しい事情があります。

セブン-イレブンのビジネスモデルは、利便性の良い立地で、付加価値の高いPB商品を高価格で販売するというものです。スーパーマーケットのように、販売期限が近づいた商品を低価格で処分することを想定していません。

販売期限が近づいた商品にnanacoボーナスポイントを多く付与すると、商品の販売価格が下がり、売上が減少するリスクがあります。

単に売上が減るだけではなく、セブン-イレブンがこれまで構築してきた高価格販売のビジネスモデルに悪影響を与えることも問題です。

将来的に、セブン-イレブンのnanacoボーナスポイント付与率、nanacoポイントカードの条件が見直される可能性はあります。食品ロスを削減しようとすれば、nanacoボーナスポイント付与率は高いほど良く、決済方法にはこだわらない方が効果が大きいです。

セブン-イレブンの5%のnanacoボーナス付与にはお得感はほとんどありませんが、始まったばかりの取り組みでもあるため、これからの改良が期待されます。

セブン-イレブンの充実した品揃えと食品ロスはセット

食品ロスを減らさないといけないというのは社会的な流れで、セブン-イレブンも「エシカルプロジェクト」を全国に拡大します。

食品ロスを削減することは良いことではありますが、セブン-イレブンの充実した品揃えと食品ロスはセットになっている点は重要です。

セブン-イレブンはいつ買い物に行っても、品切れが少なく、品揃えが充実しています。お客さんを品切れでがっかりさせないように、実際に売れる個数よりも多く発注しているためです。ただ、売れ残る商品が必ず出るので、食品ロスが発生します。

セブン-イレブンがしっかり売り切れる、または品切れするように発注すると、食品ロスは減らせます。しかし、品切れが起こってしまうと、買い物に来たお客さんはがっかりしますし、セブン-イレブンにも売上を逃す機会損失が発生します。

充実した品揃えと食品ロスの折り合いを付けることは難しいです。

セブン-イレブンの「エシカルプロジェクト」は販売期限が近づいた商品にnanacoボーナスポイントを付与するもので、発注を減らすものではありません。食品ロスを削減するという意味では、効果は限定的です。

食品ロスを大幅に減らすためには、しっかり売り切れる、または品切れする量を発注することです。しかし、これを行うとセブン-イレブンは品切れが多くなり、客離れを起こし、ビジネスモデルに悪影響が出てしまいます。

セブン-イレブンがお客さんに提供している充実した品揃えは、食品ロスが前提になっているため、食品ロスを減らすことは難しいです。