ローソンがテクノロジーを活用した未来型のコンビニを展示「CEATEC JAPAN 2018」

ローソンがテクノロジーを活用した未来型のコンビニを展示「CEATEC JAPAN 2018」

「CEATEC JAPAN 」は最新のテクノロジーを紹介するエキシビションですが、今年の「CEATEC JAPAN 2018」は、小売業のローソンが初めて出展したことで話題になっています。ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」に、ウォークスルー決済、自動調理ロボット、遠隔医療システムなどを展示して、未来型コンビニのコンセプトを紹介しています。ローソンはテクノロジー、ロボットを活用することで、店員が行なっている単純作業を減らして行く計画です。省力化によって生み出された店員の余力を接客に使うことで、「ヒューマン・ファースト」を実現する、未来型のローソンへ転換しようとしています。

ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」において、多くの情報を発信しましたが、特に注目されたのは、将来的に店員一人でローソンの店舗を運営するかもしれないというものです。現在、店員は発注、品出し、レジ、掃除、接客といった業務を行っていますが、テクノロジー、ロボットを活用することで、店員の業務はどんどん減っていきます。品出しを省力化することは難しいように思いますが、それ以外の業務は省力化できそうです。小売業は全体的に収益性が悪化しているため、ローソンがテクノロジー、ロボットを活用して、省力化と収益性の改善が実現できれば、小売業全体にとっても素晴らしいことです。

RFIDの技術を活用したウォークスルー決済で瞬時に支払いが完了

ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」において、いくつかの最新テクノロジーを紹介しましたが、最も注目されたのがウォークスルー決済です。ウォークスルー決済はRFIDの技術を活用していて、複数の商品の会計処理が瞬時に終わることが特徴です。ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」にウォークスルー決済を体験してもらうための店舗を出店し、多くの来場者がウォークスルー決済を体験しています。インターネットを検索すると、ローソンのウォークスルー決済を体験した人の記事、動画が多数あります。RFIDを活用した無人レジはこれまでにないソリューションで、全体的に好意的な反応が多いです。

ローソンのウォークスルー決済を利用するお客さんは、買い物の前に「ローソンCEATECアプリ」か「楽天Payアプリ 」のどちらかをインストールして、クレジットカードの情報を登録しておく必要がありました。店内では自分が欲しい商品(各商品にRFIDタグが付いている)を取り、事前に渡された専用の買い物バッグに商品を入れます。買い物が終わったら決済を行いますが、決済用のゲートを通過する前に、アプリを起動させ、QRコードをリーダーにかざします。QRコードをかざした後、買い物バッグを決済用のゲートに通しながら歩くと、瞬時に決済が完了して、電子レシートがスマホアプリに届きます。

ローソンのウォークスルー決済にはRFIDの技術が使われていますが、RFIDは無人レジだけではなく、在庫管理、消費・賞味期限のチェックにも活かせるため、小売業の生産性を高めるソリューションとして期待されています。しかし、商品に貼り付けるRFIDタグの価格が高く、RFIDの実用化にはもうしばらく時間が掛かるとされています。現在のところ、RFIDタグの価格は1枚あたり10数円とのことですが、将来的には5円以下、数円になる見通しです。小売業が販売する商品は1個数十円、数百円のものが多く、低価格の商品にRFIDタグを貼り付けようとすると、RFIDタグのコストダウンが不可欠です。

RFIDタグの価格が高いことに加え、RFIDタグを商品に貼り付けるコストの負担も、RFIDの実用化に向けた課題になっています。商品の特性、形状によって、RFIDタグの貼り付け方法、貼り付け場所が異なり、RFIDタグの貼り付けは単純ではありません。商品はメーカーの工場で製造され、小売業の店舗で販売されますが、サプライチェーンのどこかでRFIDタグを商品に貼らなければなりません。RFIDタグの機能を有効に活かすためには、サプライチェーンの上流でRFIDタグを貼り付けることが好ましいです。RFIDタグ本体のコストよりも、商品に貼り付けるコストの方の負担が大きいような印象です。

