家電量販店は生活家電の販売強化・商品カテゴリの拡大で売上を伸ばせる

家電量販店は生活家電の販売強化・商品カテゴリの拡大で売上を伸ばせる

業種の垣根を超えた競争、少子化、高齢化社会、所得の二極化、ネット通販の拡大など、小売業を取り巻く環境は厳しいです。家電量販店は業界最大手のヤマダ電機の業績が悪化しているため、特に厳しい状況にあるイメージです。しかし、ヤマダ電機以外のビックカメラ、エディオン、ケーズホールディングスの業績は堅調で、イメージとは異なっています。ネット通販で電化製品を買う人が増えていますが、家電量販店は生活家電、非家電商品の売上を伸ばしています。家電量販店の立場では、ネット通販の拡大は脅威ではありますが、実店舗で成長する余地は十分にあると考えられます。

生活家電は生活必需品ですが、ないと困るだけではなく、生活の質を高めるものになっています。大容量の冷蔵庫・洗濯機の販売が好調ですが、お客さんが大容量の冷蔵庫・洗濯機を買う理由は、洗濯の時間、買い物の時間を節約するためです。お客さんの生活家電への関心が強くなっていて、家電量販店は値引き販売をするのではなく、コンサルティング型の販売ができます。大型家電はネット通販で買いにくいため、お客さんは実店舗で買うことを好んでいます。生活家電は実店舗ならではの接客、提案力を活かせる商品であり、ネット通販に売上を奪われないように守って行きたいです。

ヤマダ電機の業績は悪化しているものの家電量販店全体は堅調

ネット通販で買い物をする人が増えていて、実店舗はネット通販に売上を奪われる状況になっています。ネット通販には買いやすい商品、買いにくい商品がありますが、一部の大型家電を除けば、電化製品はネット通販で買いやすい商品の一つです。電化製品には価格.comのような買い物支援サイトがあり、自分が気になる商品の価格、レビューを確認してから買い物ができます。実店舗よりも安く販売しているネット通販サイトが多数あり、ネット通販で電化製品を買う人が増えている推測されます。また、価格競争(価格比較)が激しくなることは、商品価格の下落、売上の減少にも繋がります。

家電量販店がネット通販に売上を奪われていると考えられるようになったのは、業界最大手のヤマダ電機の業績が悪化しているためです。ヤマダ電機は2011年3月期に過去最高の業績を記録しており、売上高は2,153,259百万円、営業利益は122,764百万円、営業利益率は5.7%でした。しかし、ヤマダ電機は2011年3月期以降業績が悪化しており、この頃から家電量販店がネット通販に売上を奪われているという見方が強くなって来ました。ヤマダ電機の2018年3月期の決算は、売上高は1,573,873百万円、営業利益は38,763百万、営業利益率は2.5%となっていて、厳しい状況が続いています。

家電量販店はネット通販に売上を奪われていて、業績が悪化しているイメージがあります。しかし、経済産業省が発表している商業動態統計を見ると、家電量販店は不調というほどでもありません。2014年と2018年の商品販売額、店舗数を比較すると売上(商品販売額)は4,531,130百万円から4,398,481百万円へと2.9%減少、店舗数は2,443店舗から2,561店舗へと4.8%増加しています。業界最大手のヤマダ電機の業績が悪化しているため、家電量販店全体が不調なのではないかとの印象を持ちますが、家電量販店全体を見ると、好調とは言えないものの、不調というわけでもありません。

経済産業省の商業動態統計では、家電量販店の商品カテゴリをAV家電、情報家電、通信家電、カメラ等、生活家電、その他に分類しています。2014年と2018年を比較すると、情報家電とカメラ等が売上を大きく減らしていて、情報家電は1,132,143百万円から947,208百万円へと16.3%減少、カメラ等は239,672百万円から182,296百万円へと23.9%減少しています。一方、生活家電の売上が伸びていて、1,750,285百万円から1,849,242百万円へと5.7%増加しています。生活家電は高機能製品の登場、時短ニーズの拡大により、家電量販店各社で販売が好調との情報があります。

