なぜドラッグストアの売上・店舗数は安定的な拡大が続いているのか

なぜドラッグストアの売上・店舗数は安定的な拡大が続いているのか

小売業では一部の人気のチェーン店を除くと、全体的に停滞感がありますが、そうした中でドラッグストア業界は好調です。ドラッグストアが売上、店舗数を増やしている理由は、店舗の近さ、食品、日用品の安さです。消費者の節約志向が強まったこと、買い物エリアが狭くなったことにより、ドラッグストアの価値が高まっています。食品、日用品を安く買いたい人、遠くの店舗に行きたくない人、購入点数が少ない人にとっては、ドラッグストアは最適な店舗です。ドラッグストアが提供している価値と、お客さんのニーズがマッチしており、ドラッグストア業界は安定した成長を続けています。

ドラッグストアは食品、日用品の安さ、店舗の近さを武器に、総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストア、コンビニから売上を奪っていると考えられます。特にコンビニとの競合は注目ですが、ドラッグストアはコンビニよりも優位なポジションにあります。ドラッグストアはコンビニほど近くにはないものの、食品、日用品の価格、品揃えに優れ、店舗数は増加中です。コンビニは高付加価値・高価格のプライベートブランドの品揃えを強化していますが、節約志向の強いお客さんは、コンビニではなくドラッグストアで食品を買うようになるかもしれません。

食品・日用品が近所で安く買えるドラッグストアの人気が高まる

業種の垣根を超えた競争、少子化、高齢化社会、所得の二極化、ネット通販の拡大など、小売業は一部の人気チェーン店を除くと、全体的に停滞感があります。小売業を取り巻く環境が厳しい中、ドラッグストアは業界全体が好調で、多くのドラッグストアチェーンが業績を拡大しています。経済産業省は商業動態統計の中で、ドラッグストアの売上、店舗数を集計しています。2014年と2018年の売上、店舗数を比較すると、売上は4,937,496百万円から6,416,039百万円へと29.9%の増加、店舗数は13,069店舗から15,827店舗へと21.1%増加しており、売上、店舗数ともに増加率は高いです。

2018年のドラッグストアの売上高ランキングを見ると、ウエルシアホールディングス(695,268百万円)、ツルハホールディングス(673,238百万円)、コスモス薬品(557,999百万円)、マツモトキヨシホールディングス(538,408百万円)、スギホールディングス(457,047百万円)が上位を占めています。ドラッグストアの品揃えは医薬品が中心ですが、化粧品、雑貨、日用品、食品など、商品構成は企業で違いがあります。また、ドラッグストア業界ではドミナント出店をしている企業が多く、ツルハドラッグは北海道・東北、コスモス薬品は九州、スギ薬局は中部に店舗が多いです。

ドラッグストアは売上、店舗を急拡大している印象がありますが、現在ほど売上、店舗数は多くはなかったものの、昔からあります。ドラッグストアの店舗が急増している背景には、ドラッグストアの品揃え・販売戦略の変化、消費者のニーズの変化があるのではないかと思います。ドラッグストアで買い物をする人が増えていますが、食品が安いことは、ドラッグストアで買い物をする理由の一つです。ドラッグストアは以前は積極的に食品を販売していなかったのですが、近年は医薬品で稼いだ粗利益を原資に食品の安売りを強化しており、品揃え・販売戦略に大きな変化が見られます。

食品の安売りを強化したことは、ドラッグストアの業績が拡大する最も大きな要因ではないかと思います。消費者には食品を買う店舗は、総合スーパ、食品スーパー、コンビニという思い込みがあり、総合スーパ、食品スーパー、コンビニ以外の店舗が食品を販売することは簡単ではありませんでした。しかし、仕事を持つ忙しい女性が増えたこと、節約志向の消費者が増えたことにより、近くの店舗で食品を買いたい、食品を安く買いたいという新しいニーズが生まれました。ドラッグストアの食品の安売りは、食品を近くの店舗で安く買いたいニーズをうまく捕らえ、販売に成功しています。