ローソンが「CEATEC JAPAN 2018」で紹介したウォークスルー決済は、お客さんのレジ待ち時間を短縮するとともに、店員のレジ業務を減らすことが狙いです。ローソンは2018年4月より、専用のスマートフォンアプリを使った「ローソンスマホペイ」という決済サービスを数店舗で実験的に運用しています。「ローソンスマホペイ」では、お客さんが自分のスマートフォンで商品のバーコードを読み込んで、決済を行う仕組みになっています。「CEATEC JAPAN 2018」で紹介されたウォークスルー決済は、「ローソンスマホペイ」に続く、店舗の生産性を高めるための決済ソリューションです。

お客さんが自分のスマートフォンを使って決済を行う「ローソンスマホペイ」と比べると、RFIDの技術と専用の設備を使うウォークスルー決済はスケールが大きいです。ウォークスルー決済を見ると、「ローソンスマホペイ」の存在が小さく感じられますが、今後、どちらのシステムも店舗に導入されて行く可能性が高いです。各店舗の客層、お客さんのニーズに応じて、「ローソンスマホペイ」とウォークスルー決済のどちらかが導入されるのではないかと思います。「ローソンスマホペイ」とウォークスルー決済を比較すると、利用するお客さんの立場では、ウォークスルー決済の方が負担が小さいです。

自動調理ロボットでお客さんにパーソナライズされた食事を提供

ローソンが「CEATEC JAPAN 2018」に展示した最新テクノロジーの中で、ウォークスルー決済と同じく注目を集めたのが、餃子を調理する自動調理ロボットです。2台のアーム型の自動調理ロボットが協同して、餃子の皮を置く、餃子の具材を皮に乗せる、餃子の皮に水を付ける、餃子を包み込む、包み終わった餃子を整形する、完成した餃子をタッパーに収納する作業を行います。ローソンが展示したロボットは、デンソーウェーブが開発している「COBOTTA」という人協働ロボットです。「COBOTTA」は様々な単純作業をこなせるロボットで、実行可能な作業の一つとして餃子の調理が紹介されました。

ローソンではからあげクン、Lチキ、コロッケ、焼き鳥などのホットスナックを販売していて、毎日多くの店舗で店員がホットスナックを調理しています。店員がホットスナックを調理することは当たり前で、疑問視されることはありませんでした。しかし、自動調理ロボットが登場したことで、ホットスナックを調理する作業は単純なものだと考えられるようになり、自動調理ロボットに置き換えようとする発想が生まれています。お客さんはコンビニのホットスナックに手作り感を期待しているわけではないため、自動調理ロボットが調理することになっても、大きな問題にはならないのではないでしょうか。

ローソンは自動調理ロボットを店員の作業時間の削減、人件費の削減に使うだけではなく、将来的には食事のパーソナライズにも活用しようとしています。具体的には、お客さんが来店すると、店内に設置したカメラとAI(人工知能)を使って、お客さんの生体情報、健康情報を取得、分析をします。お客さんの生体情報、健康情報に、これまでの買い物履歴を合わせることで、お客さん個人個人にパーソナライズされた、最適な食事のメニューを提案できます。お客さんそれぞれに対して、自動調理ロボットが調理した作りたてのメニューを提供できれば、従来のコンビニの飲食体験を大きく改善することができます。

ネット通販ではお客さんの検索履歴、商品ページ閲覧履歴、購入履歴などを活用して、お客さんそれぞれにパーソナライズされた商品の提案を行なっています。お客さんはネット通販のパーソナライズされた買い物体験を高く評価していて、実店舗にもパーソナライズされた買い物体験を期待しています。現在では、スマートフォンアプリを提供する小売業が増え、お客さんそれぞれにパーソナライズされたクーポンを送っています。ローソンが構想している食事メニューのパーソナライズは、これまでにはない個性的なもので、実用化できれば、多くのお客さんの注目を集めることができそうです。

お客さんはコンビニで弁当、おにぎり、パン、惣菜などの食品を購入していますが、お客さんがコンビニで食品を購入する理由は便利だからです。コンビニは食品スーパーと比べると、店舗が近くにあり、売り場面積は小さく、お客さんは少なく、レジの待ち時間が短いため、素早く食品を購入することができます。最近は、コンビニが開発する食品の質が高まってきているため、便利に加えて、美味しいという評価も得られるようになっています。お客さんはコンビニに美味しさを強く求めているわけではありませんが、自動調理ロボットで作りたての食事を提供できれば、さらにお客さんの満足度を高められます。

