タブレット付きショッピングカートには来店回数・購入点数を増やす効果がある

タブレット付きショッピングカートには来店回数・購入点数を増やす効果がある

タブレット付きショッピングカートは小売業の店舗をデジタル化するツールの一つで、2018年に入ってから導入する企業が出てきています。ディスカウントストアを運営するトライアルカンパニーは、キャッシュレス・商品レコメンドの機能を持つスマートレジカートを試験的に導入しています。ショッピングセンター、スーパーマーケットを運営するイズミは、タブレット付きショッピングカートの実証実験で成果を得て、30店舗に導入を拡大する計画です。タブレット付きショッピングカートは来店回数、購入点数を増やす効果があり、食品・日用品を販売する小売業で導入が進んで行くのではないかと思います。

タブレット付きショッピングカートを使った買い物では、お客さんはタブレットで買物情報が得られるため、楽しく、お得な買い物ができるようになります。小売業はお客さんに楽しく、お得な買い物体験を提供できるようになり、来店回数、購入点数の増加が期待できます。一方、タブレット付きショッピングカートの問題として考えられるのは、店内で他のお客さんの邪魔になる、他のお客さんにぶつかる、買い物の時間が長くなるといったものです。タブレットの操作に夢中になっていると、様々なトラブルを引き起こす可能性があり、タブレット付きショッピングカートを導入するうえで課題になりそうです。

トライアルカンパニーはスマートレジカートの効果を検証

ディスカウントストアのトライアルを運営するトライアルカンパニーは2018年2月14日、スマートカメラ、スマートレジカートを導入した「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」をオープンしました。スマートカメラは店内に700台設置され、店内でのお客さんの買い物行動、商品棚の陳列状況の記録・分析を行います。スマートレジカートにはタブレットが取り付けられていて、プリペイドカードを使ったキャッシュレス決済、商品のレコメンドの機能があります。トライアルカンパニーはスマートカメラ、スマートレジカートを用いた、スマートな買い物体験の実証実験を行なっています。

小売業では店舗のデジタル化に取り組む企業が増えていて、トライアルカンパニーは店舗のデジタル化で先行する企業の一つです。トライアルカンパニーが店舗のデジタル化を進める理由は、ディスカウントストアという業種が関係しているのではないかと思います。ディスカウントストアは客数、購入点数ともに多く、店内やレジは一日中混雑します。他の小売業と比較すると、買い物をするお客さんが感じるストレスは大きいです。また、ディスカウントストアは価格競争力が重要なため、店舗の運営コストへ減らすことも、トライアルカンパニーが店舗のデジタル化に取り組む理由です。

スマートレジカートを使った買い物では、最初に店内でプリペイドカードを作成して、現金のチャージをします。スマートレジカートのバーコードリーダーにプリペイドカードを読み込ませ、ログインを済ませたら、買い物が可能な状態になります。購入する商品を商品棚から取り、スマートレジカートのバーコードリーダーに商品のバーコードを読み込ませて登録します。野菜などのバーコードが付いていない商品を購入するときは、タブレット画面を操作して登録します。一度カートに入れた商品をキャンセルする場合、商品を商品棚に戻した後、タブレット画面の商品キャンセルボタンを押して処理します。

スマートレジカートでの買い物が終わったら、決済をするために決済専用レーンに移動します。決済をする前にタブレットを操作して、レジ袋(有料)の枚数、ポイントを利用する場合は利用するポイント数を入力します。決済の準備が終わったら、担当スタッフがバーコードリーダーを使って商品に間違いがないか最終確認をします。商品に間違がなければタブレット画面の支払いボタンを押し、発行されるレシートを受け取って決済が完了です。担当スタッフの商品確認作業は数秒で終わるため、お客さんは従来のレジのように長い時間待つ必要はなく、短時間で支払いを済ますことができる仕組みです。

