RaaSを提供する米国企業のb8ta(ベータ)が日本進出、新宿と有楽町に二店舗を出店予定

1月30日、RaaS(リテイル・アズ・ア・サービス)を提供する米国企業のb8ta(ベータ)が日本への進出を発表しています。2020年夏、新宿マルイ本館、三菱地所が一部保有する有楽町電気ビルへ、二店舗同時に出店する予定です。

RaaSとは、小売業をサービスとして提供するものです。企業はb8taに料金を支払うことで、b8taが運営する店舗に出品できます。企業は自社で店舗を持たなくても、RaaSを利用すれば、店舗でお客さんに商品を販売できます。

店舗への出品をサービスとして提供するRaaSは、これまでにない新しい小売業です。店舗で商品を販売したい、知名度のない企業、Eコマース企業はRaaSの顧客になりそうです。お客さんはRaaSの店舗で多様な企業、多様な商品を発見できるので、人気の店舗になる可能性はあります。

米国企業のb8taが日本に進出

1月30日、RaaS(リテイル・アズ・ア・サービス)を提供する米国企業のb8ta(ベータ)は、ベンチャーキャピタルEvolution Ventures(エボリューション)と合弁で、b8ta Japan(ベータ・ジャパン)を設立したことを発表しました。2020年夏、新宿マルイ本館、三菱地所が一部保有する有楽町電気ビルへ、二店舗同時に出店する予定です。

丸井グループ、三菱地所、カインズの三社はEvolution Venturesに出資、凸版印刷はb8taへ出資しています。

b8taは2015年に米国サンフランシスコで創業、RaaSと呼ばれるソリューションを提供しています。RaaSとは、店舗への出店をサービスとして提供する仕組みです。企業はb8taに手数料を支払うことで、b8taが運営する店舗に出品できます。

b8taが運営する店舗では、お客さんの買い物行動がカメラを使って記録されていて、ソフトウェアによる行動分析が可能です。

2020年1月現在、b8taは米国で24店舗、ドバイで1店舗を運営しています。

全店舗の売り場面積の合計は約1,265坪(約4,181平方メートル)、来店客は年間300万人以上です。1店舗あたりの数字を計算すると、売り場面積は50.6坪(約167平方メートル)、年間来客数は12万人以上です。

b8taにはこれまで1,000以上のブランドが出店し、5,000万以上の消費者と商品の関わり(エンゲージメント)を得ています。

RaaSにより、企業はお客さんに商品を見てもらう新しい場所が得られ、お客さんは多様な企業、多様な商品を発見できます。

RaaSとはどのようなものか

RaaSを提供する米国企業のb8taは2020年夏、新宿マルイ本館、三菱地所が一部保有する有楽町電気ビルへ、二店舗同時に出店する計画です。

RaaSとは、Retail As A Serviceの頭文字を取ったもので、リテイル・アズ・ア・サービスと読みます。RaaSは店舗運営に必要な経営資源をパッケージにして、サービスとして提供する仕組みです。RaaSを利用する企業は料金を支払い、店舗へ出品します。

「○aaS」はこれまでは所有して利用していたものを、サービスとして提供するビジネスの略語で、RaaSも「○aaS」の一つです。

「○aaS」の始まりとされているのはSaaSです。SaaSとは、Software as a Serviceの頭文字を取ったもので、ソフトウェア・アズ・ア・サービスと読みます。

ソフトウェアは家電量販店などでパッケージを買い、パソコンにインストールすることが一般的でした。最近はパッケージを買わず、WEBアプリケーションをサービスとして利用して、料金を支払うものが増えています。

RaaSも「○aaS」の一つで、企業は店舗運営に必要な経営資源を保有するのではなく、サービスとして利用します。企業は店舗、従業員、システムを保有することなく、店舗への出品が可能になります。

RaaSで店舗がサービスとして提供されることにより、企業とお客さんが出会う、新しい場所が作り出されます。企業とお客さんが出会う機会が増えることは、小売業を豊かにするものです。

