ホームセンターはプロ(業者)向けの販売は好調だが一般向けに課題がある

ホームセンターはプロ(業者)向けの販売は好調だが一般向けに課題がある

業種の垣根を超えた競争、少子化、高齢化社会、所得の二極化、ネット通販の拡大などにより、小売業は全体的に停滞感があります。小売業の中では、ホームセンターの業績は堅調に推移していて、営業利益率も高いです。ホームセンターの業績が安定している理由は、プロ(業者)向けの販売が好調で、売上総利益率が高いためです。しかし、一般向けでは、日用品を販売するドラッグストア、家具・インテリアを販売するニトリとの競合が激しく、売上は減少傾向にあります。プロ(業者)向けの好調を維持したまま、一般向けをどのように立て直して行くかというのが、ホームセンターが業績を伸ばすカギになります。

小売業では店舗のデジタル化が進められていますが、中型店・大型店が多いホームセンターでは、生産性・収益性の大きな改善効果が期待できます。ホームセンターは店舗が広く、品揃えが多いため、お客さんは商品を見つけにくいです。店員はお客さんを売り場まで案内する業務に大量の時間を費やしており、この部分のコストを削減したいところです。お客さんが自分のスマホ、店内に設置されたタブレットで商品を検索できれば、店員は案内をしなくてよくなります。ホームセンターは店舗が大きいからこそ、効率が悪い業務が多数潜んでおり、店舗のデジタル化によって改善できる余地が大きいです。

ホームセンター業界は注目度は低いものの順調に業績を拡大

ホームセンターは小売業の中でも歴史が長く、注目度は低いものの、市場規模は大きいです。経済産業省が発表している商業動態統計の中に、ホームセンターの売上(商品販売額)、店舗数のデータがあります。ホームセンターの2018年の売上は3,289,263百万円、店舗数は4,354店舗です。2014年と2018年を比較して増減率を計算すると、売上は1.7%減少、店舗数は5.6%増加しています。店舗数が増え、売上が減っているため、1店舗あたりの売上は減少しています。売上、1店舗あたりの売上の減少はネガティブですが、小売業を取り巻く環境を考えると、ホームセンター業界は堅調だと言えます。

ホームセンターの売上が安定している理由には、各チェーン店が地域でドミナント出店をしていること、プロ(業者)向けの商品が多いこと、中高年の固定客が多いことなどが考えられます。ホームセンターでプロ(業者)は資材、工具を買うこと、中高年者は生活用品を買うことが習慣化していて、同じお客さんが同じ店舗で長く買い物をしています。他の業種と比較すると、地域ごとの競争もそれほど激しくはなく、各チェーン店が地域のドミナントで安定した店舗運営を行なっています。総合スーパーとホームセンターは近接していることが多いですが、ホームセンターは総合スーパーよりもまだ余裕があります。

ホームセンターの2018年度の売上高ランキングは、DCMホールディングス(443,578百万円)、コメリ(341,956百万円)、コーナン商事(316,081百万円)、ナフコ(225,511百万円)となっています。各チェーン店の2013年度と2018年度の売上高の増減率を計算すると、DCMホールディングスは2.2%増加、コメリは7.1%増加、コーナン商事は16.3%増加、ナフコは0.6%増加です。各企業の売上高の増加率にはバラツキがあるものの、すべての企業の売上高が増加しています。経済産業省のデータではホームセンターの売上が減少していますが、大手企業の業績は堅調に推移しています。

ホームセンター各社の2018年度の営業利益率を計算すると、DCMホールディングスは4.4%、コメリは5.0%、コーナン商事は5.5%、ナフコは3.4%です。小売業の多くの業種で営業利益率が悪化する中、ホームセンターは依然として営業利益率が高いです。ホームセンターの営業利益率が高い理由は、プロ(業者)向けの商品の売上総利益率が高いためです。コメリの2018年3月期の売上総利益率は34.0%ですが、金物・資材・建材の売上総利益率は37.8%と全体よりも高いです。ホームセンターはプロ(業者)向けの商品が堅調で、売上総利益率も高いため、高い営業利益理を維持することができています。