消費者の買い物行動の変化の一つに、買い物エリアの縮小があります。高齢者は年齢とともに体力が落ち、自動車を運転しない人も増えるため、買い物をするエリアが狭くなって行きます。コンビニで買い物をする高齢者が増えていますが、これは買い物エリアの縮小によるものです。若者は経済的な理由で自動車を持たない人が増え、ネット通販でも買い物ができます。また、恋愛をしない人、結婚をしていない人が増えたため、若者が遠方に買い物に出掛ける機会も減っています。高齢者、若者ともに、買い物エリアが縮小する理由があり、小売業は消費者の買い物行動の変化に対応しなければなりません。

消費者の買い物エリアが狭くなったことは、ドラッグストアには追い風です。ドラッグストアは徒歩、自転車、バイクで買い物に行けて、食品、日用品が安く買える店舗です。コンビニは近くで食品が買える店舗として便利ですが、ドラッグストアはコンビニよりも食品、日用品の品揃えが多いです。食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストなど、複数の店舗を買い回ることが大変なお客さん、コンビニの品揃えでは不十分なお客さんは、ドラッグストアで買い物をするようになります。食品、日用品の安さ、品揃え、アクセスの良さにより、ドラッグストアの価値が高まっています。

ドラッグストアは食品の買い物をさらに安く・便利にしている

ドラッグストアは医薬品を中心に、化粧品、食品、雑貨などを販売していて、売上構成比は企業によって違いがあります。コスモス薬品は食品の売上構成比が高く、2018年5月期の売上構成比は、食品は56.2%、雑貨は16.8%、医薬品は15.4%、化粧品は10.3%、その他は1.3%です。一方、マツモトキヨシホールディングスは食品の売上構成比が低く、2018年3月期の売上構成比は、化粧品は40.5%、医薬品は31.9%、雑貨は18.0%、食品は9.7%です。各ドラッグストアチェーン店には品揃えに特徴があり、全体的に食品に注力する企業が多いですが、そうでない企業もあります。

ドラッグストアは粗利益率の高い医薬品の利益を使って、食品の安売りをしているとされています。ツルハホールディングスの2018年5月期の決算説明会資料によると、医薬品の売上高は155,677百万円、売上総利益率は42.0%です。食品単体の売上総利益率はないものの、食品(132,327百万円)、医療用品・介護(32,424百万円)、健康食品(24,979百万円)を合わせた「その他(190,279百万)」の売上総利益率は21.2%です。ツルハホールディングスの医薬品の売上総利益率は高く、食品の売上総利益率は低くなっており、食品を販売する他のドラッグストアチェーン店に当てはまると推測されます。

ドラッグストアが食品の販売を強化する目的は、買い物頻度が多い食品を販売することで、来店回数を増やすことではないかと思います。ドラッグストアは医薬品の専門店ですが、医薬品を購入する機会はそれほど多くはありません。ドラッグストアが来店回数を増やそうとする場合、医薬品よりも購入頻度が多い、食品、日用品の販売を強化することは効果的です。総合スーパ、食品スーパー、コンビニ以外の店舗が食品を販売することは難しかったのですが、消費者の節約志向、買い物エリアの縮小という変化を捕らえ、ドラッグストアは食品を買う店舗として、独自のポジションを確立しています。

ドラッグストアは食品を安く販売していますが、生鮮食品、弁当・惣菜などの品揃えが弱いと言われています。ドラッグストアチェーン店の中には、生鮮食品、弁当・惣菜の品揃え強化に取り組む企業も増えています。しかし、お客さんのニーズを考えると、生鮮食品、弁当・惣菜以外の食品をさらに強化するという戦略も有効かもしれません。現在、仕事を持つ女性が増えたこと、結婚しない人が増えたことにより、料理をする機会が減少していると考えられます。冷凍食品の市場が拡大しており、ドラッグストアも冷凍食品の販売を強化することで、食品の売上を伸ばすチャンスがあります。

ドラッグストアで食品を買うお客さんは、価格の安さを高く評価していますが、買い物の利便性の点でも優れています。ドラッグストアと従来の食品の購入場所である食品スーパーを比較すると、ドラッグストアの方が店舗が小さく、近くにあります。ドラッグストアは店舗が小さく、商圏が狭いため、客数も少ないです。食品スーパーのように通路、レジが混雑していることも少なく、必要な食品を素早く、快適に買うことができます。生鮮食品を必要としないお客さんにとっては、ドラッグストアは価格の安さ、買い物の利便性に優れていて、今後も利用頻度が多くなりそうです。

