なぜ小売業ではドミナント戦略の重要性が高まっているのか

なぜ小売業ではドミナント戦略の重要性が高まっているのか

ドミナント戦略とは、小売チェーン店、飲食チェーン店が特定の地域に店舗数を増やすことで、ビジネスを優位に進める経営戦略のことです。ドミナント戦略には、日本全国のどの地域に店舗を増やすかというマクロ的な意味と、さらに狭い地域で店舗を増やすミクロ的な意味があります。ドミナント戦略には、地域の知名度が上がる、競合の新規参入を防ぐ、人材、物流などの経営資源を効率よく活用できるといったメリットがあります。

ドミナント戦略は以前から価値のあるものでしたが、お客さんの変化によって、その価値がより高まっています。自動車を運転しない人が増え、ネット通販も拡大しているため、お客さんの買い物範囲は狭くなります。また、人口の減少が起こっていて、小売業にとって魅力的な商圏も二極化しています。このようなお客さんの変化に対して、ドミナント戦略は有効な対応策で、小売業はお客さんとの関係性を強化することができます。

日本全国に店舗を出店することは、小売業にとっても重要な目標の一つで、多くの小売業が出店する地域を拡大しています。しかし、小売業を取り巻く状況を考えると、日本全国に店舗を出店する必要はなく、既存のドミナント戦略をさらに推進した方が、業績が安定するのではないかと思います。ドミナント戦略から外れている店舗の競争環境は厳しく、人材、物流の点でも効率が悪化し、収益性が悪化する可能性が高いです。

人口の減少はこれから長く続いていくため、小売業の立場では、店舗で買い物をしてくれるお客さん、店舗で働いてくれる従業員の両方が減ります。小売業が人口の減少にうまく対応するには、既存のドミナント戦略をさらに推進して、経営効率を高めたいです。人口が減少する中で、小売業が売上を増やすためには、客単価を高める必要があり、客単価を高めるという点でも、ドミナント戦略は有効です。

ドミナント戦略には集客力の強化と経営効率を高める効果がある

ドミナント戦略(ドミナント出店)とは、小売チェーン店、飲食チェーン店が特定の地域に、集中的に店舗を出店する経営戦略のことです。英語のdominance(ドミナンス)には、支配、優勢、優越といった意味があり、ドミナント戦略には、特定の地域を支配して、ビジネスを優位に進める狙いがあります。コンビニ、ドラッグストア、ホームセンターはドミナント戦略を採用している企業が多く、特定の地域で優位性を高めています。

ドミナント戦略のメリットは、地域にある店舗の集客力を強化できること、物流、人材などの経営資源を効率よく活用できることです。一方、デメリットは、自社で競合が発生すし、一店舗あたりの売上高が低下することです。ドミナント戦略にはメリットとデメリットがありますが、デメリットに言及される機会は少ないです。ドミナント戦略は小売業の経営戦略として十分なメリットがあり、ポジティブに評価されています。

ドミナント戦略のメリットの一つは、地域での存在感を高め、店舗の集客力を強化できることです。小売業に詳しい人は、上場企業の決算書を見れば、どの小売業が優れているのか分かりますが、多くの人はそのようなことはしません。普段の生活から得られる情報、友人からの情報、インターネットの情報などで、買い物をする店舗を決めます。

お客さんは通学、通勤など、それぞれの地域で活動していて、日々の生活の中で、地域にある店舗の情報を収集します。お客さんが日々の生活の中で、同一小売チェーン店の店舗を何回も見ると、この小売チェーン店は人気に違いないと評価します。小売チェーン店が全国的に人気チェーン店ではなかったとしても、特定の地域でドミナント出店を行えば、その地域の中では人気チェーン店として評価されるようになります。

