なぜ小売業は季節商品の販売で売上を伸ばすことが難しくなったのか

なぜ小売業は季節商品の販売で売上を伸ばすことが難しくなったのか

小売業の店舗には、一年中販売する定番商品、特定の季節だけ販売する季節商品が並んでいます。季節商品は特定の季節にだけ需要があり、売り場作りの成否によって、季節商品の売上は大きく増減します。小売業にとって、季節商品は売上を大きく伸ばせるだけではなく、店舗にエンターテイメント性をもたらすものでもあります。お客さんは季節商品の買い物を楽しんでおり、季節商品の売り場を作る従業員も、お客さんと同様に季節商品を楽しんでいます。春夏秋冬には、季節の食品、洋服、生活スタイルがあり、小売業は季節商品を販売することで、お客さんの暮らしを豊かにすることに貢献しています。

季節商品は小売業にとって重要な存在ですが、最近は季節商品の販売が難しくなっている用に思います。小売業の季節商品の販売が難しくなっている要因には、地球温暖化、社会・個人の変化(ライフスタイルの変化)、ネット通販の拡大の三つがあるのではないかと考えています。小売業の決算書を見ていても、気温が高いことで、季節商品の売上が想定よりも伸びなかったといった内容が多いです。また、季節商品そのものを買わない、あるいは、ネット通販で買う人も増えています。小売業の季節商品の販売は困難な状況を迎えており、季節商品の売上を伸ばすためには、新しい取り組みが必要です。

季節商品は買い物をするお客さん・仕事をする従業員にとって重要

小売業には様々な業種がありますが、小売業の店舗で販売している商品は、定番商品と季節商品の二つに分けることができます。定番商品とは流行や季節の影響が小さく、店舗に行けば常に店頭に陳列されている、売上が安定している商品です。季節商品とは春夏秋冬の季節によって需要が大きく変動する商品で、需要がある季節には商品が店頭に並び、需要がある季節を過ぎると、次の季節商品に入れ替えられます。定番商品の売上の変動は小さく、季節商品は売上の変動が大きいです。小売業は定番商品の売上を確保しつつ、季節商品の売上をうまく伸ばすことで、全体の売上を増やそうとしています。

季節商品が多い業種、少ない業種というのはありますが、すべての小売業には何らかの季節商品があります。例えば、おせち料理、恵方巻き、バレンタインデー・ホワイトデー、クリスマスケーキなどは季節と密接に関係していて、決まった時期に大きな需要が発生します。エアコン、扇風機などの冷房器具は夏によく売れ、ストーブ、ファンヒーター、こたつなどの暖房器具は冬によく売れます。冷蔵庫、洗濯機、テレビ、掃除機などの生活家電は定番商品ですが、季節商品でもあります。これらの商品は一年中販売していますが、多くの人が引っ越し、一人暮らしをする春には、まとまった需要が発生します。

小売業にとって、定番商品も季節商品も重要ですが、競合店と差別化するという点では、季節商品は重要な役割を担っています。安定的に需要がある定番商品はどの店舗でも販売しているため、お客さんは近所にある、自分が一番買い物がしやすい店舗で買います。一方、季節商品は各店舗で品揃え・価格・陳列方法に違いがあり、セール商品にも違いがあります。お客さんは高価格の季節商品を購入する場合、複数の店舗を見て回り、普段は利用しない遠方にある店舗にも出掛けます。季節商品の売り場をしっかりと作り、魅力的な季節商品を用意している店舗は、多くのお客さんで賑わっています。

店舗で買い物をするお客さんの立場では、季節商品の売り場をしっかりと作っているかどうかは、店舗を評価する重要なポイントになります。どの業種の店舗で買い物をする場合でも、お客さんは季節商品の購入を楽しみにしており、季節商品の売り場には、品揃え・価格だけではなく、エンターテイメント性も求めています。冬は暖房器具を購入するお客さんが多いですが、お客さんは暖房器具のある、暖かい部屋をイメージしながら買い物をしています。暖房器具の売り場はお客さんのイメージを膨らませる、ワクワクさせるようなものでなければ、小売業は商品を販売するチャンスを逃してしまいます。

