「PayPay(ペイペイ)」の「100億円あげちゃうキャンペーン」は10日間で終了

「PayPay(ペイペイ)」の「100億円あげちゃうキャンペーン」は10日間で終了

ヤフーとソフトバンクの合弁会社であるPayPay株式会は2018年10月5日より、スマートフォン決済サービス「PayPay(ペイペイ)」を開始しました。2018年11月22日には、加盟店で「PayPay(ペイペイ)」を利用することで、キャッシュバックが受けられる「100億円あげちゃうキャンペーン」を開始しました。「100億円あげちゃうキャンペーン」は大きな注目を集めたものの、当初の予定よりも早期に終了してしまいました。スマートフォン決済サービスが多数ある中で、「PayPay(ペイペイ)」は大規模なキャンペーンを実施しましたが、計画通りの利用者を獲得できたかどうかは分かりません。

キャッシュレスが進んでいくためには、スマートフォン決済サービス事業者、店舗、消費者の協働が必要です。スマートフォン決済サービス事業者、店舗にはキャッシュレスを進めたい動機がありますが、消費者は現金での買い物に問題を感じていない状況です。スマートフォン決済サービス事業者、店舗が消費者にキャッシュレスに取り組んでもらうためには、「100億円あげちゃうキャンペーン」のような大きなインセンティブが必要になります。今後も「100億円あげちゃうキャンペーン」のようなキャンペーンが継続的に実施されることで、消費者のキャッシュレスへの興味・理解が深まります。

ソフトバンクとヤフーが提供するスマホ決済「PayPay(ペイペイ)」

「PayPay(ペイペイ)」はソフトバンクとヤフーの合弁会社であるPayPay株式会社が提供する、バーコード(1次元バーコード、QRコード)を使ったスマートフォン決済サービスで、2018年10月5日よりサービスが始まっています。「PayPay(ペイペイ)」の支払い方法には、ユーザースキャンとストアスキャンの2種類があります。ユーザースキャンはスマートフォンで店舗が用意したQRコードを読み取り、金額を入力、店員が画面を確認することで支払いが完了します。ストアスキャンはスマートフォンに表示させたバーコードを店員に見せ、店員がバーコードを読み取ることで支払いが完了します。

「PayPay(ペイペイ)」が開始した2018年10月5日の時点で利用できる店舗・サービス(予定含む)には、モンテローザの飲食店、ワタミの飲食店、ジーンズメイト、第一交通産業、メガネスーパー、マックハウス、ドラッグ新生堂などがありました。サービス開始後も利用できる店舗は増えていて、今後も利用できる店舗は時間経過とともに増えて行きます。ユーザーの立場としては、自分がよく利用する店舗・サービスで「PayPay(ペイペイ)」が利用できると便利です。「PayPay(ペイペイ)」が利用できる店舗・サービスが多いほど、ユーザーは貯まったポイントを効率よく消費することができます。

「PayPay(ペイペイ)」は加盟店向けのアピールポイントとして、導入無料、翌日入金、集客力の3つをアピールしています。ユーザースキャン方式を導入している店舗に限り、初期導入費、決済手数料、入金手数料がすべて無料になっています。決済手数料についてはサービス開始後3年間は無料ですが、その後は有償化する可能性があり、入金手数料はジャパンネット銀行の場合は永年、ジャパンネット銀行以外の金融機関の場合は2019年9月30日まで無料です。翌日入金については、ジャパンネット銀行を利用することが条件で、ジャパンネット銀行以外の金融機関の場合、入金日は翌々営業日になります。

導入無料、翌日入金は主に金銭的なメリットで、他のスマートフォン決済サービス事業者との差別化が難しそうですが、集客力は「PayPay(ペイペイ)」独自の強みになりそうです。集客力の中身は、ソフトバンクのセールスマンが加盟店獲得に注力していること、巨大な会員基盤を持つソフトバンク・ヤフーのユーザーの利用が見込めること、中国で人気のスマートフォン決済サービス「Alipay(アリペイ)」と連携していることの3つです。「PayPay(ペイペイ)」が持つ集客力がうまく機能すれば、「PayPay(ペイペイ)」を導入することにより、店舗の客数が増える、売上が増えるというのは充分に考えられます。

