東芝がデータ事業を行う新会社を設立、電子レシート「スマートレシート」を拡大

2月3日、東芝はデータ事業を行う、東芝データを設立したと発表しました。新会社の東芝データは最初の事業として、グループ企業の東芝テックが運営している、電子レシート「スマートレシート」の拡大に取り組みます。

電子レシートはスマホアプリにレシートを保存する仕組みです。電子レシートには、お客さんはレシートの管理が簡単になる、小売業はクーポンを配信できる、メーカーはビッグデータを商品開発に活かせるなど、様々なメリットが期待されています。

スマホ決済が急速に普及しており、利便性向上のためにも、電子レシートはスマホ決済とセットになるのが好ましいです。電子レシートがスマホ決済とセットになれば、電子レシートのメリットを早期に得られます。

東芝データの設立と電子レシートの拡大

2月3日、東芝はデータを価値ある形に変え、実社会に還元していく事業を行う新会社として、東芝データを設立したと発表しました。

東芝データの第一弾事業は、グループ企業の東芝テックが運営している、電子レシート「スマートレシート」の拡大です。

スマートレシートはレシートを管理するスマホアプリです。利用者はスマートレシートが利用できる店舗で、会計時にスマホアプリに表示したバーコードを読み込んでもらうと、買い物のレシートが電子レシートとしてスマホアプリに保存されます。

お客さんは電子レシートを利用することで、紙のレシートの煩わしさから開放されます。また、お得なクーポンがもらえる、家計簿が付けやすくなるなどのメリットもあります。

東芝データは利用者の同意の元、電子レシートでデータを収集します。収集した電子レシートのデータは、小売業、メーカーへの販売も計画しています。

スマートレシートは東芝テックの既存事業ですが、利用可能な店舗は非常に少ないです。2020年度までに、利用可能な店舗を10万店舗まで増やしたいとしています。

東芝データは電子レシート事業を拡大するにあたって、他社と積極的に提携していくことを発表しています。年内にはスマホ決済との提携も予定されています。

お客さんにはどのようなメリットがあるか

電子レシートを利用するお客さんにはいくつかのメリットがあります。

電子レシートは紙のレシートのようにかさ張ることがなく、管理も容易で、レシート管理アプリには買い物に便利な機能が付いています。

電子レシートを積極的に使いたい人は、紙のレシートから開放されることに魅力を感じるのではないかと思います。

コンビニ、スーパーマーケット、ドラッグストアなどの店舗で買い物をすると、財布の中にはレシートがたくさん貯まります。レシートが最初から要らない人は、レシートを受け取らなかったり、受け取ってもすぐに捨てるので問題にはなりません。

レシートを集めて管理したいが、かさ張るのが煩わしい人がいます。このような人にとっては、電子レシートは積極的に使いたいものです。データはレシート管理アプリの中にもれなく記録されるため、データの正確性の点でも優れています。

電子レシートの最大のメリットは、レシートが紙でなくなることですが、それ以外にもメリットがあります。

レシート管理アプリで利用できるクーポンはメリットの一つです。ただ、小売業のスマホアプリの中でもクーポンは配信されているため、レシート管理アプリならではのものではありません。お客さんの立場では、自分が欲しい商品のクーポンでなければ意味がないため、レコメンドの精度が重要になります。

家計簿が付けやすくなることも電子レシートのメリットです。電子レシートを積極的に使いたい人は、家計簿への関心が強いです。紙のレシートと比較すると、家計簿を付ける作業が快適になります。

小売業はクーポンでお客さんを増やせるか

小売業はレシート管理アプリの中でクーポンを配信することができます。

小売業がスマホアプリのなかで、お客さんにクーポンを配信するのは一般的です。レシート管理アプリでは、自社のお客さんだけではなく、自社のお客さんではない人にもクーポンを配信できれば、小売業にとって売上を増やすチャンスになります。

