セブン‐イレブンはNTTデータと次世代の店舗フォーマット開発の研究を開始

セブン‐イレブンは10月17日より、NTTデータと次世代店舗の研究を開始しています。NTTデータは9月2日より、小売業のレジなし店舗の出店を支援するサービスを開始していて、セブン-イレブンはNTTデータとレジなし店舗の実現を目指すことになります。

レジなし店舗は店舗の生産性向上に貢献すると考えられますが、実現するためのハードルは高いです。レジなし店舗の買い物では、スマートフォンとクレジットカードが必要になるため、買い物ができなくなるお客さんが出てきます。客数減少による売上減少のリスクは大きく、現在のところ、レジなし店舗は現実的な投資ではありません。

レジなし店舗が実現するのは、まだ先のことになるのではないかと思います。レジなし店舗と似たような仕組みのスマホ決済が多くの店舗で利用されるようになれば、レジなし店舗の実現も可能性が出てきます。

セブン‐イレブンとNTTデータが研究する内容

セブン‐イレブンはNTTデータと共同で、次世代の店舗フォーマット開発に向けた「デジタル店舗」の研究を10月17日より開始しています。

セブン-イレブンはNTTデータが運営する実験店舗「AQUAIR」を活用して、次世代の購買体験・店舗運営における課題抽出、アイデア創出に取り組みます。NTTデータは9月2日より、小売業のレジなし店舗出店を支援するサービスを始めており、実験店舗はレジなし店舗の出店支援サービスに含まれているものです。

NTTデータのレジなし店舗では、スマホアプリで入店認証を行い、店内ではカメラ、重量センサーを使って買い物行動を記録し、代金はスマホアプリに登録したクレジットカードに請求します。NTTデータの説明によると、米Amazonが開発しているレジなし店舗「Amazon Go」と同じような仕組みであるとのことです。

多くの小売業がデジタル店舗の開発を模索していますが、セブン-イレブンは店舗運営の問題が噴出しており、次世代店舗開発への意欲が高いです。

セブン-イレブンにとって、2019年は店舗運営の問題が噴出する一年でした。セブン-イレブンが抱える店舗運営の問題には、人手不足、人件費の上昇、24時間営業の維持、食品ロス、スマホ決済などがあります。

セブン-イレブンはNTTデータと共同で研究することで、店舗運営の問題を解決しようとしています。セブン-イレブンは単にレジなし店舗を実現するだけでなく、各種デジタル技術を用いた、店舗の生産性向上を目的としていると考えられます。

NTTデータは小売業のレジなし店舗の多店舗展開を支援

NTTデータは9月2日より、小売業のレジなし店舗の出店を支援するサービスを始めています。コンビニ、ドラッグストア、スーパーマーケットなどの利用を想定しており、2022年度末までに1,000店舗へ導入する目標があります。

NTTデータのレジなし店舗は小売業での多店舗展開を想定しており、レジなし店舗が本格的に拡大するかどうか注目です。

レジなし店舗は全世界で開発されていますが、開発の中心にいるのはIT企業です。レジなし店舗でよく名前を聞くのは、米Amazonが開発している「Amazon Go」です。Amazon Goは米Amazonが自社のビジネスに活用するためのもので、小売業で多店舗展開されるためのものではありません。

NTTデータのレジなし店舗は小売業で多店舗展開されるためのもので、導入を支援する施策が用意されています。

NTTデータは小売業のレジなし店舗の出店を支援するため、実験店舗の提供、ビジネスプランの仮説の作成・検証、機器の保守、顧客からの問い合わせ対応、従業員への店舗業務説明などを行います。

小売業はレジなし店舗に関心を持っていると考えられますが、具体的にどうすればいいのか分かりません。小売業はNTTデータのサービスを活用することで、レジなし店舗への理解が深まり、導入に向けて前進できます。

小売業のレジなし店舗の出店を支援するNTTデータとしては、コンビニ大手のセブン-イレブンとの研究はチャンスです。セブン-イレブンでレジなし店舗の多店舗展開を実現できれば、他の業種でも導入が拡大する可能性があります。

セブン-イレブンはレジなし店舗を実現できるか

セブン-イレブンがレジなし店舗を多店舗展開できるかどうかは、多くのIT企業、小売業にとって気になるところです。

レジなし店舗には売上の減少、売上の増加、コストの削減の効果があり、最終的な利益が増えるかどうかで、多店舗展開が可能かどうかが決まります。セブン-イレブンの場合、売上減少の影響が大きく、多店舗展開のハードルは高いと考えられます。

