EC・ネット通販だけではなく実店舗でもラストワンマイルが重要になる

EC・ネット通販だけではなく実店舗でもラストワンマイルが重要になる

物流企業の運賃の値上げ、宅配取扱個数の抑制により、多くの企業で物流コストが上昇し、収益性が悪化しています。EC・ネット通販のニュース記事を読むと、「ラストワンマイル」という言葉を目にすることが多いです。EC・ネット通販において、ラストワンマイルとは、お客さんに商品を届ける物流の最後の部分を指しています。商品の配達が遅れる、再配達が増える、配送料が値上がりする、時間指定ができなくなるなどは、ラストワンマイルの問題です。EC市場規模は安定的に拡大していますが、ラストワンマイルの問題が大きくなると、EC・ネット通販の成長を鈍化させてしまう可能性もあります。

ラストワンマイルは主にEC・ネット通販の問題ですが、小売業ではリアルとネットの融合が進んでいて、実店舗でも問題になりつつあります。実店舗を持つ小売業もEC・ネット通販を行なっており、お客さんに商品を配達する機会が増えています。リアルとネットが融合した買い物体験には、実店舗で商品を見て、EC・ネット通販サイトで注文をするというものがあります。リアルとネットが融合した買い物体験では、小売業はお客さんに商品を配達しなければなりません。物流コストの上昇により、お客さんに商品を配達する負担が大きくなれば、リアルとネットの融合ができなくなることもありそうです。

EC市場規模の拡大・人手不足でラストワンマイルが問題になる

EC・ネット通販に関するニュース記事を読んでいると、物流に関するテーマで「ラストワンマイル」という言葉を目にすることが多いです。ラストワンマイルをインターネットで検索すると、主に通信業界で使われ来た言葉であるとされています。通信業界におけるラストワンマイルとは、最寄りの基地局から利用者の建物までを結ぶ通信回線の最後の部分を指していて、ワンマイル(約1.6km)は物理的な距離を意味しているわけではありません。EC・ネット通販におけるラストワンマイルも通信業界のものと似たような意味で、EC・ネット通販の商品がお客さんに届く最後の物流(配達)の部分を指しています。

ラストワンマイルはEC・ネット通販においても、専門用語として使用されるようになりましたが、これはアメリカの影響を受けていると推測されます。「last one mile amazon」、「last one mile delivery」、「last one mile logistics」といったキーワードで検索をすると、英語のページが多数出てきます。アメリカのAmazonは物流関連コストの上昇が続いていて、営業利益を押し下げる要因の一つになっています。全世界でEC・ネット通販の流通総額が増加していることを考えると、物流コストの負担が大きくなっていることも全世界共通で、ラストワンマイルの重要性についても同様です。

経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、BtoCにおける日本国内のEC市場規模は、緩やかに拡大しています。2010年と2017年を比較すると、EC市場規模は7兆7,880億円から16兆5,054億円(約2.1倍)へ、EC化率は2.84%から5.79%(約2.0倍)へと拡大しています。多くの人がEC・ネット通販を利用するようになると、お客さん一人あたりの注文回数は増え、一注文あたりの単価は下落します。一注文あたりの単価が下落すると、EC・ネット通販事業者が負担する、一注文あたりの物流コストの割合が大きくなるため、EC・ネット通販事業者の利益は小さくなります。

物流企業が運賃の値上げを行なったことは、EC・ネット通販事業者の利益を圧迫しています。ヤマト運輸は2017年10月1日、佐川急便は2017年11月12日、日本郵便は2018年3月1日に、それぞれ運賃の値上げを行いました。物流企業が運賃の値上げする背景には、EC市場規模の拡大による宅配個数の急増、再配達の増加、人手不足があります。EC・ネット通販事業者は物流企業の運賃の値上げを受け、送料無料の条件を変更したり、送料無料を取り止めるといった決定をしました。EC・ネット通販事業者の配送料の値上げは避けられないものではありますが、客離れを引き起こす不安はあります。

