セブンイレブン・ファミリーマート・ローソンが成人向け雑誌の販売をやめる理由

セブンイレブン・ファミリーマート・ローソンが成人向け雑誌の販売をやめる理由

セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ大手三社は、成人向け雑誌の取り扱い中止を発表しました。コンビニ各社が成人向け雑誌の取り扱いを中止する理由は同じもので、子供、女性、高齢者、訪日外国人(インバウンド)が買い物がしやすい店舗作りをするためです。コンビニは若い男性向けの店舗でしたが、女性、訪日外国人(インバウンド)のお客さんも増え、客層が大きく変化しています。数年前からコンビニに成人向け雑誌があるのは好ましくないという意見が増えており、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの大手三社で、同じタイミングで取り扱い中止が決定されました。

コンビニ大手三社が成人向け雑誌の取り扱いを中止した理由は、買い物がしやすい店舗作りだけではなく、成人向け雑誌の売上減少もあったのではないかと思います。紙の書籍・雑誌は人口減少、インターネット・スマートフォンの普及などにより、市場規模の縮小が続いています。売上への貢献が小さい成人向け雑誌の販売を続けるよりも、需要がある惣菜を含め、食品の売り場を拡大する方が店舗の収益性が高まります。今回は成人向け雑誌の取り扱いが中止されましたが、これからも売上への貢献が小さい非食品は取り扱いが中止され、食品の売り場を増やす方向になるのではないかと予想しています。

成人向け雑誌の取り扱い中止の理由は客層の変化に対応するため

ローソンは2019年1月21日、全国のローソンの店舗(14,574店:2018年12月末時点)において、原則全店にて、2019年8月末までに「成人向け雑誌」の取り扱いを中止することを発表しました。これまで成人向け雑誌の取り扱いは加盟店が判断していましたが、ローソン本部が成人向け雑誌の推奨を取り止めるとのことです。ローソンは2017年11月より、沖縄県の全店舗(231店:2018年12月末現在)で成人向け雑誌の取扱いを中止しており、お客さん、加盟店からの理解が得られています。沖縄県の店舗で得た実績をもとに、成人向け雑誌の取り扱い中止を全国の店舗に拡大して行くことになります。

日経新聞が2019年1月21日に報じた内容によると、セブンイレブンは加盟店に対して成人向け雑誌の推奨を取り止め、2019年8月末までには、ほぼ全店で成人向け雑誌が無くなる見込みです。セブンイレブンのニュースリリースには、成人向け雑誌の取り扱い中止のニュースはありませんが、多くのニュースサイトが報じています。セブン&アイ・ホールディングスの広報によると、成人向け雑誌の取り扱い中止は、女性や高齢者など、幅広い層に快適に利用してもらうためのものです。また、外国人のお客さんも増えており、オリンピック、ラグビーワールドカップ、万博の開催で、さらなる増加が見込まれます。

2019年1月21日、ローソンはニュースリリース、セブンイレブンはニュースサイトにより、成人向け雑誌の取り扱いを中止するとの情報が出ました。1日後の2019年1月22日には、ファミリーマートも成人向け雑誌の取り扱いを中止するというニュースが出ました。ファミリーマートもセブンイレブンと同様に、ニュースリリースはありませんが、多くのニュースサイトが報じています。ファミリーマートが成人向け雑誌の取り扱いを中止する理由は、女性や子どもに安心して買い物をしてもらうため、2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博を控え、訪日外国人(インバウンド)が増加しているためです。

セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ大手三社が成人向け雑誌の取り扱い中止を決定しましたが、業界四番手のミニストップは2018年1月1日から成人向け雑誌の取り扱いを中止しています。コンビニの成人向け雑誌については、以前から議論されるようになっていて、将来的には取り扱いが中止になるのではないかと考えられていました。ミニストップの取り扱い中止の決定が早かったのは、大手三社とは異なる店舗作りをすることで、差別化する狙いがあったと思います。また、大手三社と比較して、ミニストップは女性客の構成比が小さいとされていて、女性客の取り込みに積極的です。