どんな企業がRaaSを利用するのか

RaaSは店舗運営をサービスとして提供するものです。企業はRaaSを利用することにより、店舗への出品が可能になります。

RaaSを利用する企業には、知名度のない企業、Eコマース企業が考えられます。

知名度のない企業は小売業の店舗で商品を販売することが難しいです。

小売業の店舗は集客力がありますが、商品棚に並んでいる商品は有名企業のものばかりです。さらに、小売業はPB商品の開発に注力しており、知名度のない企業が小売業の店舗で商品を販売することは、ますます難しくなっています。

知名度のない企業にとっては、RaaSは店舗に商品を並べる新しい方法です。商品をお客さんに見てもらえるチャンスが増えるのは、企業にとってありがたいことです。

RaaSは実店舗からECサイトへの誘導という点でも価値があります。

Eコマース企業が期間限定でポップアップストアをオープンすることが増えています。ポップアップストアで商品を体験してもらい、ECサイトへと送客する目的です。

RaaSはポップアップストアとしてもうまく機能すると考えられます。RaaSは店舗をサービスとして利用できるので、Eコマース企業は柔軟にポップアップストアを運営できます。将来的にRaaSの店舗が全国に展開されるようになれば、自社の顧客が多いエリア・少ないエリアを選び、ポップアップストアを出すこともできます。

店舗で商品を販売したい知名度のない企業、ポップアップストアを出店したいEコマース企業は、RaaSを積極的に利用すると思います。

RaaSは新しい小売業として普及するか

日本に進出することが決まったb8taは米国企業です。アメリカで既にRaaSを提供しており、日本でもRaaSを提供する予定です。

RaaSはこれまでにない新しい小売業ですが、これから普及する可能性はあります。

RaaSが普及すると考える理由は、RaaSが世界的なものであるからです。

Eコマース、フードデリバリー、スマホ決済などの新しい買い物体験は、全世界で普及しています。RaaSもこれまでにない新しい買い物体験で、Eコマース、フードデリバリー、スマホ決済などと同様です。

お客さんはEコマース、フードデリバリー、スマホ決済を必要としていたわけではありませんが、企業が提供すると、急速に普及しました。RaaSもお客さんが求めているものではありませんが、普及する可能性はあります。

RaaSはお客さんに多様な企業、多様な商品と接触する機会を提供しますが、こうした買い物体験はお客さんにとって価値があるものです。

お客さんは大手小売チェーンで有名企業の商品、PB商品を買うことに慣れています。大手小売チェーンの店舗が増えると、お客さんが多様な商品、個性的な商品と接触する機会は減ります。有名企業の商品、PB商品を安く買えることには喜びがありますが、退屈だと感じることもあります。

RaaSは大手小売チェーンにはない、多様な商品、個性的な商品を販売します。このような買い物体験は、世界のお客さんが求めているものなのかもしれません。

RaaSは出品する企業、買い物をするお客さんの両者にメリットがあり、これから普及するのではないかと思います。

RaaSは百貨店の売り場の活性化に効果的

RaaSを提供する米国企業のb8taは2020年夏、新宿マルイ本館、三菱地所が一部保有する有楽町電気ビルへ、二店舗同時に出店する計画です。

RaaSの店舗はあらゆる立地に出店できると考えられますが、出店先として百貨店は有力な場所です。

百貨店はアクセスの良い都市部にあり、RaaSの店舗に適しています。

RaaSを利用する企業は、多くのお客さんの商品を見てもらいたいです。RaaSに出品される商品は知名度のない商品が多くなるので、売上を増やすためには客数が必要です。

百貨店は客数が多く、外国人観光客が多いこともRaaSには有利です。また、百貨店のお客さんは購買力があるため、RaaSの商品が売れるチャンスも大きいです。

百貨店の既存事業が苦戦していることも、RaaSと関係があります。

百貨店の売り場は衣料品が中心ですが、衣料品の売上は減少傾向にあります。衣料品を専門店、ECサイトで買う人が増えおり、百貨店は衣料品の販売が難しいです。衣料品の販売不調により、百貨店の売り場の効率は悪化しています。

百貨店は自社で売れる商品を用意することが難しいのであれば、RaaSを活用するのは一つの方法です。RaaSには新しい商品が出品されるので、売り場の活性化に繋がる可能性もあります。

モノを売らない百貨店を推進している丸井グループがb8ta Japanに出資しています。丸井グループが出資したことからも、RaaSは百貨店の売り場を有効活用する方法の一つとして、期待できるものだと言えます。