小売業にとって、季節商品はお客さんに買い物を楽しんでもらうための重要なものですが、従業員に仕事を楽しんでもらうためにも重要です。定番商品を補充する作業は単調で楽しくはありませんが、季節商品の売り場を作る作業には楽しさがあります。季節感を感じることには喜びがあり、買い物だけではなく、仕事であっても同様です。お客さんは季節商品の買い物を楽しんでいて、自分が販売した商品がお客さんの役に立てば、従業員も嬉しいです。小売業では季節ごとに忙しいシーズンがありますが、忙しい店舗でも従業員が楽しく働けるのは、季節商品を販売する喜びがあるからではないかと思います。

小売業の従業員は自分が担当する売り場の売上を常に気にしていて、売上が増えた、減ったで一喜一憂しています。季節商品はお客さんからの期待が大きく、売り場の成功・失敗によって、売上げも大きく増減します。自分がアイデアを練って作った売り場がお客さんから高く評価され、売上が増えることは、小売業の従業員にとって喜びです。どの店舗も季節商品の売り場には力を入れていますが、中には手書きのPOPがたくさん付いている店舗があります。手書きのPOPは作成に時間が掛かるものの、お客さんに商品の魅力がよく伝わり、手書きPOPが多い店舗は仕事に熱心な信頼できる店舗だと言えます。

地球温暖化による気温上昇で季節商品の販売が難しくなっている

地球温暖化は世界的な問題になっていて、近年はニュースで目にする機会も多いです。地球温暖化が進むと、海水温が上昇して氷河が溶け、海面が上昇するといった環境変化が起こります。地球温暖化が進む原因は、人間活動による温室効果ガスの増加である可能性が極めて高いと考えられています。地球温暖化が進むと、夏は今まで以上に暑く、冬は寒さが和らぐことになります。夏は異常に暑く、冬は寒い日が少ないというのは、ここ数年強く感じられる変化です。地球温暖化は全世界の人々の生活に影響を与える重大な問題ですが、小売業の季節商品の売れ行きにも影響を与えるようになっています。

小売業では業績が悪化する企業が増えていますが、業績悪化の理由としてあげられる理由で多いのは、業種を超えた垣根の競争、気温上昇・大雨・台風などの天候です。地球温暖化によって、夏は異常に暑く、冬は寒い日が少なくなったため、小売業は季節商品の需要を予測することが難しくなっています。小売業は天候の変化を想定して、需要予測を行わなければ、値下げロス、廃棄ロスを抱えることになります。季節商品はお客さんからの期待が高いため、在庫切れにすることはできません。季節商品は機会損失、ロスが発生しない適切な在庫管理が求められ、在庫管理の差が店舗の利益の差になります。

地球温暖化によって夏は異常に暑い日が増えていて、暑さ対策を積極的に行おうという意識が高まっています。家電量販店ではエアコンの販売が好調で、多くのチェーン店でエアコンの販売が好調であるとのデータがあります。夏が異常に暑いため、古いエアコンを使っている人の買い替え、これまでエアコンを使っていなかった人の新規購入の需要が生まれています。古いエアコンを最新のエアコンに買い換えると、機能の進歩に驚くお客さんが多いそうです。エアコンの快適さを知ったお客さんは、他の部屋のエアコンも最新のものに買い換えようとするので、家電量販店にとっては嬉しい状況になっています。

夏が暑くなったことにより、エアコンは売上を伸ばしていますが、それ以外の商品では、特に売上が伸びたという話はありません。あまりに暑い日が続くと、お客さんは外出を控えてしまうため、食品・日用品など、最低限の買い物だけしかしなくなります。夏の季節商品はレジャー関連の商品が多いですが、体調を壊すことを恐れて、積極的にレジャーを楽しむという状況ではありません。今後も地球温暖化が進むことは、小売業にとってマイナスの影響が大きいです。買い物に来るお客さんが減れば、季節商品の販売数量が減ることは避けられず、機会損失、ロスを減らし、収益性を高めることが重要です。

地球温暖化により、冬は寒い日が減り、暖房を長時間使わなくても、快適に過ごせる日が多くなっています。冬の寒い日が減れば、暖房関連商品を購入する必要がなくなるため、小売業の売上は減ることになります。家電量販店、ホームセンターの暖房関連商品の売り場を見ると、早い時期に値下げが行われていて、規模も縮小されています。また、冬物衣料についても同様で、値下げ、規模の縮小の時期が早くなっています。小売業にとって冬が暖かいことは大きな問題ですが、普通の人にとっては喜ばしいことです。このまま地球温暖化が進むと、冬の生活スタイル・消費行動は劇的に変化しそうです。