ホームセンターは営業利利益率も高く、業績は安定していますが、将来の不安はあります。ホームセンター各社は地域でドミナント出店を行って来ましたが、近年は他社のドミナント地域に出店することが増えています。各チェーン店のドミナントで競争が激しくなるので、プロ(業者)向け商品の価格競争が激しくなり、売上総利益率が悪化する可能性があります。また、アスクル、MonotaRO、Amazon Businessなど、BtoBのネット通販サイトとの競合も激しくなります。人手不足で企業は購買業務のコスト削減を進めているため、ホームセンターからネット通販へと購買方法を変える企業が増えそうです。

一般の消費者向けの販売では、中高年のお客さんへの依存度が高いことが不安です。ホームセンターは歴史が長く、中高年のお客さんは生活用品を買う店舗として長く利用しています。例えば、古い店舗は売り場が大きく、駐車場が狭い、通路が狭いといった特徴があり、体力に不安のある高齢者のお客さんにとっては買い物がしにくくなっています。また、自動車での来店を想定している、ロードサイドの店舗が多く、自動車を持たない若者の取り込みにも課題があります。売上を下支えしている高齢者のお客さんが減った時に、急速に売上が減少してしまうのではないかという心配があります。

プロ(業者)向けの販売は好調・一般向けの販売は不調と差がある

経済産業省が発表している商業動態統計では、ホームセンターのカテゴリをDIY用具・素材、電気、インテリア、家庭用品・日用品、園芸・エクステリア、ペット・ペット用品、カー用品・アウトドア、オフィス・カルチャー、その他に分類しています。2014年と2018を比較して、売上の増減率を計算すると、DIY用具・素材は2.9%増、電気は4.9%減、インテリアは11.9%減、家庭用品・日用品は1.2%減、園芸・エクステリアは3.1%減、ペット・ペット用品は5.9%増、カー用品・アウトドアは4.1%減、オフィス・カルチャーは4.2%減、その他は0.3%減で、売上が減少しているカテゴリが多いです。

売上が増加しているのは、DIY用具・素材、ペット・ペット用品の二つしかなく、カテゴリごとの好不調には大きな差があります。ホームセンター各社の決算データを見ても、プロ(業者)向けの資材・工具の販売は好調、一般向けの販売は不調の傾向が見られます。DCMホールディングスの2018年2月期においては、園芸・エクステリア(前期比0.2%増)、ホームインプルーブメント(前期比1.2%増)が好調です。コメリの2018年3月期においても、金物・資材・建材(前期比4.6%増)、園芸・農業用品(前期比3.4%増)が好調で、多くの企業でプロ(業者)向けの販売が業績拡大の原動力になっています。

ホームセンターがプロ(業者)向けに販売している、工具、資材、建材などの商品は、プロ(業者)が仕事用に買って、すぐに使うものです。必要な時に必要なものを手に入れるため、お客さんは近所にある、同じ店舗で長く買い物を続けます。プロ(業者)向けの商品は売上総利益率が高いですが、商品自体の価値だけではなく、近所の店舗ですぐに手に入ることの価値も含まれています。ホームセンターでは昔からプロ(業者)向けに商品を販売して来ましたが、近年は高齢者の増加でリフォームが注目されています。ホームセンターのプロ(業者)向けの販売が好調なことには、リフォームとも関係がありそうです。

ホームセンター各社の売上高は堅調に推移していて、営業利益率も高く、小売業の中では安定感があります。しかし、プロ(業者)向けの販売は好調、一般向けの販売は不調と、カテゴリごとの好不調の差が大きくなっています。今後も、プロ(業者)向けの販売で稼いだ利益を使って、新規出店を続けて行くことになります。何らかの理由でプロ(業者)向けの販売が落ち込んだり、売上総利益率が悪化すると、一般向けの不調をカバーできなくなってしまう可能性があります。ホームセンターはプロ(業者)向けの販売が好調を維持しつつ、一般向けの販売を立て直して、収益性をさらに高めたいです。

ホームセンターは昔から生活用品、家具を販売して来ましたが、生活用品ではドラッグストア、家具ではニトリが競合になっています。ドラッグストアはホームセンターほど品揃えは豊富ではありませんが、価格には競争力があり、商圏も狭く、ホームセンターよりもお得な買い物がしやすいです。ニトリの家具は価格・価値のバランスがよく、コストパフォーマンスに優れた商品として人気です。ホームセンターの立場では、ドラッグストア、ニトリに対抗する有効な施策がない状況です。生活用品、家具の売上減少は固定化されていて、売上減少の流れを短期間で転換するのは難しいかもしれません。

