東京急行電鉄は自社物流網を活かして「地域特化型総合ECサービス」を開始

東京急行電鉄は自社物流網を活かして「地域特化型総合ECサービス」を開始

2018年10月10日、東京急行電鉄は2019年1月下旬より、「地域特化型総合ECサービス」がコンセプトの新たなインターネット通販サービスを開始する計画を発表しています。東京急行電鉄は2012年より、ホーム・コンビニエンスサービス「東急ベル」を開始しています。「東急ベル」ではハウスクリーニング、家事代行などのサービスを提供していて、「東急ベル」のサービスの一部としてネット通販を充実させます。「東急ベル」では東急ストアのネットスーパー「東急ストア/プレッセネットスーパー」で買い物ができますが、2019年1月下旬は、新たに2つのネット通販サイトがオープンします。

東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」では、ホーム・コンビニエンスサービス「東急ベル」のスタッフが配達を行います。東京急行電鉄は「東急ベル」の自社物流網を活用することで、東急線沿線の店舗のネット通販を支援して、地域の活性化を目的にしています。少子高齢化による人口減少、Amazon、楽天などのネット通販の拡大により、地域の中小小売業は厳しい競争環境に置かれています。中小小売業は自社でネット通販を強化することが難しいですが、東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」に参加することで、より多くのお客さんに商品を販売する機会が得られます。

東京急行電鉄が予定している「地域特化型総合ECサービス」の内容

東京急行電鉄は2012年より、東急線沿線エリアの居住者を対象に、ホーム・コンビニエンスサービス「東急ベル」を展開しています。「東急ベル」はベルキャストと呼ばれる専門のスタッフが、お客さんの暮らしのサポートをするサービスです。「東急ベル」が提供しているサービスには、ハウスクリーニング、家事代行、リフォーム、修理・お手入れ、トラブル対応、その他サービス、ネットショッピングがあります。「東急ベル」は家事代行・買い物代行のサービスですが、女性の社会進出、高齢化社会の進行といった社会変化により、今後、利用者が増えて行くのではないかと思います。

2019年1月下旬より、「東急ベル」はEC事業を拡大して、「地域特化型総合ECサービス」がコンセプトの新たなインターネット通販サービスを開始する予定です。これまで、「東急ベル」では、東急ストアのネットスーパー「東急ストア/プレッセネットスーパー」の注文・配達が可能でした。2019年1月下旬以降は、「東急ストア/プレッセネットスーパー」に加え、東急線沿線の魅力的なお店紹介や商品販売など、沿線ならではのライフスタイルを提案する「SALUS ONLINE MARKET」、東急ストア、東急百貨店2社のギフトを一括購入できる「ギフト日和 by TOKYU BELL」の2店舗がオープンします。

東京急行電鉄は東急線沿線の店舗を紹介する情報誌「SALUS」を運営していて、月間発行部数は23万部、過去に紹介してきた店舗数は2,500店舗の実績があります。新たにオープンする「SALUS ONLINE MARKET」は、情報誌「SALUS」のブランドを掲げたネット通販サイトです。「SALUS ONLINE MARKET」では、情報誌「SALUS」に過去に掲載した商品が販売され、各ショップとタイアップをしたオリジナル商品の開発も推進される計画です。また、沿線生活者と地方の隠れた特産品・生産者を繋ぐ「地域応援プロジェクト(仮称)も立ち上げる予定で、地域の価値を高めるサービスになっています。

情報誌「SALUS」の役割は、東急線沿線の生活者と東急線沿線の店舗をリアルでマッチングすることです。新たにオープンする「SALUS ONLINE MARKET」は、東急線沿線の生活者と東急線沿線の店舗をネットでもマッチングすることです。これまではリアルだけで行われていた消費活動を、ネットにも拡大することにより、地域がさらに活性化されます。情報誌「SALUS」を読んで、興味のある店舗を見つけても、実際に店舗まで行かない人はたくさんいます。実店舗よりも簡単にアクセスできる「SALUS ONLINE MARKET」があれば、リアルで商品が売れなくても、ネットで商品が売れるチャンスがあります。

