なぜコンビニのクリスマスケーキ・恵方巻きの廃棄は問題視されるようになったのか

なぜコンビニのクリスマスケーキ・恵方巻きの廃棄は問題視されるようになったのか

食品ロスを削減する取り組みが世界的に行われており、日本でも食品ロスへの関心が高まっています。世界的に食品ロスが問題になっている背景には、所得の二極化、子どもの貧困など、社会の変化があります。ソーシャルメディアを通じて、コンビニのクリスマスケーキ・恵方巻きの大量廃棄が知られるようになり、コンビニの食品ロスに対して批判的な意見が増えています。コンビニはクリスマスケーキ・恵方巻きといった季節商品だけではなく、通常の商品でも廃棄を行なっています。食品ロスに否定的な考えを持つ人が増える中で、コンビニが食品ロスの削減にどのような対策を行うのか注目です。

コンビニは消費期限が過ぎた商品を値下げ販売をせずに、売り場から外して、廃棄しています。値下げ販売をすれば売上が得られるのですが、コンビニは値下げ販売よりも廃棄を選択しています。これは値下げ販売をすることよりも、値下げ販売をせずに廃棄した方が、コンビニにとって利益が大きいと判断していることになります。コンビニが値下げ販売を行わない理由は、コンビニの商品イメージの悪化、値下げ競争の激化による客単価の低下を危惧しているためです。食品ロスは削減しなければなりませんが、企業の利益を守るという意味では、値下げ販売をしないコンビニの判断には説得力があります。

所得の二極化・子どもの貧困により食品ロスへの問題意識が高まる

日本には少子高齢化、男女平等、所得の二極化、子どもの貧困、非正規労働者の拡大、キャッシュレスなど、様々な社会問題があります。食品ロスはこうした社会問題の一つであり、関心を持つ人が増えています。日本が抱えている社会問題の多くは、世界共通の問題でもあり、食品ロスを減らす取り組みが全世界で行われています。食品ロスについてまったく知らないことはないが、自分には関係ない、あるいは、自分は食品ロスをしていないと考える人が多いのではないでしょうか。食品関係の仕事をしていない人、食品ロスの現場を見たことがない人は、食品ロスを自分の問題として認識しにくいです。

世界的に食品ロスへの問題意識が高まっていますが、食品を捨てることがもったいないだけではなく、社会変化の変化もあります。国際慈善団体オックスファムの報告によると、世界で最も裕福な26人が保有する総資産は、世界で所得が最も低い38億人が保有する総資産と同等で、所得の差は拡大を続けているとのことです。お金持ちとそうでない人の所得格差が大きくなると、毎日の食料に困るような人も増えます。また、人口増加により食品の消費量が増え、世界的に食品価格が上昇しています。所得の二極化、食品価格の上昇といった社会変化により、食品ロスが重要な社会問題として浮上しています。

農林水産省、環境省の推計によると、日本では年間2,842万トンの食品廃棄物等が発生しており、このうち、まだ食べられるのに廃棄されている食品は646万トンだとされています。日本の食品ロスは646万トンと推計され、食品ロスを国民一人当たりに換算すると、お茶腕約1杯分(約130~140g)の食品が毎日捨てられていることになります。日本では子供の頃から食べ物を粗末にしてはいけない、ものを大事にしなければいけないと教育されています。自分はもったいないことはしていないと考える人が多い中で、毎日お茶腕約1杯分の食品ロスがあると聞くと、大きな問題であることに気が付きます。

日本で食品ロスへの問題意識が高まる背景は、世界と同じものであると考えられます。非正規従業員の増加が続いており、普段、生活・仕事をしていても、格差社会が進行していることを感じられます。子どもの貧困についても広く知られるようになり、日本では子供の7人に1人が「相対的貧困」であるとされています。「相対的貧困」の子供とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯で暮らす、18歳未満の子供を指します。食事に困っている子供がたくさんいることを知ると、食品ロスを一層もったいなく感じるようになります。