ドラッグストアはコンビニ、食品スーパーの競合になっていますが、ホームセンターにとっても競合です。ドラッグストアは新規出店数が多く、出店場所はお客さんとホームセンターの間です。地域にドラッグストアができると、ドラッグストアはホームセンターよりも近くにある店舗になります。ドラッグストアには食品と日用品がセットで買える利便性があり、価格も安いというお得感もあります。近所にドラッグストアができると、お客さんは遠くのホームセンターまで買い物に行かなくなります。ホームセンターは高齢者のお客さんが多く、高齢者のお客さんをドラッグストアに奪われることは心配です。

プロ(業者)のお客さんをネット通販に奪われないようにする施策

ホームセンターの販売状況は、プロ(業者)向けの販売は好調、一般向けの販売は不調で、差が大きくなっています。一般向けの販売では、価格、品揃え、利便性に優れるドラッグストア、商品価値に優れるニトリが競合になり、売上を伸ばすことが難しい状況です。ホームセンター業界では、各社が地域でドミナント出店を行っているため、チェーン店同士の競争は他の業種ほど激しくはありません。現在、ホームセンター各社ともに、プロ向けの販売が好調で、売上総利益率も高いです。今後もこの状況は大きくは変わらず、プロ(業者)向けの販売で安定的に利益を確保できるのではないかと予想しています。

ネット通販が小売業の脅威になっていますが、ホームセンターにもネット通販の脅威があります。ホームセンターの競合となる、BtoBのネット通販サイトには、アスクル、MonotaRO、Amazon Businessなどがあります。経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、BtoBにおける2017年の日本国内のEC市場規模は317兆円で、EC化率は29.6%です。市場規模、EC化率ともに右肩上がりで増加しているため、以前はホームセンターで買い物をしていたプロ(業者)のお客さんが、ネット通販で買い物をするようになったというのは考えられることです。

実店舗とネット通販を比較すると、実店舗は必要な商品をすぐに手に入れられることが強みです。ホームセンターを利用するプロ(業者)のお客さんは、仕事で使う資材・工具をすぐに手に入れる必要があります。ネット通販も当日配達を強化していますが、納期では実店舗に対抗することが難しいです。ホームセンターでの買い物に不満を持っていないプロ(業者)のお客さんには、ネット通販に買い物場所を変える強い動機はないように思います。また、ホームセンターは歴史が長く、プロ(業者)のお客さんも中高年者が多いため、ネット通販での買い物を想定していない人が多いというのもあります。

ネット通販は商品がすぐに手に入るという点で、実店舗には勝てませんが、それ以外では優れた点が多数あります。ネット通販の利点には、品揃えがほぼ無制限にある、同じものを簡単に注文できる、実店舗に買い物に行く時間が節約できる、購買管理が簡単にできるなどです。ホームセンターで買い物をするプロ(業者)のお客さんは、同じものを何度も繰り返し購入していると考えられます。買い物場所をホームセンターからネット通販に変えると、様々な節約効果が得られそうです。ホームセンターからネット通販への切り替えが進んでいるような感じはありませんが、今後はどうなるかは分かりません。

ホームセンターのカインズでは、2018年12月14日より、店頭受け取りサービス「55-DASH(ゴーゴーダッシュ)プロ」を一部の店舗で開始しています。「55-DASH(ゴーゴーダッシュ)プロ」を利用するお客さんは、カインズのネットショップで店舗の在庫確認、取り置き注文を行います。注文を受けたカインズの店舗は55分以内に商品を取り置き、お客さんに連絡をして、連絡を受けたお客さんは店舗に商品を受け取りに行くというものです。お客さんは必要な商品を確実に購入(在庫がある場合)することができ、店舗で商品を探したり、待つ必要もなく、店内での買い物時間が短くなります。

