ショッピングセンターの新規開業数は減少傾向にあるが地域一番店には大きなチャンス

ショッピングセンターの新規開業数は減少傾向にあるが地域一番店には大きなチャンス

ショッピングセンターは買い物、飲食、エンターテイメントが揃った、小売業の中でも人気のある店舗です。日本では少子高齢化による人口減少、ネット通販の拡大、ライフスタイルの変化などにより、ショッピングセンターの運営が難しくなっています。日本ショッピングセンター協会のデータ「全国のSC数・概況」によると、2017年にオープンしたショッピングセンターの数は48店舗です。2007年の97店舗と比較すると半分程度になっており、新規開業数は減少傾向にあります。今後、ショッピングセンターでも閉店が増えれば、地域一番店が安定的に高いシェアを維持するのではないかと予想しています。

ショッピングセンターの成長戦略として、既存店への投資、コト消費の強化、オムニチャネルの構築について考えみました。ショッピングセンターが最も大きな利益を稼ぐ方法は、既存店へ投資をして、地域での競争に生き残ることです。小売業では店舗の閉店が増えており、競合店の閉店は自社の売上・客数の増加をもたらします。オムニチャネルは小売業の機会損失を解消することで売上を増やすものですが、機会損失が多いショッピングセンターでは大きな効果が見込めます。ショッピングセンターの成功シナリオは、地域一番店になり、オムニチャネルで機会損失を解消することではないかと思います。

ショッピングセンターの出店数・店舗面積・テナント数は減少傾向

日本ショッピングセンター協会のデータ「全国のSC数・概況」によると、2017年にオープンしたショッピングセンターの数は48店舗、ショッピングセンター1店舗あたりの平均店舗面積は19,475平方メートル、ショッピングセンター1店舗あたりの平均テナント数は58店舗となっています。「全国のSC数・概況」では2001年から2017年までのデータを公表していますが、2017年のオープン数48店舗は、2012年の35店舗に次いで二番目に少ない数字です。1店舗あたりの平均店舗面積、1店舗あたりの平均テナント数についても減少傾向にあり、ショッピングセンターは出店数の減少、小型化が進んでいます。

ショッピングセンターの新規オープンが減少する要因として、2011年の東日本大震災、2020年の東京オリンピックによる建設コストの高止まりがあります。小売業のニュースを読んでいると、建設コストが高騰しているという話題はたまに目にしますが、影響は大きいようです。2011年の東日本大震災、2020年の東京オリンピックによる建設需要が拡大していることに加え、建設業界では従業員の高齢化、人手不足の問題も知られるようになっています。2020年の東京オリンピックが終わるまでは、建設コストは高止まりの状態が続き、東京オリンピック後には新しい変化が出ると見込まれています。

ショッピングセンターの新規オープンが減少する要因には、消費者のライフスタイルが変化したことも考えられます。ショッピングセンターがターゲットとするお客さんは、若いカップル、小さな子供・10代の子供を持つ家族連れです。現在、若者の恋愛離れ、非婚化・晩婚化、少子化といった変化が起こっていて、ショッピングセンターがターゲットとするお客さんの数が減少しています。また、高齢者は不安を理由に自動車の運転を控える人が増え、若い世代は経済的な理由で自動車を運転しない人が増えていることは、自動車での来店を想定しているショッピングセンターには都合が悪いです。

ショッピングセンターがお客さんに提供する買い物体験は、衣料品、服装品、雑貨、ホビー、食品といった様々な専門店で買い物をしてもらい、飲食店、アミューズメント、サービスを体験してもらうことです。買い物と体験をセットにしたものがショッピングセンターの強みですが、ネット通販が拡大したため、ショッピングセンターの買い物体験が切り分けられている状況です。ネット通販で買い物をするカテゴリが増えれば、ショッピングセンターに出掛ける動機が減ることになります。ショッピングセンターの客単価は高く、客数が減少すると、幅広いカテゴリの売上が減少することになります。

