小売業が長期的に店舗の集客力を高めるにはどのような方法があるか

小売業が長期的に店舗の集客力を高めるにはどのような方法があるか

業種の垣根を超えた競争、少子化、高齢化社会、所得の二極化、ネット通販の拡大など、小売業を取り巻く環境は厳しいです。オーバーストア、人口減少がセットになっており、新規出店の停滞、既存店の客数減少は普通のことです。今後も人口減少が止まらないことを考えると、小売業が規模の拡大で成長するのは困難です。小売業は地域の競合店舗とお客さんの奪い合いをしており、店舗の集客力を高めなければならなくなっています。小売業ではセール、チラシで店舗の集客力を高めていますが、セール、チラシのような短期的なものではなく、長期的に店舗の価値を高め、集客力を向上させたいです。

小売業が長期的に店舗の集客力を高める方法には、品揃えを増やすこと、サービスを提供することの二つが考えられます。品揃えを増やすことについては、ドラッグストアは食品、一部の家電量販店は電化製品以外の商品を販売することで、集客力アップに成功しています。サービスの提供については、先日、ファミリーマートがフィットネスジムとコインランドリーがセットになった店舗をオープンしました。コンビニ単体では食品を買う店舗であり、商圏も狭いのですが、フィットネスジムとコインランドリーのサービスが増えることにより、店舗の価値が高まり、遠方からも集客できるようになります。

小売業はセール、チラシ以外の方法で長期的に集客力を高めたい

集客力とは商品・サービスを販売する企業が持つ、お客さんを集める力、呼び寄せる力のことです。企業は売上を伸ばすため、集客力を高める様々な取り組みを行っています。企業がお客さんに商品を販売するチャンネルには、店舗、ネットショップ、電話、カタログ、訪問などがあります。販売する商品、チャンネルの組み合わせは多様で、集客力をアップさせる方法も様々です。企業にとってなぜ集客力が重要なのかと言えば、優れた商品・サービスを持っていても、集客力がなければ売上に繋がらないためです。企業は優れた商品・サービスを開発するとともに、集客力を高める必要があります。

小売業における、集客力のアップとは、商圏内に住むお客さんの店舗での買い物回数を増やこと、店舗の商圏を拡大させることです。小売業の店舗は売り場面積、品揃えによって、商圏・商圏人口が決まり、店舗の売上も決まります。小売業の商圏内には同業種の店舗が複数あり、近所に同業種の店舗があれば、遠くの店舗まで買い物に行くことは少なくなります。小売業の集客力アップには、来店回数の増加、商圏の拡大の二つがありますが、来店回数の増加に取り組む企業が多いです。来店回数の増加、商圏の拡大を比較すると、来店回数の増加の方が短期的な売上アップに繋がりやすいです。

小売業の集客力アップの方法で一般的なものは、セール、チラシのセットです。商品の価値はいつもと変わらない中で、商品の価格を下げると、商品の価値が高まり、店舗の集客力アップの効果があります。チラシを配布してセールの情報をお客さんに伝えれば、値下げにより商品の価値が高まっているため、お客さんはセールの商品を目当てに店舗に買い物に来ます。小売業がセール、チラシの配布を行えば、セールの期間中は店舗の集客力が高まります。しかし、セールによる店舗の集客力アップはセール期間限定のもので、商品の価格がいつも通りに戻れば、店舗の集客力もいつも通りに戻ります。

セール、チラシのセットは、小売業の集客方法として長く行われていますが、これからは、店舗の価値を高め、集客力を高める方法が必要ではないかと思います。セールは商品の価格を下げることにより、商品の価値を高め、店舗の集客力を高める方法です。セール、チラシは店舗の集客力を高めますが、一方で、売上総利益率が下がる、競合店舗も真似しやすいといったデメリットもあります。小売業は売上総利益率が下がらず、競合も真似しにくい方法で、店舗の集客力を高めたいところです。店舗の価値を高めることは難しく、時間も掛かりますが、長期的な集客力アップが期待できます。