東京急行電鉄が2019年1月下旬から開始する「地域特化型総合ECサービス」では、ショールーミング型店舗の開発も計画されています。具体的には、東京急行電鉄が保有する、百貨店、スーパーマーケット、商業施設とネットサービスを融合させます。実店舗で商品を見て、体験して、注文はネットショップでする買い物スタイルが一般的になっています。小売業は実店舗をショールームとして使われることは避けたいですが、お客さんはショールーミングを好んでいるため、妨害することはできません。自社の実店舗をショールームにして、自社のECサイトで買い物をしてもらうまでの導線を確立したいところです。

ネット通販で何でも買える現在では、お客さんは実店舗で気になる商品を見付けても、その場で急いで買い物をする必要はありません。お客さんは実店舗で気になる商品を見付けた場合、スマートフォンを使って他店舗の価格、商品レビューをチェックします。実際に商品を購入しなくても、他店舗の価格、商品レビューをチェックすれば、商品を確保したような安心感が得られます。家に帰ってからじっくり考えた後で買い物をすれば、あとで後悔をすることがなくなります。実店舗で商品を販売してきた従来の小売業は、自社のECサイトを持たなければ、他社のECサイトにお客さんを奪われるようになっています。

「東急ベル」のスタッフが商品を配達することで物流効率が高まる

東京急行電鉄が2019年1月下旬から開始する「地域特化型総合ECサービス」では、ホーム・コンビニエンスサービス「東急ベル」の専用スタッフが配達を担います。「東急ベル」のサービスは2012年にスタートしていますが、東京・神奈川の二つの営業所を中心に、東急線沿線の東急ストアをはじめとした各グループ施設を拠点として活用することで、東急線沿線24市区を中心とする約400平方キロメートルに渡る自社物流網を構築しています。東京急行電鉄が構築している自社物流網は、「地域特化型総合ECサービス」を運営する基盤となるもので、他の小売業がすぐに真似ができない強みになりそうです。

「東急ベル」は従来のホーム・コンビニエンスサービスに加え、新たに「地域特化型総合ECサービス」を提供することになります。ホーム・コンビニエンスサービスと「地域特化型総合ECサービス」の両方で受注を増やすことで、専用スタッフのベルキャストの生産性が高まります。例えば、ホーム・コンビニエンスサービスを提供している家庭に、ネットショップでも買い物をしてもらえれば、一回の訪問あたりの客単価が大きくなります。「東急ベル」のホーム・コンビニエンスサービスは、常にお客さんと接触している御用聞きビジネスであるため、お客さんに商品を提案するチャンスはたくさんあります。

東京急行電鉄はシェアリングエコノミー型配送モデルを構築するため、2017年8月に「honestbee(オネストビー)」と業務提携しています。「honestbee(オネストビー)」はシンガポール発のベンチャー企業で、アジア各国で買い物代行コンシェルジュのサービスを提供しています。「honestbee(オネストビー)」のホームページには、地域の百貨店、専門店、スーパーマーケット、ディスカウントストアなど、小売業の店舗と商品のリストが掲載されています。利用者は商品をカートに入れて注文すると、「honestbee(オネストビー)」のスタッフが店舗で買い物をして、自宅に届けてくれる仕組みです。

東京急行電鉄が2019年1月下旬から開始する「地域特化型総合ECサービス」では、自社スタッフであるベルキャストに加え、「honestbee(オネストビー)」のスタッフも配達を担当します。現在、東急線沿線内の約100店舗で「honestbee(オネストビー)」の配達サービスが提供されているとのことです。ホーム・コンビニエンスサービスとネットショッピングの両方を利用するお客さんはベルキャストが担当、ネットショッピングだけを利用するお客さんは「honestbee(オネストビー)」が担当すると、物流リソースを効率よく活用することができ、お客さんにも質の高いサービスが提供できそうです。

日本では少子高齢化により労働力人口の減少が続いていて、物流分野では運賃の値上げ、配達量の制限など、物流クライシスと呼ばれる状況になっています。どうやって物流を効率化するかが社会的な課題ですが、物流の効率を高める方法の一つは荷物を集約することです。ネット通販サイトのAmazonは様々なカテゴリの商品を販売していますが、一回の配達で多くの商品をまとめて届けてくれます。複数の商品をまとめて配達することによって、Amazonは物流コストを減らすことができ、宅配企業は業務量を減らすことができ、お客さんは商品を受け取る回数を減らすことができ、三者にメリットがあります。