ドミナント戦略には、地域での存在感を高めることで、競合チェーン店の新規出店を防ぐ意図もあります。特定の地域でドミナント出店をしている小売チェーン店は、地域のお客さんとの関係が長く、強い信頼関係を構築しています。先行する小売チェーン店がドミナント出店している地域に、競合の小売チェーン店が後から新規出店をしても、先行する小売チェーン店からお客さんを奪うことは難しく、店舗数はなかなか増えません。

ホームセンター、ドラッグストアは、特定の地域でドミナント出店をする企業が多いです。ホームセンターでは、コメリは東北、コーナンは関西、ナフコは九州でドミナント出店をしています。ドラッグストアでは、ツルハドラッグは北海道、スギ薬局は中部、コスモス薬品は九州でドミナント出店をしています。特定の地域でドミナント出店に成功している小売業は、業績が安定していて、営業利益率も高いです。

物流効率が高まることは、ドミナント戦略のメリットの一つとして紹介されることが多いです。特定の地域に店舗が増えると、地域内の店舗間の距離は近くなります。小売業ではトラックによる商品の納入が頻繁に発生しますが、特定の地域に店舗が固まっていれば、商品の納入に掛かる物流のコストを抑制できます。また、店舗間の距離が近ければ、店舗間の商品の移動もしやすくなり、在庫効率を高める効果もあります。

ドミナント戦略で物流効率が高まる効果は、コンビニを見ると分かります。コンビニ各社は意欲的にドミナント出店を行なっていて、コンビニの店舗間の距離は近いです。コンビニはいつ買い物に行っても十分な数の商品が棚に詰まっていますが、これは一日に複数回商品の納入を行なっているためです。コンビニが一日に複数回商品の納入が行えるのは、ドミナント戦略で店舗間の距離が近く、物流効率に優れているためです。

ドミナント戦略で効率が高まるのは物流だけではなく、人材にも当てはまります。小売業は新規出店で店舗数を増やすことで、業績を拡大します。小売業の正社員は転勤が多いですが、ドミナント戦略で店舗間の距離が近ければ、転勤による負担が小さくなります。店舗間の距離が近ければ、アルバイト・パートに近隣の店舗で働いてもらうこともできるため、人材の流動性が高まり、一時的な人手不足にも対応できます。

少子化で若年層の人口が減少したため、多くの産業で人手不足が起こっています。小売業は店舗の運営に多くの正社員、非正規雇用の従業員を必要としますが、小売業は就職先として人気がなく、人材の採用では不利な状況にあります。これまで、ドミナント戦略のメリットとして、集客力の強化、物流効率のアップが紹介されて来ましたが、人手不足が起こったことで、人材面での効率アップの価値も高まっています。

ドミナント戦略には、日本全国のどの地域に出店するかというマクロ的な意味と、地域の商圏で店舗数を増やすミクロ的な意味があります。ドミナント戦略はコンビニ、ドラッグストアで積極的に推進されていることもあり、地域に小型店を増やすイメージがあります。ただ、日本全国のどの地域に出店するかというマクロ的な意味では、店舗面積、店舗数に関係なく、ドミナント戦略はすべての小売業に関係があるものです。

小売業を取り巻く厳しい状況を考えると、小売業はドミナント戦略を積極的に推進するべきではないかと思います。小売業の多くは、日本全国の特定の地域にドミナント出店をしていて、特定の地域で強い影響力を持っています。今後の新規出店は、自社の影響力が小さい地域にするよりも、既に影響力を持っている地域にした方がリスクが小さいです。ドミナント戦略で地域のお客さんと強い関係を築き、物流、人材などの経営資源を効率よく活用すれば、業績を伸ばすチャンスは十分にあるはずです。

お客さんの買い物範囲の縮小でドミナント戦略の重要性が高まる

ドミナント戦略には集客力の強化、経営効率が高まる効果があり、小売業にとって価値があるものです。今後、ドミナント戦略が重要になると考えられる理由は、お客さんが買い物をする範囲が縮小するためです。高齢者は体力的に遠くに買い物に出掛けることが難しく、自動車の運転を控える人が増え、買い物をする範囲が狭くなります。若い世代も自動車を持たない人、ネット通販を利用する人が多く、買い物をする範囲が狭いです。