小売業は店舗の集客力を高めなければならないと考える理由は、既存店の客数が減少する企業が増えて来ているためです。小売業では昔から店舗が多すぎる、オーバーストアだと言われて続けて来ましたが、各業種のトップ企業でも既存店の客数が減り始めています。近年はオーバーストアに加え、ネット通販の拡大、人口減少もセットになり、小売業は激しいお客さんの奪い合いをしている状況です。地域の店舗が増え、人口が減れば、1店舗あたりの客数は減少することになります、新規出店、ネット通販の拡大、人口減少が今後も続くことを考えると、既存店の客数減少も続いて行きそうです。

オーバーストアと人口減少の影響を最も強く感じるのは、店舗数が多く、商圏が狭いコンビニです。コンビニは飽和状態だと長らく言われ続けていますが、データを見ても飽和状態だと言えます。日本フランチャイズチェーン協会のデータによると、コンビニは既存店の客数が前年割れする月が増えていて、2016年3月から2018年7月まで、29ヶ月連続で前年割れが続いたこともありました。これはコンビニの店舗の集客力が弱い訳ではなく、地域の店舗が多すぎるためです。地域にコンビニの店舗が増えるほど、各店舗の商圏は狭くなり、商圏人口が減り、店舗へ買い物に来るお客さんの数も減ります。

品揃えを増やすことは来店回数の増加・商圏の拡大の効果がある

小売業が店舗の集客力をアップする方法として、品揃えを増やすことは効果的です。店舗の品揃えを増やせば、お客さんの買い物回数が増え、遠方から買い物にお客さんも増えるので、客数の増加が期待できます。小売業では総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ドラッグストアなど、昔からある業種によって程度販売するカテゴリが決まっていました。しかし、最近は業種を超えた競争が激しくなっていて、小売業は品揃えの拡大をしやすくなっています。集客力アップのために品揃えを増やす小売業が増えているため、品揃えを増やさない小売業は、相対的に集客力がダウンすることになります。

小売業の集客方法として昔から行われている、セールとチラシを使った方法は、商品の価格を下げることによって、商品の価値を高め、店舗の集客力を高めるものです。これに対して、店舗の品揃えを増やすことは、商品ではなく店舗の価値を高めることで、集客力を高めるものです。一つの店舗で多くのカテゴリの商品が買える、他店にはない商品が買えるといった特徴は、競合店との差別化になり、店舗の集客力アップの効果があります。店舗の品揃えを増やすことは、セール、チラシよりも時間が掛かる方法ですが、売上総利益率が下がることはなく、集客力アップの効果は持続します。

ドラッグストアは主力商品であった医薬品、日用品に加え、食品の品揃えを増やすことで、店舗の集客力を高めています。ドラッグストアは昔からある業種ですが、多くの人にとって、それほど頻繁に買い物に行くことがなかった店舗ではなかったかと思います。医薬品を買う機会は少なく、日用品は総合スーパー、ドラッグストアでも買えるため、ドラッグストアに買い物に行く動機は弱かったです。しかし、ドラッグストアが食品の販売を強化すると、一気に人気の店舗になりました。ドラッグストアは食品と日用品がまとめてかる便利な店舗になり、食品が店舗の集客力アップに貢献しています。

小売業は様々な商品を販売していますが、商品によってお客さんが買い物をする頻度が異なります。一般的に、食品、日用品は購買頻度が高く、それ以外の商品については、価格が高いほど購買頻度が低くなります。購買頻度が低い商品の構成比が大きい店舗は、購買頻度が高い商品の品揃えを増やすことで、店舗の集客力を高めることができます。ドラッグストアは購買頻度が低い医薬品を販売していましたが、購買頻度が高い食品を販売することで、客数を増やすことに成功しています。多くの小売業が店舗の集客力アップのため、食品に注目しており、これから食品を販売する店舗が増えると考えられます。

家電量販店もドラッグストアと同様に、品揃えを増やすことで、店舗の集客力を高めています。ビックカメラ、ヨドバシカメラは昔から電化製品以外の商品を販売していましたが、近年はさらにカテゴリの拡大に注力しています。ビックカメラの電化製品以外のカテゴリには、ゲーム、時計、スポーツ用品、玩具、メガネ・コンタクト、酒類・飲食物、医薬品・日用雑貨などがあります。電化製品は購買頻度が低い商品であるため、電化製品だけを販売していると、お客さんに買い物に来てもらえる回数は少ないです。電化製品以外の商品があれば、電化製品を買わない時でも、お客さんに買い物に来てもらえます。

