楽天と西友が共同で運営するネットスーパー「楽天西友ネットスーパー」がオープン

楽天と西友が共同で運営するネットスーパー「楽天西友ネットスーパー」がオープン

2018年10月25日、楽天と西友が共同で運営するネットスーパー「楽天西友ネットスーパー」がオープンしました。西友はこれまで単独でネットスーパー「SEIYUドットコム」を運営してきましたが、楽天と共同で運営する「楽天西友ネットスーパー」にリニューアルしています。「楽天西友ネットスーパー」は楽天が持つ巨大な会員基盤、ネット通販のノウハウ、最新のテクノロジーと、西友が持つ食品のノウハウを活かして、日本一のネットスーパーを目指しています。また、「楽天西友ネットスーパー」はネットスーパー専用の物流センターを新設しており、ラストワンマイルの強化にも取り組んでいます。

多くの商品がネット通販で売買されていますが、他のカテゴリと比較すると、食品のEC化率は低いです。お客さんは近所の実店舗で食品を買うことができるため、ネット通販で食品を買おうと考える人は多くはありません。しかし、今後もネット通販の流通総額は拡大することが確実で、食品のEC化率も上昇を続ける見込みです。2017年4月には「Amazonフレッシュ」、2017年11月には「IY FRESH」がサービスを開始していて、食品のネット通販が本格化する兆しがあります。女性の社会進出が進み、家事に時間を掛けたくない人が増えていることで、食品のネット通販へのニーズが高まっています。

楽天と西友の経営資源を活かした「楽天西友ネットスーパー」

2018年10月25日、楽天と西友が共同で運営するネットスーパー「楽天西友ネットスーパー」がオープンしました。楽天は2018年1月26日に、アメリカのウォルマート・ストアーズと電子商取引(EC)の分野で提携することを発表しました。「楽天西友ネットスーパー」はウォルマート・ストアーズとの提携の一つで、ウォルマート・ストアーズの子会社である西友と共同で運営します。楽天は9,900万人の会員基盤、ネット通販のノウハウを持ち、西友はスーパーマーケットのノウハウを持っています。「楽天西友ネットスーパー」は、両社が持つ経営資源を活かして、日本一のネットスーパーを目指しています。

「楽天西友ネットスーパー」が販売する商品は、生鮮食品などの食品、日用品、時短ニーズに対応したカット野菜、半調理食品、ミールキットなどの簡便商品、「楽天市場」で人気のお取り寄せグルメ、農業サービス「Rakuten Ragri(ラグリ)」の有機野菜・有機野菜サラダなど、約2万品目を取り揃えています。サービス提供エリアは関東の1都3県を中心に、西友の店舗がある16都道府県となっています。配送料は一定金額以上の注文で送料無料になりますが、それ以下の注文金額の場合は432円(税込)です。配送時間は午前10時から午後10時までで、午後3時までに注文をすると、一部地域では当日配達も可能です。

西友は楽天と共同で「楽天西友ネットスーパー」を運営することで、楽天が持つ巨大な会員基盤、ネット通販のノウハウ、優秀なエンジニアなどを活用できます。少子高齢化による人口減少のため、お客さん・人材の奪い合いが厳しくなり、ネット通販では大手ネットモールの独占が強まっています。西友はこれまでネットスーパー「SEIYUドットコム」を運営してきましたが、お客さんの獲得や最新のテクノロジーの導入で問題を抱えていたのではないかと推測されます。西友は自社の単独運営から、楽天との共同運営へと体制を変えることで、ネットスーパーで抱えていた様々な問題を解決することができます。

西友が単独で運営していた「SEIYUドットコム」では、商品の配送は西友の実店舗から行なっていました。多くのスーパーマーケットがネットスーパーの注文を実店舗から配送していますが、実店舗からの配送には、キャパシティーが小さい、配送が遅延するといった問題があります。「SEIYUドットコム」もキャパシティーや配送の遅延の問題を抱えていましたが、「楽天西友ネットスーパー」は千葉県柏市にネットスーパー専用の物流センターを新設しています。「楽天西友ネットスーパー」は西友の実店舗と専用の物流センターから配送を行うことで、従来の1.5倍の注文量に対応できるようになっています。

