イオンはスーパーマーケット事業を地域ごとに再編して各地域での成長を目指す

イオンはスーパーマーケット事業を地域ごとに再編して各地域での成長を目指す

2018年10月10日、イオンは首都圏を除く6地域において、スーパーマーケット事業の再編を実施することを発表しています。再編の時期は各地域で異なっていて、2019年3月からスタートして、2020年3月までに完了する計画です。イオンがスーパーマーケット事業を再編する目的は、各地域で最も成長できる企業になるためです。お客さんのライフスタイルの変化、コンビニ・ドラッグストアの食品販売の強化によって、お客さんがスーパーマーケットに求めるものは変化しています。イオンはお客さんのニーズに応えられる、新しいスーパーマーケットへと変革することで、さらなる成長を目指そうとしています。

お客さんの変化には、高齢化社会の進行、女性の社会進出、晩婚化・非婚化、少子化などがあり、全体的に料理をしなくなる方向へと進んでいます。競合の変化には、コンビニの中食需要への対応強化、ドラッグストアの日配食品・加工食品の低価格販売があります。コンビニ・ドラッグストアは立地の点でスーパーマーケットよりも有利で、買い物に時間を掛けたくないお客さんはコンビニ・ドラッグストアで食品を購入しています。スーパーマーケットが目指す方向性は、コンビニ・ドラッグストアでは買えない食品を販売することで、小容量の商品・半調理品には、販売数量を拡大するチャンスがあります。

スーパーマーケット事業の再編で営業利益を大きく伸ばす計画

イオンはスーパーマーケット事業を再編するため、首都圏を除く6地域の主要14社を地域ごとに経営統合することを発表しています。イオンがスーパーマーケット事業を再編する目的は、それぞれの地域で最も成長力のあるスーパーマーケットになるためです。再編後の各地域の事業会社は、営業収益5,000億円、営業利益200億円規模が想定されています。各地域ごとにスーパーマーケット事業を再編成することで、経営効率を高め、地域密着型の運営を行って行きます。今後、スーパーマーケット事業の再編は各地域でそれぞれ実施され、2019年3月からスタートして、2020年3月には完了する計画です。

スーパーマーケット事業の再編が行われる地域は、北海道、東北、東海中部、近畿、中四国、九州の6つの地域です。例えば、中四国にはマックスバリュ西日本、マルナカ、山陽マルナカの3社があり、九州にはイオン九州、マックスバリュ九州、イオンストア九州の3社があります。地域にあるスーパーマーケット運営会社が統合して、それぞれの地域で最も成長できる企業になるべく、再編を進めることになります。スーパーマーケットのマックスバリュは近畿以外の5地域にありますが、イオンとマックスバリュの店舗は別ブランドで運営されているため、経営効率を高める余地が大きいのではないかと思います。

イオンのセグメントは、GMS事業、SM事業、ドラッグ・ファーマシー事業、総合金融事業、ディベロッパー事業、サービス・専門店事業、国際事業の7つです。イオンは総合スーパーのイメージがありますが、スーパーマーケットを運営するSM事業の営業収益が最も多いです。2018年2月期のSM事業の営業収益は32,409億円、GMS事業の30,842億円で、SM事業の営業収益はGMS事業の営業収益よりも多くなっています。2012年2月期の決算では、SM事業の営業収益は12,224億円でしたが、2018年2月期には32,409億円と急拡大していて、イオンにとってSM事業は成長性の高いセグメントです。

イオンは首都圏を除く6地域でスーパーマーケット事業の再編を行い、営業収益と営業利益を伸ばすことを計画しています。再編後の数値目標は2025年度をめどに、営業収益は3兆1,000億円、営業利益は1,100億円となっています。2018年2月期のSM事業の営業利益は305億円ですから、再編後の営業利益は3倍以上に大きく伸びることが期待されています。イオンがスーパーマーケット事業の再編を行う目的の一つは、経営効率を高めることです。SM事業は生産性・効率性の点で問題があり、スーパーマーケットの再編によりそれらの問題が解決され、営業利益が大きく拡大するというシナリオです。