多くの企業がスマートフォン決済サービスを始めていて、どれを使えばいいのかユーザーは混乱する状況になっています。ニュースで名前をよく見るスマートフォン決済サービスには、「Amazon Pay(アマゾンペイ)」、「LINE Pay」、「楽天ペイ」、「Origami Pay」、「PayPay(ペイペイ)」などがあります。スマートフォン決済サービスへのユーザーの関心が低いこともあり、多くのシェアを獲得しているスマートフォン決済サービスはないようです。「PayPay(ペイペイ)」はスマートフォン決済サービスとしては後発ですが、ソフトバンクとヤフーの経営資源を活かして、急成長が期待されています。

大手小売チェーン、大手飲食チェーンはスマートフォン決済サービスの導入に積極的に取り組んでいるため、各種スマートフォン決済サービスが利用できる店舗が急速に増えています。大手チェーンで利用できれば便利ですが、中小の店舗でも利用できるに越したことはありません。「PayPay(ペイペイ)」は手数料が無料、入金は翌日という、中小の店舗でも導入しやすい条件が揃っており、加盟店を開拓するためのソフトバンクの営業チームもあります。大手チェーンだけではなく、中小の店舗でも利用できれば、ユーザーはポイントがさらに使いやすくなり、「PayPay(ペイペイ)」の価値は高まります。

大きな注目を集めた「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施

2018年11月22日、「PayPay(ペイペイ)」は事業説明会を開き、その中で「100億円あげちゃうキャンペーン」を発表しました。「100億円あげちゃうキャンペーン」は「PayPay(ペイペイ)」の利用者に対して、加盟店で買い物をした残高に支払い額の20%(最大5万円)をキャッシュバックするというものでした。また、買い物額の全額(最大10万円)を残高にキャッシュバックする、くじ引き要素も含まれています。全額キャッシュバックの当選確率は条件によって異なり、ソフトバンク・ワイモバイルのスマホ契約者は10回に1回、Yahoo!プレミアム会員は20回に1回、その他は40回に1回でした。

「100億円あげちゃうキャンペーン」の実施期間は2018年12月4日から2019年3月31日までで、キャンペーン終了日前までに100億円のキャッシュバックが終われば、その時点でキャンペーンは終了するというものでした。スマートフォン決済サービス事業者、スマートフォン決済サービス導入店舗は定期的にキャンペーンを行っていますが、数%キャッシュバック、商品の割引など、少額のものです。「PayPay(ペイペイ)」の「100億円あげちゃうキャンペーン」は還元金額が非常に大きく、競合するスマートフォン決済サービス事業者にとっても、驚きの内容であったのではないかと思います。

「PayPay(ペイペイ)」が行った事業説明会では、「100億円あげちゃうキャンペーン」の発表に合わせて、「PayPay(ペイペイ)」に加盟する企業の代表者が登壇しました。「100億円あげちゃうキャンペーン」のニュース記事を見ると、各企業の代表者が揃って並んでいる写真があり、「PayPay(ペイペイ)」の影響力の大きさを感じさせます。スマートフォン決済サービス事業者は導入店舗を拡大していますが、特に話題になることはありません。スマートフォン決済サービスを導入する企業にとっても、大型キャンペーンを実施してくれる「PayPay(ペイペイ)」は、集客に貢献してくれるありがたい存在です。

「100億円あげちゃうキャンペーン」の対象店舗を見ると、ビックカメラ、ヤマダ電機、上新電機など、家電量販店にお客さんが殺到すると見込まれていました。コンビニではファミリーマート、ポプラがあり、飲食チェーン店では松屋、白木屋などがありました。コンビニ、飲食チェーン店は単価が低いため、家電量販店ほどのお得感はありませんが、20%キャッシュバックは嬉しいですし、全額キャッシュバックに当選すればさらに嬉しいです。高単価の買い物のキャッシュバックにお得感を感じる利用者、低単価の買い物のキャッシュバックにお得感を感じる利用者、両方を狙ったキャンペーンでした。

キャッシュレスの支払い方法には、クレジットカード決済、電子マネー、プリペイドカード、スマートフォン決済などがあります。キャッシュレスにメリットを感じる人は積極的にキャッシュレスを取り入れる一方、キャッシュレスに興味がない人は変わらず現金を使い続ける状態が続いていて、二極化しつつあります。キャッシュレスに興味がない人に興味を持ってもらうためには、大きなインセンティブが必要になります。「PayPay(ペイペイ)」の「100億円あげちゃうキャンペーン」は、キャッシュレスに興味がない人の関心を集め、利用者になってもらう狙いだったのではないかと思います。