楽天が西友と共同で「楽天西友ネットスーパー」を運営する狙いの一つとして、食品のEC化率が低いことが挙げられています。経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、2017年の日本国内のBtoC-ECの市場規模は16兆5,054億円(前年比9.1%増)、EC化率は5.79%(前年比0.36ポイント増)です。「食品、飲料、酒類」を見ると、市場規模は1兆5,579億円(前年比7.42%増)、EC化率は2.41%(前年比0.16ポイント増)です。食品のECは市場規模が大きいにもかかわらず、EC化率は低く、楽天は西友と連携することにより、食品のネット通販で大きな成功を収めるチャンスがあります。

楽天ポイントが使える「楽天経済圏」を強化するという点でも、「楽天西友ネットスーパー」の価値は大きいです。楽天はネットとリアルの両方で楽天ポイントが使える場所を増やすことで、お客さんとの接点を増やし、囲い込もうとしています。「楽天西友ネットスーパー」のオープンにより、楽天の会員は楽天ポイントを食品、日用品の購入に使えるようになります。ネットスーパーで食品を購入することに不安を持つ人も多いですが、西友は食品の販売で信頼と実績があります。ネットスーパーでの買い物に不安を持っていた楽天の会員も、「楽天西友ネットスーパー」であれば安心して買い物ができます。

ネットスーパー専用の物流センターを新設して黒字化を目指す

楽天と西友が共同で運営する「楽天西友ネットスーパー」は、千葉県柏市にネットスーパー専用の物流センターを新設しています。また、ラストワンマイルの配送を強化するため、都内にもいくつかの配送拠点を新設しています。千葉県柏市にあるネットスーパー専用の物流センターから、都内にある配送拠点に商品を運び、そこからお客さん宅へ配送する仕組みです。従来の実店舗からの配送も引き続き行われ、注文状況に応じて、実店舗・物流センターのどちらかから商品が配送されます。楽天との連携により、客数の増加が見込めることで、ネットスーパー専用の物流センターの新設も可能になっています。

ネットスーパーの利用に関するアンケート調査を見ると、仕事と家庭で忙しい、30~40代の女性の利用者が多いです。ネットスーパーの利用者に忙しい人が多いことを考慮すると、配送時間は正確で、細かく時間指定できることが望まれます。また、ネット通販で最もよく注文されている食品は水と米で、大手ECサイトのランキングを見ても、水と米が上位にランクインしています。お客さんがネット通販で水と米を購入する理由は、商品を自宅まで届けてくれるからです。お客さんはネットスーパーに利便性を求めているため、ネットスーパーの利用者を増やすためには、配送の品質を高めなければなりません。

ネットスーパーを始めるスーパーマーケットが増えていますが、一般的にネットスーパーは収益性が低い、赤字になりやすいと言われています。実店舗から商品を配送するネットスーパーでは、商品のピックアップ・梱包・配送といったコストが発生します。これらのコストの負担をお客さんにお願いすることが難しく、ネットスーパーの収益性を悪化させる一因になっています。スーパーマーケットの商品の価格は、お客さんが自分で買い物に来て、自分で商品をピックアップして、自分で持って帰ることを想定したものです。従来の商品の価格では、ネットスーパーのコストを吸収することは難しいです。

これまで実店舗で商品を販売してきたスーパーマーケットの立場では、ネットスーパーへのニーズの高まりは悩ましいのです。ネットスーパーを利用する人は多くはないものの、確実に存在していて、今後も利用者が増えて行くことが見込まれています。パソコンやスマートフォンから24時間注文ができ、自宅に商品が届くネットスーパーは便利です。ネットスーパーの利便性に慣れたお客さんは、実店舗で買い物をしなくなる、実店舗での買い物回数が減る可能性が高いです。スーパーマーケットもネットスーパーを運営したいはずですが、利益を確保することが難しく、ビジネスモデルを確立できていません。

西友は単独でネットスーパー「SEIYUドットコム」を運営していましたが、黒字だったかどうかについては言及がなく、おそらくは赤字であったのではないかと推測されます。楽天と西友が共同で運営する「楽天西友ネットスーパー」は、2019~2020年に掛けて黒字化することを目標に設定しています。黒字化のカギに挙げられているのが、千葉県柏市に新設されたネットスーパー専用の物流センターです。ネットスーパー専用の物流センターの稼働率が高まれば、黒字化が見えてくるとのことです。物流センターの稼働率が高まれば、配送が効率よく行われるため、配送コストが下がり、黒字化するという想定です。

