ヤマトHDが営業損失、物流クライシスへの対応で運賃を値上げも収益性は向上せず

ヤマトHDが営業損失、物流クライシスへの対応で運賃を値上げも収益性は向上せず

ヤマトHDは2020年3月期第1四半期の決算で、61億円の営業損失を記録しています。ヤマトは2017年10月に運賃の値上げを行い、収益性の向上が期待されましたが、望むような結果が得られていません。ヤマトは運賃の値上げとともに、取扱数量の抑制も行っており、大手EC企業の荷物が減少したと考えらます。ヤマトは従業員を増員しているため、取扱数量を増やさなければならない状況です。

大手EC企業は自社物流網の構築を進めています。大手EC企業は自社専用の物流ネットワークを持つことで、効率化によるコスト削減効果、配送サービスの品質向上を見込んでいます。大手EC企業は未来永劫商品を発送し続けるので、物流企業に配送料を支払うよりも、自社で物流網を構築しようとするのは順当です。物流網は自社で活用するだけでなく、外部の小売業にも販売すれば、新規事業にもなります。

大手EC企業が自社物流網の構築を進めると、ECの物流が効率化されます。ヤマトの値上げで利益の確保が難しくなった企業は、大手EC企業の物流網を活用するようになります。また、ECサイトで買い物をするお客さんも、品揃えが豊富で、一度の配送でまとめて届く、大手ECサイトで買い物をすることを好んでいます。大手EC企業の自社物流網に企業とお客さんが集まり、物流の効率が良くなります。

運賃の値上げ、取扱数量の抑制、従業員の増員により、ヤマトHDは営業損失を記録しました。ヤマトの目的が労働環境の改善であったとすれば、収益性の悪化はある程度予想されていたものなのかもしれません。ヤマトは取扱数量を抑制し、従業員を増やしているため、労働環境は改善しています。今後、高単価の荷物を増やして行けば、高収益と良い労働環境を同時に実現することもできるのではないでしょうか。

ヤマトHDの2020年3月期第1四半期は営業損失61億円

物流業界では、ECの拡大による宅配個数の増加と人手不足により、物流クライシスと呼ばれる混乱が発生しています。ヤマトは物流クライシスに対応するため、運賃の値上げ、取扱数量の抑制、従業員の増員を行いました。これらの施策は、収益性を向上させるとともに、従業員の労働環境を改善するためです。物流クライシスへの対応で、収益性を向上する計画でしたが、ヤマトHDは直近の決算で61億円の営業損失を記録しています。

ヤマトHDが営業損失を記録した原因は、人件費の増加に見合った、売上高の増加がないことです。ヤマトは物流クライシスに対応するため、運賃の値上げ・取扱数量の抑制を行いました。運賃の値上げ・取扱数量の抑制が、大手EC企業のヤマト離れを引き起こした可能性があります。大手EC企業は自社物流網の構築を進めていて、ヤマトの物流クライシスへの対応は、大手EC企業の自社物流網構築を加速させることにも繋がっています。

物流クライシスへの対応は期待ほど収益性の向上に貢献せず

ヤマトHDの2020年3月期第1四半期の決算発表を見ると、物流クライシスへの対応は期待したほどの成果を上げられていません。運賃の値上げにより、取扱数量の減少・人件費の上昇を吸収し、営業利益の増加、従業員の労働環境の改善を実現する狙いでした。ただ、ECの個数増加、人手不足の状況は今後も続くため、物流クライシスへの対応は必要不可欠で、ヤマトの施策は適切なものだと思います。

ヤマトの運賃の値上げは2017年10月に行われ、値上げの額は5~20%程度であるとのことです。運賃の値上げ直後は、EC企業の悲鳴のような記事が多数出て、運賃の値上げがいかに売上・利益を減らしたかが注目されました。運賃の値上げはEC企業の利益を減らすだけでなく、売上そのものも減らします。ECサイトでは送料無料の金額が設定されていますが、送料無料の金額が上がると、お客さんは買い物そのものを止めてしまいます。

