ファミリーマートが加盟店の支援と本部の構造改革を発表、約800名の希望退職者を募集

11月14日、ファミリーマートは加盟店の支援、本部の構造改革を発表しています。加盟店の支援、本部の構造改革には、加盟店の判断で時短営業を選択できること、年間約100億円(1店あたり平均年間約70万円)の加盟店の支援を行うこと、約800名(全社員の約1割)の希望退職者を募集することなどが含まれています。

ファミリーマートの加盟店は厳しい競争環境にあり、本部は加盟店の支援に投資をしなければならない状況です。約800名(全社員の約1割)の希望退職者の募集は、加盟店を支援するための収益性強化だと見ることができます。

加盟店の判断で時短営業を選択できることは重要な決定です。時短営業で加盟店は夜間の負担が軽減されますが、一方で、昼間の売上を失ってしまうリスクもあります。ファミリーマートの時短営業は2020年3月より始まる予定で、地域のコンビニの競争にも大きな変化が生じます。

加盟店の支援と本部の構造改革の内容

11月14日、ファミリーマートは加盟店の支援、本部の構造改革を発表しています。ファミリーマートは厳しい競争環境にある加盟店への支援を強化するとともに、本部の構造改革により、チェーン全体の競争力を高める計画です。

加盟店への支援策は、「時短営業の実施」、「加盟店支援制度の拡充」の二つです。

時短営業については、加盟者が希望する場合、本部と事前に協議のうえ、加盟者の判断により決定する方式です。時短営業には毎日時短と週1時短(日曜日)の2パターンがあり、加盟店は自店舗のニーズに合う方を選択できます。

時短営業は2020年3月より実施される予定です。

加盟店支援制度の拡充については、「24時間営業分担金の増額」、「廃棄ロス対策の強化」、「複数店及び再契約奨励金の増額」の三つの施策を進めることになります。これらの施策は加盟店の利益を増やし、事業基盤を安定させる狙いがあります。

加盟店支援制度の拡充の資金は、年間約100億円(1店あたり平均年間約70万円)を想定しています。加盟店支援制度の拡充は2020年3月より実施される予定です。

本部の構造改革の内容は、各地域への権限の移譲、希望退職者の募集による本部の効率化・スリム化です。

地域密着、現場力の向上のため、エリア本部を新設します。本部から各地域に積極的に権限移譲を行い、本社組織を効率化・スリム化を進めます。

希望退職者は原則40歳以上の社員で、2020年2月までに約800名(全社員の約1割)を募集する計画です。

加盟店は競争環境の変化で利益の確保が難しくなる

ファミリーマートは2020年3月より、年間約100億円(1店あたり平均年間約70万円)の加盟店の支援を実施します。ファミリーマートが加盟店の支援を強化する理由は、ファミリーマート加盟店の競争環境が厳しく、利益の確保が難しいためです。

コンビニ業界では店舗数の増加、人件費の上昇により、加盟店の利益の確保が難しくなっています。ファミリーマート加盟店も利益の確保が難しい店舗が増えていると推測され、加盟店の利益を底上げする支援策が必要です。

ファミリーマートが加盟店を支援する内容を見ると、ファミリーマートがどのように加盟店を支援したいかが見て取れます。

「24時間営業分担金の増額」は、加盟店の24時間営業に対して資金を提供するものです。ファミリーマートにとって、24時間営業は重要です。客数不足・人手不足で24時間営業が難しくなる中でも、多くの店舗に24時間営業を続けてもらいたいです。

「廃棄ロス対策の強化」は本部の廃棄ロス負担分を増やすとともに、加盟店の廃棄率改善を支援するものです。コンビニ各社は売り切れ対策として、一定数の廃棄ロスを許容してきました。しかし、消費者の食品ロスへの意識の高まり、加盟店の利益圧迫を受け、ファミリーマートは廃棄ロス対策を強化しています。

「複数店及び再契約奨励金の増額」は、加盟者の複数店舗経営、安定経営を支援するものです。少子高齢化により、コンビニ加盟店の新規募集も徐々に難しくなります。ファミリーマートが今後も業績を拡大するためには、既存の加盟店により長く、より多くの店舗を経営してもらわなければなりません。

人件費の上昇が続いており、今後も継続すると予想されます。加盟店の人件費の上昇が続けば、ファミリーマートの加盟店への支援も続くことになりそうです。

本部の構造改革の目的は効率化・スリム化

ファミリーマートは本部の構造改革で効率化・スリム化を進めていく計画です。ファミリーマートの店舗数と比較すると、本部の人員が多いということになります。また、将来的に店舗数の拡大が起こりにくいとも言えます。