EC・ネット通販でラストワンマイルという言葉が注目されているのは、EC・ネット通販において、ラストワンマイルが重要になっているためです。EC・ネット通販で商品が売れても、商品がお客さんにちゃんと届かなければ、お客さんに継続的に利用してもらうことはできません。また、商品をお客さんにちゃんと届けるのに物流コストが掛かり過ぎると、EC・ネット通販事業者は利益を確保することができず、成長が鈍化します。物流企業にとってもラストワンマイルは重要で、宅配個数の増加に対応できる体制を構築しなければ、EC・ネット通販事業者、一般のお客さんの期待に応えられません。

物流企業、EC・ネット通販事業者はラストワンマイルの問題を解決するため、テクノロジーの活用を進めています。物流センターには運営を効率化するロボットが導入され、省人化、労働環境の改善が行われています。再配達を減らす取り組みには、スマホアプリの通知機能も活用されています。配達を待つ客さんに対して、実際の配達時間が何時何分くらいになるのか、細かく通知をすることは、再配達を減らすのに大きな効果があります。ラストワンマイルの問題は物流企業、EC・ネット通販事業者の成長のボトルネックですが、この問題を解決できれば、収益性の改善、さらなる事業の拡大が期待できます。

ネットとリアルの融合で実店舗でもラストワンマイルが重要になる

ラストワンマイルとはEC・ネット通販において、EC・ネット通販事業者、物流企業がお客さんに商品を届ける、物流の最後の部分を指しています。EC・ネット通販でラストワンマイルという言葉を目にすることが増えたのは、EC・ネット通販事業者、物流企業はラストワンマイルに解決しなければならない問題を抱えているためです。宅配個数の増加、再配達の増加、人手不足により、物流企業は運賃の値上げを行い、EC・ネット通販事業者も配送料を値上げしました。今後も運賃の値上げ、宅配取扱個数の制限が行われると、EC・ネット通販の利用者が減り、成長が鈍化する可能性もあります。

ラストワンマイルとは、EC・ネット通販の物流に関するものですが、実店舗を運営する小売業でもラストワンマイルという言葉が使われるようになりました。実店舗を運営する小売業はお客さんが店舗に買い物に来てくれるので、一部の業種を除くと、お客さんに商品を配達することはありませんでした。しかし、お客さんライフスタイルの変化、EC・ネット通販が拡大していることで、実店舗を運営する小売業にも、お客さんに商品を配達する機会が増えています。小売業ではリアルとネットの融合が進んでおり、お客さんは実店舗だけではなく、実店舗とEC・ネット通販の両方を使って買い物をしています。

スーパーマーケット、食品スーパーの経営者のインタビュー記事を読むと、ラストワンマイルという言葉がよく出てきます。EC・ネット通販で食品、日用品を買う人が増えたことで、スーパーマーケット、食品スーパーもEC・ネット通販に取り組んでいます。小売業は自主的にリアルとネットの融合を進めていますが、スーパーマーケット、食品スーパーについては、やらざるを得ない状況のようにも見えます。経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、2017年の食品、飲料、酒類のEC市場規模は1兆5,579億円と大きく、EC化率は2.41%と低く、成長の余地は非常に大きいです。

食品はEC化率が低く、食品をEC・ネット通販で買う人は少数派ですが、市場規模は非常に大きいです。世界的に見ても、スーパーマーケット、食品スーパーはEC・ネット通販を強化しており、将来的には全世界の人が食品をEC・ネット通販で買うようになるのは確実だと見込まれています。スーパーマーケット、食品スーパーでラストワンマイルが重要になったのは、EC・ネット通販と同様にラストワンマイルに問題があるからです。スーパーマーケット、食品スーパーが運営するネットスーパーでは、商品のピックアップ、お客さんへの配達コストが大きく、利益を確保することが難しいと言われています。

EC・ネット通販で買い物をする人が増えることは、実店舗で買い物をする人が減ることを意味しています。実店舗離れが起こることは、すべての小売業に共通するものですが、スーパーマーケット、食品スーパーは不安が大きいです。若い世代は食品、日用品の買い物時間を節約するため、EC・ネット通販を利用するようになります。中高年は自動車を運転しない、体力に問題があるなどの理由で、遠方まで買い物に出掛けなくなります。スーパーマーケット、食品スーパーがこのようなお客さんの変化に対応するためには、EC・ネット通販、移動販売など、実店舗からお客さんの方へ近付いて行く必要があります。