「PayPay(ペイペイ)」は利用者を獲得するために「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施しましたが、ユーザーが一つのスマートフォン決済サービスをずっと使い続けるかというのは疑問があるところです。スマートフォン決済サービス事業者は定期的にキャンペーンを行っていて、ユーザーはその都度、キャンペーン中のスマートフォン決済サービスを使って賢く買い物をしています。スマートフォン決済サービス事業者はユーザーの購買履歴を取得することを目指していますが、ユーザーが利用するスマートフォン決済サービスを頻繁に変更すると、購買履歴のデータが不完全になる問題も出てきます。

「100億円あげちゃうキャンペーン」は10日で資金が尽きて終了

「PayPay(ペイペイ)」の「100億円あげちゃうキャンペーン」は2018年12月4日から2019年3月31日まで実施される予定でしたが、利用者が殺到した結果、2018年12月13日に終了しました。100億円の予算が尽きたら終了する計画でしたが、実施期間が2019年3月31日までであったことを考えると、予定よりもかなり早く終了したことになります。また、サービス開始時には決済停止や決済の遅延が発生するトラブルがあり、クレジットカードが不正に利用されたという報告もありました。「100億円あげちゃうキャンペーン」の全体的な印象としては、あっという間に終わってしまった感じです。

「100億円あげちゃうキャンペーン」では、ビックカメラ、ヤマダ電機、上新電機などの家電量販店にお客さんが殺到するであろうと予想されていました。単価の高い家電量販店で多く利用されたことは、「100億円あげちゃうキャンペーン」が予定よりもかなり早く終了したことの主たる要因です。家電量販店向けにある程度の予算を取っていたものの、想定以上のペースでお客さんが利用したということなのかもしれません。「PayPay(ペイペイ)」としては、「100億円あげちゃうキャンペーン」の実施期間中、コンビニや飲食チェーンで、何度も利用してもらいたかったのではないでしょうか。

「100億円あげちゃうキャンペーン」が2018年12月4日に始まって以降、ソーシャルメディアやブログには、全額キャッシュバック当選の投稿が多数アップされました。予想通り高単価の家電量販店で買い物をしている人が多かったですが、ビックカメラの投稿が圧倒的に多く、ヤマダ電機、上新電機の投稿はほとんど目にしませんでした。ビックカメラの投稿が多かった理由については、ビックカメラのお客さんは情報リテラシーが高い人が多いのではないかと推測できます。全額キャッシュバック当選の投稿を見て「100億円あげちゃうキャンペーン」を知り、「PayPay(ペイペイ)」を利用した人もいたはずです。

ソーシャルメディアやブログに全額キャッシュバック当選の投稿が多数アップされたことで、「PayPay(ペイペイ)」は大きな注目を集めました。インターネットだけではなく、新聞、テレビなど、多くのメディアで話題になり、キャッシュレスに関心のない人たちにもリーチできたのではないかと思います。インターネットから新聞、テレビなど、多くのメディアに情報が波及した様子は、ワークマンが「WORKMAN Plus+(ワークマンプラス)」をオープンした時と似ています。インターネットで大きな話題になることができれば、新聞、テレビなど、他のメディアでも紹介されるようになっています。

「PayPay(ペイペイ)」の「100億円あげちゃうキャンペーン」は予定よりもかなり早期に終了しましたが、ソーシャルメディアやブログの全額キャッシュバック当選の報告を見ると、情報リテラシーの高い人達の手際のよい行動が目立ちました。今回、高額のキャッシュバックに当選した人の多くは、もともとキャッシュレスに詳しく、様々なスマートフォン決済サービスを使いこなしているように見えました。「PayPay(ペイペイ)」は100億円を投資しましたが、「PayPay(ペイペイ)」が希望する、キャッシュレスに関心を持っていなかったユーザーはそれほど獲得できていないかもしれません。