イオンの記者会見の中で、現在のスーパーマーケットのほとんどがお客さんのニーズに応えられていないという話があります。スーパーマーケットを含め、小売業は一つの店舗フォーマットを作り、日本全国に同じ店舗フォーマットの店舗を出店することで、売上高を増やして成長してきました。これまでの成功パターンであった、小売業のチェーンストア理論が、社会の変化によって維持できなくなっています。スーパーマーケットは夫婦と子供がいるファミリーを想定して店作りを行って来ましたが、単身世帯が年々増加しているため、ファミリーだけを想定した店舗運営では、お客さんのニーズに応えられません。

スーパーマーケットを6地域で再編する目的の一つに、地域密着の店舗運営を行うことが挙げられています。日本という同じ国であっても、各地域で暮らしている人たちのライフスタイルには違いがあるので、それぞれの地域にあった店舗運営を行うことが重要になっています。日本では少子高齢化で人口の減少が続いていますが、各地域によって、人口の減少幅も違います。また、世帯構成、平均世帯人数、平均寿命、雇用形態、平均収入、婚姻状態といったものにも違いがあり、消費活動に違いをもたらします。各地域ごとの消費活動に違いが出てくれば、小売業は各地域のニーズにあった店作りが必要になります。

スーパーマーケットが対応しなければならないお客さんの変化

スーパーマーケットでは、青果、水産、畜産の生鮮三品、弁当・惣菜、日配品、一般食品など、家庭で消費される食品を幅広く販売しています。スーパーマーケットで買い物をするのは家庭で食事を管理している女性が多く、どの時間帯でも女性のお客さんが多いです。お客さんはスーパーマーケットで様々な食品を購入して、自宅で調理を行い、食事をします。スーパーマーケットで特に重要な商品は、青果、水産、畜産の生鮮三品で、お客さんは生鮮三品の価格・品揃えへの関心が高いです。食品を販売する小売業が増えていますが、多くのお客さんが生鮮三品はスーパーマーケットで購入しています。

スーパーマーケットがお客さんのニーズに応えられていないと考えられるものの一つは、少子高齢化社会への対応です。スーパーマーケットは夫婦と子供がいるファミリーをターゲットに、家庭での調理を前提にして、食品を販売してきました。しかし、高齢化社会が進んでいる現在では、子供が独立した高齢者夫婦二人暮らしの世帯、あるいは、高齢者の単身世帯が増えています。こうした世帯では、以前のように食材を購入して、自宅で調理をする機会が減ります。また、世帯の人数が減れば一回の食事に必要な食品の量も減るので、多くの食品をまとめ買いしたり、容量の多い食品を買う機会も減ります。

若い世代はライフスタイルが多様化していますが、スーパーマーケットに最も大きな影響を与える変化は晩婚化・非婚化です。30歳の時点で結婚をしている人、していない人がそれぞれ50%程度で、今後も晩婚化・非婚化は継続する見通しです。結婚しない人、子供が居ない人が増えれば、スーパーマーケットで生鮮食品を購入して、調理をして食べる人が減ることになります。料理をしない人が増えるという点では、高齢者も若い世代も同じような方向へ向かっています。コンビニやドラッグストアの食品の売上高が伸びていることからも、生鮮食品を買わない人、料理をしない人が増えていると推測できます。

女性の社会進出が進んだことで、専業主婦が減り、夫婦共働きの世帯が増えていることもスーパーマーケットに影響を与えます。夫婦と子供がいる世帯では、昔と変わらずスーパーマーケットで生鮮食品を購入して、調理・食事をするニーズがあります。しかし、仕事を持つ女性は家事に時間を掛けることが難しくなるので、調理・食事を短時間で済ませたいという新しいニーズが生まれています。ネットスーパーではレシピ・食材・調味料がセットになったミールキットがよく売れていて、新規参入する小売業も多いです。食品スーパーでも、下ごしらえを済ませた半調理品の品揃えを強化する動きが見られます。

少子高齢化が進んだ結果、日本各地で人口減少が始まっていて、一部の大都市以外では人口の減少が続く見込みです。自分の故郷で人口の減少が始まったり、高齢者が多くなっている状況を見て、地元への愛着を強く持つようになった人が増えています。若者の就職に関するアンケート調査を見ても、地元の企業で働きたい、転勤のない企業で働きたいと考える人が増加する傾向にあります。地元に愛着を持つ人が増えれば、その愛着は消費活動にも現れるようになります。地元の生産者が販売する生鮮食品を買いたい、地元の原材料を使った商品を買いたい、地元の企業が開発した商品を買いたいといったものです。