ドラッグストア各社は新規出店を続けており、近所に新しいドラッグストアが出店するということはよくあります。ドラッグストアの商圏は食品スーパーよりも狭いので、ドラッグストアが近所にできると、お客さんは食品スーパーとドラッグストアを簡単に買い回ることができます。生鮮食品を食品スーパーで買って、それ以外の食品は食品スーパー、ドラッグストアの安い方で買うことができます。複数の食品スーパーを買い回ることは、昔から行われていましたが、商圏の狭いドラッグストアの店舗が近所にできることで、お客さんはさらに簡単に、楽しく、お得な食品を買えるようになっています。

ドラッグストアの店舗の増加は小売業の商圏にも影響を与える

生活に必要なものはたくさんありますが、食品、日用品は生活に不可欠な消耗品で、買い物頻度が多いです。食品、日用品を販売している小売業には、総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストア、ドラッグストア、コンビニなどがあります。昔からの食品、日用品の買い物方法として一般的なものは、これらの複数の店舗を自動車で買い回るというものです。総合スーパーは店舗が大きく、衣食住の商品を幅広く販売していますが、遠くにあるので買い物には労力が掛かります。コンビニは近くにあるため、買い物に労力は掛かりませんが、店舗が小さく、品揃えは少ないです。

総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストアを自動車で買い回って、食品、日用品を買う人が多かったのですが、この買い物方法をする人が様々な理由から減っています。複数の店舗を買い回るためには、自動車を運転しなければなりませんが、自動車を運転しない人、できない人が増えています。昔は複数の店舗を自動車で買い回っていた高齢者も、生活に必要な食品、日用品の量が減ると、買い物に掛けるモチベーションが低下します。少子化・非婚化が進んでいることも、生活に必要な食品、日用品の量が減ることに繋がり、買い物のモチベーションが上がらない要因の一つです。

お客さんの食品、日用品の買い物方法が変化する中、ドラッグストアは新しい食品、日用品の買い物方法を提供しています。ドラッグストアが提供している食品、日用品の買い物体験は、徒歩、自転車、バイクで買い物に行ける近所の店舗で、安くお得に買い物をするというものです。総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストアを自動車で買い回ることと比べると、ドラッグストアの買い物は労力が掛かりません。他の店舗と比較して、ドラッグストアの価格、品揃えがすべて優れているわけではありませんが、食品、日用品の買い物に労力を掛けたくない人にとっては価値のある店舗です。

ドラッグストアの買い物客を見ると、朝、昼の時間帯に買い物をしている女性が多く、徒歩や自転車で来店している人も多いです。総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストアで買い物をしていた人が、近所にドラッグストアができたため、ドラッグストアで食品、日用品を買っているのではないかと推測されます。体力に不安があり、購入する食品、日用品の量が少ない高齢者は、遠方にある大きな店舗に買い物に行く必要性が小さくなっています。ドラッグストアは食品、日用品が安い、店舗が狭い、店舗が近いなど、高齢者が買い物がしやすい特徴を備えています。

小売業には総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストア、ドラッグストア、コンビニなど、様々な業種があります。コンビニは店舗数が多く、近くにあるりますが、それ以外の業種の店舗は遠くにあり、自動車で買い物を行くことが多いです。ドラッグストアはコンビニほどは近くはないものの、それ以外の業種の店舗ほど遠くもなく、お客さんの立場では、どちらかと言えば近くにある店舗ではないかと思います。これまでは、コンビニとそれ以外の業種の店舗の間に大きな距離があったのですが、その間にドラッグストアが出店することで、お客さんの消費行動にも変化を与えています。