お客さんの買い物をする範囲が狭くなれば、お客さんは地域にある店舗を長期に渡って使い続けることになるため、お客さんと店舗との関係性はより強くなります。小売業はドミナント戦略で地域一番店の地位を確立することができれば、その地位は長く続く可能性が高いです。ドミナント戦略で店舗数を増やし、いかにしてお客さんの身近な店舗になれるかというのが、これからの小売業の成長のカギになりそうです。

お客さんの買い物をする範囲が狭くなることは、小売業に影響を与える重要な変化です。高齢者は若い頃から自動車を使って買い物をして来ましたが、加齢とともに自動車の運転が困難になって行きます。最近は高齢者の事故のニュースを見る機会が増え、高齢ドライバーへのプレッシャーも強くなっています。高齢者が自動車の運転を止める、あるいは運転する距離を短くすれば、買い物をする範囲も狭くなります。

若い世代は経済的な理由で自動車を持たない人が増えているため、高齢者と同じように買い物をする範囲が狭くなります。若い世代は単身者が多いため、生活に必要な商品が少なく、ネット通販でも買い物ができるので、遠くに買い物に出掛けるモチベーションが低いです。家電、洋服のような商品は、実際に自分で見て、体験してから買いたいと考える人が多いとされていますが、ネット通販で買い物をする人も増えています。

お客さんの買い物をする範囲が狭くなる事に対して、ドミナント戦略を推進することは効果的な対応です。お客さんは遠くにある店舗に買い物に行かなくなるので、小売業の方がお客さんに近付く必要があります。お客さんが買い物をする範囲に多くの店舗があれば、人気チェーン店だと評価され、長期に渡って買い物をしてもらえます。

小売業が販売する商品には購入頻度があり、購入頻度が高い商品は店舗面積は小さく、店舗数は多くなり、購入頻度が低い商品は店舗面積が大きく、店舗数は少なくなります。食品、日用品、雑貨などを販売する小売業は、もともとドミナント戦略を進めていて、お客さんの買い物範囲の縮小にもスムーズに対応できます。一方、自動車での来店を想定している大型店舗は、今後、遠くからの集客が難しくなって行きます。

お客さんの買い物をする範囲が狭くなることに対して、ドラッグストアはドミナント戦略で店舗数を増やし、業績を拡大することに成功しています。経済産業省が調査している商業動態統計によると、ドラッグストアの店舗数は2014年の13,069店舗から、2018年には15,660店舗まで増加していて、増加率は19.8%です。

ドラッグストアは食品、日用品、医薬品の価格が安く、一つの店舗でまとめて買い物できることがお客さんに評価され、人気になっています。復数のカテゴリがまとめて、安く買えることに加え、店舗が近いこともドラッグストアが人気になる理由です。ドラッグストアはドミナント戦略で店舗数を増やしているため、お客さんにとって身近な存在になっていて、徒歩、自転車で買い物に来ているお客さんも多いです。

ドラッグストアはドミナント出店を推進することで、店舗の集客力の強化に成功しています。業種の垣根を超えた競争、少子化、高齢化社会、人口減少、所得の二極化、ネット通販の拡大などの理由により、小売業では新規出店が難しくなりつつあります。地域に小売業の店舗が増えない中、ドラッグストアの店舗数は順調に増加していて、地域で最も勢いのある小売業として、お客さんのイメージも良いです。

ドミナント戦略のメリットの一つである物流効率のアップについても、ドラッグストアは十分な効果を得ています。ドラッグストアには食品、日用品、雑貨など、在庫回転率の高い商品が多くありますが、商品棚の商品が不足している状態を目にすることはほとんどありません。ドミナント出店で店舗間の距離が近いため、コンビニと同じように物流の効率がよく、適切に商品の納入が行われているのではないかと推測できます。