イオンは首都圏を除く6地域でスーパーマーケット事業の再編を行う計画ですが、各地域ごとに、どのような商品開発が行われるのかは楽しみな点です。少子高齢化で人口が減少していくため、イオンの食品の販売数量も減少していく可能性が高いです。今後、販売数量が減少していく中で、売上高を伸ばしていくためには、高価格・高付加価値のプライベートブランドの開発が不可欠になります。地元への愛着を強く持つ人が増えることは、高価格・高付加価値のプライベートブランドを開発するチャンスです。地元の商品を買うことは、地元への支援にもなるので、高価格の商品が売れやすくなります。

スーパーマーケットとコンビニ・ドラッグストアの競争は激化

スーパーマーケットは食品を購入する店舗として支出金額が大きいですが、食品を販売する小売業が増えていて、食品の販売競争は激しくなっています。コンビニは食品スーパーの競合の歴史が長く、コンビニの拡大によって食品スーパーの売上が奪われているという見方もあります。コンビニの主力商品は弁当、おにぎり、パン、お菓子、ホットスナックなどで、自宅の外で消費することも多いです。また、コンビニは店舗面積が小さいため、各カテゴリーの品揃えは少ないです。スーパーマーケットとコンビニはともに食品を販売していますが、食品を消費するシーン、品揃え、価格には違いがあります。

コンビニが食品の販売を伸ばそうと狙っているのが、女性の社会進出によって規模が拡大している中食市場です。夕食の買い物や料理に時間を掛けたくない女性は、弁当・惣菜を夕食向けに購入するようになっています。これまで、コンビニはコロッケやからあげなどホットスナックを販売してきましたが、主におやつや間食として食べてもらうことを想定していました。現在は、ホットスナックを夕食向けに販売するため、ケースを大きくして数量を増やしたり、おかずになる商品を投入しています。コンビニで夕食の食材を買うお客さんが増えれば、スーパーマーケットと競合する部分が大きくなります。

スーパーマーケットにとって、コンビニは昔からの競合ですが、新しい競合になっているのがドラッグストアです。経済産業省が発表した2017年の商業動態統計によると、ドラッグストアの店舗数は1万5049店(前年比5.0%増)、販売額は6兆580億円(前年比5.4%増)です。店舗数、販売額ともに増加率は5%を越えていて、小売業の中でも勢いがあります。ドラッグストアは医薬品で稼いだ粗利益を原資にして、日配食品と加工食品を低価格で販売しています。ドラッグストアチェーン各社の新規出店数は多く、日配食品と加工食品を低価格で購入できる店舗として、お客さんの期待を集めるようになっています。

日配食品と加工食品の販売で、スーパーマーケットとドラッグストアのどちらがより価格が安いかですが、ドラッグストアの方が安い印象です。ドラッグストアは小さな店舗で効率よく商品を販売しているため、お客さんはドラッグストアの食品の価格に割安感を感じます。また、ドラッグストアチェーン各社の新規出店数が多いので、自宅の近く、通勤ルートに新しくドラッグストアが出店してくることもあります。ドラッグストアの店舗が増えれば増えるほど、お客さんは気軽に立ち寄ることができます。ドラッグストアは近所で食品を安く買える店舗として、小売業の中でポジションを確立しています。

スーパーマーケットとコンビニ・ドラッグストアを比較すると、スーパーマーケットの方が優れているもの、劣っているものがあります。スーパーマーケットが優れているものには、生鮮食品を含めた食品の幅広い品揃え、蓄積した食品販売のノウハウ、提案力などがあります。一方、スーパーマーケットの方が劣っているものには、店舗へのアクセスに時間が掛かること、店舗が広く買い物に時間が掛かること、ナショナルブランドの食品の価格が高いことなどがあります。買い物に時間を掛けたくない、忙しいお客さんが増えているため、買い物の利便性の悪さはスーパーマーケットにとっては不安な点です。