2018年度の家電量販店売上高ランキングは、ヤマダ電機(1兆5,738億円)、ビックカメラ(7,906億円)、エディオン(6,862億円)、ケーズホールディングス(6,791億円)となっています。各社の2013年度から2018年度までの売上高の増減率を計算すると、ヤマダ電機は7.5%減少、ビックカメラは4.8%増加、エディオンは0.2%増加、ケーズホールディングスは6.5%増加となります。ヤマダ電機は売上高が減少していますが、ビックカメラ、ケーズホールディングは増加しています。ビックカメラ、ケーズホールディングの好調からも、家電量販店全体が不調ではないというのが分かります。

家電量販店で起きていることをまとめると、情報家電、カメラ等については、需要が減少したり、ネット通販で買い物をする人が増えていると考えられます。家電量販店各社は情報家電、カメラ等の需要の減少、ネット通販サイトへの流出で売上が減少していますが、一方で、生活家電による売上の増加があります。ヤマダ電機の売上高は過去最高から約5,800億円近く減少していて、この売上高が他の企業、ネット通販に流出していると推測されます。家電量販店の立場では、ネット通販の脅威はあるものの、生活家電の需要が拡大しており、これからも業績を伸ばすチャンスはありそうです。

家電量販店は生活家電の販売で提案力・サポート力を訴求できる

ネット通販の脅威が大きくなる中で、生活家電は家電量販店にとって最も重要な商品になっています。日本電機工業会(JEMA)が2019年1月28日発表した統計によると、2018年の白物家電の国内出荷は2兆4,453億円(前年比4.1%増) で、1996年以来、22年ぶりの高水準になったとのことです。白物家電の販売が好調な理由には、猛暑によるエアコンの販売数量の増加、時短ニーズに対応した洗濯機、冷蔵庫の販売数量の増加などがあります。環境の変化、ライフスタイルの変化が起こったことにより、家電量販店は生活家電の販売を伸ばすチャンスを迎えており、この状況は今後も続くと考えられます。

家電量販店各社の生活家電の売上高を見ると、全体的に販売が好調です。ビックカメラの2018年8月期決算では、家庭電化商品の売上高は261,110百万円(前期比4.9%増)となっています。エディオンの2018年3月期決算では、生活家電の売上高が44億円増加(エアコンが44億円増加)とのデータがあります。ケーズホールディングスの2018年3月期決算では、家庭電化商品の売上高は239,147百万円(前期比3.6%)、エアコンを含む季節商品の売上高は103,793百万円(前期比6.7%増)となっています。猛暑が続いているため、エアコンの販売が家電量販店各社の売上高を底上げしています。

様々な社会環境の変化、ライフスタイルの変化が起こっていますが、女性の社会進出、単身世帯の増加は、家電量販店にとってビジネスチャンスになっていると思います。女性が仕事をするようになれば、仕事の時間が増え、家事に掛けられる時間が減ります。家事の時間を短縮するため、一度に多くの量を洗濯できる大容量の洗濯機、多くの食品を保存できる大容量の冷蔵庫が求められます。また、単身世帯が増えれば、各家庭に生活家電が必要になるため、販売数量が増えます。家電量販店各社は単身世帯用の販売を強化しており、冷蔵庫、洗濯機、掃除機など、生活家電のセット販売をよく目にします。

社会環境の変化、ライフスタイルの変化により、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコンといった生活家電は、生活必需品ではなく、生活の質を高めるソリューションになっていると言えます。大容量の冷蔵庫、洗濯機を買えば、お客さんは家事の時間を節約することができ、ゆとりのある生活を得られます。料理に関心を持つ男性が増えていて、冷蔵庫、電子レンジは男性向けの販売にも需要があります。これまで、家電量販店各社は値引き販売を行って来ましたが、生活家電はお客さんの生活の質を高める付加価値を持っており、値引き販売ではなく、提案型の販売を行うべきです。

生活家電には新しいニーズが登場していて、販売も好調で、家電量販店にとって最も重要な商品です。生活家電は売上高に貢献するという意味で価値がありますが、一部の大型家電は、ネット通販で買いにくことにも価値があります。冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの大型家電は、実物を見ないこと、購入後のサポートに不安があり、ネット通販で購入する人は増えていないような印象です。大型家電を購入する機会は少ないので、実店舗に何度も足を運ぶことも、お客さんにはそれほど負担ではありません。生活家電は家電量販店にとって最も重要な商品になっており、ネット通販への流出を防ぎたいところです。