少子高齢化により人口の減少が始まっていますが、人口の減少は小売業の出店戦略に影響を与えるようになっています。小売業では新規出店が難しい状況ですが、小型店と大型店を比較すると、スクラップアンドビルドが大変な大型店の方が新規出店は難しいです。ショッピングセンターのような大型店の場合、新規出店できる商圏は限られていて、同じ商圏を複数のショッピングセンター運営事業者が狙っています。ショッピングセンターのオープン数、1店舗あたりの平均店舗面積、1店舗あたりの平均テナント数が減少傾向にあるデータは、ショッピングセンターの新規出店が厳しい状況を表しています。

少子高齢化による人口の減少が社会問題として広く認識されたことで、地元を大切にしようという考えを持つ人が増えています。ショッピングセンターで買い物をするお客さんの立場では、新しいショッピングセンターがオープンするよりも、既存のショッピングセンターが充実する方が好ましいのではないでしょうか。どのような業種であっても、昔からある既存の店舗と激しく競合する形での新規出店は歓迎されなくなっているように感じます。ショッピングセンター運営事業者もハイリスク・ハイリターンの新規出店よりも、ローロリスク・ローリターンの既存店の投資を重視した方が堅実です。

既存店には閉店した競合店の売上を獲得できるチャンスがある

イオンの子会社でショッピングセンター開発を行うイオンモールの動向は、ショッピングセンターの将来を考えるうえで参考になります。イオンモールの2018年2月期の決算説明会資料の中に、2017年(実績)、2018年(計画)、2019年(計画)の設備投資のデータがあります。新規モール出店への投資額は、2017年(実績)は800億円、2018年(計画)は900億円、2019年(計画)は300億円です。既存モール活性化への投資額は、2017年(実績)は700億円、2018年(計画)は300億円、2019年(計画)は400億円です。3年間の合計は、新規モール出店への投資額は2,000億円、既存モール活性化への投資額は1,400億円です。

2017年(実績)、2018年(計画)は、新規モール出店への投資額が既存モール活性化への投資額よりも大きいですが、2019年(計画)は既存モール活性化への投資額の方が新規モール出店への投資額を上回っています。また、新規出店は建設費が高止まっているため、出店ペースを絞り込むといった説明もあります。大手小売業のイオンの子会社であるイオンモールにおいても、新規出店だけではなく、既存店への投資を重視する動きが見られます。建設費の高止まりは新規出店を控える理由になっていますが、コストの問題以外にも、既存店への投資を拡大する理由があるのではないかと思います。

ショッピングセンターの新規出店数は減少傾向にありますが、既存のショッピングセンターは好調な店舗、不調な店舗の差が拡大しているような感じがします。好調なショッピングセンターの中には、平日でも駐車場の車が多く、かなり儲かっているのではないかと思われる店舗もあります。地域に強力な競合店がないショッピングセンターは、高いシェアを維持して、着実に売上を伸ばすことができる好機を迎えています。ショッピングセンターの新規出店数は減少傾向にあるため、地域一番店のポジションを確保できているショッピングセンターは、今後も安定的に売上を伸ばせるのではないでしょうか。

好調な既存店へ投資を行い、盤石な基盤をさらに強化することは効率のよい成長方法ではないかと思います。高いシェアを維持した状態で、来店回数、客単価をゆっくりと増やして行ければ、リスクは小さく、安定的に業績を拡大することができます。好調な既存店へ投資を行うことは、競合店が新規出店して来ることを防ぐことにも繋がります。ショッピングセンターの新規出店数が減少傾向にあることからも分かるように、新規出店の余地は多くはありません。地域一番店として圧倒的な存在になることができれば、競合店の新規出店を排除して、地域のお客さんを独占し続けることも可能です。

少子高齢化による人口の減少、ネット通販の拡大により、実店舗が減少して行くことは確実だと考えられています。小売業にとって、実店舗が減少して行く状況は厳しいものですが、一方、生き残った店舗には地域のお客さんを独占できる大きなチャンスがあります。小売業が売上を増やすためには新規出店が重要で、新規出店はこれまでなかった売上を新しく作り出します。一方、既存店への投資は売上の増加が小さいため、新規出店ほど重視されて来ませんでした。しかし、現在は閉店せずに生き残るだけでも売上を伸ばせる状況を迎えており、既存店への投資は以前よりも価値のあるものになっています。

