小売業はどのようにしてアップセル・クロスセルを増やせばよいか

小売業はどのようにしてアップセル・クロスセルを増やせばよいか

アップセルとは顧客により高価格・高機能の商品を買ってもらうこと、クロスセルとは顧客により多くの商品を買ってもらうことを意味するマーケティング用語です。小売業は不特定多数のお客さんに商品を販売しているので、アップセル、クロスセルを強く意識する機会は少ないです。しかし、人口の減少で客数を増やすことが難しくなっているため、小売業もアップセル・クロスセルを増やして行かなければなりません。

小売業がアップセルを実現するために必要なことは、低価格から高価格まで、幅広い価格帯の商品を用意することです。さらに、お客さんに商品の価値をしっかりと理解してもらい、高価格・高機能の商品を選んでもらう導線も必要です。アップセルは家具・家電など、販売コストを回収できる高価格の商品では成果を得やすいですが、販売コストを掛けられない低価格の商品では、効率性に課題があります。

小売業がクロスセルを実現するために必要なことは、取扱商品を増やすことです。品揃えが多いほど、商品同士に関連が生まれるので、クロスセルが起こりやすくなります。クロスセルは小売業の売上を増やすだけでなく、お客さんには一つの店舗で多くの商品が買える利便性を提供することになります。ドラッグストアは食品、日用品、医薬品のクロスセルで成功を収めていて、人気店舗になっています。

小売業がアップセル・クロスセルを増やすためには、店舗のデジタル化が効果的です。ECサイト、スマホアプリで商品の検索・比較をできるようにすれば、お客さんの商品への理解が深まり、アップセル・クロスセルが起きやすくなります。小売業はインターネットで商品を検索して、実店舗で買い物をする「ウェブルーミング」を強化することで、効率よくアップセル・クロスセルを増やすことができます。

アップセル・クロスセルは既存顧客の売上を増やす販売戦略

アップセル・クロスセルとは、既存顧客の売上を伸ばすための販売戦略のことです。アップセルとは、顧客に今よりも価値・価格の高い商品を購入してもらい、売上を増やす販売戦略のことです。クロスセルとは、顧客が購入してくれている商品に加え、関連する商品もセットで購入してもらい、購入点数と売上を増やす販売戦略のことです。

少子高齢化の影響で、10年ほど前から人口の減少が発生していて、小売業は新規出店・新規顧客の獲得が難しくなっています。人口が減少する中でも小売業が売上を増やすためには、既存顧客の売上を伸ばさなければなりません。小売業はアップセル・クロスセルを計画的に起こすことで、既存顧客の売上を伸ばし、人口の減少に対応したいです。

小売業でも起こっているアップセル・クロスセル

アップセルとはより高価格の商品を販売すること、クロスセルとは購入点数を増やすことです。アップセル・クロスセルともに、既存顧客の客単価が上がるので、売上が増えます。小売業はお客さん一人一人を認識しているわけではないので、アップセル・クロスセルを意識する機会は少ないです。しかし、小売業の店舗でもアップセル・クロスセルは頻繁に起こっていて、アップセル・クロスセルの成否は売上と関係しています。

アップセルを強化している業種は、高価格の商品を販売している小売業です。家具・家電を販売する小売業では、アップセルを狙った販売戦略が取られています。家具・家電を販売する店舗では、幅広い価格帯の商品を揃え、店員が丁寧に接客します。店員の接客によっては、低価格の商品から高価格の商品へのアップセルが起こります。

クロスセルはコンビニ、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなど、小売業のほとんどの店舗で起こっています。クロスセルは商品の価格が安く、品揃えが豊富な店舗で起こりやすいです。クロスセルが起こるかどうかは、お客さんのニーズ、商品同士の関連性が重要で、クロスセルがうまい店舗は購入点数が増えます。

アップセル・クロスセルを実現しやすい業種・しにくい業種はありますが、すべての小売業にとって取り組む価値があるものです。アップセル・クロスセルが起こることは、お客さんに良い買い物をしてもらっている証明にもなります。低価格の商品は接客にコストを掛けられないので、アップセルには不向きです。ただ、これまで取り組まれて来なかっただけに、アップセルで売上が増える余地が大きいとも言えます。