ヤマトは運賃の値上げと同時に、取扱数量の抑制も行っています。取扱数量を減らせば、売上高も減ることになりますが、運賃の値上げによって補う計算です。ヤマトは売上高を減らしてでも、取扱数量を減らすことを望んでいて、それだけ労働環境が厳しいということです。ヤマトに宅配を依頼する企業は、顧客への商品の配送ができなくなるため、売上・利益の減少、顧客満足度の低下など、多くの問題が起こっていると推測されます。

ヤマトの運賃の値上げ・取扱数量の抑制は、自社の利益を追求する強気のものでした。ヤマトは取扱数量の減少を見込んでいたはずですが、減少幅は予想よりも多かったのではないでしょうか。ヤマトは従業員を増員しており、人件費の増加を吸収するためには、取扱数量を増やせなければなりません。これまで取扱数量の抑制をお願いしていたところに、一転して増加をお願いすることになり、今後の動向に注目です。

大手EC企業のヤマト離れ・物流への投資が進む

ヤマトの取扱数量が伸びない原因として、大手EC企業からの依頼が減少したことが考えられます。ヤマトが運賃の値上げ・取扱数量の抑制を発表したときには、大手EC企業のAmazonとの交渉が注目されました。大手EC企業の立場では、業績の拡大がヤマトの施策に左右されることは大きなリスクです。大手EC企業が自社物流網の構築など、ヤマトへの依存度を減らす方向へと進むのは順当です。

Amazonは「デリバリープロバイダ」と呼ばれる地域の配送業者と提携して、商品の配送を行っています。Amazonがデリバリープロバイダを増やしていることは、SNSへの投稿を見ると分かります。デリバリープロバイダに不満を持つAmazonの利用者が、SNSに不満を投稿しています。Amazonがデリバリープロバイダによる配送を増やしていけば、ヤマトへの依頼は減り、ヤマトの取扱数量は減少することになります。

楽天は2018年に、独自の配送ネットワーク「ワンデリバリー」の構想を発表し、自社物流網の構築を進めています。楽天は物流へ2,000億円を投資する計画で、物流拠点の数は2020年までに8拠点になる見込みです。楽天は物流に大型の投資をしなければ、将来の成長はできないと考えています。楽天が自社物流網の構築を進めれば、ヤマトへの依頼は減り、ヤマトの取扱数量は減少することになります。

Amazon、楽天以外にも、ZOZO、アスクル、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ロコンドなども、物流へ投資するEC企業として知られています。大手EC企業のヤマト離れ、自社物流網への投資は、今後も継続していく可能性が高いです。物流への投資は、ヤマトの施策に関係なく、EC企業の成長に不可欠なものです。ヤマトがEC企業の取扱数量を積極的に増やそうとしても、増えないという状況は起こりえます。

大手EC企業は自社でコントロールできる物流網を構築したい

ECサイトは実店舗と比較して、商品の販売コストが小さいと考えられています。EC企業はECサイトで商品が売れる仕組みを作り、商品が売れた後は、物流会社に配送を依頼するだけでよいとされてきました。物流会社に配送を依頼することは、ローコストなアウトソーシングであるとの認識です。しかし、現在は状況が変わり、物流は費用、サービスの品質の点で、EC企業が業績を伸ばすうえで重要な課題になっています。

EC企業はお客さんに商品を販売し続ける限り、物流会社に配送費用を支払い続けることになります。EC企業は物流会社に配送費用を支払い続けても、直接的に、コストの削減、サービス品質の向上に踏み込めるわけではありません。EC企業が未来永劫存続し続けるのであれば、コストの削減、サービス品質の向上に踏み込めない、物流会社に配送費用を支払い続けるよりも、自社物流網の構築を選択するのは順当です。

自社物流網によるコスト削減・配送サービスの品質向上

物流会社は様々な企業から依頼された荷物の配送を行っていて、特定の企業の荷物を優先して配送しているわけではありません。物流会社に配送を依頼するEC企業としては、自社でやればもっとコストを抑えられる、もっと配送サービスの質を高められると考えても不思議ではありません。ヤマトは運賃の値上げ・取扱数量の抑制を行いましたが、EC企業の中には、もどかしさを感じた企業もあるはずです。