東京急行電鉄が2019年1月下旬から開始する「地域特化型総合ECサービス」が優れている点は、ホーム・コンビニエンスサービス「東急ベル」のスタッフを活用することです。「東急ベル」のスタッフが配達業務を担当するので、ネット通販のために人件費が大きく増えることはありません。東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」では、「東急ストア/プレッセネットスーパー」、「SALUS ONLINE MARKET」、「ギフト日和 by TOKYU BELL」の3店舗が運営されます。ホーム・コンビニエンスサービスとともに、商品をまとめて効率よく配達することができれば、高い収益性を確保できると思います。

「地域特化型総合ECサービス」は東急線沿線の活性化に貢献

ネット通販の優れている点は、24時間注文いつでも注文でき、どこに住んでいても、日本全国のネットショップで買い物ができることです。都市部に住んでいる人は日々の買い物であまり不便を感じないかもしれませんが、田舎に住んでいる人の中には、近くに店舗がない、欲しい商品がないといったこともあります。例えば、有名なファッションブランドは駅前の百貨店、商業施設に店舗があることが多く、遠方に住んでいる人はなかなか買い物に行けません。しかし、ネット通販が登場したことで、近くに店舗がなくても、自分が希望する商品をネットショップで簡単に購入できるようになっています。

ネット通販と聞くと、日本全国に商品を販売するイメージがありますが、東京急行電鉄が2019年1月下旬から開始する「地域特化型総合ECサービス」は、ローカル向けネット通販です。Amazon、楽天、アスクルのようなネット通販事業者は、全国のお客さんに商品を届けるため、全国各地に物流拠点を増やしています。一方、東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」は、Amazon、楽天、アスクルなどとは異なり、東急線沿線に居住するお客さんがターゲットです。東京急行電鉄は実店舗、自社物流網など、地域に保有する経営資源を活用して、地域のお客さんに優れた買い物体験を提供しようとしています。

新たにオープンするネット通販サイト「SALUS ONLINE MARKET」では、東急線沿線の店舗の商品を販売することになっています。「SALUS ONLINE MARKET」がオープンすれば、東急線沿線の店舗は商品が売れ、売上が増えることになります。お客さんは実店舗で気になる商品を見付けても、お金の持ち合わせがない、気分が乗らない、慌てて買う必要がない、他の店舗も見たいなど、様々な理由で購入を控えます。東急線沿線の店舗は「SALUS ONLINE MARKET」でも商品を販売することで、実店舗で商品を購入しなかったお客さんに対して、ネット通販で商品を購入してもらえるチャンスが得られます。

東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」は、東急線沿線の店舗の売上アップに大きく貢献するのではないかと思います。「SALUS ONLINE MARKET」で商品を販売する店舗は、これまで実店舗で逃していたお客さんの売上を獲得することができます。東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」では、東急ベルや「honestbee(オネストビー)」のスタッフが、様々な店舗の商品をまとめてお客さんに配達します。「SALUS ONLINE MARKET」で販売されている各店舗の商品は、別の店舗の商品とセット購入されることになるため、単体で販売する場合よりも商品が売れるチャンスが大きくなります。

ネット通販で買い物をするお客さんが増えていて、従来の小売業はネット通販にお客さんを奪われる状況になっています。東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」は、ネット通販の拡大に対抗するためのもので、東急線沿線の店舗の商品を販売しています。従来の小売業はネット通販の強化に取り組んでいますが、品揃え、価格、利便性でAmazonと競うことは難しいです。東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」は、東急線沿線に居住するお客さんがターゲットにして、地域の店舗の商品が買える、まとめて商品が届くといった点を強みに、地域のお客さんに買い物をしてもらうことが狙いです。