ネットスーパー専用の物流センターの稼働率を高めるためには、西友の実店舗がない地域で利用者を増やすことが重要になります。西友のデータによると、「SEIYUドットコム」の利用者は西友の実店舗の近くに住んでいるお客さんが多く、実店舗から遠くなるほど、利用者が減少することが分かっています。西友の実店舗で買い物をしたことがないため、西友のネットスーパーでも買い物をしないということだと考えられます。「楽天西友ネットスーパー」では、楽天が持つ9,900万人の会員基盤からの集客が期待できるため、西友の実店舗から遠いエリア、実店舗がないエリアでも客数を増やせます。

将来的には食品をネット通販で購入する人が増えることは確実

経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、2017年の「食品、飲料、酒類」のBtoC-ECの市場規模は1兆5,579億円(前年比7.42%増)、EC化率は2.41%(前年比0.16ポイント増)です。「食品、飲料、酒類」のネット通販は市場規模は大きいにもかかわらず、EC化率は非常に低いです。EC化率が高いカテゴリには、「事務用品・文具」(37.38%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(30.18%)、「書籍、映像・音楽ソフト」(26.35%)などがあります。食品のEC化率が低いことは、食品のネット販売が難しいことを意味していますが、成長の余地が大きいとも言えます。

食品のEC化率が他のカテゴリよりも低い理由を考えると、お客さんにとって、食品をネット通販で買うメリットが小さいからだと考えられます。お客さんがネット通販で買い物をする理由には、自宅から買い物ができる、商品を自宅に配達してくれる、価格が安い、品揃えが豊富、近くに実店舗がないといったものです。食品を購入するにあたっては、こうした問題を抱えている人は少ないのではないかと思います。買い物の利便性については、食品スーパー、コンビニ、ドラッグストアなど、身近に食品を買える実店舗があります。価格についても、食品はネット通販よりも実店舗の方が安いことが多いです。

ネット通販は世界的に起きている変化で、世界中のお客さんがネット通販で買い物をしています。これまでは実店舗で買い物をすることが当たり前でしたが、ネット通販の登場により、実店舗とネット通販の両方で買い物をすることができます。海外の小売業のニュースを見ていると、アメリカ、イギリス、中国、インドなど、世界的にネット通販で食品を購入する人が増えています。ネット通販での買い物が世界的な変化であることを考えると、日本でも食品をネット通販で購入する人が増えることは確実です。全世界で食品をネット通販で購入する人が増える中で、日本だけ増えないというのは考えにくいです。

衣料品、家電、家具などはネット通販での売買が難しい商品だと言われていましたが、ECサイトの努力、お客さんの慣れによって、これらの商品もネット通販で売買されるようになっています。家電、家具には価格が高い、実物を体験できないという問題があり、衣料品には試着してみないと着心地が分からないという問題があります。こうした問題があってもネット通販で商品が売買されるのは、ネット通販が持つ、価格、品揃え、利便性のメリットが大きいからです。衣料品、家電、家具がネット通販で売買されている状況を見ると、将来的には食品もネット通販で売買されるのは確実だと言ってよいと思います。

日本の家庭では、スーパーマーケットで食材を購入して、自宅で調理をして食べることが一般的です。しかし、女性の社会進出が進み、仕事を持つ女性が増えたことで、従来の食品の買い物方法、調理方法にも変化が出始めています。スーパーマーケットやコンビニで弁当・惣菜を購入したり、ネットスーパーで食材・調味料・レシピがセットになったミールキットを購入する人が増えています。忙しい人は食品の購入、調理に時間を掛けたくないため、どうにかして時間を節約しようとします。食品の購入や調理の時間を節約したい人が増えてくれば、食品の購入店舗としてネットスーパーを選ぶ人も増えるはずです。

