ファミリーマートの早期退職優遇制度の利用者は1,025人、募集人数の800人を超える

2月19日、ファミリーマートは早期退職優遇制度を利用する退職者が1,025人だと発表しました。早期退職優遇制度は2019年11月14日に発表されていたもので、退職者数は募集人数の800人を超えています。

ファミリーマートが早期退職優遇制度を実施した理由は、現在の店舗数に合わせて、人員の適正化を図るためです。ファミリーマートはサークルKサンクスを吸収合併したことで、生産性が低下していた部分があります。

コンビニ業界では加盟店の収益性が低下しており、本部は加盟店へ金銭的な支援をしなければならない状況です。ファミリーマートの早期退職優遇制度の実施も、人員の適正化だけではなく、加盟店支援のための資金確保の目的もあると考えられます。

早期退職優遇制度の利用者は1,025人

2月19日、ファミリーマートは早期退職優遇制度の実施結果を発表しました。

早期退職優遇制度を利用する退職者数は1,025人で、内訳は、正社員が924人、非正規社員が101人です。

ファミリーマートは2019年11月14日に加盟店支援と本部の構造改革を発表しており、早期退職優遇制度は本部の構造改革の施策です。

ファミリーマートが希望退職者を募集した理由は、現在の店舗数に合わせて、人員の適正化を図るためです。早期退職優遇制度の対象となるのは、原則40歳以上の社員で、退職日は2020年3月31日、募集人数は全社員の約1割にあたる約800名でした。

早期退職優遇制度では、通常の退職金に加え、割増退職金が加増され、希望者には再就職支援が実施されるというものでした。

当初の予定では、募集期間は2020年2月10日から2020年2月21日まででしたが、2020年2月3日から2020年2月7日までに変更されています。募集期間の変更は退職希望者への影響を考慮した措置です。

早期退職優遇制度には1,111人の応募があったものの、日常オペレーションの継続に重大な影響を及ぼす可能性のある一部社員については、制度適用外になったとのことです。

ファミリーマートは早期退職優遇制度の実施により、約150億円の割増退職金の支払いが発生します。一方、人員の減少により、2021年2月期以降の連結決算における税引前利益段階において、年間約80億円の経費削減が見込めます。

ファミリーマートは本部の構造改革のため、早期退職優遇制度を実施しましたが、退職者の人数は当初の予定を上回る結果となりました。

なぜファミリーマートは早期退職優遇制度を実施したのか

ファミリーマートが実施した早期退職優遇制度では、募集人数の800人を超える1,111人が応募し、1,025人の退職が決定しました。

ファミリーマートが早期退職優遇制度を実施した目的は、現在の店舗数に合わせて、人員の適正化を図るためです。

ファミリーマートは2016年9月にユニーグループ・ホールディングスと経営統合し、サークルKサンクスを吸収合併しています。

ファミリーマートはサークルKサンクスを吸収合併したことで、人員が増加しました。一方、サークルKサンクスの吸収合併に合わせて、不採算店舗の閉店が実施されており、店舗数は減少しています。

ファミリーマートがサークルKサンクスを吸収合併したことで発生した、人員の増加と店舗数の減少を考えると、人員が過剰になっている部分があります。

ファミリーマートが実施した早期退職優遇制度は、サークルKサンクスを吸収合併したときから、ある程度予想されていたものです。

2019年は24時間営業、廃棄ロス、人手不足、オーナーの長時間労働など、コンビニ業界の様々な問題が噴出した一年でした。コンビニ業界のネガティブなニュースが増え、社会から厳しい目で見られるようになりました。

ただ、ファミリーマートの業績は堅調で、2020年2月期3Qまでの事業利益は637億円(前期比155億円増)となっています。今回実施した早期退職優遇制度も、業績が悪化したからではなく、人員の適正化のためです。

人員の適正化は、サークルKサンクスを吸収合併したときから予測されたもので、それほどネガティブなものではありません。

なぜ早期退職優遇制度の利用者は募集人数を超えたのか

ファミリーマートの早期退職優遇制度を利用して退職する人数は、募集人数の800人を超える1,025人です。

希望退職者の応募人数が募集人数を超えることは、他の業界でもよくあることで、特にファミリーマートが問題というわけではありません。

ファミリーマートの早期退職優遇制度の利用者が募集人数を超えたことについては、人生の転機だと考えた人が多かったのではないでしょうか。

今回、ファミリーマートが実施した早期退職優遇制度は、正社員の立場では、ある程度予想されたものでした。早期退職優遇制度が実施されるタイミングを待って、退職を計画していた人もいたはずです。