電化製品の買い物頻度が低いことは昔から変わりませんが、お客さんの奪い合いが厳しくなって来ると、電化製品だけを販売することに限界を感じるようになります。電化製品を必要としていないお客さんは、家電量販店に来ることはなく、ひょっとしたらあと数年間はやって来ないかもしれません。家電量販店を含め、客数の減少を感じている小売業は、何でもいいから購入頻度の高い商品を増やして、店舗の集客力を高めたいと考えるのではないでしょうか。小売業では業種の垣根がなくなって来ていますが、従来のカテゴリに留まっていると、客数が減少するだけで、業績を伸ばせなくなります。

店舗は商品だけではなくサービスも提供することで集客力がアップ

小売業はお客さんに商品を販売することを目的としているため、集客力アップと言えば、商品に関することが中心です。競合の店舗よりも商品を安く販売する、競合の店舗にはない商品を販売するといった差別化は、店舗の集客力を高めます。商品を強化することは競合との差別化に有効ですが、商品を販売することから離れて、商品以外のサービスで差別化することも重要ではないかと思います。店舗に来る目的が買い物以外にもあれば、お客さんの来店回数を増やすことができます。小売業の立場としては、買い物だけではなく、どのような目的であっても、お客さんが店舗に来てくれればありがたいです。

商品を強化する以外の方法で店舗の集客力を高めるべきだと考える理由は、商品での差別化が難しくなってきているからです。商品で差別化できている小売業は、ユニクロ、ジーユー、ニトリ、無印良品、成城石井、セリア、ABCマートなど少数ではないでしょうか。優れた商品を持つ小売業であっても、競合企業の商品の質は向上していて、ネット通販の拡大もあり、いつまで優位性を維持できるかは分かりません。小売業の店舗は商品を売るだけに留まらず、サービスも持ちたいところです。店舗が持つサービスは販売する商品に関連するものでもいいですし、まったく関連がないものでもかまいません。

ファミリーマートは2019年2月28日、東京都大田区にフィットネスジム「Fit&GO」とコインランドリー「Famima Laundry」を併設した「ファミリーマート仲六郷第一京浜店」をオープンしています。コンビニにフィットネスジム、コインランドリーを併設することで、コンビニの集客力をアップさせる狙いです。フィットネスジム、コインランドリーを目的に来店して、コンビニでついで買いも期待できます。ファミリーマートによると、フィットネスジムは1日3万円ほどコンビニの売上を伸ばす効果があり、コインランドリーは1日40~50人の利用があり、そのうち30人がコンビニを利用するとのことです。

ファミリーマートのフィットネスジム、コインランドリーを併設したコンビニは、セブンイレブン、ファミリーマートにはないものです。コンビニは狭い商圏でビジネスを行なっており、1日の来店客数は800~1,050人程度で、減少傾向にあります。ファミリーマートはフィットネスジム、コインランドリーを併設することによって、コンビニの来店動機を増やし、商圏を拡大していると言えます。ファミリーマートのフィットネスジム、コインランドリーを利用するために、遠方からお客さんがやって来ることが期待でき、フィットネスジム、コインランドリーはコンビニの集客力を高めています。

ファミリーマートのコンビニとフィットネスジム、コインランドリーを併設した店舗は、小売業が商品を強化する以外の方法で店舗の集客力を高める事例として参考になります。コンビニは狭い地域に複数のチェーンの店舗が出店しており、コンビニの主力商品はプライベートブランドの食品です。コンビニチェーンは食品の質で競争していますが、あるチェーン店の食品が優れていたとしても、コンビニの商圏は限定的であり、遠方からお客さんが買い物にやって来るわけではありません。商圏を拡大するという意味では、商品を強化するよりも、店舗に新しいサービスを持たせることの方が効果があります。