小売業はスマホアプリのなかでクーポンを配信していて、お客さんは使いたいクーポンがあれば、レジで提示して使用します。小売業はお客さんが利用したクーポンを分析して、配信するクーポンを個人の好みに最適化していきます。

小売業がスマホアプリでクーポンを配信する目的は、来店機会を作り出し、購入点数を増やすためです。お客さんは自分の好きな商品のクーポンを見つければ、店舗に買い物に行く意欲が高まります。

レシート管理アプリでは、自社のお客さんだけではなく、自社のお客さんではない人にもクーポンを配信できることが期待されます。

例えば、自店の商圏内に住んでいるものの、自店では買い物をしたことがない人にクーポンを出せると効果的です。このようなお客さんは新規顧客になるため、店舗の売上アップへの貢献は大きいです。

小売業としては、既存顧客はもちろん大事ですが、どうにかして新規顧客を獲得したいです。しかし、誰が新規顧客なのかわからず、アプローチする方法もありません。電子レシートが普及すれば、誰がどの店舗で買い物をしないのかも分かるようになります。

自店で買い物をしない人にクーポンを出せる仕組みがあれば、小売業にとっては大きな価値があるものです。

企業はビッグデータを商品開発に活かせるか

東芝は電子レシートで収集したビッグデータを小売業、メーカーに販売して、商品開発に役立ててもらうことを想定しています。

ビッグデータは新商品の開発に役立つと考えられていますが、事例が少なく、実際にどれほどの価値があるのかは分かりません。

ビッグデータを活用した商品開発の事例には、2019年9月に発売された、ヤフーと三越伊勢丹が共同開発した「子育て中の小柄な女性向けのロングスカート」があります。

ヤフーと三越伊勢丹が共同開発したスカートには、「Yahoo!検索」の検索キーワード、「Yahoo!知恵袋」の質問書き込みなどのビッグデータが活用されています。

ビッグデータをAI技術で解析した結果、子育て中の小柄な女性はロングスカートへの関心が高く、着こなし方、自転車の利用、抱っこひもとの組わせ方、静電気に不安を抱えていることが分かりました。

ヤフーと三越伊勢丹が共同開発した「子育て中の小柄な女性向けのロングスカート」は、ビッグデータから抽出した潜在的なニーズに対応した商品です。

東芝が電子レシートで収集したビッグデータは、どの商品がどこの店舗で売れたという販売情報です。ヤフーのビッグデータのように、お客さんの潜在的なニーズを抽出するような使い方は難しいのではないかと思います。

ビッグデータで他社、他店舗でよく売れている商品を見つけ、それに対抗する商品を開発するといった使われ方をするのではないでしょうか。

電子レシートはスマホ決済とセットになるのが好ましい

東芝データは2020年度には、電子レシートを利用できる店舗を10万店舗まで増やす計画です。スマートレシートのホームページに利用できる店舗の一覧がありますが、現在のところ、店舗数は非常に少ないです。

2020年度には10万店舗となっているので、今後、急速に利用できる店舗数が増える見込みがあることになります。

電子レシートが普及するには、スマホ決済との連携が必要ではないかと思います。現金で支払いを行い、その後、レシート管理アプリのバーコードを読み込んでもらい、電子レシートを保存するのは手間が掛かります。

スマートレシートの導入店舗数が少ないのも、利用に手間が掛かることが関係しているのではないかと推測されます。

レジでスマホアプリを見せる電子レシートの仕組みは、スマホ決済と同じものです。一度のバーコードの読み込みで、決済と電子レシートが完了すると便利です。

スマホ決済「PayPay」の場合、アプリの中で取引履歴を見ることができます。取引履歴の画面には、決済番号、利用した日時、利用した店舗、利用金額が表示されます。利用金額のところに詳細を表示すれば、電子レシートになります。

東芝データは他の企業と積極的に提携することを発表していて、年内にはスマホ決済との提携も計画されています。一度のバーコードの読み込みで、決済と電子レシートが完了するシステムがあれば、電子レシートの利用も急速に拡大します。