スーパーマーケットにとっては、コンビニもドラッグストアも脅威ですが、どちらかと言えばドラッグストアの方がより脅威になるのではないかと思います。ドラッグストアの日配食品と加工食品の価格は安く、新規出店により店舗数は年々増加しています。ドラッグストアに簡単にアクセスできるようになれば、お客さんは日配食品と加工食品をドラッグストアで買って、生鮮食品だけをスーパーマーケットで買うようになる可能性があります。お客さんが日配食品と加工食品をドラッグストアで買うようになれば、相対的にスーパーマーケットの価値が下がり、客数の減少、客単価の減少といった問題が出てきます。

スーパーマーケットはどのような形へと変革すればよいのか

イオンがスーパーマーケット事業を地域ごとに再編する目的は、それぞれの地域で最も成長できる企業になるためです。また、社会環境の変化によって、ほとんどのスーパーマーケットがお客さんのニーズに応えられていないという話もありました。イオンはスーパーマーケット事業の再編を行い、お客さんのニーズに応えられるスーパーマーケットへと変革することで、地域で一番の企業になろうとしています。どのようにスーパーマーケットを変革するかについては、具体的な内容の説明はありませんが、地域密着、プライベートブランド、デジタル、物流などのキーワードが出ています。

スーパーマーケットがお客さんのニーズに応えられなくなった理由は、お客さんの変化、競合する小売業の変化の二つがあると思います。お客さんの変化には、高齢化社会の進行、女性の社会進出、晩婚化・非婚化、少子化といったものがあり、全体的な流れとして料理をしない人が増えています。競合する小売業の変化には、コンビニやドラッグストアの食品販売の強化、ネットスーパーの登場などがあり、スーパーマーケット以外にも、食品を購入できる店舗が増えています。お客さんの変化、競合する小売業の変化の二つの変化を受け、イオンは新しいスーパーマーケットの姿を模索していくことになります。

スーパーマーケットが変革を進めるうえで重要になる点は、スーパーマーケットは買い物の利便性で競合する小売業に劣っていることです。コンビニ・ドラッグストアは大量出店を続けていて、時間経過とともに、お客さんにとって身近にある店舗になっています。お客さんがスーパーマーケットに買い物に行く場合、コンビニ・ドラッグストアを通り過ぎて、スーパーマーケットに行くことになります。お客さんにとって、スーパーマーケットは時間を掛けて買い物に行く店舗になるため、コンビニ・ドラッグストアよりも多くのものが期待され、期待に応えられない場合のお客さんの失望感も大きくなります。

コンビニ・ドラッグストアはお客さんの身近にある店舗になっているため、お客さんがコンビニ・ドラッグストアで購入する食品の量は増加していきます。利便性を重視するお客さんは、遠方にあるスーパーマーケットには行かず、身近にあるコンビニ・ドラッグストアで買い物をします。こうした競合状況を考慮すると、スーパーマーケットが強化する食品は、コンビニ・ドラッグストアでは買えないものが好ましいです。青果、水産、畜産の生鮮三品はスーパーマーケットに強みがある商品で、生鮮三品を小容量・半調理品で販売することで、お客さんのライフスタイルの変化に対応して行きたいところです。

コンビニ・ドラッグストアよりも遠方にあるスーパーマーケットは集客の点で不安がありますが、高齢化社会の進行により、今後はさらに集客が難しくなります。自動車を運転しなくなった高齢のお客さんは、徒歩や自転車で買い物に行けるコンビニ・ドラッグストア、あるいは、宅配で食品を購入するようになります。店舗に来ることが難しくなったお客さん向けに、宅配や移動スーパーに取り組むスーパーマーケットが増えています。宅配や移動スーパーは、高齢のお客さんに喜ばれるサービスですが、人件費の増加、店舗効率の悪化といった負担があり、うまく運営できるかどうかは分かりません。

若い世代のお客さんについても、スーパーマーケット以外の店舗で食品を買うようになる可能性が高いです。仕事を持つ女性の増加、晩婚化・非婚化の進行、ネット通販の拡大などにより、若い世代のお客さんのスーパーマーケット離れが起こります。スーパーマーケットが若い世代のお客さんに買い物をしてもらうためには、単に食品を販売するだけではなく、料理をしたくなるようなライフスタイルの提案が必要ではないでしょうか。現在、料理をする若い男性が増えている傾向にあるため、若い男性の料理に対する関心をうまく刺激することができれば、新しいお客さんの開拓へと繋がると思います。