食品、日用品は生活に不可欠なものであるため、買い物の頻度は多く、多くの人が同じ買い物作業を繰り返しています。これまでは単調な買い物作業を繰り返すことが当たり前だったため、疑問に思うこともありませんでした。しかし、仕事や家庭で忙しくなって来ると、食品、日用品の買い物に多くの時間を費やしていることに気が付きます。食品、日用品の買い物に多くの時間を費やしていることに気が付いた人は、ネットスーパーで買い物をすることで、時間を節約しようとします。時間の節約はネットスーパーが提供できる重要な付加価値で、時間の価値が高まるほど、ネットスーパーの価値も高まります。

生鮮食品のネット通販では長い実績を持つ従来の小売業が有利

食品のネット通販は収益の確保が難しいとされていますが、2017年以降、食品のネット通販で新しいサービスが次々に登場しています。2017年4月には、食品、飲料、日用品・雑貨、専門店グルメを購入できる「Amazonフレッシュ」が、東京の6区でスタートしました。「Amazonフレッシュ」はサービスの開始後1年間で、東京の18区、西東京、神奈川、千葉県の一部まで、サービス提供エリアを拡大しています。また、2017年11月には、セブン&アイ・ホールディングスとアスクルが共同で、生鮮食品を販売するネットスーパー「IYフレッシュ」を、東京新宿区、文京区でスタートしました。

「Amazonフレッシュ」のスタートから7ヶ月後に、「IY FRESH」がスタートしており、「Amazonフレッシュ」は食品のネット通販に大きな刺激を与えています。ネット通販では、アカウントの作成、クレジットカードの登録が面倒くさいので、お客さんは複数の店舗を利用せず、少数の店舗を繰り返し利用します。食品のネット通販は他のカテゴリの商品よりも買い物の回数が多いため、お客さんは気に入った店舗を長く使い続ける可能性が高いです。小売業が食品のネット通販で成功を収めるためには、他社に先駆けてお客さんを囲い込む必要があり、Amazonに続いて多くの企業が動き始めています。

Amazonは日本のネット通販で最大のシェアを獲得している企業で、様々なインターネット調査を見ても、お客さんに最も支持されているネット通販だと言えます。Amazonはネット通販で多くのカテゴリの商品を販売していますが、生鮮食品については、苦戦するのではないかと予想しています。お客さんが生鮮食品をネット通販で購入しない理由として、商品を見てから購入したいから、鮮度管理・品質管理に不安があるかなどが挙げられています。お客さんは生鮮食品の販売で実績のないAmazonよりも、生鮮食品の販売で長い実績のある、西友のような小売業のネットスーパーを好むのではないでしょうか。

お客さんがネットスーパーで食品を購入する理由は、買い物の時間を節約するためです。価格が安い、品揃えが多い、配達オプションが豊富などは、買い物の時間を節約することほど重要ではありません。お客さんはネットスーパーで食品を購入したいというよりも、いつも食品を購入している実店舗が、自宅まで配達してくれれば良いと考えているのだと思います。お客さんはいつも食品を購入している実店舗のことをよく知っていて、鮮度管理・品質管理には不安はありません。いつも食品を購入している実店舗が自宅まで配達してくれれば、お客さんは買い物の時間を節約するメリットだけを得られます。

今後、ネットスーパーで食品を購入するお客さんがどのくらいのスピードで増えるかですが、急増することはないかもしれません。食品の購入場所は食品スーパーが中心で、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウントストアでも食品が買えます。コンビニは中食需要に対応するために、惣菜・ホットスナックの品揃えを強化しており、以前より食品の品揃えが充実しています。ドラッグストアは生鮮食品はないものの、日配食品・加工食品・冷凍食品の品揃えは充分で、価格は安く、店舗数も急増しています。一部の地域では買い物難民の問題が出ているものの、お客さんは食品を買いやすい状況にあると言えます。

仕事が忙しい人が増え、食品の買い物に時間を掛けられない人が増えることは、ネットスーパーの利用者が増えるための条件の一つです。しかし、週末に実店舗でまとめ買いをすることもできるので、仕事が忙しい人が増えることを期待するだけでは不十分です。ネットスーパーが利用者を増やすための施策の一つとして、加工食品の低価格販売は有効ではないかと思います。お客さんは生鮮食品の買い物に不安を持っているため、まずは、買い物に不安のない加工食品を購入してもらいます。お客さんにネット通販で食品を購入することに慣れてもらえれば、将来的には生鮮食品も購入してもらえるようになります。