ZOZOTOWNを退店したしまむらはどのようにECを強化するのか

ZOZOTOWNを退店したしまむらはどのようにECを強化するのか

しまむらは2018年7月9日よりZOZOTOWNに出店していましたが、6月20日に退店を発表しました。しまむらがZOZOTOWNを退店した理由は、販売手数料が高いためです。しまむらは1年を待たずにZOZOTOWNから退店することになりましたが、当初からECのノウハウを学ぶことを目的にしていて、退店は計画通りなのかもしれません。

しまむらはZOZOTOWNを退店した後は、店舗受け取り専用アプリ「しまコレ」を強化して行く計画です。お客さんはスマホアプリ「しまコレ」で注文をして、商品は指定した店舗で受けとります。販売手数料が掛かるZOZOTOWNと比較すると、「しまコレ」は自社の店舗網、物流網を活用するため、利益を確保しやすいです。

アパレル業界ではECに注力する企業が多い中、しまむらはこれまでECに取り組んできませんでした。しかし、2018年以降、ZOZOTOWNへの出店、スマホアプリ「しまコレ」のリリースと、ECの取り組みが活発になっています。アパレル業界はEC化率が順調に上昇しており、若者がECで洋服を買うことは普通のことです。実店舗で大きな売上・利益があるしまむらも、ECへ対応しなければならなくなっています。

「しまコレ」はECによる売上の増加に加え、商品を受け取りに店舗に来ることで、来店回数の増加、ついで買いによる客単価アップも期待できます。ECの商品をお客さんの自宅に商品を配送するためには、低価格の商品ではなく、配送費を賄える高価格の商品が必要です。ECには店舗がない地域に商品を販売できるメリットがあり、しまむらはEC用の高価格の商品を用意して、自社ECにも取り組みたいです。

しまむらはZOZOTOWNへの出店から1年を待たずに退店

しまむらは6月20日にプレスリリースを発表し、同日中に、出店していたZOZOTOWNから退店したことを明らかにしました。しまむらがZOZOTOWNに出店したのは2018年7月9日で、1年を待たずに退店したことになります。しまむらがZOZOTOWNに出店した目的は、店舗がない地域、店舗に来店できないお客さんへ商品を販売すること、ECに関するノウハウを習得することでした。

しまむらがZOZOTOWNから退店した理由は、販売手数料が高く、コストを削減するためです。ZOZOTOWNの販売手数料は公開されていませんが、35%程度とされていて、企業によって異なるようです。しまむらは人気があり、売上規模が大きいため、販売手数料は優遇されていたのではないかと推測されます。人気のあるしまむらであっても、ZOZOTOWNで利益を確保することが難しかったということになります。

しまむらがZOZOTOWNに出店した目的

アパレル業界を含め、小売業ではECサイトを持つことが一般的になっています。しまむらはこれまで自社ECサイトを持たず、外部のECモールへも出店しておらず、ZOZOTOWNへの出店が初めてのECでした。しまむらはZOZOTOWNで売上を稼ぐというよりは、ECのノウハウを習得する狙いの方が大きかったような印象です。

ECのノウハウがないしまむらとしては、ECを始めれば、どれくらいのお客さんが商品を買ってくれるのかというのは興味があるデータです。しまむらは店舗が小型で、店舗数も多いですが、しまむらに行きたくても行けない潜在顧客はいます。しまむらはZOZOTOWNに出店することで、ECのポテンシャルを調査することができました。

ZOZOTOWNを運営するZOZOは物流倉庫を保有していて、出店ブランドの商品の在庫管理、発送など、ECの業務を代行しています。ZOZOTOWNはアパレルのECにおいて、最先端の企業です。しまむらがZOZOTOWNの出店により、どのようなECのノウハウを習得したのかは分かりません。ただ、しまむらはECのノウハウがなかったことを考えると、ZOZOTOWNに出店する価値はあったのではないかと思います。

しまむらはZOZOTOWNに出店するときから、ECの新規顧客の獲得、ECのノウハウの習得を明確な目的にしていました。ECの新規顧客の獲得についても、売上よりも、ECのノウハウの習得の意味合いが強いです。しまむらは出店から1年を待たずに退店しましたが、当初の計画通り、ECのノウハウは習得できたのではないでしょうか。

しまむらがZOZOTOWNから退店した理由

しまむらがZOZOTOWNから退店した理由は、販売手数料の負担が大きかったためです。しまむらが2018年7月にZOZOTOWNに出店した当初から、ZOZOTOWNの客層と合わない、販売手数料が高いなど、不安な点が指摘されていました。今回、しまむらがZOZOTOWNを退店したことについても、大きな驚きはないようです。

