2018年の百貨店・チェーンストア・コンビニ・訪日外国人(インバウンド)の動向

2018年の百貨店・チェーンストア・コンビニ・訪日外国人(インバウンド)の動向

2018年の小売業を振り返る資料が発表されており、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、日本フランチャイズチェーン協会、日本政府観光局の各レポートをまとめました。小売業には各業種ごとにトレンドがありますが、2018年も大きなトレンドには変化がなく、例年通りと言えるのではないかと思います。日本は少子高齢化による人口減少で経済活動が縮小しており、小売業でも緩やかな縮小が見られるようになっています。現在のところ、小売業の売上高は微増・微減の状況にありますが、これから人口減少のスピードが加速して来ると、どのような状況になるのかは予測できません。

人口減少で経済活動が縮小して行くため、今後は大手チェーン店でも売上高の減少が起こります。一部の好調な小売業は新規出店数が多いですが、多くの小売業は規模の拡大で成長することが難しくなります。小売業は売上高、新規出店数を重視するのではなく、売上総利益率、販売費及び一般管理費率、営業利益率など、収益性を重視するべきではないかと思います。売上高が増えないことには恐怖もありますが、売上総利益率、販売費及び一般管理費率の改善で営業利益を増やす余地はあります。また、店舗の生産性が高まれば、従業員の労働時間の短縮に繋がり、売上高が増えることとは別の喜びもあります。

2018年の全国百貨店売上高は衣料品・食料品が不調で前年割れ

日本百貨店協会が2019年1月23日に発表した「全国百貨店売上高概況」によると、2018年の全国百貨店売上高は5兆8,870億円(前年比0.8%減)となっています。2014年の6兆2,124億円から5.2%減少しており、売上高がジワジワと減少するトレンドが続いています。近年は訪日外国人(インバウンド)の売上高が高い成長率を記録しているものの、日本人の売上高が減少しているため、全体の売上高を伸ばすことができていません。都市部の店舗と比較して、地方の店舗の売上高の減少率が大きくなっており、都市部の店舗の売上高を伸ばしながら、地方の店舗の売上高の減少に歯止めを掛けたいところです。

2018年の訪日外国人(インバウンド)の購買客数は524万人(前年比28.6%増)、売上高は3,396億円(前年比25.8%増)となり、ともに過去最高の数字です。百貨店全体の売上高に占める、訪日外国人(インバウンド)の売上高は5.8%となり、訪日外国人(インバウンド)の売上高構成比は上昇を続けています。日本の商品が中国を始めとするアジアのお客さんに好まれており、百貨店の訪日外国人(インバウンド)の売上高は好調が続いています。ただ、訪日外国人(インバウンド)の売上高が百貨店の売上高の中心になることはないので、日本人のお客さんの売上高を伸ばさなければ、百貨店の成長は望めません。

2018年の商品別の売上高は、衣料品は1兆7,725億円(前年比3.1%減)、身のまわり品は7,859億円(前年比1.6%増)、雑貨は1兆1,344億円(前年比5.0%増)、家庭用品は2,385億円(前年比5.7%減)、食料品は1兆6,229億円(前年比1.9%減)、食堂喫茶は1,526億円(前年比3.3%減)、サービスは593億円(前年比2.9%減)、その他は1,205億円(前年比4.2%減)、商品券1,435億円(前年比5.9%減)となっています。雑貨カテゴリに含まれている、化粧品(前年比9.5%増)、美術・宝飾・貴金属(前年比3.3%増)を除けば、すべての商品の売上高が前年を下回っており、厳しい販売状況が続いています。

衣料品の売上高は全体の30.1%を占めており、百貨店が売上高を伸ばすには、衣料品の改善が不可欠です。百貨店の衣料品の売上高が落ち込む要因には、高齢者の消費活動の縮小、若い世代の人口減少、若い世代の賃金低迷、低価格衣料品の拡大、ネット通販の普及、フリマアプリの登場などが考えられます。高齢者の消費の縮小を若い世代の消費で補うことができず、売上高が減少する状況が続いています。食料品の売上高は全体の27.6%を占めており、衣料品に続く重要なカテゴリです。小売業全体では食料品の販売が好調ですが、低価格の商品が売れており、高価格の商品が多い百貨店の販売は不調です。

