ヤマダ電機が大塚家具の子会社化を発表、家電と家具をセットで提案する販売戦略

12月12日、ヤマダ電機は大塚家具との資本提携、子会社化を発表しました。ヤマダ電機と大塚家具は2月15日に業務提携を行い、協業して来ました。今回、ヤマダ電機が大塚家具を子会社化することで、さらに協業が進みます。

大塚家具はヤマダ電機の販路で商品を販売して、売上の増加を目指します。ヤマダ電機は新業態「家電住まいる館」に大塚家具の商品を導入して、暮らしをトータルで提案する売り場作りを行います。

大塚家具は売上を伸ばしたい、ヤマダ電機は暮らしをトータルで提案する売り場を作りたいという目的があります。ヤマダ電機と大塚家具はWin-Winの関係にあり、ヤマダ電機による大塚家具の子会社化は前向きな投資だと思います。

ヤマダ電機が大塚家具を子会社化する経緯

12月12日、ヤマダ電機は大塚家具との資本提携を発表しました。ヤマダ電機と大塚家具は業務提携を行い、協業して来ましたが、資本提携を行うことで、関係をさらに深化させていく計画です。

ヤマダ電機は12月30日以降、大塚家具が新たに発行する株式3,000万株を43億7400万円で取得する予定です。さらに、第3回新株予約権の発行による2億6100万円、第3回新株予約権の行使による21億8700万円が予定されており、増資の合計は最大で65億6300万円になります。

大塚家具におけるヤマダ電機の議決権比率は新株式の発行で51.74%、新株予約権の行使で58.23%となり、大塚家具はヤマダ電機の連結子会社となります。

ヤマダ電機と大塚家具は2月15日に業務提携を発表し、協力して事業を行って来ました。

業務提携後に行われた取り組みには、大塚家具よりヤマダ電機の新業態「家電住まいる館」へ家具専門知識を有する人員の出向、ヤマダ電機へ大塚家具の商品を供給、「インテリアリフォームYAMADA前橋店」でのコラボなどがあります。

法人分野においては、家電・家具の納品の協業、ヤマダホームズ施工の戸建購入者への大塚家具の紹介、住宅展示場への家具・インテリアの卸売などがあります。

今回発表された資本提携は、2月15日に発表された業務提携の延長線上にあると考えられます。ヤマダ電機と大塚家具の業務提携は、両社にとって十分に価値があるものであったと見ることができます。

大塚家具がヤマダ電機の子会社になるメリット

ヤマダ電機と大塚家具は資本提携を行い、大塚家具はヤマダ電機の子会社になります。大塚家具がヤマダ電機の子会社になるメリットは、ヤマダ電機の販路を活用して、新しい売上が作れることだと思います。

近年、大塚家具は売上高・営業利益が減少する厳しい状況にあります。

大塚家具の2015年12月の決算では、売上高は58,004百万円、営業利益は437百万円、営業利益率は0.8%でした。2016年12月以降、売上高の減少が始まり、2018年12月の決算では、売上高は37,388百万円、営業損失は5,168百万円となっています。

大塚家具は業績が急速に悪化していますが、その理由には、ブランドイメージの悪化、顧客の高齢化、若年層の経済力の低下、若年層の価値観の変化、ニトリの躍進などが考えられます。大塚家具はコスト削減のため、店舗の閉店、店舗面積の縮小を行っており、売上の減少が加速することになります。

大塚家具は売上を増やす必要があり、ヤマダ電機は大塚家具の商品を販売する新しい販路として期待できます。

ヤマダ電機は家電量販店、住宅販売、法人向けと複数の販路を持っており、大塚家具はこれらの販路で商品を販売することができます。ヤマダ電機での販売がうまく行けば、大塚家具のブランドイメージ向上にも繋がります。

大塚家具は不採算店舗の構造改革を行うとともに、ヤマダ電機の販路で新しい売上を作ることで、黒字化を目指します。ヤマダ電機の計画では、大塚家具は2021年4月期に黒字化を目指し、3年間で40億円の利益を見込んでいます。

大塚家具は店舗の構造改革で自社の販売力が弱まる中で、ヤマダ電機の販路を活用できることは大きなメリットです。

ヤマダ電機が大塚家具を子会社にするメリット

ヤマダ電機と大塚家具は資本提携を行い、大塚家具はヤマダ電機の子会社になります。ヤマダ電機が大塚家具を子会社化するメリットは、大塚家具の商品・ノウハウを活用して、新業態「家電住まいる館」の品揃えを強化できることだと思います。