お客さんの買い物をする範囲が狭くなることは、変えられないものであるため、小売業は変化に対応しなければなりません。徒歩、自転車で買い物に行ける小型店を作ることは対応策の一つで、ドミナント戦略の重要性が高まっていると言えます。ドラッグストアが人気になっていますが、人気になる背景には、ドラッグストア側の要因だけではなく、遠くに買い物に行かない、あるいは、行けない、お客さん側の要因もあります。

食品、日用品、雑貨のような購入頻度が高い商品を販売する業種では、ドミナント戦略を推進する企業が増えると考えられます。一方、家具、家電、洋服のような購入頻度が低い商品を販売する業種においても、お客さんの買い物範囲の縮小に対応しなければなりません。ただ、購入頻度が低い商品を販売する店舗をドミナント出店することは難しく、新しい小型店の業態を開発する、ネット通販を強化するなどが対応策になりそうです。

人口の減少と人口の流出・流入でドミナント戦略の重要性が高まる

人口の減少、人口の大都市への流入、人口の都市部への流入は、今後、長期に渡って継続するものだと予想されています。人口の減少については、出産適齢期の女性の減少、女性の社会進出、晩婚化・非婚化などが原因で、短期間で人口が増加するトレンドへと転換することは難しそうです。また、地方から大都市への人口の流入、県内の都市部への人口の流入も起きていて、人口が増える地域と減る地域が二極化しつつあります。

人口の減少、人口の大都市への流入、人口の都市部への流入が起こることで、ドミナント戦略の重要性が高まります。東京、神奈川、千葉、愛知、福岡など、地域の主要都市への人口の流入が起こり、主要都市の中でも、人口の多い都市部に人が集まります。人口の流入で主要都市の都市部の価値が高まり、主要都市の都市部でドミナント出店で店舗を増やせるかどうかが、小売業が業績を拡大するカギになります。

人口の減少は多くの社会問題を引き起こすため、人口の減少に関連するニュースを目にすることが多くなっています。総務省が2019年5月4日に発表した「我が国のこどもの数」という資料によると、2019年4月1日時点で、15歳未満の子供の数は1,533万人、総人口に占める割合は12.1%とのことです。子供の数は38年連続で減少していて、ピークだった1954年の2,989万人と比べると、ほぼ半数まで減少しています。

小売業では既存店の客数が減少する企業が増えていて、業種の垣根を超えた競争の激化、店舗数の増加、ネット通販の拡大などが要因です。人口の減少はこれまで小売業の競争環境としてそれほど意識されて来ませんでしたが、既存店の客数の減少に少なからず影響を与えていると考えられます。業種の垣根を超えた競争の激化、店舗数の増加、ネット通販の拡大、人口の減少が同時に起これば、既存店の客数が減少するのも順当です。

都道府県別の人口増減のデータを見ると、地方から大都市へと人口の流入が起きていることが分かります。総務省統計局が2019年4月12日に発表した人口推計によると、2018年10月1日の時点で前年よりも人口が増えた都道府県は、東京都(0.72%増)、沖縄県(0.31%増)、埼玉県(0.28%増)、神奈川県(0.20%増)、愛知県(0.16%増)、千葉県(0.14%増)、福岡県(0.01%増)の7つしかありません。

全国の都道府県の8~9割が前年から人口が減少していて、減少幅が1.0%を超えている都道府県は、秋田県(1.47%減)、青森県(1.22%減)、岩手県(1.12%減)、和歌山県(1.08%減)、高知県(1.06%減)、山形県(1.04%減)となっています。人口の減少幅が大きな都道府県は地方が多く、近隣の大都市へ人口が流出していると考えられます。大阪府(0.12%減)でも人口が減少していて、大都市であっても人口の減少が起きています。