食品ロスを減らすために、小売業、飲食業、消費者、それぞれの立場で貢献できることがあります。小売業、飲食業は需要予測の精度を高める、品揃えを絞り込む、値下げ販売を行うなどにより、食品ロスを減らすことに貢献できます。消費者は食品の消費期限が短い商品を敬遠せずに買う、自宅にある食品の消費期限への意識を高める、飲食店のドタキャンを止めるなどにより、食品ロスを減らすことに貢献できます。食品を購入する場合、多くの人が消費期限が長い商品を購入します。個人の利益を確保するための当然の行為ではありますが、消費期限の短い食品は買い手が付かず、食品ロスになります。

食品ロスを減らすための効果的な方法は、消費期限が迫った、食品ロス一歩手前の商品をいかにしてお客さんに買ってもらうかではないかと思います。値下げ販売は食品ロスを減らすために効果的で、多くの店舗が消費期限が迫った食品を値下げ販売しています。しかし、値下げ販売は完全ではなく、値下げ販売をしてもお客さんが店舗に来ない、店舗に来ても値下げ販売に気づいてもらえないといった課題もあります。値下げ販売をしていることをお客さんに通知する仕組みがあれば、食品が売れる確率が高まります。値下げ販売の通知をスマートフォンに送る方法は、食品ロスの削減に効果がありそうです。

コンビニのクリスマスケーキ・恵方巻きの食品ロスが注目される

食品ロスについて問題意識が高まったことで、企業が出している食品ロスに対しても、厳しい意見が寄せられます。コンビニでは食品ロスが多く発生しており、季節商品の販売方法を含め、批判を受けるようになっています。コンビニはクリスマスケーキ・恵方巻きを積極的に販売していますが、売れ残ったクリスマスケーキ・恵方巻きは廃棄されます。また、コンビニの従業員は、クリスマスケーキ・恵方巻きの販売ノルマを課せられることもあります。クリスマスケーキ・恵方巻きは、お客さんが楽しみにしている季節商品ですが、商品の裏側にある、食品ロス、販売ノルマが批判の対象になっています。

食品を販売する小売業は、商品の消費期限が迫れば、値下げをして販売することが多いです。これは商品を廃棄してしまうよりも、値下げ販売をして、少しでも売上を回収した方が利益が増えるからです。多くの小売業は商品の値下げ販売を行っていますが、コンビニは値下げ販売せず、商品を廃棄しています。コンビニは商品を値下げ販売をして、売上を回収するよりも、廃棄した方が利益に繋がると考えていることになります。コンビニは以前から食品ロスを出していましたが、クリスマスケーキ・恵方巻きの食品ロスが知られるようになったことで、以前からの食品ロスも批判されるようになっています。

コンビニの食品ロスが広く知られるようになったのは、ソーシャルメディアの利用者が増えたためです。コンビニで働いていて、食品ロスに疑問を持つ人たちは、ソーシャルメディアに食品ロスの状況を投稿するようになります。ソーシャルメディアで注目を集めると、情報はインターネットに広く拡散され、テレビ、新聞などのメディアにも広がります。コンビニのクリスマスケーキ・恵方巻きの食品ロスが、社会に広く知られるようになったのは、ソーシャルメディアの効果です。コンビニの従業員がソーシャルメディアに投稿する、食品ロスの現場写真を見ると、実際に行われているものだと理解できます。

ソーシャルメディアが普及したことで、従来のメディアでは得られなかった情報が得られるようになっています。これまでは主にテレビ、新聞で情報を得ていましたが、テレビ、新聞の情報は、多くの情報の中から編集者が選んだもので、情報量も少ないです。一方、ソーシャルメディアの情報は閲覧者の「いいね」で情報が選ばれていて、テレビ、新聞に載らなかった情報にスポットライトが当たっています。ソーシャルメディアを利用していると、自分が知らなかったこと、自分にとって無関係であったことが、他の人にとっては非常に重要な問題であったことを知り、恥ずかしく感じることがあります。

コンビニはなぜ値下げ販売をせず、商品を廃棄するかですが、これはコンビニの立地・商圏と関係しています。コンビニの商圏は狭いため、値下げ販売をしてしまうと、お客さんに値下げ販売の商品をターゲットにされます。コンビニの店舗は徒歩や自転車で行ける距離にあることが多いので、値下げ販売のタイミングを狙って買い物をするのは簡単です。コンビニは陳列を良く見せる、機会損失を減らす目的で、商品を多めに用意しています。コンビニの競合店舗は近隣に多数あるため、品揃えのボリューム不足、欠品でお客さんをがっかりさせてしまうと、近隣の競合店舗にお客さんを奪われてしまいます。