物流会社に配送費用を支払うよりも、自社で配送を行った方がコストが下がる可能性は充分にあると思います。EC企業は顧客データを持っていて、どの地域に自社のお客さんがたくさん住んでいるのかを知っています。お客さんが密集している地域では、効率が高まり、短時間で多くの荷物を配送できます。配送効率が高まることは、配送のスピードアップにも繋がるため、商品を受け取るお客さんにも嬉しいことです。

EC企業は売上高が増えれば増えるほど、お客さんの数が増え、お客さんが密集する地域が増えます。売上の多いEC企業ほど、自社物流網によるコスト削減の効果があり、自社物流網を構築する意欲が高まります。EC企業のデータ、アンケート調査などから、東京、大阪、名古屋など、大都市圏でECサイトの利用者が多いことが分かっています。EC企業は大都市圏で自社配送を行えば、大きなコスト削減効果が見込めます。

EC企業の利用者の中には、年間数十万円、あるいは、数百万円購入する優良顧客もいるはずです。EC企業としては、このような重要なお客さんと一度もリアルで会ったことがないというのは、問題ではないでしょうか。購入金額の大きいお客さんには、自社で配送をしたいところです。自社物流網はコスト、配送サービスの品質を改善できるだけでなく、お客さんとリアルで接触できるという点でも価値があります。

自社物流網は小売業向けの新規事業にもなる

小売業は実店舗とECサイトの両方で商品を販売するようになっていて、在庫管理の効率化が課題になっています。専用の物流センターを持ち、実店舗とECサイトの両方に在庫を配送できることが好ましいですが、すべての小売業が専用の物流センターを持てるわけではありません。EC企業は自社物流網を構築することで、小売業向けに在庫管理・物流サービスを提供する、新規事業のチャンスがあります。

ZOZOは10月より、「Fulfillment by ZOZO」というフルフィルメントサービスを開始する予定です。ZOZOTOWNに出店する企業は、ZOZOの物流センター「ZOZOBASE」に在庫を預けることで、自社ECサイト、ZOZOTOWN、実店舗の在庫をリアルテイムで連携できます。「ZOZOBASE」の在庫を自社ECサイト、実店舗にも引き当てることができれば、機会損失の解消で売上が増え、在庫効率も良くなります。

ZOZOはZOZOTOWNの出店企業から在庫を受け取り、ZOZOTOWNのお客さんへの販売・配送を代行しています。「Fulfillment by ZOZO」では、配送先がZOZOTOWNのお客さんだけでなく、自社ECサイトのお客さん、実店舗へと増えますが、配送先が変わるだけで大きな負担はありません。ZOZOは自社物流網を活かして、「Fulfillment by ZOZO」のサービスを提供して、手数料を得ることができます。

EC企業の自社物流網を活用した、小売業向けの在庫管理・物流サービスは、需要が大きいです。小売業は実店舗とECサイトが融合したオムチャネルに取り組んでいますが、様々な理由から実現は簡単ではありません。小売業がオムニチャネルを実現する方法は、外部企業との連携が最適です。ZOZOが提供する「Fulfillment by ZOZO」のようなサービスは、中小の小売業にとって魅力的なものです。

大手EC企業の自社物流網は宅配個数の増加率を鈍化させる

ヤマトは物流クライシスに対応するため、運賃の値上げ、取扱数量の抑制を行いました。一方、大手EC企業は自社で物流をコントローするため、自社物流網の構築を進めています。大手EC企業が自社物流網の構築を進めれば、ヤマトは取扱数量を増やすことが難しくなります。ただ、ヤマトが運賃の値上げ、取扱数量の抑制を行わなくても、大手EC企業が自社物流網の構築を進めることには違いありません。

大手EC企業が自社物流網を構築すると、日本全体のECにも影響を与え、宅配個数の増加率は鈍化すると考えられます。ヤマトの値上げで利益が減少した企業の中には、大手EC企業の物流網を活用しようとする企業も出てきます。ECサイトで買い物をするお客さんは、品揃えが豊富で、一度の配送で商品がまとめて届く大手EC企業を好みます。大手EC企業の物流網に、企業もお客さんも引き寄せられ、物流の効率化が進みます。