地域にドラッグストアが増えると、お客さんが遠方の店舗まで買い物に行かなくなる、商圏が狭くなるといった影響があると思います。これまでは遠くの総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストアに行かなければ買えなかったものが、近くのドラッグストアで買えるようになっています。日用品はホームセンター、ディスカウントストアで買うことが一般的でしたが、地域にドラッグストアができると、遠くのホームセンター、ディスカウントストアに行かなくなります。商圏が広く、自動車での来店を想定している店舗にとっては、地域にドラッグストアが増えることは脅威です。

ドラッグストアは他の店舗から売上を奪うことで業績を拡大できる

ドラッグストアの店舗数は順調に増加していますが、M&Aも活発に行われていて、将来的な成長の鈍化に対する不安もあります。経済産業省が発表している商業動態統計を使って、近年のドラッグストアの店舗の増加率を計算すると、2015年は3.7%、2016年は4.7%、2017年は6.1%、2018年は5.2%です。業種の垣根を超えた競争、少子化、高齢化社会、所得の二極化、ネット通販の拡大など、小売業を取り巻く厳しい環境を考えると、店舗の増加率は非常に高いです。ドラッグストア各社は営業利益率が高く、店舗も比較的小型であるため、新規出店が行いやすいというのはあります。

消費者に起こっている買い物行動の変化には、節約志向、買い物エリアの縮小があります。食品、日用品を安く買いたい、近くの店舗で買いたいというニーズがあり、ドラッグストアはこのニーズにマッチしています。販売している商品が生活不可欠な食品、日用品であること、消費者のニーズにマッチしていることを考えると、ドラッグストア市場は今後も安定的に拡大する可能性が高いです。ドラッグストアは総合スーパー、食品スーパー、ホームセンター、ディスカウントストア、コンビニなど、他の業態から売上を奪う形になっており、今後の成長の余地は大きいと考えられます。

小売業には業種の垣根を超えた競争がたくさんありますが、ドラッグストアとコンビニの競合が注目されています。コンビニの付加価値は近くて便利というものですが、ドラッグストアはコンビニを上回る付加価値を提供できるポテンシャルを持っています。ドラッグストアの店舗数が今ほど多くない時代は、コンビニの近さが高く評価され、品揃えに対する不満はそれほど大きくはありませんでした。しかし、ドラッグストアの店舗数が増えると、コンビニの品揃えの少なさを感じるようになります。ドラッグストアはコンビニよりは遠いものの、店舗は大きく、食品、日用品を安く、まとめて買うことができます。

コンビニは24時間営業をしていますが、先日、セブンイレブンの24時間営業のトラブルが大きな話題になりました。大阪府東大阪市のあるセブンイレブンのオーナーは、人手不足で24時間営業を中止したところ、セブンイレブンが許可をせず、契約の解除、違約金の支払いを求められるかもしれないというものです。ドラッグストアも24時間営業を強化していますが、ドラッグストアはコンビニほどフランチャイズが多くないとされています。コンビニの24時間営業が難しくなる中で、ドラッグストアが24時間営業の店舗を増やせれば、コンビニの深夜のお客さんを奪えるチャンスがあります。

消費者の節約志向が強まっていますが、コンビニは節約志向とは反対の高級志向を進めています。もともと、コンビニは立地の利便性を武器に、ナショナルブランドを高価格で販売してきました。近年はプライベートブランドの品揃えを増やしていて、プライベートブランドは高付加価値・高価格の商品が多いです。セブンイレブンのプライベートブランド「セブンプレミム」の価格はどんどん高くなっていて、ナショナルブランドよりも高い商品も多数あります。コンビニの商圏は狭く、客数を伸ばすことが難しいため、売上を伸ばすには客単価(一品単価)を高めなければならない事情があります。

コンビニが節約志向のお客さんに対応できないことは、ドラッグストアにとってはチャンスです。ドラッグストアの店舗はますます増えていて、お客さんに身近な店舗になっています。コンビニの高価格化について行けないお客さんは、ドラッグストアで安い食品を買うようになります。さらに一緒に日用品もワンストップで買えるので、お客さんは大きなお得感、利便性を感じます。コンビニは食品の質で優れていますが、ドラッグストアはすぐに質を追い求める必要はないと思います。所得の二極化が進んでいるため、お客さんは食品の質ではなく、安さの方を求めるのではないでしょうか。