家電量販店は生活の質を高める、生活家電を提案販売することで、お客さんとの関係性を強化できると思います。生活家電は長く使っているものから新しいものに買い換えると、機能の進化に驚くことがあります。しっかりとした提案販売を行い、お客さんに生活の質の改善を実感してもらえれば、様々な家電を連鎖的に買い替えてもらうことも期待できます。お客さんとの関係性が強まれば、ネット通販で買っている電化製品を実店舗で買ってもらうようにすることも可能です。お客さんは生活家電に生活の質の改善を求めており、家電量販店は提案力、サポート力を訴求して、売上を伸ばす好機を迎えています。

家電量販店が売上を伸ばすには非家電商品の品揃え拡大が不可欠

生活家電に新しいニーズが生まれ、販売が好調なことは、家電量販店にとってはありがたいことです。しかし、業種の垣根を超えた競争、少子化、高齢化社会、所得の二極化、ネット通販の拡大など、小売業は厳しい環境にあります。電化製品は家電量販店だけが販売する商品ではなくなっていて、電化製品のプライベートブランドを販売する小売業もあります。ドン・キホーテはテレビ、パソコン、ドライブレコーダーなどの電化製品のプライベートブランドを販売していて、ヒット商品になっているようです。家電量販店も電化製品だけを販売するのではなく、商品カテゴリの拡大を推し進めて行くべきです。

ビックカメラの2018年8月期の売上高は844,029百万円ですが、約2割を「その他の商品(非家電商品)」が占めています。「その他の商品(非家電商品)」の内容は、ゲーム、時計、スポーツ用品、玩具、メガネ・コンタクト、酒類・飲食物、医薬品・日用雑貨です。ビックカメラ全体の売上高の増加率が6.8%であるのに対し、「その他の商品(非家電商品)」の増加率は6.6%と同水準にあり、電化製品と同じように売れています。エディオンの2018年3月期決算においても、ゲーム・玩具を含む「その他」の売上高が73億円増加していて、電化製品の売上高の増加額(46億円)を上回っています。

昔の小売業では、店舗は特定の商品カテゴリに特化して、専門性を高めることが好ましいと考えられていました。家電量販店は家電量販店らしい商品、ホームセンターはホームセンターらしい商品、ドラッグストアはドラッグストアらしい商品を販売する必要がありました。お客さんは各店舗に専門性を求めるので、小売業がお客さんが期待していない商品の販売を始めると、客離れが起こりました。しかし、現在はこうした固定観念は薄れ、小売業がどのような商品を販売しても、お客さんは買ってくれるようになりました。ドラッグストアで食品が売れていることも、お客さんの意識の変化によるものです。

業種の垣根を超えた競争が激しくなった背景には、小売業の商品の価値を担保する役割が薄れたからではないかと思います。インターネットが無かった時代は、お客さんは商品、メーカーの情報を持っていませんでした。商品、メーカーの情報を持たないお客さんは、小売業を信頼して買い物をしていました。この店舗は信頼できるから、この店舗が販売している商品も信頼できるというロジックです。インターネットがある時代は、お客さんはインターネットを使って商品、メーカーの情報を得ることができるので、信頼できる商品であれば、昔ほど購入する店舗にこだわる必要はありません。

ビックカメラ、ヨドバシカメラは、昔から非家電商品を販売していましたが、非家電商品の販売ノウハウがあることは強みになっています。ビックカメラ、ヨドバシカメラはネット通販にも積極的で、幅広いカテゴリの商品を販売していて、物流センターも自社で運営しています。ネット通販ではAmazonが人気ですが、Amazonよりもヨドバシカメラが運営する「ヨドバシ・ドットコム」の方が好きだという意見もあります。ビックカメラ、ヨドバシカメラは実店舗とネット通販サイトの両方を持ち、家電を含めた幅広いカテゴリの商品を販売しており、お客さんにとってベストな小売業になれる可能性があります。