百貨店、総合スーパーでは店舗の閉店が続いていて、売上が数十億円あるような大型店でも、営業利益を確保できずに閉店するケースが増えています。今後、ショッピングセンターでも地域の二番店、三番店が閉店することがあれば、地域一番店にお客さんが流れて行くことになります。ショッピングセンターは売上の規模が大きいだけに、店舗が閉店した場合、他店に流れる売上も大きくなります。実店舗が閉店して行くことは残念ではありますが、閉店せずに生き残った店舗は成功を収められるチャンスがあり、小売業界は厳しさを増す中で、やりがいのある競争環境にあるとも言えます。

コト消費は集客力のアップと関連商品の売上増加が期待できる

ショッピングセンターでどのような商品・サービスが伸びているかについては、イオンモールの売上データが参考になります。イオンモールの2018年2月期の決算説明会資料の中に、イオンモール既存店72店舗の専門店の売上データがあります。イオンモールのカテゴリ別売上の前期比は、衣料品は1.0%減、服装品は1.2%減、雑貨は6.8%増、ホビーは3.6%増、食品は9.4%増、飲食は2.2%増、アミューズメントは0.6%減、サービスは4.2%増となっていて、専門店全体では2.2%増です。多くのカテゴリの売上が伸びていて、衣料品、服装品は売上が減っているものの、減少率は小さいです。

イオンモールの買い物体験を考えると、衣料品、服装品、雑貨、ホビーの4つの物販カテゴリーは、お客さんが時間を掛けてイオンモールに買い物に来る目的商品です。衣料品、服装品、雑貨、ホビーを買うためにイオンモールに来たお客さんに、飲食、アミューズメント、サービスの体験型商品も楽しんでもらいたいです。食品の売上は前期から大きく伸びていますが、食品はイオンモール以外のグループ店でも買うことができます。小売業全体で食品の売上が伸びていて、イオンモールに食品が伸びる特別な理由があるというよりは、イオンモールに来たついでに食品を買う人が増えていると考えられます。

小売業ではコト消費が重要になるという意見が多く、ショッピングセンターでもコト消費の強化が重要になるのではないかと思います。コト消費が重要になる背景には、お客さんのモノを保有することへの関心が低下していることがあります。シェアリングエコノミーの普及により、中古品の流通が増えたため、小売業が販売する新品の価値は低下しています。また、ネット通販が拡大していることも、小売業がコト消費を強化する理由です。ネット通販はリアルでお客さんと接触することができないため、小売業はリアルでお客さんと接触できる特徴を活かすことで、ネット通販に対抗する狙いがあります。

お客さんのモノを保有することへの関心が低下していることは事実ですが、そのことがコト消費の需要の増加に繋がっているとは考えにくいです。コト消費で売上を伸ばしたいというのは小売業側の立場で、お客さんは小売業に対して何か特別なリクエストがあるわけではありません。小売業はコト消費を強化したいものの、具体的に何をすればいいのか分からないというのが現状ではないかと思います。ショッピングセンターは大きな売り場面積、多くのお客さんを抱えているため、コト消費のビジネスを拡大する余地はありそうですが、どのようなコト消費がショッピングセンターに適しているのかは分かりません。

ショッピングセンターのコト消費と言えば、ゲームセンター、シネマはお客さんから愛され続けているコンテンツです。ゲームセンターは家族連れのお客さんが買い物のついでに楽しむことができ、シネマはカップルのお客さんが買い物のついでに楽しむことができます。ショッピングセンターが提供したいコト消費は、ゲームセンター、シネマのように買い物との相性がよく、定番のコンテンツとして多くの店舗に拡大できるものです。ゲームセンター、シネマはエンターテイメント系のコンテンツですが、ショッピングセンターで有望なコト消費は、学習系のコンテンツではないかと思います。