自動調理ロボットが実用化されれば、お客さんは調理が終わるまで店内で待つ必要があります。最近は店内にイートインスペースを設置する店舗が増えているため、店内で待つことについては、問題にならないのではないかと思います。また、女性の社会進出により中食市場が拡大していて、コンビニでも惣菜を購入したいニーズが高まっています。これまでは調理済みの惣菜を購入してもらうだけでしたが、自動調理ロボットの導入で、作りたての惣菜を販売するチャンスが生まれます。自動調理ロボットが短時間で作りたての惣菜を調理するのであれば、待ってでも購入しようと考えるお客さんもいるはずです。

生活に不可欠なサービスを提供する生活プラットフォームを目指す

ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」で、リモート会議システムを用いて、医師の問診が受けられるシステムのデモンストレーションを実施しています。利用者は医師の問診を受けるにあたって、専用のデバイスを使って、血圧や脈拍、不足した栄養素などのバイタルデータを取得します。取得したバイタルデータを医師と共有して、ディスプレイを通じて問診を受けます。問診の後には、医師が処方したサプリメントを専用のデバイスから受け取ることができます。この遠隔医療システムの実現には国の認可が必要になるため、将来的に実用化されるかどうかは不明ですが、一つのコンセプトとして紹介されています。

コンビニで遠隔医療を受けるシステムは、これまでにない新しいものですが、お客さんからの強いニーズがあるわけではありません。また、ウォークスルー決済、自動調理ロボットは人件費削減、店舗の生産性改善といった明確なメリットがありますが、遠隔医療システムにはそうした即効的なメリットはありません。ローソンが遠隔医療システムを導入しようとする目的は、高齢化社会が進む中で、コンビニが担う役割を増やそうとしているのではないかと考えられます。コンビニは小売業の店舗の中で最もアクセスしやすいため、行動範囲の狭い高齢者にとっては、コンビニのサービスが充実すれば便利です。

少子高齢化が進んいるため、今後は日本のあらゆる地域で人口が減少して行くと予想されています。人口が減少した地域では、銀行、医者、弁護士、介護、学習塾といった、生活に必要な施設、サービスを維持することが難しくなっていきます。ニュースを見ていると、医師の不足、医師の労働環境の悪化は常に指摘されていて、銀行の店舗閉鎖、ATM閉鎖、介護士の不足などもよく目にします。これまで当たり前に利用してきた施設、サービスが地域から無くなると、住民の生活は難しくなります。地域に必要な施設、サービスをどうやって維持するかということは、日本全体が抱える社会問題になっています。

ローソンがデモンストレーションを行なった遠隔医療システムは、ローソンが地域の生活プラットフォームになろうとする取り組みの一つではないかと思います。将来的に、地域の病院が不足することがあった場合、ローソンの遠隔医療システムがあれば、病院不足の影響を軽減する役割が果たせます。ローソンは2018年11月15日より、ローソン銀行のサービスを開始していて、銀行も生活プラットフォームの一つだと言えます。銀行は店舗、ATMの閉鎖、縮小を次々に発表しているため、お金を下ろすことが大変になった人も増えていますが、そうした人もローソンのATMでお金を下ろすことができます。

少子高齢化で人口の減少が進んでいることもあり、小売業では既存店の客数の減少が目立つようになっています。小売業の店舗は周辺の商圏に依存しているため、何らかの理由で商圏の人口が減少すれば、店舗の客数の減少に繋がります。商圏が狭く、店舗が小さいコンビニは既存店の客数を増やすことが難しく、既存店の客数が減る長いトレンドから抜け出せずにいます。コンビニが既存店の客数を増やすためには、お客さんの来店動機を増やすことで、来店回数を増やす方法がベストです。今回紹介された遠隔医療システムのような仕組みは、お客さんの来店動機を増やし、既存店の客数の増加に繋がります。