家電量販店は電化製品の専門店ですが、電化製品は家電量販店以外の店舗でも買えます。家電量販店がお客さんに提供している価値は、商品そのものではなく、店員の接客、アフターサービス、買い物の利便性といった商品以外のものです。ネットで注文をした電化製品を実店舗で受け取る、電化製品の買い物で貯まったポイントで食品を買うなどは、家電量販店が提供できる価値です。ビックカメラ、ヨドバシカメラは品揃えの拡大、物流センターへの投資を行なっており、Amazon化しています。Amazonと家電量販店が提供する価値は優れた買い物体験で、目標とするゴールは同じものになりそうです。

郊外型店舗が抱える集客への不安・店舗をデジタル化する方法

家電量販店は売上高トップのヤマダ電機の業績が悪化しているため、業界全体が不調のようなイメージを持ってしまいます。しかし、ビックカメラ、エディオン、ケーズホールディングスの業績は堅調に推移していて、業界全体が不調というわけでもありません。ヤマダ電機は郊外に店舗を持ち、値引き戦略で売上高を拡大して来ましたが、戦略がうまく行かなくなったと考えられます。ただ、ビックカメラはポイント還元をしていますし、エディオン、ケーズデンキの店舗は郊外に多いです。ヤマダ電機の業績が悪化している要因には、郊外、値引き戦略以外にも、別のものがあるのかもしれません。

家電量販店各社は生活家電の好調、非家電商品の拡大の二つにより、売上高を増やしています。エアコン、洗濯機、冷蔵庫などの高付加価値商品が人気になっていますが、生活家電の好調は、今後も続くのではないかと予想しています。大容量の洗濯機は洗濯時間の短縮、大容量の冷蔵庫は買い物回数を減らす効果があり、お客さんが感じるメリットは大きいです。高付加価値の生活家電を購入して、そのメリットを実感することで、別の生活家電の買い換えも期待できます。非家電商品の売上高も順調に伸びていて、これからの数年で、急に売れなくなるといったことは起こりそうにありません。

家電量販店はチェーン店が複数ありますが、店舗は郊外型か都市型か、店舗数は多いか少ないかで分類できます。ヤマダ電機、エディオン、ケーズデンキは郊外型で店舗数が多く、ビックカメラ、ヨドバシカメラは都市型で店舗数は少ないです。人口動態の変化を考えると、郊外型の店舗は集客力の低下が心配されています。2000年以降、小売業は郊外のロードサイドに大型店を出店して、売上高を伸ばして来ました。郊外の店舗は自動車での来店を想定していますが、若者は自動車を運転する人が減っています。10年、20年の長いスパンで見ると、郊外の店舗は集客に問題を抱える可能性が高いです。

少子化により、年齢階層ごとの人口には大きな違いがあり、若い世代ほど人口が少なくなっています。小売業の売上高を支えているのは高齢者ですが、若者を取り込まなければ、将来の売上高の減少スピードが速くなります。自動車を持っていない若者は郊外の店舗に行けないので、駅前にある店舗に行くか、ネット通販で買い物をするようになります。駅前に大型店を持つビックカメラ、ヨドバシカメラは、若者の取り込みで有利です。郊外の店舗が多いエディオン、ケーズホールディングスも業績が堅調ですが、どうやって若者に買い物をしてもらうのかが、これからの課題になりそうです。

店舗の生産性・収益性を高めることは、すべての小売業が取り組まなければならない課題です。少子化によって人口が減少するため、店舗で買い物をするお客さん、店舗で働く従業員も減るため、人口の減少に合わせた店舗運営が必要になります。店舗の生産性・収益性を高める方法は、店舗をデジタル化することです。例えば、スマホ決済、無人レジがあれば、店員のレジ業務が無くなるため、店員の業務量を減らすことができます。小売業の店舗は業種によって販売する商品、販売方法に違いがあるので、各業種ごとにデジタル化の形が異なり、家電量販店にも家電量販店に適したデジタル化があります。

ネットとリアルが融合したオムニチャネルは、家電量販店でうまく機能するのではないかと思います。実店舗を体験型のショールームストアにして、お客さんに多くの家電製品を体験してもらい、注文はいつでもネットでできるようにします。この買い物方法はお客さんにとって便利ですが、家電量販店の立場では、注文だけを競合企業に取られてしまうリスクがあります。また、ショールームストアが家電量販店の生産性・収益性の改善に、どれくらい貢献するかも不確実です。高価格の電化製品の販売には接客が必要ですが、人口が減少するため、接客の業務量を減らす取り組みが必要です。