トライアルカンパニーはスマートレジカートを導入することで、お客さんにスマートな買い物体験を提供しようとしています。お客さんがスマートレジカートを使って買い物をするメリットは、レジの待ち時間を短縮できること、タブレットでお得な買い物情報を得られることです。スマートレジカートに購入する商品を読み込ませると、タブレット画面にはレコメンド商品(おすすめ商品)が表示されます。店舗にはお買い得商品が多数並べられていますが、お客さんはすべての商品を確認することはできません。タブレットで適切なタイミングで情報を得られれば、お客さんはお買い得商品を買いやすくなります。

お客さんがスマートレジカートを使うメリットは、レジの待ち時間を短縮できること、タブレットでお得な買い物情報を得られることですが、これらのメリットはトライアルカンパニーも同様です。レジの待ち時間が短くなり、店舗の混雑が解消されることは、長期的には店舗の客数・売上の増加に繋がります。お客さんにお得な買い物情報を適切なタイミングで提供できれば、商品が売れる確率が高まり、売上が増加します。小売業はお買い得商品を多数用意していますが、お客さんに十分に見てもらえていません。商品を十分に見てもらえていないことは機会損失で、解消することができれば売上が増えます。

イズミはタブレット付きショッピングカートを30店舗に導入予定

2018年12月6日、ショッピングセンター、スーパーマーケットを運営するイズミは、タブレット付きショッピングカートを複数の店舗に導入して行くことを発表しています。タブレット付きショッピングカートを導入予定の店舗数は30店舗で、各店舗には20~30台が導入される計画です。イズミは2017年11月より、マーケティング・グラビティが開発するタブレット付きショッピングカート「ショピモ」を4店舗に試験的に導入して、両社で効果を検証して来ました。タブレット付きショッピングカートを導入する前と後を比較すると、売上、来店頻度がアップする一定の効果が得られています。

マーケティング・グラビティが開発するタブレット付きショッピングカート「ショピモ」の機能は、クーポン、売り場マップ、オススメ情報の大きく三つです。クーポンはポイントが多くもらえる商品・カテゴリーを表示する機能で、お客さんはお得な買物情報を取得することができます。売り場マップは店内の商品・カテゴリーを表示する機能で、クーポン情報も一緒に表示されます。オススメ情報は献立を表示する機能で、その日の買い物に役立つメニューが表示されます。また、店舗のチラシも見れるようになっていて、店舗から発信される情報を受け取るだけでなく、自分でも商品を探すことができます。

イズミがお客さんに実施したアンケートによると、「タブレット付きのショッピングカートの利用で買うつもりがなかった商品を買ったことがありますか?」という質問に対して、よくある(16%)、時々ある(50%)、ほとんどない(22%)、ない(11%)となっています。お客さんはクーポン、売り場マップ、オススメ情報を見ることで、商品情報を得て、買うつもりがなかった商品を買っていると考えられます。スーパーマーケットで買い物をするお客さんは、お得な商品を買いたいと常に考えています。お客さんに対して適切な商品情報を提供することは、買い物の手助けになり、店舗の売上アップにも繋がります。

「タブレット付きカートを使い始めてから当店への来店頻度は増えましたか?」という質問に対して、とても増えた(21%)、ちょっと増えた(38%)、変わらない(41%)となっています。「タブレット付きショッピングカートを使い始めてから当店への印象や気持ちはどう変わりましたか?」という質問に対しては、買い物がより楽しくなった、買い物がよりお得になった、お店をより好きになったなど、ポジティブな意見が多いです。お客さんはタブレット付きショッピングカートを利用することで、お得な商品を見逃すことなく購入できるようになったことで、買い物が楽しくなり、来店頻度も増えています。

トライアルカンパニー、イズミはタブレット付きショッピングカートの導入を進めていて、両社は食品を販売している点が共通しています。タブレット付きショッピングカートの機能を考えると、食品を販売する小売業との相性が良さそうです。食品を販売する小売業は品揃えが多く、セールも頻繁に行なっていますが、お客さんはすべての商品を見ているわけではありません。お客さんは多くの商品を見逃していて、食品を販売する小売業には大きな機会損失が存在しています。タブレット付きショッピングカートはお客さんに情報を適切に提供することで、機会損失の解消、売上アップが期待できます。