ファミリーマートは買収と経営統合で店舗数を増やし、規模を拡大してきました。2009年に「am/pm」を運営していたエーエム・ピーエム・ジャパンを買収し、2016月には「サークルK」、「サンクス」を運営していたユニーグループ・ホールディングスと経営統合をしています。

ファミリーマートは買収と経営統合で規模を拡大したことで、本部の人員が重複したと考えられます。今回実施される約800人の希望退職者募集は、買収と経営統合で重複した人員の削減と見ることができます。

ファミリーマートには店舗を支援するスーパーバイザーという職種がありますが、スーパーバイザーの人員も減る可能性があります。スーパーバイザーは複数の店舗を巡回して、発注の指導、新商品・キャンペーンの確認、経営数値の確認などの業務を行います。

スーパーバイザーは加盟店の売上・利益に貢献するものだと考えられてきました。しかし、競争環境の変化で加盟店の経営状況が厳しくなったことで、スーパーバイザーの仕組みも見直される可能性があります。

スーパーバイザーがいなくても加盟店の売上・利益を伸ばせるのではないか、スーパーバイザーに代わる、もっとコストが掛からない仕組みがあるのではないかといった判断です。スーパーバイザーにはコストが掛かっており、コスト削減の対象になり得ます。

ファミリーマートは加盟店を支援するための資金が必要な状況です。本部の構造改革を進める背景には、加盟店を支援するための資金を確保する目的もあるのではないでしょうか。

加盟店の支援と本部の構造改革は今後の店舗展開とも関係

加盟店の支援と本部の構造改革は、今後の店舗展開とも関係しています。ファミリーマートは新規出店を抑制して、既存の加盟店の強化に注力するのではないかと考えられます。

ファミリーマートを含め、コンビニ業界はフランチャイズシステムによる店舗数の増加で規模を拡大してきました。コンビニ業界全体では売上、店舗数の増加が続いていますが、コンビニ各店舗の日販は伸び悩んでいます。

近年は店舗数の増加に加え、人口の減少、人件費の上昇の影響が大きくなり、コンビニ各店舗は利益の確保が困難になっています。2019年はコンビニ加盟店の問題が顕在化した一年になりました。

ファミリーマートは2020年3月より、年間約100億円(1店あたり平均年間約70万円)を加盟店の支援に投資する計画です。これは一店舗あたり70万円支援しなければ、店舗の維持が難しいということです。

希望退職者約800名の募集はネガティブにも見えますが、競争環境に合わせた適切な対応ではないかと思います。

ファミリーマートが新規出店を抑制したとしても、ファミリーマートがお客さんに提供している価値そのものがダメなわけではありません。ファミリーマートは近くの店舗で美味しい食品が買えるという価値を提供しており、多くのお客さんに支持されています。

人口の減少、業種の垣根を超えた競争、ECの拡大により、小売業では新規出店が難しくなりつつあります。新店から既存店へと投資がシフトすることは、今後、小売業全体のトレンドになるはずです。ファミリーマートの加盟店の支援と本部の構造改革は、小売業が生き残るために必要な施策で、ネガティブなものではありません。

時短営業の実施で昼間の売上が減少するリスク

2020年3月より、ファミリーマートでは加盟店の判断で時短営業が実施される予定です。時短営業により、加盟店は24時間営業の負担から開放されますが、一方で、昼間の売上が減少するリスクがあります。

ファミリーマートが7月に発表したアンケート調査によると、フランチャイズ加盟店約1万5,000店舗のうち、約7,000店舗が時短営業を検討したいと回答しています。夜間の客数が少ない店舗、人材の確保が難しい店舗は、24時間営業を止めることで利益を増やせる可能性があります。

時短営業を実施するうえで気になるのは、昼間の売上が減少することです。

24時間営業を止めると、夜間のお客さんを競合店舗に奪われることになります。夜間に競合店舗で買い物をするようになったお客さんは、昼間も競合店舗で買い物をするようになり、帰って来なくなります。

お客さんは24時間営業を止めた店舗を見ると、この店舗は人気のない店舗、儲かっていない店舗だと評価します。お客さんは人気のない店舗、儲かっていない店舗では買い物をしたくないので、競合店舗で買い物をするようになります。

コンビニは各チェーンの店舗が近接しており、お客さんの流出が起こりやすいです。ファミリーマートの加盟店が24時間営業を止めることで、地域のコンビニの競争にも大きな変化が生じると考えられます。

ファミリーマートにとってまずいシナリオは、24時間営業を止めた結果、競合他社にお客さんが流出して、競合他社の売上が増えることです。競合他社の売上を増やし、24時間営業を支援するような形になってしまうと大変です。