コンビニは商品を値下げ販売せずに、廃棄していますが、これはコンビニのフランチャイズ契約と関係しています。コンビニのフランチャイズ契約では、食品ロスは加盟店が負担するようになっていることが多いようです。コンビニ本部の立場としては、加盟店には食品ロスを恐れずに多めに発注してもらい、機会損失を減らし、売上を増やしてもらいたいです。食品ロスを出してでも、積極的に販売数量を伸ばすことは、コンビニの基本的な販売戦略です。こうしたコンビニの販売戦略が問題にされることはなかったのですが、食品ロスへの関心が高まったことで、コンビニの食品ロスへの批判が強まっています。

値下げ販売を行うとコンビニ業界全体の売上が減る可能性がある

食品ロスを減らさなければならないとい意識が高まり、コンビニを含め、小売業へのプレッシャーが強くなっています。以前から食品の値下げ販売を行っていた小売業にとっては、食品ロスへの関心が高まることは問題ではありません。しかし、これまで値下げを販売を行わず、食品ロスを減らす取り組みが不十分であったコンビニは、重要な局面を迎えています。2019年の恵方巻きの販売について、農林水産省は2019年1月1日付けで、小売業者の団体に対し、「恵方巻きのシーズンを控えた食品の廃棄を削減するための対応について」を発出し、恵方巻きの需要に見合った販売を要請しています。

コンビニが値下げ販売をしないこと、値下げ販売をしないことにより、食品ロスが多いことについては、説得力のある理由があります。コンビニが値下げ販売を行うと、お客さんは値下げ販売の商品をターゲットにするため、各店舗の売上が減少する可能性があります。値下げ販売をすることによって得られる売上と、値下げ販売をしないことによって失う売上、食品ロスの合計を比較した結果、コンビニは値下げ販売をしない方の利益が大きいと判断していることになります。値下げ販売をする場合、しない場合の利益を正確に計算することは難しいですが、コンビニの判断には説得力があると思います。

もし、コンビニが値下げ販売を行うようになると、お客さんの買い物行動も変わります。コンビニが値下げ販売を行うと、お客さんは値下げ販売の商品を優先的に買うようになります。値下げ販売の商品は、これまでは廃棄される商品であったため、コンビニは食品ロスが減り、新しい売上を獲得します。一方、これまで定価で売れていた商品が売れなくなり、この商品がどうなるのかは予測が難しいです。定価のまま別のお客さんが買う、値下げしたのち別のお客さんが買う、売れることなく廃棄される可能性があります。いくつかのシナリオの組み合わせにより、売上が増える、減る、どちらも考えられます。

コンビニ業界全体で値下げ販売を行うようになると、地域の値下げ競争が激しくなります。コンビニは店舗数が増え続けており、各店舗の距離はますます近くなっています。商圏によっては、二つのコンビニに立ち寄って、安い方で買い物をすることもできます。コンビニのお客さんの多くがリピーターなので、時間が経てば値下げ販売のタイミングが分かり、値下げ販売の時間にお客さんが殺到することになります。値下げ販売がコンビニ業界へ与える影響を見積もることは困難ですが、最悪の場合、地域のコンビニ同士の競争が激化し、客単価が下がり、コンビニ業界全体の売上が減ることもありそうです。

コンビニの食品ロスについて、批判的な意見が増えていますが、コンビニは値下げ販売をしたくないのではないかと思います。コンビニのビジネスモデルは、アクセスの良い立地に店舗を構え、買い物の利便性を武器にナショナルブランド商品を高価格で販売するというものです。スーパーマーケット、ディスカウントストア、ドラッグストアに行けば、ナショナルブランド商品を安く買えるのですが、忙しい人はついついコンビニで買ってしまいます。また、近年はコンビニ各社ともに、プライベートブランドの品揃えを拡大しており、こちらも高付加価値を武器に、高価格の商品を販売しています。