コンビニで陳列されている成人向け雑誌については、性別、年齢によって、どのように考えるか大きな違いがあります。成人向け雑誌は男性客に販売するものがほとんどであるため、男性客にとっては、成人向け雑誌の存在に不満を持つ人はほとんどいません。一方、女性が成人向け雑誌を買うことは少ないので、成人向け雑誌がコンビニに存在することの意味は小さく、内容的にも不満を持つ人がいます。また、年齢によっても違いがあり、昔からコンビニを利用している中高年のお客さんは、成人向け雑誌があることに慣れていて、性別に関係なく、存在自体をあまり意識していないようです。

訪日外国人(インバウンド)にとって、コンビニの成人向け雑誌がどのようなものなのかと考えると、多くの人が意識していないのではないかと思います。どんな雑誌を販売しているのか、好奇心を持って陳列棚を眺めることはありそうですが、文字が読めないので、実際に買う人は少なそうです。成人向け雑誌が存在していることによって、訪日外国人(インバウンド)の買い物がしにくくなっているかというと、そのようには感じません。成人向け雑誌の取り扱いを中止するにあたって、中止の理由は多いほどよいので、幅広いお客さんという点で、訪日外国人(インバウンド)も盛り込まれたように見えます。

コンビニは女性客の増加により男性向け店舗から女性向けへと転換

セブンイレブンが東京港区に1号店「豊洲店」をオープンしたのは1974年5月15日で、豊洲店をコンビニの歴史の始まりとすると、コンビニには45年の歴史があります。コンビニは時代に合わせて品揃えを変えていますが、昔のコンビニの主力商品と言えば、新聞・雑誌、飲料・お酒、弁当・パン、お菓子といったもので、これらは主に若い男性客をターゲットにしたものです。昔のコンビニの品揃えはナショナルブランド商品が中心で、価格はスーパーマーケットよりも高いです。専業主婦が多かった時代、女性は価格が安いスーパーマーケットで買い物をするので、コンビニで買い物をするのは男性ばかりでした。

コンビニのレイアウトには規則があり、店舗を入ると左右どちらかに雑誌コーナーがあり、雑誌コーナーを曲がると、飲料・酒のコーナー、その先を曲がると弁当・パンがあります。これは店舗を一周して買い物してもらうことを想定していますが、このレイアウトは男性を意識したものです。仕事中に時間を潰す必要があるお客さんは、雑誌コーナーで立ち読みをしながら時間を潰し、店内をグルっと回って飲料・酒、弁当・パンを購入します。社会の変化に合わせて品揃えは大きく変わっていますが、全国の店舗のレイアウトを変更するのは大変なので、店舗のレイアウトは昔から大きく変わっていません。

セブン&アイホールディングスの2017年2月期の決算説明会資料によると、セブンイレブンの2007年度の女性客比率は42.3%、2016年度は47.4%となっており、女性客比率が上昇しています。コンビニを利用する女性が増加する理由は、仕事を持つ女性が増え、晩婚化・非婚化が進んだためです。男性と同じように仕事をする女性が増えれば、男性と同じような消費行動をするので、コンビニで買い物をする女性が増えます。コンビニのナショナルブランド商品はスーパーマーケットよりも価格が高いですが、買い物に時間が掛からないため、仕事で忙しい人は性別に関係なくコンビニで買い物をします。

コンビニの店舗は男性向けに作られていますが、コンビニで買い物をする女性が増えたことにより、男性向けの店舗に不満を持つ女性が増えています。成人向け雑誌は昔からコンビニで販売している商品で、男性のお客さん向けの商品です。女性のお客さんは成人向け雑誌を必要としない人が多く、成人向け雑誌がコンビニにあることに不満を感じる人もいます。成人向け雑誌は男性向け店舗であるコンビニの一つの要素で、成人向け雑誌以外にも、女性が不満を持つ要素はあります。コンビニのトイレ、駐車場も男性客の利用を想定して作られているため、使いにくいと不満を持つ女性もいます。

コンビニは小売業の中で最も成功を収めている業種ですが、コンビニの成功の理由は、お客さん・社会の変化に対応して、コンビニも変化を続けてきたからです。現在、コンビニにとって最大のチャンスは女性の変化で、女性の社会進出が進んだことにより、コンビニには新しい需要が生まれています。コンビニ各社は夕食向けの惣菜を強化しており、仕事で忙しい女性が購入してくれることを期待しています。コンビニにとって女性は有望なお客さんなので、成人向け雑誌は不要だと言われれば、取り扱いを中止するのは妥当です。女性のお客さんが買い物をしやすい環境を作った方が、より惣菜の売上が伸びます。