レジなし店舗を実現するためには、お客さんにスマートフォンとクレジットカードを使ってもらわなければなりません。スマートフォンとクレジットカードを持たない人、使いたくない人はレジなし店舗で買い物ができず、売上の減少が起こります。

セブン-イレブンは商圏が狭く、高齢者のお客さんが多いという特徴があります。セブン-イレブンがレジなし店舗になった場合、買い物ができなくなるお客さんは多く、売上の減少は小さくないと想定されます。セブン-イレブンの商圏人口は少なく、レジなし店舗でお客さんが離脱してしまうことは痛手です。

レジなし店舗には売上が増える効果もあります。レジでの支払いがなくなることで、買い物が快適になり、来店回数・購入点数の増加が起こり、売上は増加します。

レジなし店舗のコスト削減効果はほぼ確実です。レジ業務がなくなるため、店舗運営に必要な労働力が減り、人件費が減少します。

セブン-イレブンのレジなし店舗においては、スマートフォン・クレジットカードを持たないお客さんの離脱による、売上の減少は大きいと想定されます。買い物体験の改善による売上の増加、レジ業務の削減によるコスト削減で補うことは難しく、レジなし店舗を実現するハードルは高いです。

高価格・高粗利益率の商品をレジなし店舗で効率良く販売

商圏人口が少ないセブン-イレブンは、高価格・高粗利益率の商品を効率よく販売して、店舗の生産性を高めたいです。商品を効率よく販売するための方法の一つとして、レジなし店舗への期待は大きいです。

セブン-イレブンは商圏人口が少なく、既存店の客数を増やすことは困難です。人口の減少、ドラッグストアの店舗数の増加は、セブン-イレブンの既存店の客数減少に繋がります。既存店の客数が減少する中で、セブン-イレブンが利益を増やすためには、高価格・高粗利益率の商品を効率よく販売しなければなりません。

高価格・高粗利益率の商品については、PB商品「セブンプレミアム」の開発・販売が好調です。2019年2月期のセブンプレミアムの売上は1兆4,130億円(7.0%増)となっていて、NB商品からPB商品への入れ替えが進んでいます。

セブンプレミアムの惣菜、スイーツはお客さんからの人気が高く、節約志向が強まる中でも、高品質・高価格の商品が売れています。

既存店の客数が減少したとしても、セブンプレミアムで価格の高い商品を販売できれば、売上を伸ばすことは可能です。

レジなし店舗はレジの従業員が不要になるため、店舗の生産性が向上します。セブンイレブンは高価格・高粗利益率のセブンプレミアムをレジなし店舗で販売することで、非常に生産性の高い店舗になれます。

セブンプレミアムの開発・販売は好調であるため、セブン-イレブンの課題は店舗の生産性の向上です。セブン-イレブンがレジなし店舗を実現するハードルは高いですが、実現したときのリターンは大きいです。

高価格・高粗利益率のセブンプレミアムを生産性の高いレジなし店舗で販売することは、セブン-イレブンにとっては夢のような話かもしれません。

スマホ決済が普及すればレジなし店舗の可能性も広がる

レジなし店舗は小売業にとって価値のあるもののように見えますが、実際に多店舗展開されている状況をイメージするのは難しいです。レジなし店舗が普及するには、スマホ決済が普及するかどうかがカギになりそうです。

多くの企業がスマホ決済を開始していて、スマホ決済が乱立する状況にあります。スマホ決済のアンケート調査を見ると、「PayPay」、「楽天ペイ」、「LINE Pay」、「d払い」、「メルペイ」などの利用者が多いようです。

多くの企業がスマホ決済を始める理由は、スマホ決済が大きなビジネスになると考えられているからです。スマホ決済は様々な企業と連携することで手数料が得られ、蓄積される決済データは新しいビジネスの可能性を秘めています。

スマホ決済は企業にとって大きなビジネスチャンスですが、利用者にとってはそうではありません。スマホ決済を利用するためには、スマートフォン、クレジットカード、銀行口座を持つ必要があり、初期設定もあります。

スマホ決済を提供する企業は利用者を増やすため、ポイント還元のキャンペーンを頻繁に行っています。多くの企業がキャンペーンを行うことにより、スマホ決済への注目度が高まり、スマホ決済の利用者が急増しています。

スマートフォンとクレジットカードが必要という点では、レジなし店舗とスマホ決済は同じです。スマホ決済を使いこなす人が増えれば、レジなし店舗の買い物体験も受け入れられやすくなります。

レジなし店舗がスマホ決済よりも先に普及することはないと思います。小売業はレジなし店舗の導入に急いで投資するよりも、スマホ決済の普及を待つのが良策です。