人口の減少でアップセル・クロスセルの重要性が高まる

小売業でアップセル・クロスセルが重要になる理由は、人口の減少が起こっているためです。小売業は新規出店・新規顧客の獲得で業績を伸ばして来ましたが、人口が減少すると、これまでのように規模を拡大して成長することが難しくなります。小売業の成長戦略は規模を拡大することから、既存店舗・既存顧客を重視することへとシフトします。

総務省が7月10日発表した、「住民基本台帳に基づく2019年1月1日時点の人口動態調査」によると、日本人の人口は1億2,477万6,364人で、前年から43万3,239人減少しています。1年の減少人数を43万人とすると、10年で430万人、20年で860万人が減少します。店舗の売上は店舗周辺に住むお客さんの買い物によるもので、店舗周辺の人口が減少すれば、店舗は売上を維持することが困難になります。

人口の減少で新規顧客の獲得が難しくなると、現在、店舗で買い物をしてくれている既存顧客の価値が高まります。既存顧客にもっと買い物をしてもらえれば、客単価が上がり、店舗の売上が増えます。アップセル・クロスセルは既存顧客の客単価を上げるための販売戦略で、人口の減少によって、小売業でも重要性が高まっています。

ECサイトで買い物をする人が増えているため、実店舗からECサイトへのお客さんの流出が起きています。ECサイトへの流出に加え、人口の減少も起こり、小売業の既存店の客数は減少して行く可能性が高いです。小売業は客数の減少による売上の減少は避けられず、アップセル・クロスセルによる客単価の上昇で対応したいです。

アップセルは商品の価格帯の幅を広げることで実現できる

アップセルを実現するために必要なことは、低価格から高価格まで、幅広い価格帯の商品を品揃えすることです。幅広い価格帯の商品があれば、お客さんは各商品の価格・機能を比較して、どの商品を購入するのかを決定します。お客さんが当初の計画よりも価格・機能の高い商品を選択すれば、アップセルに成功したことになります。

商品を比較・検討しやすい環境を作ることは、アップセルが起きやすくするために有効です。お客さんに商品の価格・機能をよく理解してもらわないことには、アップセルは起こりません。高価格の商品の場合は、店員が接客でお客さんの商品の価格・機能を説明しています。低価格の商品の場合は、店員が接客をすることは難しいので、商品の価格・機能がすぐに分かるような、商品を比較した形式のPOPがあると良いです。

アップセルには幅広い価格帯の商品が必要

アップセルの実現には、低価格から高価格まで、幅広い価格帯の商品が必要です。お客さんに複数の商品を比較してもらい、低価格の商品から高価格の商品へと誘導します。単に幅広い価格帯の商品を品揃えするだけでは、アップセルは起こりにくいです。アップセルを起こすためには、お客さんを誘導するシナリオを用意したいです。

小売業の中で、アップセルでうまく売上を伸ばしているのは家電量販店です。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エンアコン、パソコンなどは、低価格から高価格まで幅広い価格帯の商品が陳列されています。家電量販店は接客をしながら、各商品の価格・機能を比較してもらい、お客さんのニーズに合わせて高価格の商品を提案してます。

アップセルとは、お客さんに商品の価格・機能をよく理解してもらい、より高価格・高機能のものを購入してもらうことです。より高価格・高機能の商品を購入することは、お客さんにとってもポジティブで、顧客満足度を向上させることにも繋がります。商品を販売する小売業の立場でも、お客さんのニーズに合った商品を提案して、結果的にそれがアップセルになれば、売上・顧客満足度の両方の点でポジティブです。

アップセルは家電、家具のような高価格の商品では一般的ですが、食品、日用品、雑貨など、低価格の商品では改善の余地があります。低価格の商品は、コストを掛けて接客ができないので、高価格の商品のようにアップセルを狙うことはあまりありません。低価格の商品でどうアップセルを起こすかというのは、小売業の課題です。

アップセルには商品の比較・検討がしやすい売り場が必要

アップセルを実現するためには、お客さんに商品の価格・機能をよく理解してもらわなければなりません。お客さんが商品の価格・機能を理解して、比較しやすいような売り場を作りたいです。接客のようにコストが掛からず、大きな効果が期待できるのが価格・機能を比較したPOPです。アップセルを起こしたい商品にPOPを付ければ、お客さんはPOPを見て商品を比較して、ニーズに応じて高価格の商品を購入します。

家電量販店のパソコン売り場には、商品の細かいスペックが書いたPOPが付けられています。お客さんはPOPに書いてある、CPU、メモリ、ハードディスクなどのスペックを見ながら、複数の商品を比較してどれを買うのか決めます。お客さんはしっかり商品を比較してから購入するため、満足感のある高い買い物ができます。