小売業だけではなくすべてのビジネスに当てはまりますが、売上が安定的に獲得できる既存顧客よりも、新しい売上になる新規顧客の獲得に企業は注力します。コンビニにとって男性は既存顧客、女性は新規顧客に当たるため、女性の意見を積極的に取り入れるのは適切な判断です。今後、コンビニは女性のお客さんが買い物をしやすい店舗作りを進めて行くことになりますが、男性のお客さんが特に困ることはないと思います。特定の商品がコンビニで買えなくなったとしても、他にも買える店舗があります。成人向け雑誌は、書店でも買えますし、インターネットでも買うことができます。

訪日外国人(インバウンド)は既存店の売上アップに大きな貢献

セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンは成人向け雑誌の取り扱いを中止しましたが、理由の一つに訪日外国人(インバウンド)の増加が挙げられています。訪日外国人(インバウンド)のアンケート調査を見ると、食べ物は楽しみにしていることの上位にランクインしています。コンビニの食品は訪日外国人(インバウンド)の人気を集めており、YouTube、Twitter、Instagramを検索すると、コンビニの食べ物の投稿がたくさん出てきます。訪日外国人(インバウンド)にとっても、コンビニは便利に食品を買える店舗であり、日本人以上にコンビニを利用している人もいるかもしれません。

コンビニにとっては、女性のお客さんは新規顧客であると言えますが、訪日外国人(インバウンド)も同様に新規顧客です。コンビニが新規顧客である、訪日外国人(インバウンド)の利用者を増やすため、訪日外国人(インバウンド)が買い物をしやすい店舗作りをすることは順当です。成人向け雑誌が訪日外国人(インバウンド)の買い物のしやすさに大きく関係しているとは思いませんが、訪日外国人(インバウンド)がコンビニに成人向け雑誌を求めているとも思えません。成人向け雑誌の取り扱いを中止する理由として、訪日外国人(インバウンド)を挙げることで、より説得力が増すというのはありそうです。

百貨店、ドラッグストア、ディスカウントストアは、訪日外国人(インバウンド)の取り込みに成功しており、売上高を伸ばしています。訪日外国人(インバウンド)がありがたい存在なのは、買い物意欲が高く、日本人のお客さんよりも客単価が高いことです。ドンキホーテホールディングスの2018年6月期の決算業績説明資料によると、免税客の客単価は国内平均の約4.6倍、中国人のお客さんに限ると、客単価は約6.3倍となっており、一人あたりの買い物金額が大きいです。こうした傾向はドン・キホーテだけではなく、多くの小売業、飲食業でも報告されており、コンビニにも当てはまっているはずです。

コンビニが大きく売上を伸ばせそうなのは、訪日外国人(インバウンド)によるイートインの利用です。訪日外国人(インバウンド)は友人、カップル、家族など、複数人で旅行していることが多く、イートインではまとまった数量を販売できます。コンビニの食品は訪日外国人(インバウンド)に人気になっており、旅行期間中、何度もイートインを利用してもらうことが期待できます。また、イートインを利用すれば、ゴミが出ないことも訪日外国人(インバウンド)にとっては好都合です。訪日外国人(インバウンド)がイートインを利用しやすい店舗作りを行えば、コンビニは日販を増やせると思います。

コンビニは狭い商圏でビジネスを行なっており、コンビニの利用者の多くはリピーターのお客さんです。コンビニは広域から集客することができないため、売上・客数が頭打ちになることが多いです。コンビニ業界はいよいよ飽和状態になったと言われていて、店舗の純増数の減少、既存店の客数の減少が加速しています。コンビニの既存店が厳しい環境にある中、外国からやって来て、買い物をしてくれる訪日外国人(インバウンド)はありがたい存在です。訪日外国人(インバウンド)が長期的なリピーターになることはありませんが、商圏の外からやって来て、店舗の売上に貢献してくれています。