小売業の一店舗あたりの売上は、商圏人口と競合店舗数で決まります。商圏人口が多くても、競合店舗数が多ければ、一店舗あたりの売上は少なくなります。逆に、商圏人口が少なくても、競合店舗数が少なければ、一店舗あたりの売上は多くなります。商圏人口が減少することは、必ずしも悪いことではないのですが、商圏人口が増えている地域と減っている地域を比べると、増えている地域の方がビジネス的には価値があります。

当道府県別の人口の増減率を見ると、地方は特に人口の減少幅が大きく、短期間で人口が増加に転換することは考えにくいです。小売業の出店戦略は、もともとの人口が多く、これからの人口の流入が見込める、都道府県を重視するようになります。人口が増加する地域、人口の減少スピードが遅い地域において、ドミナント戦略で支配力を強めることが、多くの小売業に共通する出店戦略になると思います。

近年の小売業の出店戦略を見ると、家電量販、ホームセンター、専門店など、従来は単独で出店していた企業が、商業施設内に出店するケースが増えています。また、スーパーマーケットの周辺にいくつかの店舗が出店して、商業集積を形成するパターンも多いです。復数の店舗がまとまれば、お客さんは少ない労力で多くの商品を買うことができ、小売業は集客力が高まるので、お客さんと小売業の両方にメリットがあります。

人口が増加する地域、人口の減少スピードが遅い地域の商業施設、商業集積に店舗数を増やすことも、小売業のドミナント戦略の目標になります。若い世代は自動車を持たない人が多いため、交通機関のアクセスが良い、商業施設、商業集積での買い物を好みます。地域の商業施設、商業集積に店舗があれば、それだけお客さんの目に入る回数が増え、認知度が高まり、良いイメージを持ってもらうことができます。

人口の減少、人口の大都市への流入、人口の都市部への流入により、小売業にとって魅力的な地域とそうでない地域の差が生まれます。魅力的な地域に多くの小売業の店舗が出店しようとするため、出店前、出店後の競争は激しくなります。人と店舗が集まると、地域の魅力が高まり、さらに人と店舗を集めるという好循環になります。

小売業が人口の減少スピードが早い地域に新規出店をするかどうかというのも、注目ポイントです。人口の減少スピードが早いことはネガティブですが、多くの企業が新規出店を控えれば、ドミナント戦略で売上を伸ばせるチャンスもあります。小売業の一店舗あたりの売上は、商圏人口と競合店舗数で決まるため、人口の減少スピードが早い地域であっても、収益性の高い店舗が存在する可能性は十分にあります。

小売業は日本全国に出店せずにドミナント戦略をさらに推進したい

全国チェーン、ナショナルチェーンという言葉があるように、日本全国に店舗を出店することは、小売業の一つの目標だと考えられて来ました。日本全国に店舗があれば、それだけ多くのお客さんに商品を販売できるので、社会に貢献することになり、小売業の売上も増えます。店舗数を増やすことは、小売業が業績を拡大するために不可欠なものであるため、小売業が日本全国に店舗を増やそうとするのは当然のことです。

日本全国に店舗を出店することは、小売業の目標の一つですが、小売業を取り巻く状況を考えると、ドミナント戦略をさらに推進した方がよいのではないかと思います。自社の店舗が無い地域に新規出店する場合、先行する競合店舗からお客さんを奪うのに時間が掛かり、物流、人材などの効率も悪化します。日本全国に店舗を増やすよりも、既存のドミナント戦略を強化した方が、リスクは小さく、経営効率も高まります。

小売業の店舗の分布状況を見ると、本社周辺でドミナント戦略を進めている企業、日本全国に出店している企業があり、企業によって違いがあります。店舗は企業が創業した場所から増えて行くため、店舗数が少ないうちは、本社周辺の都道府県でドミナント出店が行われます。その後、日本全国のどの地域に店舗を増やすかは企業、業種によって異なり、ドラッグストア、ホームセンターはドミナント戦略を採用する企業が多いです。