食品、日用品、雑貨など、低価格の商品では、似たような商品が多数陳列されています。お客さんは何となく、価格が高い方が機能が優れているというのは理解できますが、高い商品を選ぶ決定的な理由はありません。低価格の商品にも、価格・機能を比較したPOPを用意すれば、アップセルを起こせるチャンスがあります。

低価格の商品は価格が安いこともあり、お客さんはあまり商品を比較せずに買い物をすることが多いです。お客さんに商品を比較してもらえないことは、小売業にとってはアップセルの機会損失であると言えます。すべての商品に価格・機能を比較したPOPを付けることは現実的ではありませんが、低価格の商品でもアップセルを狙って行きたいです。

クロスセルは取扱商品を増やすことで実現できる

クロスセルを実現するために必要なことは、取扱商品を増やすことです。取扱商品が多いと、お客さんのニーズに合致する確率が上がり、クロスセルが起こりやすくなります。小型店と大型店では、売り場面積の大きい、大型店の方がクロスセルが起こりやすいです。小型店は小さい売り場面積で、効率良くクロスセルを狙って行くことになります。

小売業の立場では、クロスセルはお客さんに多くの商品を買ってもらい、売上を増やすためのものです。買い物に時間を掛けたくないお客さんの立場でも、一つ店舗で多くの商品が買えることは良いことです。クロスセルは小売業、お客さんの両方にメリットがあり、小売業はクロスセルを増やして行きたいです。

取扱商品を増やしてクロスセルを実現している小売業

ライフスタイル提案型店舗「無印良品」を運営する良品計画、ドラッグストア「ドラッグコスモス」を運営するコスモス薬品は、クロスセルで売上を伸ばしている小売業です。無印良品、ドラッグコスモスでは、幅広いカテゴリーの商品を販売していて、クロスセルが多く起こっています。無印良品、ドラッグコスモスはお客さんからの評価も高く、クロスセルは売上アップだけでなく、ファンの育成にも繋がります。

無印良品では、衣料品、雑貨、家具、家電、食品など、生活に必要な商品を幅広く販売しています。品揃えが多いと、専門性が薄れてしまうリスクもありますが、無印良品は優れたコンセプトで、幅広い商品のクロスセルに成功しています。近年は食品の販売を強化していて、食品が売れるようになると、一緒に食器が売れるチャンスが増えます。

ドラッグコスモスは、食品・日用品の価格が安いことで人気の店舗です。ドラッグスコスモスに食品を買い物に来たお客さんは、必要に応じて、日用品、医薬品も一緒に購入します。日用品、医薬品は買い物をする頻度が低いため、ドラッグストアは集客力に問題を抱えていました。ドラッグコスモスは購入頻度が高い食品を低価格で販売することで、集客力を高め、日用品、医薬品とのクロスセルを増やしています。

人口の減少が継続して行くため、小売業が新規出店・新規顧客の獲得で成長することが難しくなっています。クロスセルは既存顧客の購入点数を増やし、売上を増やすもので、すべての小売業にとって重要な販売戦略です。小売業各社が取扱商品を増やすのは良いことですが、一方で、業種の垣根を超えた競争が激しくなるという問題もあります。

社会環境の変化で小売業は利便性を求められる

女性の社会進出、自動車離れ、高齢化社会、ECの拡大といった社会変化は、小売業に影響を与えます。これらの社会変化によって、店舗に買い物に行かなくなる人、あるいは、行けなくなる人が増えます。全体的に買い物に費やされる時間・労力が減って行くと予想されるため、取扱商品が多い店舗の価値が高まります。

無印良品は商品の価値、ドラッグコスモスは商品の価格で人気の店舗です。無印良品、ドラッグコスモスは商品で人気になっていますが、一つの店舗で幅広いカテゴリーの商品が買える利便性も、人気の背景にあるのではないかと思います。時間を掛けずに素早く買い物をすることは、良い商品、安い商品を買うのと同様に、大きな満足感があります。

ドラッグコスモスは、スーパーマーケットとホームセンターの良いとこ取りをしたような品揃えになっています。スーパーマーケットとホームセンターを買い回っていたお客さんの中には、ドラッグコスモスだけで生活に必要なものが揃う人もいるはずです。買い物に時間を掛けたくない、あるいは、掛けられない人にとっては、食品と日用品がまとめて買える店舗はありがたい存在です。