スーパーマーケット、食品スーパーは、EC・ネット通販、移動販売を利用するお客さんが増えると、ラストワンマイルの問題がさらに大きくなります。スーパーマーケット、食品スーパーが自社で配達要員を確保することは難しく、複数のスーパーマーケット、食品スーパーの配達を集約・代行する、物流サービスが登場するのではないかと予想しています。飲食店の宅配サービスでは、出前館がシェアリングデリバリーという、複数の飲食店の配達を集約・代行するサービスを行なっています。スーパーマーケット、食品スーパーにおいても、シェアリングデリバリーがうまく機能すると思います。

ネスレ日本、クックパッドのラストワンマイルの新しい試み

2018年10月1日より、ネスレ日本は佐川急便と共同で、地域コミュニティの創出を目指す新・宅配サービス「MACHI ECO便」を東京・大阪の一部地域で開始しています。「MACHI ECO便」では地域の住民の中から、「ECO HUB(エコハブ)」と呼ばれるストックポイントの役割を担ってくれる人を募集します。ネスレ日本のEC・ネット通販で買い物をしたお客さんは、「ECO HUB(エコハブ)」から商品を配達してもらうか、「ECO HUB(エコハブ)」に商品を取りに行くか選択できます。お客さんが「ECO HUB(エコハブ)」に商品を取りに行く場合、商品代金から割引(5%OFF)を受けることができます。

「MACHI ECO便」では商品をお客さんに個別に配達するのではなく、佐川急便が「ECO HUB(エコハブ)」にまとめて配達をします。「ECO HUB(エコハブ)」の運営者はラストワンマイルの配達を管理することで、ネスレ日本から手数料を受け取ることができます。ネスレ日本の「MACHI ECO便」の狙いは、地域の住人、お客さんに協力してもらい、物流コストを削減することです。「MACHI ECO便」はネスレ日本の商品を配達するだけではなく、他社の商品も配達する構想もあります。「ECO HUB(エコハブ)」に複数の企業の商品を集約して、まとめて配達すれば、物流効率が高まります。

2018年9月20日より、クックパッドは生鮮食品ネットスーパー「クックパッドマート」を東京の一部地域で開始しています。「クックパッドマート」では、精肉店・鮮魚店などの販売店、地域の農家・生産者の商品が販売されています。「クックパッドマート」の買い物方法は、専用のスマホアプリで食品を注文して、指定した店舗で注文した食品を受け取るようになっています。EC・ネット通販では、送料無料になるには条件がありますが、「クックパッドマート」はすべての注文が送料無料です。「クックパッドマート」はお客さんに食品を店舗に取りに来てもらうことで、送料無料を実現しています。

「クックパッドマート」の受け取り店舗には、なんでも酒やカクヤス、カラオケの鉄人、ツルハドラッグなどがあります(一部の店舗のみ)。「クックパッドマート」の受け取り店舗は、食品を受け取りに来たお客さんに、ついで買い物をしてもらうことを期待しています。「クックパッドマート」の出店者、受け取り店舗には物流の負担はなく、「クックパッドマート」が出店者を回って注文された食品を集め、受け取り予定の店舗に届ける仕組みです。「クックパッドマート」はラストワンマイルの物流コストを削減することで、食品販売事業者がEC・ネット通販を行いやすい環境を提供しています。

ネスレ日本の「ECO HUB(エコハブ)」、クックパッドの「クックパッドマート」は、ともにラストワンマイルの問題を解決する物流サービスです。物流コストを増やさないためには、お客さんに個別に配達をする以外の方法を模索する必要があります。お客さんに商品を届けるのではなく、お客さんの方に商品を取りに来てもらう方法は効果的です。「ECO HUB(エコハブ)」、「クックパッドマート」ともに、お客さんに商品を受け取りに来てもらっています。「ECO HUB(エコハブ)」には割引、「クックパッドマート」には送料無料という、商品を受け取りに行くインセンティブが用意されています。