小売業で最も勢いのある企業の一つであるニトリは、北海道で創業したことで知られていて、日本全国に店舗を出店しています。ニトリホールディングスの2019年2月期の決算説明会資料によると、2019年2月期末の店舗数は573店舗で、そのうち北海道の店舗数は22店舗(3.8%)です。その他の地域の店舗数は、関東は161店舗、近畿は94店舗、中部・東海は57店舗、九州 沖縄は57店舗、中国・四国は47店舗、北陸甲信越は34店舗、東北は33店舗となっていて、関東と近畿に全店舗数の45%があります。

ニトリホールディングスの2019年2月期末の地域別(海外を除く)の店舗の増加数は、近畿は11店舗、関東は9店舗、九州・沖縄は7店舗、中国・四国は4店舗、北陸甲信越は3店舗、東北は2店舗、中部・東海は1店舗、北海道は1店舗となっています。関東、近畿、九州・沖縄は既存店の数が多く、新規出店も既存店が多い地域で行われています。

ニトリホールディングスの出店戦略は、ドミナント戦略をさらに強化していると言えます。既存店の店舗数が少ない地域に店舗を増やすよりも、既存店の店舗数が多い地域に店舗数を増やした方が、小売業として、より業績を伸ばせるという判断です。今後、ニトリホールディングスの出店戦略と同じように、既存店の店舗数が多い地域に、ドミナント出店をする小売業が増えるのではないかと考えられます。

ドミナント戦略のメリットは、物流、人材などの経営資源を効率よく活用できることです。逆に考えると、ドミナント出店している地域から離れている店舗は、物流、人材の効率が悪化することになります。物流は物流企業のドライバーが行う業務なので、小売業からすると他社ではありますが、こちらも人材の中に含めることができます。

ドミナント戦略のメリットの一つとして、物流の効率が高まることは昔から注目されて来ました。現在、人手不足で物流企業の人材が不足し、運賃の値上げが行われています。小売業のドミナント戦略から外れている店舗は、物流企業の運賃の値上げの影響を大きく受けることになります。コンビニはドミナント戦略で物流の効率を高めていますが、それでも物流コストの上昇が収益性を圧迫しているとのことです。

物流の効率を高めるだけでなく、人材を採用する、人材を有効に活用するという点でも、小売業はドミナント戦略を推進したいです。小売業の正社員は新規出店とともに転勤することが多く、転勤の多さは、就職先として敬遠される理由の一つです。企業は若い世代の人材を獲得するために、労働環境の改善に取り組んでいて、いかに転勤の負担を減らすかというのは、小売業だけではなく、すべての企業にとっての課題です。

従業員の転勤の負担を減らす施策の一つとして、ドミナント戦略には大きな効果があります。ドミナント戦略で店舗が密集していれば、転勤先の距離は近く、候補は多いため、従業員の転勤の負担は小さくなります。また、正社員だけではなく、アルバイト・パートの採用も難しくなっていて、アルバイト・パートの有効活用も小売業の課題です。自宅から通勤できる範囲に店舗がたくさんあれば、店舗の状況に応じて、アルバイト・パートに復数の店舗で働いてもらうことも可能になります。

小売業を取り巻く状況を考えると、ドミナント戦略にはメリットがあるというよりは、ドミナント戦略を進めなければ、デメリットが多いと言えます。既存店のお客さんは競合店舗、ネット通販に奪われ、さらに人口の減少によってお客さんだけでなく、従業員も減り、物流コストは上昇しています。このような厳しい状況では、既存店の多い地域にドミナント出店で店舗数を増やし、効率を高めることが好ましいです。

ドミナント戦略のデメリットとしては、店舗同士の距離が近くなることで、お客さんの奪い合いが起こり、一店舗あたりの売上が減少するというものがあります。一店舗あたりの売上が減少するリスクを考慮しても、ドミナント戦略はメリットの方が大きいのではないかと思います。客数の減少は避けられないため、売上を増やすためには客単価を増やす必要があり、小売業は今まで以上にお客さんとの関係性を強化しなければなりません。