ショッピングモールのような大型店は、買い物だけではなく、レストラン、サービスなど、買い物以外の来店目的を多数持っています。しかし、大型店が多くの来店目的を持っていることは当たり前で、店舗が遠くにあり、買い物が大変という弱点もあります。すぐに行ける近所の店舗に新しいサービスが増えれば、お客さんは利用しやすいです。フィットネスジムは駅前、商業施設など、遠くにあることが多いですが、ファミリーマートは近所のコンビニに併設しました。近所でフィットネスジムに通えることは、これまでにはなかったもので、新しい来店動機を作り出し、店舗の集客力を高めています。

集客力のある店舗は商品と買い物体験のセットで満足感を提供

業種の垣根を超えた競争、少子化、高齢化社会、所得の二極化、ネット通販の拡大など、小売業を取り巻く環境は厳しく、新規出店の停滞、既存店の客数減少も珍しいことではなくなりました。そうした中、ドラッグストアは業界全体が好調で、売上、店舗数ともに急増しています。経済産業省が発表している商業動態統計によると、2014年から2018年までの間に、ドラッグストアの売上は29.9%、店舗数は21.1%増加しています。ドラッグストア市場が急拡大しているため、個別のドラッグストアがお客さんに受け入れられているのではなく、ドラッグストア業界全体に集客力があると言えます。

ドラッグストアは昔からある業種ですが、マツモトキヨシを除けば、チェーン店の名前もあまり知られていませんでした。ドラッグストアは医薬品を購入する店舗なので、医薬品が必要にならなければ、買い物に行く機会も多くはありません。現在、ドラッグストアが人気の店舗になっている理由は、食品の販売を強化しているためです。ドラッグストアは医薬品の売上総利益率が高く、医薬品で稼いだ粗利益を使って、食品の安売りをしています。ドラッグストアは食品を買う店舗ではありませんでしたが、食品を販売することで新しい来店目的を生み出し、店舗の集客力を高めることに成功しています。

ドラッグストアで買い物をする人が増えたのは、食品が安いことだけではなく、食品と日用品を近所の店舗でまとめて買う買い物方法が、多くの人のライフスタイルに合っているからではないかと思います。若い単身者、仕事が忙しいワーキングマザー、買い物エリアが狭くなった高齢者など、ドラッグストアで買い物をしている人はイメージしやすいです。ドラッグストアは生鮮食品がないことが弱みだとされていますが、生鮮食品を買わない人にとっては問題ではありません。ドラッグストアでの買い物体験には、商品の価格に感じるお得感だけではなく、近所で買い物を手短に済ませたという満足感もあります。

ドラッグストアはお客さんのライフスタイルに合った商品・買い物体験で成功していますが、逆のパターンは百貨店、総合スーパーです。百貨店、総合スーパーは商品・買い物体験がお客さんのライフスタイルに合わなくなったことで、売上が減少しています。遠くに買い物に行かない、節約志向、恋愛・結婚をしない、子供を持たない、家族のイベントをしない、贈り物をしないなどのライフスタイルの変化は、百貨店、総合スーパーの商品・買い物体験に合いません。百貨店、総合スーパーの苦戦を見ても、小売業は商品だけでなく、買い物体験とセットでお客さんに評価されていることが分かります。

集客力のある店舗とは、価値のある商品を販売しているだけではなく、商品と買い物体験をセットにして、お客さんに満足感を与えられる店舗ではないかと思います。昔の総合スーパーは家族向けに買い物体験を設計していて、休日に家族で買い物に来て、衣食住の商品を買って、食事をして、おもちゃを見て、ゲームセンターで遊ぶといったものでした。多くの小売業が商品にフォーカスしていますが、ドラッグストアは優れた買い物体験を提供しています。ドラッグストアは価格だけでお客さんを満足させているのではなく、店舗が近いこと、日用品と食品がセットで買えることで、満足感を高めています。

ファミリーマートのコンビニとコインランドリーがセットになった店舗は、お客さんに新しい満足感を提供しています。コインランドリーでまとめて洗濯をしたり、布団を洗濯した後、コンビニで食べ物を買って帰ることに満足感を感じるお客さんは多いのではないでしょうか。コンビニは近所でアクセスが良く、最新のコインランドリーには面白さがあり、コンビニで食品の買い物も済ませられます。高齢者の増加、自動車を運転しない人の増加により、お客さんの買い物エリアは狭くなっています。商圏が狭く、お客さんの近所にある店舗は、新しいサービスの提供で集客力を高められます。