ローソンが地域の生活プラットフォームを目指すにあたって、心配になるのは売り場面積ではないでしょうか。忙しい女性からの中食需要、単身高齢者からの生活用品・日用品の需要が増えていて、コンビニの売り場面積には物足りなさを感じます。また、イートインスペースもコンビニには不可欠になっているため、イートインスペースにも売り場面積を確保しなければなりません。遠隔医療システムを導入する場合も、ディスプレイを設置するスペースが必要になります。ローソンは地域の生活プラットフォームとして、重要な役割を果たせる可能性がありますが、売り場面積の不足がネックになるかもしれません。

ローソンが考える未来のコンビニはヒューマン・ファーストな店舗

ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」に最新のテクノロジーを展示して、ローソンが目指す、未来型のコンビニのプレゼンテーションを行なっています。ローソンが「CEATEC JAPAN 2018」で扱ったキーワードには、「美味しさ・健康・おもてなし」、「ヒューマン・ファースト」、「マチの生活プラットフォーム」、「リアルなコミュニケーションができる場」、「温かいハートが行き交う場所」などがあります。お客さんがコンビニに期待しているものは、食品や日用品を素早く購入することです。ローソンはこうした従来の価値に加え、高齢化社会に求められる、新しい価値を持つ店舗作りを目指しています。

ローソンは大手コンビニチェーンの中でも、テクノロジーの活用に積極的に取り組んでいます。ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」において、ウォークスルー決済、自動調理ロボット、遠隔医療しして無など、最新のテクノロジーを展示しました。これらのテクノロジーはレジ、調理といった、店員が行なっている単純作業を減らすためのものです。店員が行なってきた単純作業を減らすことで、より重要な業務、具体的には接客に注力しようとしています。テクノロジーの導入で店員の単純作業を減らし、接客に注力するというのは、ローソンだけではなく、すべての小売業が目指していくものです。

小売業の店舗で店員が行なっている作業には、発注、品出し、レジ、掃除、接客などがありますが、その多くは単純作業だと言えます。ローソンはこれらの作業にテクノロジー、ロボットを導入することで、店員の負担を減らしたり、店員の作業そのものをなくそうとしています。「CEATEC JAPAN 2018」では、展示はなかったものの、品出しロボット、掃除ロボットにも言及があり、店舗のあらゆる作業でロボットが導入されるようになります。テクノロジーが進化したことにより、人間が当たり前に行ってきた業務も見直されることになり、小売業は店舗の生産性を劇的に改善できる可能性があります。

今後、小売業向けにどのようなロボットが登場するのか楽しみですが、多くの人が興味を持っているのは品出しロボットではないかと思います。コンビニではオリコン(折りたたみ式コンテナ)に商品を入れて配送していますが、店内でロボットがオリコンを運んでいる姿はイメージできます。配送員が店内にあるロボットにオリコンを乗せると、ロボットが商品を並べる陳列棚までオリコンを持って行く感じです。ただ、ロボットがオリコンから商品を取り出して、陳列棚に商品を並べる作業は難しそうです。ロボットがオリコンを陳列棚の前まで運んでくれるだけでも、店員の作業を減らす効果はあります。

ローソンは「CEATEC JAPAN 2018」に展示したテクノロジーを導入して、2025年には、未来型のコンビニを実現したいと考えています。2025年のローソンの店舗は、一人の店員で運営されるようになるかもしれないといった話も出ています。テクノロジーの活用により、品出し、調理、決済、清掃などの業務を省力化していけば、店員一人だけで店舗を運営できるかもしれません。人口の減少により、アルバイト・パートの採用が難しくなっているため、店舗の省人化は小売業にとって重要なテーマです。将来的に、ローソンの店舗が店員一人で運営できるようになれば、とても素晴らしいことだと思います。

ローソンが店員一人で店舗を運営することに成功すれば、店舗の収益性は大きく改善されます。ローソンの利益が増え、ローソンのフランチャイズオーナーの利益が増え、ローソンで働くアルバイト・パートの労働条件も良くなります。小売業は低収益なビジネスで、従業員の給料も安いことで知られています。ローソンがテクノロジーを活用して、店員一人で店舗を運営することに成功すれば、他の小売業にも励みになります。少子高齢化で人口が減少していくため、小売業が売上を大きく増やすことは難しいです。一方、コストの削減には大きな可能性があり、コストを減らすことで、利益を増やしたいです。