しまむらの2019年2月期の決算資料をもとに、しまむらの収益構造を計算すると、売上総利益率は31.8%、販売費及び一般管理費率は27.3%、営業利益率は4.7%です。しまむらの売上総利益率では、ZOZOTOWNの35%前後の販売手数料を吸収することは難しいです。多くのブランドが出店するZOZOTOWNは、クーポンによる値下げ圧力が強いため、しまむらの売上総利益率は実店舗よりも低かった可能性もあります。

しまむらのZOZOTOWNへの出店、退店は、売上総利益率の低い小売業が、ネットモールで利益を確保することの難しさを証明する事例になりました。物流業界の人手不足、宅配個数の増加により、物流コストの上昇は続く見込みです。売上総利益率の低い小売業がECをする場合、自社ECに取り組む以外に選択肢はなさそうです。

しまむらはZOZOTOWNから退店した後は、スマホアプリ「しまコレ」に注力して行く予定です。「しまコレ」はしまむらが1月7日にリリースしたスマホアプリで、スマホで商品を注文して、店舗で受け取るサービスです。しまむらの商品は売上総利益率が低く、販売にコストを掛けられません。「しまコレ」はお客さんの自宅に商品を配送するのではなく、店舗に受け取りに来てもらうローコストな仕組みです。

しまむらは店頭受け取り用のスマホアプリ「しまこれ」に注力

しまむらは2018年7月にZOZOTOWNに出店しましたが、高い販売手数料を理由に、6月に退店しました。ZOZOTOWNを退店したしまむらが注力するのが、1月にリリースしたスマホアプリ「しまコレ」です。「しまコレ」はスマホで商品を注文して、店舗で受け取るための専用アプリです。

しまむらは高コストのZOZOTOWNから退店して、相対的に低コストの店頭受け取り用アプリ「しまコレ」を強化して行くことになります。しまむらが自社ECを行うかどうかについては、今のところ情報はありません。自社ECよりも先に「しまコレ」が登場したということは、「しまコレ」の方が優先度が高いと見ることができます。

店頭受け取り用のスマホアプリ「しまコレ」

しまむらは1月7日に、スマホアプリ「しまコレ」をリリースしています。「しまコレ」はネットで注文をして、店舗で受取るためのスマホアプリです。「しまコレ」はしまむらが持つ、店舗網、物流網を活用していて、お客さんにとって利用しやすいサービスになっています。「しまコレ」はしまむらの店舗にある商品を取り置くのではなく、注文した商品が店舗に入荷後、受け取りに行く仕組みです。

「しまコレ」の買い物方法は、一般的なネットショッピングと同じようなものです。アプリで購入する商品をカートに入れ、受け取りたい店舗を選択します。注文後、商品が店舗に届くと、スマホにプッシュ通知が届きます。商品の受け取りは、店舗でスマホアプリのバーコードを読み取ってもらい、支払いをすれば完了です。

「しまコレ」は店頭で商品を受け取るため、ネットショッピングと比較すると買い物がしやすいです。「しまコレ」は会員登録不要で利用できるようになっていて、注文IDとバーコードでお客さんを識別しています。支払いは商品受け取り時に店舗で行うので、買い物をするのにクレジットカードも不要です。商品のキャンセルもしやすく、商品が店舗に届く前、届いた後、どちらでも商品をキャンセルすることができます。

「しまコレ」はお客さんの自宅に商品を配送しないので、ECのように新規顧客の獲得はなく、利用者は店舗を利用したことのある既存顧客になります。しまむらの店舗に何度も出掛け、価値のある商品を探すことを意味する「しまパト(しまむら+パトロール)」という言葉があります。「しまコレ」は「しまパト」を好むヘビーユーザーに、しまむらでの買い物をさらに楽しんでもらうためのスマホアプリです。

ECよりも利益を確保しやすい店頭受け取り

しまむらはZOZOTOWNに出店したことで、ECモールは販売手数料が高く、利益の確保が難しいことが分かりました。ZOZOTOWNを退店したしまむらが取り組むのは、自社ECではなく、店頭受け取り専用アプリ「しまコレ」です。しまむらが「しまコレ」に注力するのは、ECよりもコストが安いからではないかと考えられます。