ヤマトの値上げで大手EC企業の物流網への期待が高まる

企業がECで商品を販売する場合、大手EC企業のマーケットプレイスに出店するか、自社ECサイトを運営することが一般的です。企業は大手EC企業のマーケットプレイスだけでなく、自社ECの売上も伸ばしたいですが、自社ECには集客が難しいという問題があります。今回、ヤマトが運賃の値上げ、取扱数量の抑制を行ったことで、ECを行う企業は自社ECの集客に加え、物流コストでも問題が抱えるようになりました。

企業の自社ECの集客が難しい理由は、大手EC企業がお客さんの囲い込みを進めているためです。お客さんがECサイトで買い物をする場合、Amazon、楽天から検索を始め、多くの場合、Amazon、楽天で欲しい商品が見つかります。ECで商品を販売する企業は、自社ECの売上を伸ばすことを望んでいます。しかし、大手EC企業のマーケットプレイスの集客力は強く、依存度を下げることは難しいです。

ヤマトが運賃の値上げ、取扱数量の抑制を行ったことは、ECで商品を販売する企業の売上・利益を減らしました。自社ECで利益を確保することが難しくなった企業は、大手EC企業のマーケットプレイスを重視するようになります。ヤマトに配送を依頼する方法と、大手EC企業の物流網を活用する方法のどちらが安いのか分かりません。将来的に安くなる見込みがあるという点では、大手EC企業の物流網の方が期待できます。

ヤマトが運賃の値上げ、取扱数量の抑制は、大手EC企業の物流網の価値を高めることにも繋がっています。自社ECでヤマトに配送を依頼するのではなく、大手EC企業のマーケットプレイス・物流網を使う企業が増えれば、ヤマトの取扱数量は減少します。物流サービスを提供する大手EC企業は複数あり、価格・品質の競争が行われます。競争によって配送料が低く抑えられるようであれば、ヤマトにとっても負担になります。

ECサイトの利用者は商品がまとめて届くことを好む

楽天、ヤフー、ZOZOなど、大手EC企業の流通総額は安定的に増加しています。ECサイトで買い物をする人が増えれば、宅配個数も同時に増えることになります。ECサイトでの買い物は便利ですが、何度も自宅で商品を受け取ることは負担です。お客さんは受け取り回数を減らすために、一回の買い物で多くの商品を買うようになると考えられます。お客さんがECサイトで効率よく買い物をするようになれば、宅配個数の増加率は鈍化します。

Amazonは人気のECサイトの一つで、Amazonが人気になる理由は、一度の買い物で多くの商品が買え、まとめて届くことです。Amazonは自社の物流センターを日本全国に持ち、在庫を保管しているため、まとめて配送することができます。多くの商品をまとめて配送することは、Amazonにとってもお客さんにとっても好ましいです。商品がまとめて配送されると、配送回数・宅配個数を減らすことにもなります。

Amazonの品揃えは、複数の店舗をカバーできるほどまで拡大していると思います。普段買い物をする店舗には、コンビニ、ドラッグストア、スーパーマーケット、ディスカウントストア、ホームセンター、家電量販店、100円ショップ、衣料品店、雑貨店などがあります。これらの店舗で販売している商品をAmazonで検索すれば、同じもの、あるいは代替商品が見つかる確率は高いです。複数の店舗を買い回って手に入れていた商品が、Amazonでの一回の買い物で手に入るようになりつつあります。

今後も大手EC企業の流通総額は安定的に増加する見込みですが、宅配個数の増加率は、流通総額の増加率に比べて低くなると考えられます。複数の商品がまとめて一度の配送で届くようになるので、宅配個数の増加率は鈍化するはずです。お客さんも商品の受け取りが大変なので、ECサイトでの買い物回数を減らしたいです。配送の負担を減らしたいという点については、大手EC企業、お客さんの双方の意見が一致しています。

ヤマトは収益性の改善よりも労働環境の改善を重視

ヤマトは物流クライシスに対応するため、運賃の値上げ、取扱数量の抑制、従業員の増員を行いました。運賃の値上げによって、取扱数量は一定数の減少が見込まれるため、取扱数量の抑制は必要なかったような感じもあります。従業員を増やすのであれば、取扱数量の増加にも対応できます。ヤマトが取扱数量を行った背景には、労働環境を改善する強い意志があったのではないかと考えられます。