人手不足、再配達、運賃の値上げなど、物流の問題は多くの人に認識されるようになっています。EC・ネット通販事業者はお客さんに対して、価値のあるインセンティブを用意すれば、商品を受け取りに来てもらうことは難しくないと思います。商品の受け取り場所には店舗、宅配ロッカーがありますが、駅や店舗が宅配ロッカーを設置するというニュースをよく目にします。駅や店舗は宅配ロッカーを設置することで、集客力、利便性を高めることができます。自宅に配達に来てもらいたくないという人もいるので、商品の受け取り方法が多様化することは、EC・ネット通販の利用者増加にも繋がります。

ネット・リアルはラストワンマイルの問題をどのように解決するか

ヤマトホールディングスが2019年1月30日に発表した2019年3月期第3四半期の決算によると、営業収益は1,257,610百万円(前期比7.3%増)、営業利益は74,343百万円(前期比131.4%増)となっています。運賃の値上げにより、宅急便の単価が6.8%増加していて、取り扱い数量についても2.0%増加と好調です。EC・ネット通販では、物流企業、EC・ネット通販事業者、お客さんの三者が物流コストを負担しており、これまでは物流企業の負担が大きいとされていました。ヤマトホールディングスは運賃を値上げし、宅配取扱個数を抑制したことによって、大きく収益性を改善しています。

物流企業の代替えはないので、EC・ネット通販事業者、お客さんは物流企業の運賃値上げを受け入れなければなりません。EC・ネット通販事業者の一部は、配送料の値上げを行いましたが、値上げによって客離れが起こる不安があります。EC・ネット通販を利用するお客さんの立場では、送料無料がなくなり全国一律の送料になったり、送料無料の条件が厳しくなると、買い物がしにくくなります。特に単価の安い商品は送料がもったいないので、買い物が後回しになることが多いです。ヤマトホールディングスの事業構造改革の取り組みを見ると、今後さらに運賃の値上げが実施されることもありそうです。

EC・ネット通販事業者も独自のラストワンマイルを強化しており、楽天は特に意欲的に取り組んでいます。楽天は2019年1月30日に行われた「新春カンファレンス」において、送料無料のラインを全店舗で統一する構想を発表しています。楽天市場では店舗によって送料無料のラインが異なっていて、お客さんは買い物がしにくく、割高な印象を受けることもあります。さらに、楽天は自社で商品の配送を行う「Rakuten-EXPRESS」を拡大しており、人口カバー率は約19%であるとのことです。楽天は自社で商品の配達を行うようになれば、物流企業の影響を軽減することができます。

EC・ネット通販事業者が配送料の値上げを行うと、お客さんは優れた物流サービスを提供する、大手EC・ネット通販事業者で買い物をするようになります。多くのEC・ネット通販事業者が配送料の値上げを実施しましたが、Amazonはプライム会員の配送条件を変更しておらず、Amazonの配送料の割安感が増しています。Amazonは品揃えが豊富で、商品も一回の配達でまとめて届くことが多いので、お客さんは買い物がしやすいです。品揃えが少なく、商品の単価が安いEC・ネット通販事業者は、Amazon、楽天のような優れた物流サービスを提供する事業者にお客さんを奪われる可能性があります。

ラストワンマイルの問題は、主にEC・ネット通販のものですが、実店舗を持つ小売業にとっても問題になりつつあります。リアルとネットの融合により、小売業もお客さんに商品を配達することが増えています。今後、ラストワンマイルの問題がさらに大きくなるようであれば、リアルとネットの融合が実現できない可能性もあります。スーパーマーケット、食品スーパーのEC・ネット通販は、現状でも利益を確保することが難しい状況です。物流企業の運賃がさらに上昇すれば、EC・ネット通販自体を維持することができなくなり、実店舗のみの運営になってしまうことも考えられます。

EC・ネット通販事業者はラストワンマイルの問題を解決する方法を持っていますが、リアルの小売業はどのようにすればよいのか分からない状況です。実店舗でお客さんを待つだけでなく、お客さんへの商品の配達が増えることは確実ですが、具体的にどれくらい配達が増えるのか予測は難しいです。例えば、お客さんに実店舗で商品を見てもらい、EC・ネット通販で注文をしてもらう場合、商品をお客さんに配達しなければなりません。リアルとネットの融合は難しいと昔から言われていて、小売業も苦戦していますが、ラストワンマイルの問題が大きくなったことで、さらに難しくなったように思います。