夏の暑い日が増えること、冬の暖かい日が増えることは、小売業にとって重要な天候の変化ですが、どちらかと言えば冬の方が心配です。暖房関連商品の価値が下がるので、暖房関連商品を販売している小売業は、売上が減少してしまいます。具体的な業種では、衣料品店、家電量販店、ホームセンターは影響が大きいと思います。ホームセンターは小売業の中でも季節商品が多く、夏・冬の両方で影響を受けます。小売業は暖房関連商品に代わる、新しい季節商品を用意しなければなりません。暖房関連商品は単価が高いため、売上を補うという意味では、新しい季節商品は高単価であることが好ましいです。

社会・個人の変化は季節商品の販売に大きな影響を与えている

社会、社会で暮らす個人は変化を続けていて、社会、個人の変化は小売業のビジネスにも影響を与えています。小売業への影響が大きい変化には、女性の社会進出、単身世帯の増加、少子高齢化社会、晩婚化・非婚化、格差社会といったものがあります。少子化は人口の減少を引き起こすため、すべての小売業の客数が減少することになります。また、女性の社会進出が進むと、女性が家事に掛けられる時間が減るため、家事の時間を節約したいという新しいニーズが生まれています。人口の減少は避けられないので、小売業は社会変化から生まれる新しいニーズを取り込み、売上を増やさなければなりません。

季節商品は季節の変化に対応する、あるいは季節の変化を楽しむ商品であり、多くのお客さんが購入する商品です。夏は暑いので冷房関連商品が必要ですし、冬は寒いので暖房関連商品が必要になります。クリスマス、年始年末、バレンタインデー・ホワイトデーといったイベントも、多くのお客さんに関係しているものです。これまでの考えでは、季節商品はすべてのお客さんが購入するものでしたが、近年は従来の考え方が当てはまらなくなっています。お客さん各人のライフスタイル、考え方の変化により、季節商品の買い方が変わる、季節商品を買わないといった、変化が見られるようになっています。

夏の季節用品はレジャー商品が多いですが、ライフスタイルの変化によって、レジャー商品の販売が難しくなっています。若者が外出する回数が減っているいうデータがあり、外で友人と活発に遊ぶよりも、自宅でスマートフォンで遊ぶ人が増えています。レジャーは親子で楽しむものでもありますが、共働き世帯が増えているため、両親、あるいは母親とレジャーを楽しむ機会も減ります。さらに、少子化により、子供を持つ世帯の数が減っていることも問題です。社会、個人の複数の変化が組み合わさることにより、夏の季節商品の代表的なものである、レジャー商品の販売が難しくなっています。

冬の季節商品の代表的なものは暖房関連商品ですが、暖房関連商品の売り場を見ても、社会、個人の変化を強く感じます。こたつ、ストーブ、ファンヒーターなどの売り場を見ると、全体的に低価格商品・単身世帯用商品の品揃えが多くなっています。単身世帯が増えているため、単身世帯用商品の品揃えが増えることは順当です。単身世帯用商品がよく売れることは、小売業としてはネガティブではありませんが、少子化を実感するので残念な気持ちにもなります。また、地球温暖化により、暖房関連商品を購入しない人も増えており、暖房関連商品の売り場には総じて活気が感じられません。

食品を販売する小売業にとっては、年始年末、バレンタインデー・ホワイトデー、クリスマスは、季節商品を販売する非常に重要な商機です。以前であれば、これらの商機は大いに盛り上がり、売上も伸びたのですが、近年は変化が見られます。恋愛に消極的な人、結婚をしない人、子供がいない人が増えたことで、全体的にイベントの規模が縮小しています。バレンタインデーでは男性にプレゼントするだけではなく、女性の友人、自分にもプレゼントしようという販促を行なっています。こうした販促への女性の反応は薄く、恋愛・結婚・家族に関連する季節商品の市場には停滞感があります。