食品は衝動買いをすることが多く、衝動買いをしたとしても、お客さんが後から感じる後悔はほとんどありません。食品は単価が安く、美味しく食べることができるため、後悔があったとしてもすぐに忘れてしまいます。食品を販売する小売業はタブレット付きショッピングカートを使って、お客さんに情報を適切に提供することで、衝動買いを増やせるチャンスがあります。タブレット付きショッピングカートは食品を販売する小売業にとって、効果的なツールではないかと思います。トライアルカンパニー、イズミの成功事例を見て、タブレット付きショッピングカートを導入する企業が増えそうです。

タブレット付きショッピングカートは店舗の売上アップに貢献

タブレット付きショッピングカートの特徴はショッピングカートにタブレットが付いていることで、店舗はタブレットを通じて買い物中のお客さんに情報を提供することができます。お客さんはタブレット付きショッピングカートを使うことで、お得な商品を見逃さず、忘れずに買えるようになるので、これまで以上にお得な買い物ができるようになります。小売業の立場からすると、これまで見逃されていた、忘れられていた商品が売れる確率が高まるため、売上の増加に繋がります。また、お得な商品が買えるようになったお客さんの満足度が高まり、来店回数の増加、他店との差別化の効果もあります。

タブレット付きショッピングカートは、食品を販売する小売業と特に相性が良いのではないかと考えられます。食品は低価格、消耗品、衝動買いをするといった特徴があり、タブレット付きショッピングカートには売上が増える効果を期待できます。日用品は食品と似たような特徴があるため、日用品を販売する小売業においても、タブレット付きショッピングカートはうまく機能すると思います。高価格、耐久品、衝動買いをしない商品については、すぐに客数・売上が増えることは期待しにくいです。タブレット付きショッピングカートは、食品、日用品を販売する小売業で拡大して行きそうです。

小売業ではショッピングアプリを導入する企業が増えていて、ショッピングアプリを通じて、チラシ、クーポンを配信しています。タブレット付きショッピングカートにはショッピングアプリと同じ機能を持ち、ショッピングアプリと同じ役割を果たすことができます。小売業はお客さんにショッピングアプリを利用してもらいたいですが、ショッピングアプリに興味がなかったり、スマートフォンを持っていないお客さんもいます。タブレット付きショッピングカートは小売業が保有するハードウェアで、お客さんに負担を掛けることなく、ショッピングアプリと同等の機能を提供できることは利点です。

多くの小売業がショッピングアプリを導入しているため、お客さんは多くのショッピングアプリを管理しなければならなくなっています。ショッピングアプリの管理が面倒くさくなったお客さんは、ショッピングアプリを利用しなくなるというのは考えられます。お客さんの立場では、自分で管理するショッピングアプリよりも、小売業が管理するタブレット付きショッピングカートの方が負担が小さいです。小売業の立場では、チラシ、クーポンを確実に配信できる、確実にアップデートができる、買い物データ蓄積の精度が高まるなど、タブレット付きショッピングカートの方が全体の信頼性が高いです。

トライアルカンパニーはスマートレジカートをキャッシュレス、レコメンド商品に使うことに加え、スマートレジカートのタブレットで広告を配信する計画です。トライアルカンパニーの店舗で販売している商品のメーカーから広告費をもらい、スマートレジカートのタブレットに広告を配信する仕組みです。小売業に商品を納入するメーカーは、多くのお客さんに商品を見てもらうことを望んでいます。スマートレジカートに広告を出せるようになれば、広告を出すメーカーは多いと思います。例えば、競合の商品をよく買っているお客さんにクーポンを出し、自社の商品へと誘導するなどは効果がありそうです。

