インターネット広告費は6年連続で二桁の増加率、テレビメディア広告費を追い越す

3月11日、電通は総広告費と媒体別・業種別広告費を推定した「2019年 日本の広告費」を発表しました。インターネット広告費は6年連続で二桁増加し、初めてテレビメディア広告費を追い越しました。

インターネット広告費の高い増加率は、多くの消費活動がインターネットで行われるようになったことを意味しています。小売業もインターネット広告に投資しなければ、お客さんが減少する可能性があります。

小売業はインターネット広告を活用して、ECとアプリへ集客したいです。ECはEC企業への対抗、アプリは若者の取り込みに効果的です。

インターネット広告費がテレビメディア広告費を追い越す

3月11日、電通は総広告費と媒体別・業種別広告費を推定した「2019年 日本の広告費」を発表しました。

インターネット広告費は2兆1,048億円(前年比19.7%増)となり、テレビメディア広告費1兆8,612億円(前年比2.7%減)を追い越しました。

インターネット広告費は二桁を超える高い成長率を記録する一方、テレビメディア広告費は微減の傾向にあります。

今後も同じ傾向が続けば、インターネット広告費とテレビメディア広告費の差は拡大していくことになります。

新聞広告費、雑誌広告費、ラジオ広告費、テレビメディア広告費をまとめて、マスコミ四媒体広告費と呼びます。

マスコミ四媒体広告費は次のようになり、すべての媒体で前年割れしています。(広告費の単位は億円)

2018年 2019年 前年比(%)
新聞 4,784 4,547 -5.0
雑誌 1,841 1,675 -9.0
ラジオ 1,278 1,260 -1.4
テレビメディア 19,123 18,612 -2.7
マスコミ四媒体広告費(合計) 27,026 26,094 -3.4

インターネット広告費は次のようになり、二桁の増加率は6年連続です。(広告費の単位は億円)

2018年 2019年 前年比(%)
インターネット広告費 17,589 21,048 +19.7

「2019年 日本の広告費」から、企業の広告投資がマスコミ四媒体からインターネットへとシフトしていることがわかります。

なぜインターネット広告費は増加しているのか

インターネット広告費は高い増加率が続いてます。

インターネット広告費が増加する理由は、多くの消費活動がインターネットで行われるようになっているからです。

インターネットで行われる消費活動は増え続けています。

インターネットで行われる代表的な消費活動はECです。ECの品揃えは充実しており、ECで買えないものはなくなりつつあります。ECで高額商品を買う人も増えていて、将来的には数百万円の商品を買うことも普通になるかもしれません。

EC以外の消費活動には、飲食店・ホテル・飛行機などの予約、コンサートチケットの購入、保険の申込みなどがあります。ほぼすべてのビジネスは何らかの形でインターネットと関係するようになっています。

スマートフォンの普及でインターネット広告の価値が高まりました。

多くの人がスマートフォンを所有しており、持ち歩いています。何らかの消費活動をしようとしたときに、まずはスマートフォンを使って検索します。

スマートフォンの検索画面に広告を出せば、競合企業に先んじて、潜在顧客と接触できることになります。多くの企業が潜在顧客と一番に接触したいと考えるので、インターネット広告への投資が増えます。

インターネット広告費が高い増加率を続けているということは、それだけ企業の売上の増加に貢献していることになります。

インターネット広告費の増加は小売業にどう影響するか

小売業は実店舗で商品を販売していますが、インターネット広告とも関係があります。

小売業はインターネット広告に投資しなければ、EC企業にお客さんを奪われ、実店舗の売上が減少する可能性があります。

EC企業は積極的にインターネット広告に投資をしています。

インターネット広告は検索キーワードを指定して、自社の商品を購入する確率が高い潜在顧客に広告を出すことができます。例えば、冷蔵庫という検索キーワードには、冷蔵庫を販売しているEC企業の広告が出ます。

冷蔵庫を買おうとしている人の中には、冷蔵庫の広告をクリックして、ECで冷蔵庫を買う人もいます。EC企業がインターネット広告を使って商品を販売すると、実店舗に買い物に行くお客さんは減ることになります。

小売業がインターネット広告に投資しないことはリスクです。

多くのEC企業がインターネット広告に投資をして、お客さんに一番に接触しようとしています。小売業がインターネット広告に投資をせず、実店舗で待つだけでは、徐々にEC企業にお客さんを奪われます。

小売業では若者の取り込みが難しくなっていますが、これは若者がECで買い物をしているためです。小売業が若者を取り込むためには、インターネット広告への投資を増やさなければなりません。

インターネット広告費が伸びているということは、ECの売上も伸びており、実店舗の価値が下がっていることになります。

小売業はどのようにインターネット広告を使えばよいか

小売業はEC企業に対抗するため、若者を取り込むため、インターネット広告を活用したいです。

小売業がインターネット広告を活用する場合、呼び込み先としてECとアプリの二つが考えられます。

ECへの集客はEC企業の対抗策として効果があります。

インターネットでは商品を検索、広告をクリック、ECで購入という消費パターンができています。この消費パターンで買い物をする人が増えると、ECで買い物をする人が増え、実店舗で買い物をする人が減ります。

小売業はインターネット広告を使って、自社のECへお客さんを誘導したいです。自社のECで買い物をしてくれる、または、EC経由で実店舗への来店も期待できます。ECから実店舗へ誘導することには、オムニチャネルを強化するという点で価値があります。

アプリへの集客は若者の取り込みに効果があります。

人口の減少が続くなか、小売業の売上は高齢者に依存しており、若者の取り込みが課題です。若者は効率の良い、デジタルの買い物体験を望んでいます。アプリ経由の店舗・チラシ情報の配信は実店舗の買い物を快適にします。

若者は自分で小売業のアプリを探してインストールしますが、インターネット広告でアプリのインストールをさらに強化するのは良い施策です。アプリをインストールしてもらえれば、近隣の実店舗との関係性が強化されます。

インターネット広告の集客先として、ECとアプリのどちらも効果的です。実店舗の価値を高めるという点では、アプリの方がより重要だと言えます。

インターネット広告費の増加はリアルの価値の低下を意味

インターネット広告費が増加する一方、マスコミ四媒体広告費は減少しています。

インターネット広告費の減少とマスコミ四媒体広告費の減少は、インターネットの価値が上がり、リアルの価値が下がったことを意味しています。

小売業でリアルの価値が下がるというのは、実店舗の価値が下がることです。

普段から実店舗に価値があるか、ないかを考えているわけではありません。ただ、消費活動の場所としてECの価値が上がれば、それに合わせて実店舗の価値は下がります。

小売業では既存店の客数の減少が始まっています。既存店の客数が減少する要因には、人口の減少、業種の垣根を超えた競争、ECの拡大などがあります。ECが拡大するというのは、消費活動の場所がインターネットにシフトしている証明です。

小売業はインターネットへのシフトが必要になっています。

リアルの価値が下がったといっても、実店舗には従業員と在庫があり、急になくすことはできません。実店舗を急になくすことはできないため、小売業は実店舗とECを融合させる方向を模索するのが現実的な方向性です。

ECだけ買い物をするよりも、ECと実店舗を使って買い物をした方がお客さんにメリットがあるようにしたいです。買い物がECだけで完結してしまうと、ますます実店舗の価値は下がり、不要になってしまいます。

インターネット広告費の増加は小売業には関係ないようにも見えますが、リアルの価値の低下は小売業にも当てはまります。