しまむらは低価格の衣料品を販売しており、お客さんの自宅への配送費が発生するECで利益を確保することは難しいです。しまむらの2019年2月期の決算資料によると、しまむらの客単価は2,553円、1点単価は859円、買上点数は2.9点です。また、2019年2月期のしまむらの売上総利益率は31.8%です。実店舗の客単価、売上総利益率をECに当てはめると、配送費を引いた後の利益は少なくなりそうです。

しまむらは物流センターを持ち、全国の店舗に商品を配送しています。スマホアプリ「しまコレ」で注文した商品も、既存の物流網を使って店舗に届けられるのではないかと思います。お客さんの自宅に商品を届けるECでは配送費が発生しますが、店舗に受け取りに来てもらう「しまコレ」では、ECよりも配送費の負担が小さいです。

「しまコレ」の注文を商品到着前、到着後のどちらでもキャンセルできるのも、配送費の負担が小さいからではないかと考えられます。しまむらの物流センターと店舗の間では、常に商品のやり取りが行われているため、お客さんにキャンセルされることは問題ではありません。「しまコレ」で少しでも店舗の売上が増えたり、お客さんに喜んでもらえるのであれば、しまむらにとっては取り組む価値があります。

アパレル業界のEC化率の上昇にしまむらも対応が必要になる

アパレルは小売業の他の業種と比較しても、ECに積極的に取り組む企業が多いです。アパレルの大企業の多くがECを行っていますが、しまむらはZOZOTOWNへの出店が初めてのECでした。これまでしまむらがECに取り組んでこなかった理由は、しまむらの商品は価格が安く、配送費が掛かるECに向いていないためです。

2018年にしまむらがECを開始したのは、アパレル業界でEC化率の上昇が続いていることへの不安があったのではないかと思います。お客さんはECで衣料品を買うことを好んでいて、ECで衣料品を買うことは普通になりつつあります。しまむらも何らかの形でECを行わなければ、お客さんが店舗に来なくなるのではないかという心配があります。

しまむらの商品はECで利益を確保しにくい

しまむらがお客さんに提供している価値は、近くの店舗で、低価格の衣料品が買えるというものです。しまむらは衣料品を販売する小売業の中で、店舗の近さ、価格の安さについてはトップクラスです。「しまパト(しまむら+パトロール)」という言葉が生まれていることも、しまむらの店舗の近さ、価格の安さを証明しています。

しまむらは衣料品を低価格で販売しながらも、販売費及び一般管理費率を低く抑えることで、営業利益を確保しています。2019年2月期の決算資料によると、売上総利益率は31.8%、販売費及び一般管理費率は27.3%、営業利益率は4.7%でした。しまむらが衣料品を低価格で販売できる背景には、商圏が小さく、同じお客さん何度も買い物に来てくれること、ローコストオペレーションに優れていることがあります。

実店舗で衣料品を低価格で販売できても、同じようにECでできるとは限りません。しまむらは客単価、売上総利益率が低いため、コストに脆弱であると言えます。売上総利益が小さければ、それだけコストを吸収する力が小さいです。しまむらがECをやらなかったのも、ECで利益を確保することが難しいと考えていたためだと推測されます。

しまむらはZOZOTOWNの販売手数料が高いことを理由に、退店を決定しました。その後、自社ECを始めるのではなく、スマホアプリを使った店頭受け取りを強化する計画です。しまむらはECモールへの出店だけでなく、自社ECも厳しいと考えているのかもしれません。ECには日本全国に商品を販売できるメリットがありますが、配送費が掛かるので、しまむらのような低客単価、低売上総利益率の小売業は利益の確保が難しいです。

アパレルのEC化率の上昇はしまむらには不安材料

これまでECをやって来なかったしまむらが、2018年7月にZOZOTOWNへ出店したことは大きな変化です。しまむらがECの取り組みを開始した理由は、アパレル業界でEC化率の上昇が続いていることが関係していると考えられます。ECをやって来なかったしまむらも、アパレル業界のEC化率の上昇に不安を感じているのではないでしょうか。

経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、2018年度の国内ECのEC化率は6.22%でした。衣服、服装雑貨等のEC化率は12.96%で、上昇が続いています。衣料品はECで買い物がしにくいイメージがありますが、ECで購入する人が増えています。衣料品をECで買うことに慣れたお客さんは、ECでの買い物を続けるので、時間経過とともに衣料品をECで買う人が増えて行くことになります。