2018年の地区別の売上高は、10都市は4兆1,518億円(前年比0.3%増)、10都市以外の地区は1兆7,351億円(前年比3.4%減)となっています。10都市は札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡で、百貨店にとって特に重要な都市として分類されています。10都市の売上高は百貨店全体の売上高の70.5%を占めており、売上高は前年を上回っています。10都市と10都市以外の地区では、売上高構成比、売上高成長率に大きな差があり、都市と地方の格差が顕著です。10都市の売上高構成比、売上高成長率を見ると、今後の百貨店の投資は都市部に集中するのではないかと予想されます。

地方から都市への人口流出が続いており、地方の小売業は人口減少により、厳しい状況にあります。地方では中小店舗だけではなく、百貨店、総合スーパーなどの大型店も閉店しており、地域の小売業の魅力が失われています。近くの店舗で必要な商品が買えなくなってしまったお客さんはネット通販を利用するため、さらに地方の小売業の衰退が加速することになります。地方で生き残れるのは小型店舗を運営するチェーン店、地域一番店の大型店ではないかと思います。百貨店の店舗は老朽化して魅力が失われており、さらに固定費も大きく、厳しい地方の環境で売上高を伸ばすのは難しいです。

2018年のチェーンストア売上高は食料品の販売が堅調に推移

日本チェーンストア協会が2019年1月22日に発表した「チェーンストア販売統計」によると、会員企業58社の売上高(総販売額)は12兆9,883億円となっています。前年対比は店舗調整前は100.5%、店舗調整後(既存店)は99.8%です。食料品の販売については、農産物の相場の変動により、売上高が季節によって変動した結果、好不調の差が出ています。衣料品、住関品(住居関連商品)は天候不順の影響を受けており、衣料品は一年を通して販売が不調でした。全体を評価すると、食料品、住関品(住居関連商品)は堅調であったものの、衣料品は大きく落ち込んでおり、衣料品の販売状況は厳しいです。

2018年の既存店売上高は前年対比99.8%と大きな変化はありませんが、店舗の収益性の改善が見られます。2018年12月末の店舗数は10,447店舗(対前年同月比5.5%増)、売場面積は24,938,363平方メートル(対前年同月比4.0%減)、売場面積一平方メートルあたりの売上高は51,893円(対前年同月比4.7%増)となっています。売場面積の減少率よりも売上高の減少率は小さく、店舗の効率化・生産性アップが進んでいると推測できます。小売業では業種を超えた競争の激化、アルバイト・パートの採用難が続いており、新規出店数を増やすことよりも、既存店の効率化・生産性アップが重要になっています。

2018年の既存店の食料品の売上高は8兆5,739億円(前年比0.4%増)で、食料品の販売は順調です。食料品販売の内訳は、農産品は1兆2,232億円(前年比2.0%増)、畜産品は1兆57億円(前年比0.5%減)、水産品は7,734億円(前年比0.1%減)、惣菜は1兆357億円(前年比0.8%増)、その他食品は4兆5,357億円(前年比0.2%増)となっています。農産品の増加率が大きいですが、相場高によるものです。惣菜は需要があり、大きく伸びているイメージがありますが、増加率は大きくはありません。食料品は値上げを行うメーカーが増えており、値上げによって販売数量が減れば、売上高が減る可能性があります。

食品を販売する小売業にとって脅威になっているのが、ドラッグストアとの競争です。ドラッグストアは優れたローコストオペレーションと医薬品の粗利益を使って、ナショナルブランドの食品の低価格販売を行なっています。ドラッグストアチェーンの新規出店数は多く、近所にドラッグストアの店舗が増えているという実感があります。ナショナルブランドの食品を販売して来た総合スーパー、食品スーパーは、ドラッグストアにお客さんを奪われ始めています。総合スーパー、食品スーパーはドラッグストアよりもオペレーションコストが大きく、ナショナルブランドの食品の低価格販売では分が悪いです。

2018年の既存店の衣料品の売上高は1兆94億円(前年比5.3%減)で、食料品、住関品(住居関連商品)に比べて減少幅が大きいです。衣料品販売の内訳は、紳士衣料は1,922億円(前年比6.8%減)、婦人衣料は2,799億円(前年比7.9%減)、その他衣料・洋品は5,371億円(前年比3.2%減)となっています。衣料品の販売はすべてのカテゴリーで減少しており、若い世代のお客さんの取り込みができていないのではないかと考えられます。高齢者のお客さんは総合スーパー、スーパーマーケットで衣料品を購入しますが、需要は小さく、若い世代のお客さんは専門店、ネット通販で衣料品を購入しています。