新しいものを学習したいという人はたくさんいますが、最近は特に学習意欲の高い人が増えているようです。アンケート調査などを見ると、言語、プログラミング、家事、マナーなどの学習に興味を持っている人が多いです。こうした内容を教える教室をショッピングセンター内に設置すれば、コト消費のコンテンツとしてうまく機能するのではないかと思います。教室に通うことはショッピングセンターに出掛ける動機になり、集客力アップに繋がります。例えば、料理教室に通った人が料理への関心を高めれば、ショッピングセンターで食材、調理器具が売れるようになるといった効果も期待できます。

ショッピングセンターはオムニチャネルで客数・売上が増える

実店舗とネットショップが融合したオムニチャネルは、小売業が売上を増やすために不可欠なものだとの認識されるようになっています。オムニチャネルを持つ小売業では、ネットショップで注文した商品を実店舗で受け取ること、実店舗で見た商品をネットショップで購入することが可能になります。お客さんはオムニチャネルにより買い物がしやすくなるため、小売業は売上が増えることになります。ネットショップや実店舗で気になる商品があっても、すぐに買わないことは多々あります。オムニチャネルは後から簡単に買えるようにする仕組みで、小売業の売上を増やす効果は確実だと言えます。

実店舗とネットショップの両方で売上が伸びている小売業には、ファーストリテイリング、ニトリホールディングス、良品計画などがあります。ファーストリテイリング、ニトリホールディングス、良品計画では、スマートフォンアプリを利用することで、実店舗とネットショップを行き来しながら買い物ができるようになっています。ファーストリテイリング、ニトリホールディングス、良品計画は、付加価値の高いプライベートブランドを持つ製造小売業です。付加価値の高い商品とオムニチャネルの優れた買い物体験が揃うことで、実店舗とネットショップの両方の売上が伸びる成果が得られています。

実店舗とネットショップが融合したオムニチャネルの効果はすべての小売業にありますが、ショッピングセンターは特に効果が大きいと考えられます。ショッピングセンターにオムニチャネルが効果的な理由は、ショッピングセンターは商圏が広く、品揃えが豊富なため、多くの機会損失が発生していると推測できるからです。時間を掛けてショッピングセンターに出掛け、たくさんの商品を見たけど、実際に買ったものは少なかったということはよくあります。こうした見ただけの商品をネットショップで注文できる仕組みがあれば、後からやっぱり商品が欲しくなったお客さんから注文をもらうことができます。

ショッピングセンターで販売しているすべての商品情報に、スマートフォンから簡単にアクセスできることが理想的です。実店舗で見た商品をバーコードを読み込むなどの方法でスマートフォンに保存して、ショッピングリストを作成します。ショッピングリストの商品ページには、実店舗の陳列状況・在庫状況、ネットショップでの購入動線を用意します。ショッピングセンターは豊富な品揃えを持っていますが、実店舗だけで利用するのはもったいないです。スマートフォンから実店舗の商品にアクセスできるようにすれば、より多くの商品をお客さんに見てもらえ、商品が売れるチャンスが増えます。

ショッピングセンター運営事業者では、三井不動産が実店舗とネットショップが融合したオムニチャネルの構築に取り組んでいます。三井不動産は2017年11月より、三井ショッピングパークの公式通販サイト「MitsuiShoppingPark&mall(アンドモール)」の運営を開始しています。1周年を迎えた2018年11月現在、登録者数は90万人、出店ショップは350店舗となっています。「MitsuiShoppingPark&mall(アンドモール)」は三井不動産のショッピングセンターと連携しており、ショッピングセンターとネットショップが連携することで、どのような新しい買い物体験が生まれるのか注目です。

「MitsuiShoppingPark&mall(アンドモール)」は2018年10月より、新サービス「&mall DESK(アンドモールデスク)」を各ららぽーと・ラゾーナ川崎プラザ・ダイバーシティ東京プラザで開始しています。「&mall DESK(アンドモールデスク)」では、「MitsuiShoppingPark&mall(アンドモール)」で注文した商品の受け取り、試着ができ、気に入らない場合は返品も可能です。お客さんは気になる衣料品を試着してから購入できるため、買い物がしやすくなり、「MitsuiShoppingPark&mall(アンドモール)」は商品が売れやすくなることに加え、ショッピングセンターの集客力アップにもなります。