訪日外国人(インバウンド)は東京、大阪、福岡、北海道など、一部の地域に集中していますが、政府・観光業界は、地方への旅行者が増えるように取り組んでいます。訪日外国人(インバウンド)が地方を訪れれば、地方のコンビニでも買い物をしてもらえます。訪日外国人(インバウンド)のお客さんは、女性のお客さんと同様に、コンビニに新しい売上をもたらす重要な存在です。コンビニ各社は翻訳サービス、キャッシュレス決済などを導入して、訪日外国人(インバウンド)の買い物の利便性を高めています。成人向け雑誌の取り扱い中止も、訪日外国人(インバウンド)の買い物の利便性を高める施策の一つです。

コンビニならではの強みが活かせるのは付加価値の高い食品の販売

コンビニの成人向け雑誌の取り扱いについては、数年前から様々な意見がありました。今回、子供、女性、高齢者、訪日外国人(インバウンド)が買い物がしやすい店舗作りを進めるという理由で、大手コンビニ三社は成人向け雑誌の取り扱い中止を決定しました。しかし、この理由が成人向け雑誌の取り扱い中止のすべてではなく、売上への貢献が小さかったというのもあると思います。ファミリーマート、良品計画は2019年1月30日、ファミリーマートでの無印良品の取り扱い終了を発表しました。良品計画の業績は好調ですが、ファミリーマートでは、無印良品の商品は売れていなかったと推測されています。

成人向け雑誌を含む、書籍・雑誌は人口減少、インターネット・スマートフォンの普及などの理由により、市場規模の縮小が続いています。出版業界の調査研究機関である、出版科学研究所が2019年1月25日に発表したデータによると、紙の出版物の2018年の推定販売金額は1兆2,921億円(前年比5.7%減)です。紙の雑誌は5,930億円(前年比9.4%減)、書籍は6,991億円(前年比2.3%減)であるのに対し、電子の出版物は2,479億(前年比11.9%増)となっています。紙の出版物の市場規模は縮小が続いており、コンビニで販売している紙の出版物についても、販売数量が減少していると見ることができます。

コンビニでは昔から雑誌を販売していますが、雑誌には販売して売上を稼ぐこと、立ち読みによる集客力アップの二つの役割があります。しかし、インターネット・スマートフォンの普及により、立ち読みによる集客力アップの効果は薄れています。昔はコンビニで立ち読みをしている人を見かけることも多かったのですが、近年は雑誌に封をして立ち読み対策をしている店舗も増え、立ち読みをする人が減っている印象です。今は時間を潰す場合、自分のスマートフォンを使えばいいので、以前であればコンビニに行っていた人たちは、いろいろなところに立ち止まって、自分のスマートフォンを操作しています。

コンビニが店舗の集客力をアップするためには、雑誌ではなく、イートインスペースが必要です。コンビニにイートインスペースがあれば、あちこちで立ち止まってスマートフォンを操作している人たちは、コンビニにやって来る可能性があります。イートインスペースに座って、スマートフォンを操作するだけだと申し訳ないので、飲み物、食べ物を買ってくれるはずです。昔のお客さんは時間潰しのため、雑誌(コンテンツ)を求めていましたが、今のお客さんは時間潰しのためのスペースを求めています。お客さんはスマートフォンというコンテンツを常に持っており、雑誌(コンテンツ)を必要としていません。

大手コンビニ三社は成人向け雑誌の取り扱い中止を決定しましたが、今後も非食品の取り扱い中止は起こると思います。コンビニは近くの店舗で簡単に買い物ができるという利便性を強みに、ナショナルブランド商品を比較的高い価格で販売してきました。しかし、現在ではドラッグストアは店舗数が増え、ネット通販は当日配送を充実させています。数時間後、あるいは明日必要な商品は、コンビニだけではなく、ドラッグストア、ネット通販でも間に合います。逆にコンビニは品揃えの少なさが弱点になり、ドラッグストア、ネット通販に非食品のお客さんを奪われることも考えられます。

アクセスの良い立地を活かして、付加価値の高い食品を販売することが、コンビニならではの強みだと言えます。競争が激しい、あるいは売上が小さい非食品に売り場を割り当てるよりも、食品の売り場を拡大した方がよいのではないでしょうか。忙しくて買い物の時間がない、料理の時間がないという家庭が増えており、近くの店舗で時間を掛けずに惣菜を買いたい需要が増加しています。夕食の惣菜は家族の人数分買うため、従来のコンビニの食品とは異なり、購入点数も多くなります。また、お客さんは美味しいものには高いお金を払うので、品単価が高くなれば、売上も大きく増えることになります。