近年、ヤマダ電機は新業態「家電住まいる館」の店舗数を増やしています。家電住まいる館のコンセプトは、家電、家具、インテリア、リフォーム、新築住宅など、暮らしに必要な商品・サービスがすべて揃うというものです。

家電住まいる館に大塚家具の商品・ノウハウを導入することで、品揃えと提案力を強化できます。

家電量販店はEC拡大の影響を受けており、ヤマダ電機は特に売上高の減少が大きいです。ヤマダ電機がEC拡大の影響を大きく受けている理由は、競合の家電量販店と比較して、実店舗ならではの価値が不足しているからではないかと考えられます。

家電住まいる館はヤマダ電機の新業態で、家具だけではなく、暮らしに必要な商品・サービスをトータルで提供する店舗です。大塚家具の商品は競合の家電量販店、ECにはなく、家電住まいる館の価値を高めるものです。

ヤマダ電機の説明によると、大塚家具の商品の導入により、女性客の増加、買上点数の増加、売上の増加など、ポジティブな効果が得られたとのことです。

家電住まいる館の店舗数は増えており、ヤマダ電機の次世代型店舗であると考えられます。大塚家具の子会社化は、家電住まいる館の強化に貢献するため、ヤマダ電機にとってメリットがあるものです。

大塚家具の商品はヤマダ電機の売り場で売れるか

家電の安売りをするヤマダ電機の売り場で、価格の高い大塚家具の商品が売れるかどうかというのは心配な点です。どれくらい売れるのかはこれからになりますが、家電と家具をセットで買うお客さんはいると思います。

ヤマダ電機で家電を買うお客さんは、家電を買うことで、現在の生活を変えようとしています。家電と同じ売場に家具が並んでいれば、興味を持つはずです。

家庭の中で家具と家電は近くにあり、相性は良いです。テレビとソファ、パソコンと机、電子レンジとラックなどは、セットで利用することが多いです。ヤマダ電機はこれまで家具を販売して来ませんでしたが、家電と一緒に家具を提案すれば、セットで購入してくれるお客さんはいるはずです。

大塚家具は高級家具店として知られていますが、店舗数は少なく、多くの人にとって近くにある店舗ではありません。ヤマダ電機の売り場で大塚家具の商品を久しぶりに見る、あるいは、初めて見るというお客さんもいます。こうしたお客さんにとっては、大塚家具の商品は新鮮で、魅力的なものです。

大塚家具はヤマダ電機の売り場に商品を並べることで、これまでリーチできなかった、新規顧客に商品を販売することができます。

小売業では業種の垣根を超えた競争が激しくなり、カテゴリの拡大が行われています。ヤマダ電機の売り場に大塚家具の商品があっても、お客さんは違和感を感じません。

ヤマダ電機の説明によると、大塚家具の商品の導入により、売上が増えています。ヤマダ電機の売り場に大塚家具の商品を導入することについて、マイナスな点はこれといってありません。家電と家具をセットで購入してくれるお客さんがいるのであれば、ヤマダ電機の売り場に大塚家具の商品を並べる価値はあります。

ヤマダ電機が大塚家具を子会社化することは前向きな投資

大塚家具の業績が悪化しているため、ヤマダ電機の大塚家具への投資に対してネガティブな見方もあります。しかし、小売業が売上を増やすには、カテゴリの拡大は不可欠で、ヤマダ電機が大塚家具を子会社化することは前向きな投資だと思います。

日本は人口の減少が続くため、小売業が売上を伸ばすには、一人のお客さんにより高価格の商品、多くの商品を買ってもらわなければなりません。

ヤマダ電機は大塚家具を子会社化することにより、家電と家具の融合を進めることができます。これまで家電を買ってくれたお客さんに、家具も買ってもらうことができれば、お客さん一人あたりの売上を伸ばせます。

小売業が売上を増やすためには、カテゴリの拡大が不可欠です。ヤマダ電機は大塚家具を子会社化することにより、カテゴリの拡大を実現できます。

今後、小売業はカテゴリの拡大のために、外部の企業と提携する機会が増えると予想されます。しかし、日本経済は縮小しており、提携する企業を探すことも困難です。提携可能な企業があれば、機会があるときに提携しておいた方がよいです。

大塚家具は業績が悪化していますが、高級家具店として実績とブランドがあります。大塚家具のような高級家具店は他にはなく、ヤマダ電機は大塚家具を子会社化することで、競合他社に真似できない売り場を作れます。

大塚家具の商品がヤマダ電機の品揃え強化に貢献する点を考えると、ヤマダ電機が大塚家具を子会社化することは前向きな投資です。