小売業の季節商品の今後を考えると、「恋愛をする若者を増やす」というのが、最優先で取り組まなければならない施策ではないかと思います。季節商品は家族に関連するものが多く、結婚する人・子供を持つ人が増えなければ、小売業の季節商品の販売も増えません。バレンタイデー・ホワイトデーの販促は、単にお菓子の売上を伸ばすだけのものではなく、結婚する人・子供を持つ人を増やすものであることが好ましいです。バレンタイデー・ホワイトデーの動向は、季節商品を販売するすべての小売業にとって重要であり、バレンタイデー・ホワイトデーの不調は、将来の季節将来の不調を意味しています。

ネット通販サイトが季節商品の販売を強化していることは脅威

地球温暖化、社会・個人の変化は、小売業の季節商品の販売を難しくしている要因ですが、これに加えてネット通販の拡大もあります。お客さんがネット通販で買い物をする理由は、品揃えが豊富、価格が安い、24時間買い物ができる、自宅に商品を届けてくれるなど、利便性に優れているからです。ネット通販にはエンターテイメント性が不足していると考えられていますが、最近は季節商品のプロモーションを強化しています。年始年末、バレンタインデー・ホワイトデー、クリスマスなどのイベントシーズンは、実店舗と同じように季節商品の売り場(専用ページ)を作り、お客さんにアピールしています。

ネット通販サイトの季節商品のプロモーションは、実店舗のプロモーションよりも先行性があります。実店舗が季節商品の売り場を作るには、商品を仕入れ、人員を確保して、時間を掛けて売り場を作らなければなりません。一方、ネット通販サイトの季節商品の売り場(専用ページ)は商品を用意する必要はなく、売り場作りの作業量も少ないです。実店舗で季節商品を買う場合、お客さんは品揃えが豊富な、大規模店舗・人気店舗を好みます。ネット通販サイトには売場面積の制限がないため、人気や規模に関係なく、多くネット通販サイトが季節商品の売り場(専用ページ)を作り、販促を行なっています。

季節商品の購入を検討しているお客さんは、最初にネット通販サイトの売り場(専用ページ)で商品情報の収集をします。どのような機能の商品を買うのか、価格はどれくらいなのかといった買い物計画を作ります。ネット通販サイトですぐに購入しない場合、実店舗の季節商品の売り場をチェックします。お客さんはネット通販サイトの情報をもとに買い物計画を作っていて、実店舗は情報提供の点でネット通販サイトに遅れを取っています。ネット通販サイトがなく、実店舗だけが存在していた時代と比較すると、小売業は自社がおすすめする季節商品を販売することが難しくなっていると言えます。

年始年末、バレンタインデー・ホワイトデー、クリスマスなどのイベントシーズンに購入する季節商品は、人にプレゼントするものが多く、お客さんは珍しい商品を求めています。お客さんに豊富な品揃えを提供するという点では、売場面積に制約のある実店舗よりも、商品を無限に陳列できるネット通販サイトの方が有利です。インターネットのアンケート調査によると、おせち料理をインターネット購入する人が増えているとのデータがあります。おせち料理は家族、ゲストをもてなすための商品であるため、品揃えが豊富なネット通販サイトで、近所の店舗にはないものを求めているのではないかと考えられます。

ネット通販サイトは実店舗に比べ、お客さんとの関係が強く、パーソナルマーケティングを行いやすいです。季節商品は毎シーズン買い物をするため、ネット通販サイトは過去の購買履歴をもとに、お客さんに毎シーズン提案をすることができます。例えば、おせち料理であれば、お客さん一人一人に料理の内容・量をカスタマイズした、受注販売型商品の開発もできるかもしれません。実店舗で商品を販売して来た従来の小売業の立場では、ネット通販サイトが季節商品を強化していることは脅威です。これまで通りの季節商品の販売を続けていては、ネット通販サイトにお客さんを奪われてしまいます。

季節商品の売り場を店舗に作るだけではなく、インターネットにも売り場(専用ページ)を作ることは効果的で、取り組みやすいです。お客さんがネット通販サイトの売り場(専用ページ)で商品を探す際に、自社の売り場(専用ページ)も一緒に見てもらいたいです。ネット通販サイトとの比較に勝つことができれば、実店舗へと誘導し、買い物をしてもらえます。ネット通販サイトで季節商品の買い物が完結してしまえば、お客さんは実店舗で季節商品を買わなくなってしまいます。実店舗で商品を販売して来た従来の小売業は、自社の商品を見てもらうためにも、インターネットに顧客接点を増やしたいところです。