2018年の既存店の住関品(住居関連商品)の売上高は2兆5,754億円(前年比0.8%減)で、減少幅は小さく、販売は堅調です。住関品(住居関連商品)販売の内訳は、日用雑貨は9,932億円(前年比2.5%減)、医薬・化粧品は3,721億円(前年比1.0%増)、家具・インテリアは6,994億円(前年比1.7%増)、家電製品は1,151億円(前年比6.4%減)、その他商品は3,955億円(前年比0.3%減)です。住関品(住居関連商品)の販売状況は、ニュース、普段の買い物で感じるイメージに近いです。日用雑貨の売上高減少率は住関品(住居関連商品)の中で最大で、ドラッグストアとの競争によるものではないかと推測されます。

2018年のコンビニは売上高は伸びるものの既存店の客数は減少

日本フランチャイズチェーン協会が2019年1月21日発表した「コンビニエンスストア統計調査」によると、コンビニの全店ベースの売上高は10兆9,646億円(前年比2.6%増)、既存店ベースの売上高は9兆7,244億円(前年比0.6%増)となっています。2018年12月末の店舗数は55,743店舗で、2017年12月末の55,322店舗から421店舗増えています。2018年の全店ベースの来店客数は174億2,665万人(前年比1.2%増)、既存店ベースの来店客数は157億673万人(前年比1.3%減)です。2018年の全店ベースの客単価は629.2円(前年比1.4%増)、既存店ベースの客単価は619.1円(前年比1.9%増)です。

コンビニは既存店の客数が減少する月が増えていて、近年は飽和状態だと言われることが増えています。既存店の客数は減少していますが、女性の社会進出、単身世帯の増加、高齢化社会、訪日外国人(インバウンド)の増加など、コンビニにはチャンスになる社会変化が起きています。2018年は既存店ベースの客数が前年割れしている点は不安材料ですが、新規出店、客単価の上昇により、全店ベース、既存店ベースともに売上高は前年をクリアしています。既存店の客数減少は、店舗数の増加による競争の激化、人口減少と関係しており、今後も既存店の客数減少は続くのではないかと予想されます。

2008年から2018年までの十年間において、各年度で既存店の客数が前年割れをした月数を集計すると、コンビニの飽和状態を評価する一つの指標になります。各年度で既存店の客数が前年割れをした月数は、2008年は2、2009年は6、2010年は6、2011年は1、2012年は7、2013年は9、2014年は10、2015年は4、2016年は10、2017年は12、2018年は10です。2009年から前年割れをする月数が増え始めていて、2016年以降は前年割れが固定化しつつあります。2016年3月から2018年7月までは29ヶ月連続で前年割れが続いており、コンビニの飽和状態を感じさせるデータです。

既存店の客数が前年割れをした月数と同様に、各年度の店舗の純増数も、コンビニの飽和状態を評価する指標になります。各年度の店舗の純増数は、2009年は915、
2010年は743、2011年は1,025、2012年は2,508、2013年は2,430、2014年は2,699、2015年は970、2016年は624、2017年は1,694、2018年は421です。2012~2014年は店舗の純増数が2,000を超えていますが、以降は減少傾向にあります。既存店の客数減少を新規出店、客単価の上昇で補っており、将来的に新規出店の減少、退店数の増加が起これば、全体の売上高が減少する可能性があります。

2008年と2018年の客単価を比較すると、全店ベースでは37.7円上昇(591.5円から629.2円へ)、既存店ベースでは33.1円上昇(586.0円から619.1円へ)しています。普段コンビニで買い物をしていても、商品の価格が高くなっていることを感じます。セブンイレブンはプライベートブランド「セブンプレミアム」の品揃えを拡大していて、セブンプレミアムの商品の中には、ナショナルブランド商品よりも高価格のものもあります。2018年2月期のセブンプレミアムの売上高は1兆3,200億円(前期比14.8%増)となっていて、高い成長率を維持したまま、売上高を伸ばして行きそうです。