早期退職優遇制度には割増退職金の加増があり、割増退職金総額(約150億円)を制度利用退職者数(1,025人)で割ると、退職者一人あたりの割増退職金は約1,463万円です。

2019年に入ってから、コンビニ業界で様々な問題が噴出したことも、早期退職優遇制度への応募が増えたことと関係がありそうです。

ファミリーマートは2019年11月14日に加盟店支援と本部の構造改革を発表しました。加盟店支援では年間約100億円(1店あたり平均年間約70万円)の支援が行われる一方、本部の構造改革では早期退職優遇制度が実施されるというものでした。

ファミリーマートが加盟店支援に注力すれば、本部で働く正社員の待遇改善は難しくなります。将来的な待遇の改善が期待しにくくなったことが、早期退職優遇制度へ応募するきっかけとなった可能性はあります。

コンビニ業界は安定的な市場拡大が続いており、小売業の中では待遇が良い方です。しかし、加盟店への支援が不可欠になったことで、コンビニ本部で働く正社員の将来も安泰とは言えなくなりました。

人員の減少はファミリーマートの事業にどう影響するか

ファミリーマートは早期退職優遇制度の実施で約1割ほど人員が減るため、事業にどのような影響があるのかは心配な点です。

ファミリーマートが早期退職優遇制度を実施する目的が人員の最適化であることを考えると、事業への影響はあまりなさそうです。

早期退職優遇制度を利用する人の職種は発表されていませんが、加盟店を指導する店舗指導員が多いのではないかと推測されます。

ファミリーマートはサークルKサンクスを吸収合併したことで、人員の増加と店舗数の減少が発生しました。一店舗あたりの店舗指導員の数が増加ししたため、早期退職優遇制度の実施で人員を削減します。

ファミリーマートは店舗指導員の数を減らしても、加盟店の売上への影響は小さいと判断したことになります。もともと店舗指導員の数が多かったのであれば、店舗指導員の数を減らしても、加盟店の売上への影響は小さいです。

早期退職優遇制度の実施は、店舗指導員の価値を見直す転機になります。

対面で加盟店を指導する店舗指導員は、コンビニに不可欠なものだとされてきました。しかし、現在はインターネットが普及し、AIも登場しました。加盟店の指導においても、遠隔化、省人化が実現できます。

店舗指導員はいなくても問題ないと評価されれば、店舗指導員を減らしていく流れも生まれるかもしれません。ファミリーマートの早期退職優遇制度の実施は、他チェーンで働いている店舗指導員にとっても気になるところです。

ファミリーマートは早期退職優遇制度で約1割ほど人員が減りますが、人員を最適化するためのもので、事業への影響は小さいです。

コンビニ業界では加盟店支援のための経費削減が進む

ファミリーマートは早期退職優遇制度の実施により、2021年2月期以降の連結決算における税引前利益段階において、年間約80億円の経費削減を見込みます。

コンビニ業界では加盟店への金銭的な支援が不可欠になっており、加盟店支援の資金を確保するため、経費削減を進めて行くことになります。

コンビニ加盟店は収益性の低下が続く、厳しい状況にあります。

コンビニ加盟店の収益性が低下する理由は、店舗数の増加に因る日販の停滞、他業種との競争激化、時給の上昇などです。このような状況が固定化されているため、コンビニ加盟店の収益性の低下も固定化しています。

コンビニ本部が加盟店の収益性を改善するためには、ロイヤリティの減額、各種支援金の支給など、金銭的な支援が必要です。

ファミリーマートは2019年11月14日に、24時間営業分担金の増額、廃棄ロス対策の強化、複数店及び再契約奨励金の増額を発表しており、年間約100億円(1店あたり平均年間約70万円)を想定しています。

人件費の削減は、コンビニ本部が経費を削減する方法の一つです。

ファミリーマートは早期退職優遇制度の実施により、本部の人件費削減を見込みます。また、コンビニ加盟店側においても、各種省人化の施策を実施することにより、人件費を削減する余地があります。

コンビニ本部の立場では、加盟店の日販が増えることが望ましいですが、実現は難しいです。加盟店を支援するための資金を確保するためには、コンビニ本部は経費の削減を進めて行かなければなりません。