2019年の惣菜の市場規模は前年比0.7%増の10兆3,200億円、10年連続で拡大

5月20日、日本惣菜協会は2019年の惣菜の市場規模が10兆3,200億円(前年比0.7%増)だと発表しました。惣菜の市場規模の拡大は10年連続です。

惣菜の市場規模が拡大する理由は、お客さんのニーズの増加に対して、小売業が適切な商品を提供できているためです。コンビニ、食品スーパーでは、売り場の拡大、新商品の開発が積極的に行われています。

惣菜の販売では、商品開発力を持ち、店舗も近くにあるコンビニ、食品スーパーが売上を伸ばしそうです。総合スーパー、百貨店、専門店は店舗が遠くにあることが弱みになり、コンビニ、食品スーパーほどうまくは行かないかもしれません。

2019年の惣菜の市場規模

5月20日、日本惣菜協会は2019年の惣菜の市場規模を発表しました。

2019年の惣菜の市場規模は10兆3,200億円(前年比0.7%増)となり、市場規模は10年連続で拡大しています。

業態ごとの市場規模は次のようになっています(単位は百万円)。

2018年 2019年 前年比(%)
専門店、他 2,954,246 2,896,160 -2.0
百貨店 359,631 356,000 -1.0
総合スーパー 948,137 963,918 +1.7
食料品スーパー 2,682,414 2,740,675 +2.2
CVS 3,307,416 3,363,290 +1.7
合計 10,251,844 10,320,043 +0.7

惣菜の市場規模を業態別に見ると、専門店、百貨店は縮小傾向、総合スーパー、食品スーパー、コンビニは拡大傾向にあります。

半年間で3回以上購入した惣菜(首都圏女性)では、弁当(52.6%)、おにぎり(51.0%)、コロッケ(41.4%)、鶏の唐揚げ(40.4%)、サンドイッチ(39.8%)などが人気です。

なぜ惣菜の市場規模は拡大しているのか

惣菜の市場規模の拡大は10年連続で続いています。

惣菜の市場規模が拡大する理由は、お客さんのニーズの増加に対して、小売業が適切な商品を提供できているためです。

ライフスタイルの変化により、料理をする人が減り、料理をしない人が増えています。

単身世帯の増加は料理をしない人が増える理由の一つです。単身世帯の増加は高齢化社会、非婚化・晩婚化などによって進みます。

単身世帯は複数世帯と比べると、料理をするメリットが小さいです。食材を効率よく消費することが難しく、料理をするモチベーションは低いです。

料理をしない人は生鮮食品を買わず、加工食品、冷凍食品、惣菜などを買います。

小売業はお客さんの惣菜のニーズに対して、適切な商品を提供できています。

総合スーパー、食品スーパーは昔から惣菜を販売してきました。総合スーパー、食品スーパーでは、惣菜の売り場拡大、新商品の開発が行われています。同じ惣菜ばかりだとお客さんは飽きてしまうので、売上を伸ばすためには新商品の開発が不可欠です。

これまでコンビニは弁当・パンが主力商品でしたが、おかずとして食べる惣菜、揚げ物の品揃えを増やしています。コンビニは美味しい食品を販売する店舗として、消費者のイメージが良く、惣菜、揚げ物の販売も好調です。

惣菜のニーズは高まっていますが、少子化、高齢化もあり、市場規模の拡大ペースは鈍化しています。今後も惣菜の市場規模が拡大を続けていくためには、購入回数、購入点数を増やす取り組みが必要になります。

惣菜市場における業態間競争はどうなるか

惣菜の市場規模の拡大が続いていますが、業態によって状況は異なります。

コンビニ、食品スーパーは今後も順調に惣菜の売上を伸ばせそうですが、総合スーパー、専門店、百貨店には課題もあります。

お客さんが惣菜に求めているものは、品揃えと店舗の近さです。お客さんは近くの店舗で美味しい惣菜を買うことを望んでいます。コンビニ、食品スーパーはこうした惣菜のニーズに対応できており、これからも対応し続けることができます。

総合スーパーは惣菜の品揃えには問題がありませんが、店舗が遠くにあることは弱みです。コンビニ、食品スーパーに加え、ドラッグストア、ディスカウントストアも食品を強化しており、店舗が遠くにある総合スーパーに出掛ける機会が減ります。

総合スーパーの集客力が落ちれば、惣菜の販売にも影響します。

百貨店、専門店は惣菜の価格が高く、店舗も遠くにあります。惣菜のニーズが高まっている恩恵はあるものの、ニーズにうまく対応できているとは言えません。

惣菜市場全体を見ると、コンビニ、食品スーパー、総合スーパーの構成比は増えており、百貨店、専門店の構成比は減っています。コンビニは店舗が近くにあるため、惣菜を購入する場所としてお客さんに選ばれやすいです。

コンビニ以外の業態は、お客さんがコンビニで惣菜を買うことを想定して、コンビニにはない付加価値を作ることに注力したいです。店舗の近さはどうすることもできないので、基本的には商品での差別化になります。

惣菜は期待の大きな市場だが成長は鈍化している

2019年の惣菜の市場規模は10兆3,200億円(前年比0.7%増)でした。

食品を販売する小売業は惣菜に大きな期待を掛けていますが、市場の成長は徐々に鈍化しつつあります。

食品を販売する小売業は厳しい競争環境にあります。

これまで日常消費の食品を販売する小売業は総合スーパー、食品スーパー、コンビニの三つでした。近年はこれにドラッグストア、ディスカウントストアが加わり、食品を販売する小売業の競争は激しくなっています。

少子化による人口の減少、高齢化による食欲の低下は食品の販売数量を減らします。食品の需要が減少する一方、店舗数は増えています。

食品を販売する小売業にとって、惣菜は期待が大きい商品です。惣菜は販売数量の増加が見込め、粗利益率も高いです。

惣菜は少子化、高齢化の中で健闘しているものの、市場拡大のペースは鈍化しています。2019年の増加率は0.7%と低く、今後、大きく伸びることは難しいかもしれません。

コンビニ、食品スーパーは惣菜の売り場を増やし、新商品の開発に注力しています。コンビニ、食品スーパーは惣菜で激しい競争をすることになりますが、あまり儲からなかったというのはあり得ます。

食品を販売する小売業は、惣菜に大きな期待を掛けすぎないことが重要です。少子化、高齢化で食品の販売数量が減ることは避けられないうえ、惣菜の販売が増えれば、他の食品の販売が減ることになります。

食品を販売する小売業が売上を増やすためには、惣菜だけではなく、販売するすべての食品において、購入点数・一品単価の増加を目指さなければなりません。