アパレル業界でEC化率の上昇が続く理由は、良い洋服を買いたいというお客さんの意欲が高いからだと考えられます。近所の店舗で良い洋服を見つけられないお客さんは、品揃えが豊富なECで買い物をします。良い洋服を買いたいお客さんは、試着ができないECのデメリットを受け入れ、品揃えが豊富なECを選択します。

しまむらは低価格の商品を小型店で販売していおり、ECの影響を受けにくいです。しかし、ECで洋服を買うお客さんが増えれば、しまむらで洋服を買わなくなる人も出てくる可能性があります。しまむらはECで積極的に売上を増やすというよりは、お客さんの実店舗離れを防ぐという意味で、ECが必要になっています。

しまむらのスマホアプリ・ECの成功シナリオはどのようなものか

店頭受け取り用のスマホアプリ「しまコレ」は、スマホアプリで商品を注文をして、店舗で受取ります。しまむらが「しまコレ」で実現したいことは、ネットとリアルが融合したオムニチャネルです。オムニチャネルには買い物回数を増やす、購入点数を増やすといった効果があり、しまむらの「しまコレ」にも同様の効果を期待できます。

ZOZOTOWNの退店後、しまむらのECサイトはありませんが、将来的にはできるかもしれません。ECのメリットは店舗のない地域にも商品を販売できることで、小売業は新しい売上を獲得できます。しまむらはECでは、低価格の衣料品を販売するのではなく、高価格のプライベートブランド商品を販売したいです。

「しまコレ」で買い物回数・購入点数を増やしたい

ネットで注文をして、店舗で受取る方法は、売上の増加が期待できる優れた施策です。「しまコレ」の場合、お客さんの自宅への配送がないので、会員登録、クレジットカードの入力など、面倒くさい作業もありません。「しまコレ」はお客さんにとって利用しやすいスマホアプリで、売上の増加に貢献しそうです。

「しまコレ」を利用するお客さんは、店舗に行く前に既に買い物をしている状態です。商品を受け取るために店舗に来れば、そこで店舗にある商品を見て、追加で買い物をする可能性もあります。ネットで注文をして、店舗で受取る方法は単に売上が増えるだけでなく、来店機会の創出、客単価の上昇の効果もあり、小売業のメリットは大きいです。

ネットで注文をして、店舗で受け取ってもらう方法が優れている点は、店舗に置けない商品をネット経由で販売できることです。取扱商品が多く、店舗が小型の業種において、売上の増加が期待できます。しまむらは低価格の衣料品を多数販売しているため、店舗に置けない商品も多く、「しまコレ」による売上増加の余地は大きいです。

しまむらは「しまパト(しまむら+パトロール)」をするファンを抱えていて、しまむらのファンは店舗に何度も出掛けることを楽しんでいます。「しまコレ」には、「しまパト(しまむら+パトロール)」が楽しくなるような機能が望まれます。店内でバーコードを読み込んで商品をお気に入りに登録したり、友達と情報を共有する機能があれば、さらに店舗の魅力を高めることができると思います。

ECで店舗のない地域に高価格の商品を販売したい

しまむらはZOZOTOWNを退店したため、ECサイトはない状況です。しまむらがECサイトで利益を確保することは難しいですが、ECには店舗のない地域にも商品を販売できるメリットがあります。将来、しまむらがECを開始する場合、高価格のプライベートブランド商品を販売すれば、利益を確保しやすくなります。

しまむらは低価格の商品を販売して来ましたが、客単価を高めるため、プライベートブランド商品「CLOSSHI(クロッシー)」を強化しています。プライベートブランド商品は価格が高く、購入点数も増えやすいので、客単価が伸びます。高価格のプライベートブランド商品であれば、配送費が発生するECでも利益を確保しやすくなります。

しまむらのECの最良のシナリオは、しまむらの店舗がない地域のお客さんに、高価格のプライベートブランド商品を複数個まとめて販売することです。ECはまとめ買いが起こりやすいため、価格の高い商品が売れれば、注文金額も大きくなります。注文金額が大きくなれば、配送費も吸収しやすくなります。しまむらがECで利益を確保するためには、ECで利益が出やすい、高価格の商品が不可欠ではないかと思います。

しまむらが2015年に発売した「裏地あったかパンツ」はヒット商品になっていて、インターネット上にも口コミが多数あります。価格も3,900円と高く、しまむらの平均品単価859円の4倍以上です。しまむらは「裏地あったかパンツ」のように、人気があり、価格も高い商品をECで販売すれば、充分な利益を確保できるはずです。