コンビニが今後も成長を続けて行くためには、店舗の純増数を増やすこと、既存店の客数を増やすこと、客単価を増やすことの三点がカギです。店舗の純増数と既存店の客数は関係が強く、店舗の純増数が増えるほど既存店同士の競争が激しくなり、既存店の客数は減ることになります。一方、客単価には競争が激しくなる影響はなく、客単価は高ければ高いほうが良いです。コンビニ各社は定期的に新商品を開発・販売しており、お客さんの人気を集めています。店舗の純増数、既存店の客数は将来の予測が難しいですが、客単価の上昇には確実な効果があり、コンビニの成長に不可欠だと言えます。

2018年の訪日外国人(インバウンド)は増加するも買物代は減少

日本政府観光局が2019年1月16日に発表した速報データによると、2018年の訪日外国人(インバウンド)は3,119万2,000人(前年比8.7%増)となっています。訪日外国人(インバウンド)の人数が多い東アジアの状況を見ると、韓国は753万9,000人(前年比5.6%増)、中国は838万100人(前年比13.9%増)、台湾は475万7,300人(前年比4.2%増)、香港は220万7,900人(前年比1.1%減)です。韓国、中国、台湾、香港で訪日外国人(インバウンド)全体の73.4%を占めており、引き続き高い構成比となっています。その他の国・地域についても増加率は高いものの、全体に与える影響は小さいです。

日本は少子高齢化で消費が縮小しており、訪日外国人(インバウンド)の買い物は小売業の売上高を下支えしています。百貨店、ドラッグストア、ディスカウントストアはアジアからの観光客の恩恵を強く受けており、売上高を伸ばしています。訪日外国人(インバウンド)は日本人のお客さんと比較して、客単価が数倍高いという特徴があります。また、訪日外国人(インバウンド)は買い物をするために日本に来ているため、衝動買いも発生しやすいです。訪日外国人(インバウンド)は外国人フレンドリーの店舗を好んでおり、訪日外国人(インバウンド)が利用しやすい店舗が人気になっています。

2018年の訪日外国人旅行消費額は4兆5,064億円、訪日外国人(一般客)1人当たり旅行支出は15万3,000円です。4兆5,064億円の内訳と構成比は、宿泊費は1兆3,222億円(29.3%)、飲食費は9,758億円(21.7%)、交通費は4,688億円(10.4%)、娯楽等サービス費は1,722億円(3.8%)、買物代は1兆5,654億円(34.7%)です。買物代は2017年の1兆6,398億円(37.1%)から金額、構成比ともに減少しています。訪日外国人(インバウンド)の関心は買い物から体験へと移っており、観光業界も体験の強化に注力しています。小売業としては残念ではありますが、買物代の金額は減少して行く可能性が高いです。

東アジアの買物代を見ると、韓国は1,607億円、台湾は2,105億円、香港は1,097億円、中国は8,033億円です。韓国、台湾、香港、中国の買物代の合計は1兆2,842億円となり、買物代全体の82%を占めています。中国の買物代は全体の51.3%を占めており、中国人のお客さんは小売業の売上高に最も貢献してくれています。韓国、台湾、香港、中国の買物代は全体の82%を占めており、小売業は韓国、台湾、香港、中国のお客さんに絞って対応すると効率がよいです。韓国、台湾、香港、中国のお客さんは日本人とライフスタイルが似ているため、言語の対応ができれば、商品の販売は難しくはありません。

中国人のお客さんは日本の小売業の売上高に貢献してくれていますが、2019年から始まった中国の新しい規制により、中国人のお客さんの日本での消費が減少することが見込まれています。中国人のお客さんの中には、中国国内で転売をするために日本で買い物をしている人がいて、新しい規制は転売を阻止するためのものです。新しい規制の効果は早くも現れていて、大手百貨店5社の1月の免税売上高はすべて前年割れしています。中国国内で転売をすると聞くと、商品を大量に仕入れている印象を持ちます。新しい規制の影響については、百貨店、ドラッグストア、ディスカウントストアの売上速報に注目です。

訪日外国人(インバウンド)は日本の実店舗で買い物をしていますが、将来的には越境ECで買い物をするようになると見込まれています。中国の消費者向けのアンケートによると、日本で購入した商品が気に入ったので、越境ECでも買っているという意見が増加傾向にあるとのことです。中国人のお客さん向けの販売が越境ECに移行すると、越境ECのノウハウがない小売業は免税店売上高が減少してしまいます。中国人のお客さんは日本人よりもEC、スマートフォン決済などの利用に積極的で、日本の小売業が中国人のお客さんが満足する買い物体験を提供できるかどうかという不安もあります。