ネット通販サイトのAmazon、楽天、Yahoo!ショッピング、ZOZOでは、出店者向けに広告を販売するビジネスを行っています。出店者はネット通販サイトに広告費を支払うことで、ネット通販サイトの目立つ場所に自社の商品を表示することができます。実店舗にも商品が目立つ場所はありますが、実店舗を広告として活用するといった発想はありませんでした。実店舗にもネット通販サイトと同様に広告価値があり、小売業は実店舗で広告収入を得られると思います。店内の商品を頻繁に移動させることは大変なので、商品をデジタル化して、スマートレジカートで広告を配信するやり方は画期的です。

タブレット付きショッピングカートの問題点と解決方法

タブレット付きショッピングカートを利用した買い物では、お客さんは買い物中にタブレットを操作したり、商品をスキャンします。ショッピングカートにタブレットが付いていることで、店舗側はお客さんに適切に情報を提供できますが、タブレットがあることでトラブルが増える可能性もあります。お客さんは頻繁にタブレットを操作するので、商品棚の前や通路で立ち止まったり、他のお客さんの買い物の邪魔になるかもしれません。こうしたトラブルはスマートフォンを使った買い物でも想定されますが、タブレット付きショッピングカートの方が物理的に大きいため、問題が大きいと考えられます。

タブレット付きショッピングカートを導入した店舗では、従来のショッピングカートを使うお客さんと、タブレット付きショッピングカートを使うお客さんに分かれます。異なるショッピングカートを利用するお客さんは、異なる買い物行動をするため、お互いの存在を邪魔に感じるようになるのではないかと思います。現在、セルフレジ・セミセルフレジが拡大していますが、セルフレジ・セミセルフレジを嫌うお客さんが店舗から離れて行く問題が起こっています。タブレット付きショッピングカートについても、タブレット付きショッピングカートを嫌うお客さんが店舗から離れて行くリスクがあります。

タブレット付きショッピングカートを利用した買い物では、タブレットを操作したり、商品をスキャンするため、従来のショッピングカートを利用した買い物よりも時間が掛かります。女性の社会進出、長時間労働が問題になっている社会状況を考えると、買い物の時間が掛かるタブレット付きショッピングカートはお客さんのニーズに合っていません。買い物時間を節約するために、ネット通販で買い物をする人も増えています。小売業がタブレット付きショッピングカートの利用者を増やすには、タブレット付きショッピングカートの優れた買い物体験をお客さんに説明して、理解してもらう必要があります。

小売業がアピールしたいタブレット付きショッピングカートの利点は、お得な買い物情報を見逃すことがなくなり、お得な商品を確実に買い物できることです。タブレット付きショッピングカートは買い物の時間が掛かるデメリットはあるものの、セール情報を見逃すことが減るため、お得な買い物ができるというメリットがあります。買い物の時間を短くしたいと考えるお客さんが多いですが、お得な買い物ができるのであれば、タブレット付きショッピングカートを使おうと考える人もいるはずです。タブレット付きショッピングカートがもたらす金銭的な価値は、時間の価値よりも分かりやすいものです。

小売業がタブレット付きショッピングカートを導入するにあたって不安な点は、店内で他のお客さんの邪魔になること、買い物に時間が掛かることの二点です。通路で立ち止まったり、他のお客さんにぶつかるなどは解決しなければならない重要な問題で、これから問題として認識されるようになると思います。買い物に時間が掛かることについては、お客さんにタブレット付きショッピングカートのメリットを理解してもらう必要があります。タブレット付きショッピングカートを使った買い物のメリットは、これまでにない楽しい買い物方法で、お得な商品を見逃すことなく、効率よく買い物ができることです。

お客さんは買い物に時間が掛かることを嫌いますが、小売り業の立場では、少しでも長く買い物に時間を掛けてもらいたいです。特に小売業がお客さんに時間を掛けてもらいたいのは商品を見る時間で、店内にある商品を一つでも多く見て、手にとってもらいたいです。小売業が商品を見てもらう時間を増やすには、無駄な買い物時間を減らすことが効果的です。レジの待ち時間は無駄な買い物時間の一つで、小売業・お客さんの両方にとって無駄なものです。レジの待ち時間を減らして、商品を見る時間を増やすことができれば、お客さんは快適に買い物ができ、小売業は売上を増やすことができます。