クロスセルを積極的に狙う店舗は、お客さんのニーズをしっかりと考えます。お客さんのニーズを考えることにより、お客さんのニーズに合った品揃えになり、クロスセルが増えます。クロスセルが多い店舗は、お客さんにとっては、一度の買い物でたくさんの商品が買える便利な店舗です。小売業はクロスセルを強化することにより、売上が増えるだけでなく、便利に買い物ができる店舗として評価されるようになります。

店舗のデジタル化はアップセル・クロスセルの増加に繋がる

小売業はお客さんに優れた買い物体験を提供し、店舗の生産性を向上させるため、店舗のデジタル化を進めています。小売業の店舗をデジタル化するツールには、ECサイト、スマホアプリ、スマホ決済、タブレット、デジタルサイネージなどがあります。店舗のデジタル化が進むと、店舗ではより多くの情報が活用されるようになります。

店舗をデジタル化する過程で、商品データベースが構築され、お客さんは商品情報にアクセスできるようになります。お客さんはECサイト、スマホアプリで商品を検索することができるので、必要なときに素早く商品情報を取得できます。お客さんがより多くの商品情報を持ち、商品への関心が高まれば、アップセル・クロスセルの増加に繋がります。

ECサイトは商品の検索・比較がしやすい

実店舗とECサイトを比較すると、実店舗は商品が探しにくいです。ECサイトは検索、カテゴリリストから商品をすぐに探せますが、実店舗は売り場を歩く必要があり、商品を見つけられなかったり、途中で諦めることもあります。小売業はECサイトを持つことにより、実店舗の商品が見つけにくい問題を補強することができます。

アップセル・クロスセルを増やすためには、お客さんに多くの商品を見て、比較してもらわなければなりません。実店舗では、店員が接客したり、POPを作ってお客さんに商品の説明をしていますが、店員やPOPにはコストが掛かります。低価格の商品に店員やPOPを使うことはコストの負担が大きく、アップセル・クロスセルを増やしにくいです。

ECサイトの場合、一度商品ページを作成すれば、後はお客さんが自分で検索をして、商品説明を見てくれます。ECサイトはプログラムで自動化されているため、商品比較リストを簡単に作成することができます。実店舗とECサイトの商品をお客さんに説明するコストを比較すると、ECサイトの方が安いのではないかと思います。

小売業はECサイトを持つことにより、お客さんに多くの商品を見てもらえ、アップセル・クロスセルを増やせます。商品の購入はECサイトでも実店舗でもよく、ECサイトと実店舗の両方で買い物ができることは、お客さんの利便性アップにもなります。ECサイトは単に商品を販売するためのものではなく、お客さんに商品のことをよく理解してもらう役割もあり、実店舗への集客、アップセル・クロスセルの増加にも貢献します。

店舗の収益性を高めるウェブルーミング

インターネットで商品を調べた後、実店舗に出掛けて買い物をすることを「ウェブルーミング」と呼びます。これは実店舗で商品を見て、ECサイトで買う「ショールーミング」と反対のもので、デジタル時代の新しい買い物方法として定義されています。小売業がアップセル・クロスセルを増やす方法として、ウェブルーミングには効果があります。

お客さんは何か必要な商品があると、まずはAmazonのような大手ECサイトで検索します。大手ECサイトで商品を確認した後は、大手ECサイトでそのまま購入するか、実店舗に買い物に出掛けます。ここで小売業が自社ECサイトを持ち、店舗の在庫情報を表示できれば、お客さんを実店舗に呼び込める確率を高められます。

漠然とした商品イメージを持って買い物に行く場合と、購入する商品をある程度決めて買い物に行く場合では、商品が決まっている方が売上に繋がりやすいです。お客さんは購入する商品についてよく理解しているので、店舗でアップセル・クロスセルも起こりやすいです。小売業がアップセル・クロスセルを増やすためには、お客さんに商品をよく理解してもらう必要があり、ウェブルーミングは一つの手法として有効です。

今後、小売業において、ウェブルーミングは重要な販売手法になるのではないかと思います。ウェブルーミングにより、お客さんは来店前にECサイトで商品情報を収集しているため、実店舗での接客時間を減らす効果もあります。小売業はウェブルーミングを強化することで、集客力アップ、アップセル・クロスセルの増加、接客コストの削減といったメリットが得られ、店舗の収益性を向上させることができます。