コンビニは商品を高い価格で販売して、高い営業利益率を確保するために、企業努力を続けています。商品を値下げして販売することは、商品を高い価格で売るコンビニの戦略と正反対です。コンビニの商圏が狭いことも、値下げ販売の実施を難しくしています。コンビニ各社ともに十分な営業利益を稼いでおり、食品ロスが発していることについて、収益面では問題にはなっていません。ただ、食品ロスへの関心が高まる中で、値下げ販売をせず、廃棄を続けることは企業のイメージを損ねます。食品ロスを減らすために、コンビニがどのような施策を実施するのか、これからの動向に注目が集まります。

テクノロジーの進歩により小売業が値下げ販売を行うリスクは低下

小売業では過去の販売データを使って将来の販売数量を予測して、商品の仕入・販売を行っています。食品ロスが発生する最大の原因は、販売数量の予測が外れてしまうことです。販売数量の予測については、AI(人工知能)などのテクノロジーの活用が進んでいて、精度が高まっているとされています。また、小売業はポイントカード、スマートフォンアプリを使って、お客さんの購買データの蓄積を進めています。お客さんの購買データを販売数量の予測に活用すれば、さらに予測精度を改善することができます。販売数量の予測精度が高まっていることは、食品ロスを減らすうえでポジティブなことです。

小売業はお客さんの需要を事前に予測して、商品を店頭に並べて販売していますが、この販売方法を変えれば、食品ロスを減らすことができます。お客さんに事前(数日前)にオンラインで必要な商品を注文してもらえれば、無駄のない商品の仕入・販売が行えます。お客さんは自分の好きなタイミングで店舗を訪れ、商品を購入することを望んでいるとされています。しかし、事前注文に割引などのインセンティブを付ければ、事前注文で購入してくれるお客さんもいるはずです。オンラインで商品を注文をしてもらい、店頭で商品を渡す販売方法には、食品ロスを減らす効果があると思います。

お客さんは店頭で複数の同じ商品を見比べて、消費期限が一番長いものを購入します。商品の価格が同一の場合、消費期限が長い商品は、消費期限が短い商品よりも価値があります。消費期限が短い商品は、次々に後ろに追いやられるので、売れ残り、食品ロスに繋がる確率が高くなります。食品ロスを減らすために、消費期限が短い商品を積極的に買いましょうという考え方もありますが、実践することは難しいです。消費期限が短い商品と長い商品に同一の価格を支払うことは心理的に難しく、消費期限が短い商品を買ってしまうと、自宅で食品ロスが発生してしまうことになります。

何らかの方法を使って、消費期限の長さで価格を変更することができれば、消費期限の短い商品も売れやすくなります。消費期限が短くなっている商品は、商品としての価値が下っている訳ですから、価格も下がることが望ましいです。将来的にすべての商品に電子タグが付けられるようになれば、店舗にある商品一つ一つに、消費期限の長さに応じた価格設定が可能になる見込みです。消費期限の長さに応じて価格を設定すると、商品の販売価格の低下、食品ロスの減少(売上の増加)が同時に起こります。最終的に小売業の利益が増えるかどうかは計算が難しいですが、食品ロスを減らす効果は確実にあります。

食品の値下げ販売を行なっている小売業の中には、値下げ販売をしても、なお売れ残り、食品ロスになるものが存在しています。何らかの方法でこうした食品ロスを減らすことができれば、小売業は売上を増やすことができます。自社が提供するスマートフォンアプリに、値下げ販売の通知を行う仕組みは効果的です。値下げ情報をスマートフォンアプリに通知して、スマートフォンアプリで商品の注文・取り置きができれば、食品ロスを減らすことができます。ただ、販売する商品の価格が安いので、そこまで手間を掛けて取り組む価値があるか、お客さんが利用してくれるかどうかは分かりません。

大切な商品を値下げ販売することには抵抗があり、長期的に品単価の下落を招いてしまうことは、小売業にとってはリスクでもあります。しかし、所得の二極化、子どもの貧困などの厳しい状況を考えると、小売業は食品ロスの削減に意欲的に取り組むべきではないかと思います。小売業で働く従業員も、所得の二極化、子どもの貧困などの問題を知っていて、食品を廃棄することは従業員のモチベーション低下にも繋がります。商品の販売数量を予測する精度は改善され、食品ロスを減らす新しいソリューションも次々に登場しているため、小売業が値下げ販売を行うリスクは小さくなっています。