東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」は、地域の活性化を目的にしていますが、少子高齢化が進む日本では、地域に愛着を持つ人が増えています。自分が住んでいる地域を大切にしなければ、少子高齢化の進行による人口減少で、将来的に自分の生活が危うくなる可能性があるからです。小売業では地方の百貨店、総合スーパーが売上不振で閉店するケースが増えていて、地域の住人の買い物が不便になるといった問題も起きています。東京急行電鉄の「地域特化型総合ECサービス」により、地域の店舗の商品が買いやすくなれば、積極的に地域の店舗で買い物をするお客さんはいると思います。

小売業はお客さんにどのような買い物体験を提供すればよいのか

お客さんが買い物をする店舗が、実店舗からネットショップへと徐々にシフトしています。お客さんがネットショップで買い物をする理由には、24時間便利に買い物ができる、自宅に商品を運んでくれる、品揃えが豊富、価格が安いなどです。ネットショップの売れ筋商品リストを見ると、水のケースが上位に入っていることが多いですが、これは重たい水を実店舗で買いたくない人がたくさんいるということです。実店舗が近くにある場合でも、ネットショップで買い物をするケースはあります。実店舗での買い物に時間と労力を費やすことが嫌な人は、ネットショップで多くの買い物をするようになります。

東京急行電鉄が「地域特化型総合ECサービス」を開始する狙いの一つとして、お客さんのライフスタイルの変化、消費のデジタルシフトへの対応が挙げられています。仕事が忙しい女性、自動車を運転しない高齢者が増えるため、実店舗に買い物にやってくるお客さんは減少していく可能性が高いです。これまで実店舗で商品を販売してきた従来の小売業も、お客さんの自宅へ商品を配達しなければならない状況になっていると言えます。東京急行電鉄はホーム・コンビニエンスサービス「東急ベル」で構築した自社物流網を活用することで、東急線沿線に居住するお客さんに効率よく商品を配達しようとしています。

インターネットが普及している現在では、お客さんの買い物はインターネットで商品を検索することから始まります。インターネットは日本全国の商品を検索することができるので、お客さんは複数の商品の写真や説明を見ながら、どれを買うべきなのか悩んでいます。お客さんは購入する商品を決めるため、商品を実際に見て、触って、比較検討する必要があり、実店舗で多くの商品を体験することを望んでいます。買い物に必要な商品の情報はインターネットで簡単に得られますが、インターネットの情報だけで購入を決定することには不安があり、購入を決定する前に実店舗で体験できれば失敗がありません。

小売業の実店舗では、売れ筋商品を中心に品揃えを絞り込み、機会損失が発生しないように、多くのスペースを使って在庫を保有しています。実店舗の商品が在庫切れしていることは、お客さんに悪い印象を与えますが、体験できる商品が少ないことも、お客さんに悪い印象を与えるようになっています。ネットショップにはできない、実店舗ならではの買い物体験を提供するためにも、小売業は販売用の在庫を減らし、体験用の品揃えを増やすことが好ましいです。実店舗を体験型の店舗へと変革することには不安もありますが、お客さんはより多くの商品を実店舗で体験することを希望しています。

ネットショップが存在していない時代は、実店舗で商品を見て、実店舗で購入する以外の買い物方法がありませんでした。例えば、気にある商品があれば、何度も実店舗に足を運び、自宅でカタログを見て検討する作業を繰り返します。こうした買い物方法は以前であれば普通のことでしたが、現在では不便な買い物方法になっていると言えます。お客さんは実店舗で購入を即決したくはありませんし、気になる商品をチェックするために何度も実店舗に足を運びたくはありません。日本では長時間労働が社会問題になっているため、お客さんに買い物の負担を感じさせる店舗は、徐々にお客さんを失っていきます。

これからの小売業には、実店舗とネットショップが融合したオムニチャネルが不可欠になるのではないかと思います。ネットショップに近隣の実店舗の在庫数、売り場を表示しておけば、お客さんは自分が希望する商品を素早く、確実に手にすることができます。また、実店舗で見た商品をネットショップでも買えるようにしておけば、お客さんは何度も実店舗に足を運ぶ必要がなくなります。実店舗とネットショップが融合したオムニチャネルには、お客さんの買い物の負担を軽減する効果があります。お客さんは買い物がしやすい店舗のリピーターになるので、買い物体験の改善は売上高の増加に繋がります。