ヤマトは配送料の高い荷物を多くの従業員で配送するようになり、従業員の労働環境は改善されています。ヤマトHDは2020年3月期の第1四半期に営業損失61億円を記録しましたが、人件費の増加を売上高の増加で補えなかったことが原因です。ただ、運賃の値上げ、取扱数量の抑制、従業員の増員は、労働環境の改善に繋がっており、後は利益を確保するだけだと見ることもできます。

労働環境の改善はヤマトだけでなく日本全体の課題

労働環境を改善することは、ヤマトだけではなく、すべての企業の課題です。少子高齢化で若年層の人口が少なく、多くの企業で人材が不足しています。充分な従業員を確保できていない企業は、従業員一人あたりの負荷が高まり、病気・怪我などのリスクが高まります。ヤマトは取扱数量の抑制により、短期的には売上を失いましたが、それ以上に労働環境の改善が重要だったということです。

労働環境の改善は、既存の従業員に働き続けてもらうためにも、新規の従業員を採用するためにも重要です。日本は終身雇用のマインドを持つ人が多いので、既存の従業員は一つの企業でいつまでも働き続けるイメージがあります。しかし、人手不足で待遇の良い求人が増えると、人材の流動性も高まります。ヤマトのような大企業であっても、従業員が別の企業に転職するリスクはあります。

労働環境を改善することは、女性、高齢者の採用を進めるためにも不可欠です。男性の従業員に依存している企業ほど、女性、高齢者を採用しなければならなくなります。物流企業は男性の従業員が多いですが、低単価の配送を男性の体力でこなすような稼ぎ方は難しくなります。ヤマトの制服を着た女性を目にすることが増えていますが、女性に働いてもらうためには、体力に自信がない人でも働ける労働環境が必要です。

運賃の値上げ、取扱数量の抑制、従業員の増員により、ヤマトHDは収益性が悪化し、営業損失を記録しました。労働環境の改善が最大の目的であったとすれば、収益性の悪化もある程度は見込んでいたのではないでしょうか。低単価の配送はしないということを、内外にアピールできたことはポジティブです。今後、高単価の配送を増やすことができれば、収益性が高く、従業員も働きやすい企業へと転身できます。

高収益と良い労働環境を同時に実現することは可能か

ヤマトは物流クライシスに対応するため、運賃の値上げ、取扱数量の抑制、従業員の増員を行いました。高単価の配送を多くの従業員でこなして、高収益と良い労働環境を同時に実現する狙いがあります。一般的に、物流は荷物が集約された方が効率がよく、高収益と良い労働環境が期待できます。ただ、大手EC企業が自社物流網の構築を進めていることもあり、ヤマトは効率化しにくい配送に取り組むべきなのかもしれません。

ヤマトにとって最も有望なマーケットの一つはCtoC(Consumer to Consumer)です。フリマアプリ「メルカリ」の2019年6月期の流通総額は5,307億円(前期比43.2%増)で、CtoCの市場規模は急拡大しています。これまでは、個人が企業からものを買うことが当たり前でしたが、これからは個人間でものを売買するようになります。個人間でものを売買する機会が増えれば、配送を担当するヤマトの取扱数量も増えます。

ECの物流は大手EC企業が効率化を進めていますが、CtoCの物流は外部の企業が効率化することは難しいのではないかと思います。フリマアプリの利用者は、各人が荷物をコンビニ、宅配ロッカーなどの拠点から発送します。フリマアプリの利用者が集まって、物流を効率化するというのは非現実的です。個人の荷物は効率化されず、企業の荷物のように値下げ圧力もないことから、ヤマトとって利益率の高い荷物になる可能性があります。

ECの荷物は大手EC企業が効率化を行っていくため、ヤマトのチャンスは縮小すると考えられます。一方、大手EC企業が効率化できない荷物、個人間の荷物にはチャンスがあります。個人間の荷物はマーケットが小さいですが、成長力があり、外部の企業が効率化することも難しいです。ヤマトが高収益と良い労働環境を同時に実現するためには、利益率の高い荷物を少しずつ積み上げて行かなければなりません。