ホームセンターで買い物をしているプロ(業者)のお客さんが、ホームセンターの買い物体験に不満を持っているような感じはありません。しかし、小売業全体で店舗のデジタル化が進んでいて、ホームセンターでも買い物体験のデジタル化は必要なのではないかと思います。プロ(業者)のお客さんにとっては、在庫の有無は非常に重要なため、スマホアプリから在庫の確認ができる仕組みがあることが望ましいです。ホームセンターは品揃えが多いため、商品を探すのにも時間が掛かります。スマホアプリで売り場の場所が分かる仕組みがあれば、商品を探すお客さん、商品を案内する店員の負担も軽くなります。

店舗の小型化・デジタル化によって生産性・収益性を改善できる

ホームセンター各社の店舗フォーマットを見ると、コメリは小商圏に対応した「ハード&グリーン」の店舗数が多いですが、それ以外の企業では、中規模・大規模の店舗が多いです。ホームセンターの標準的な店舗は、ロードサイドにあり、売り場面積・駐車場も大きいというものです。現在、高齢化社会の進行、自動車離れによって、郊外の大型店の集客力が低下する問題が浮上しています。これはすべての小売業にとっての問題で、ホームセンターにも当てはまります。昔からホームセンターで買い物をして来た高齢者のお客さんも、体力が落ちているので、大きな店舗での買い物が大変になっています。

ホームセンターの中には、小型の店舗フォーマットの出店を増やしている企業があります。DCMホールディングスはプロ(業者)向けの専門店「HODAKA(ホダカ)」、小商圏型ホームコンビニ「ホーマックニコット」の売上高、店舗数が順調に拡大しています。コーナン商事には職人専門店「コーナンプロ」があり、こちらも新規出店数・店舗数が増えています。ホームセンター各社ともに、プロ(業者)向けの販売は好調で、売上総利益率も高いです。一般向けの商品がセットになった大型のームセンターを運営するよりも、プロ(業者)向けの小型店の方が高い成長性・収益性が期待できます。

一般向けの販売については、店舗数が急増しているドラッグストアが競合です。ドラッグストア各社は新規出店数が多く、ドラッグストアはお客さんにとって近所にある店舗、身近な店舗になっています。以前は遠くにあるホームセンターに自動車で買い物に出掛けていたお客さんも、近所のドラッグストアで買い物をするようになります。ホームセンターにはドラッグストアにはない商品が多数ありますが、ドラッグストアの拡大がホームセンターの集客力を弱めるのは確実です。ホームセンターがドラッグストアに対抗するためには、小型の店舗を増やして、お客さんとの距離を縮めることは有効な施策の一つです。

ドラッグストアは医薬費で稼いだ利益を使って、食品を安く販売しており、ホームセンターは食品をどうするかというのは今後の課題です。ホームセンターの一部の店舗では食品を販売していますが、売り場面積は少なく、全社的な戦略が定まっていない印象です。ホームセンター各社の営業利益率は高く、食品の安売りができるようにも見えます。ただ、プロ(業者)向けの販売で稼いだ利益を使って、一般向けの食品を安く売ることには不安もあります。お客さんにドラッグストアを通り越して、ホームセンターまで買い物に来てもらうためには、食品の強化も必要ではないかと思います。

ホームセンターの店舗は中規模・大規模のものが多いですが、店舗の生産性・収益性を高めるという意味では、規模が大きい店舗が多いことはポジティブです。小売業では店舗のデジタル化が進んでいて、これから店舗に様々なテクノロジーが導入されることで、店舗の生産性・収益性が改善される見込みです。省人化の効果がある無人レジの注目が高まっていますが、無人レジは店員を多く抱えている店舗ほど、生産性・収益性の改善効果が大きいです。ホームセンターは営業利益率が十分に高いですが、生産性・収益性を改善する余地が大きく、さらに営業利益率を高められるチャンスがあります。

ホームセンターは店舗が広く、品揃えが多いため、お客さんは必要な商品を探すのが大変です。店員がお客さんを売り場まで案内する業務量は多く、お客さんが必要な商品を見つけることができず、目に見えない販売ロスも小さくはないと推測されます。例えば、スマホアプリでお客さんが自分で売り場の商品を見つけられる仕組みがあれば、店員がお客さんを売り場まで案内する業務量は減り、お客さんが必要な商品を見つけられない販売ロスも減ります。スマホアプリを使った買い物を定着させることができれば、ホームセンターの生産性・収益性は劇的に改善するのではないかと予想しています。