「PayPay(ペイペイ)」を含め、スマートフォン決済サービス事業者がキャッシュレスに興味のない人に利用してもらうには、店舗で丁寧に利用方法を説明する必要があるのではないかと思います。小売業ではセルフレジを設置している店舗が増えていますが、セルフレジを設置するだけではお客さんは使ってくれません。セルフレジ担当の店員を配置して、興味を示したお客さんに使い方を説明することで、利用してもらうことができます。「PayPay(ペイペイ)」の「100億円あげちゃうキャンペーン」は、キャッシュレスに詳しい人達だけで盛り上がり、詳しくない人は参加できなかったのではないでしょうか。

消費者は現金での買い物を続けると経済的に損をする機会が増える

キャッシュレスは全世界で進んでいるトレンドで、日本でも今後キャッシュレスが拡大して行くことは確実です。スマートフォン決済サービスは多数あり、「Amazon Pay(アマゾンペイ)」、「LINE Pay」、「楽天ペイ」、「Origami Pay」、「PayPay(ペイペイ)」などをニュースでよく目にします。企業がスマートフォン決済サービスを開始する理由は、スマートフォン決済サービスで得られる、お客さんの購買データに価値があると考えられているためです。具体的に購買データをどのように活用するかは先の話で、まずはスマートフォン決済サービスの利用者を増やすことが目標になっています。

Amazon、楽天、ヤフーのように、既にネットの購買データを保有している企業は、リアルの購買データも保有することで、ビジネスを有利に進められると考えられています。例えば、ヤフーは「PayPay(ペイペイ)」でリアルの購買データを保有できれば、Yahoo!ショッピングのマーケティング活動に活用することができます。また、ヤフーは広告が事業の中心ですが、ネットとリアルを繋げた広告の展開が可能になります。ネットの広告からリアルの店舗へとお客さんを誘導して、「PayPay(ペイペイ)」で決済をしてもらえれば、ネットとリアルが繋がったお客さんの購買活動をトラッキングできます。

スマートフォン決済サービスを導入する側の小売チェーン、飲食チェーンを見ると、全体的にスマートフォン決済サービスの導入に意欲的です。小売チェーンではトライアルカンパニーが2018年12月13日に、一部の時間帯にキャッシュレスを導入した「トライアル Quick 大野城店」をオープンしています。飲食チェーンではロイヤルホールディングスが2017年11月に、完全キャッシュレスのレストラン「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町店」をオープンしています。小売チェーン、飲食チェーンともに、キャッシュレスを進める動機があり、キャッシュレス店舗が増えて行くことは確実です。

小売チェーン、飲食チェーンがキャッシュレスを進める目的の一つは、現金管理業務を減らすことです。現金管理業務は店舗の運営に不可欠な業務ですが、店舗を完全キャッシュレスにできれば、現金管理業務そのものを無くすことができます。小売チェーン、飲食チェーンは人手不足に直面していることに加え、労働時間が長い、給料が安い、休みが少ないといった、労働環境の問題も抱えています。小売チェーン、飲食チェーンは店舗の生産性・収益性を向上させなければならない状況にあり、キャッシュレスは店舗の生産性・収益性を向上させる施策の一つとして、注力する企業が増えています。

スマートフォン決済サービスを利用する消費者はどうかというと、キャッシュレスに消極的な考えを持っている人が多いです。スマートフォン決済サービス事業者、小売チェーン、飲食チェーンにはキャッシュレスを進めたい強い動機がありますが、消費者にはそのようなものはありません。キャッシュレス社会になれば、あらゆる仕事で現金管理業務が減る、現金を狙った犯罪が減るなど、すべての人にメリットがあるとされています。しかし、普通の消費者がそのような大局的な視点を持ってキャッシュレスに取り組むことは期待しにくく、キャッシュレス化のスピードは遅いままです。

現在、多くの消費者が現金で買い物をすることに問題を感じていませんが、今後は現金で買い物をすると経済的に損をする機会が増えて来ます。「PayPay(ペイペイ)」の「100億円あげちゃうキャンペーン」が実施された期間中、加盟店で「PayPay(ペイペイ)」を利用して買い物をしたお客さんは、20%キャッシュバック、さらに全額キャッシュバックのチャンスがありましたが、現金で買い物をしたお客さんにはそのような特典はありません。これからもキャッシュレス関連のキャンペーンは継続的に行われるため、現金で買い物を続けていると、現金を使わない人よりも経済的に損をすることになります。