ネスレ日本と佐川急便が共同で地域の住人が配達を担う「MACHI ECO便」を開始

ネスレ日本と佐川急便が共同で地域の住人が配達を担う「MACHI ECO便」を開始

2018年10月1日より、ネスレ日本と佐川急便が共同で、「MACHI ECO便」という名前の新しい宅配サービスを開始しています。ネスレ日本はネット通販で定期購入サービスを提供していますが、宅配業者であったヤマト運輸との契約が打ち切りになったことがきっかけで、「MACHI ECO便」を開始しています。「MACHI ECO便」の特徴は地域の住民に配達に参加してもらうことで、地域の住民は「ECO HUB(エコハブ)」と呼ばれるストックポイントを運営します。お客さんは「ECO HUB(エコハブ)」を経由して商品を受け取る仕組みになっていて、ネスレ日本は従来よりも物流コストを抑制する計画です。

現在、物流企業では人手不足に起因した問題が多数起きていて、物流クライシスと言われるようになっています。2018年1月には、ヤマト運輸は大口法人顧客約1,100社との契約を見直し、約4割の顧客との契約を打ち切ったと発表しています。ネスレ日本のような有名企業、大企業であっても契約が打ち切りになっていて、物流クライシスの影響の大きさを感じます。ネット通販の市場規模は拡大していて、依然として有望ですが、物流コストの高騰が続くと、企業は利益を確保することが難しくなります。大企業でも物流クライシスの影響は大きく、中小企業、個人事業主はさらに厳しい環境にあると推測できます。

「MACHI ECO便」のきっかけはヤマト運輸との契約の打ち切り

2018年10月1日より、ネスレ日本は佐川急便と共同で、人手不足や環境についての問題解決、地域コミュニティの創出を目指す、新・宅配サービス「MACHI ECO便」を開始しています。サービス開始時の提供エリアは、東京6区と大阪4区で、東京都内には専用の宅配ロッカーも設置されます。新・宅配サービス「MACHI ECO便」の特徴の一つは、ネスレ日本がネット通販で販売した商品をお客さんに配達するにあたって、地域の住人、店舗、お客さんに協力してもらうことです。ネスレ日本は新・宅配サービス「MACHI ECO便」を運営することで、物流コストを従来の半分に抑えることを見込んでいます。

ネスレ日本はネット通販で定期購入サービスを提供していて、コーヒーの専用カートリッジ・専用カプセルを定期的にお客さんに配達しています。これまで、ネスレ日本の配達業務はヤマト運輸が行っていましたが、ヤマト運輸はAmazonの業務に集中するために、2017年中にネスレ日本との契約を打ち切ったとのことです。ヤマト運輸との契約終了後、ネスレ日本は佐川急便と日本郵政に配達を委託するようになったものの、配達の遅延、物流コストの増加などの問題が起こっています。こうした物流面の問題を解決するため、佐川急便と新たに開始するのが新・宅配サービス「MACHI ECO便」です。

これまでのネスレ日本の配達方法は、お客さんの注文を個別に梱包して、宅配企業が個別に配達をするというものです。新・宅配サービス「MACHI ECO便」では、宅配企業はお個別に配達は行わず、「ECO HUB(エコハブ)」と呼ばれるストックポイントに佐川急便が商品をまとめて配達します。「ECO HUB(エコハブ)」には、地域の住民、店舗になってもらうほか、東京都内には専用の宅配ロッカーも設置されています。商品の受け取り方法には、「ECO HUB(エコハブ)」の運営者がお客さんの自宅に商品を配達する方法、お客さんが「ECO HUB(エコハブ)」に商品を受け取りに行く方法があります。

ヤマト運輸が個別に宅配を行っていたものが、「MACHI ECO便」では佐川急便が「ECO HUB(エコハブ)」まで商品をまとめて配達します。「ECO HUB(エコハブ)」からお客さんへの配達は「ECO HUB(エコハブ)」の運営者が行うため、佐川急便の作業、ネスレ日本の物流コストは減ります。一方、「ECO HUB(エコハブ)」の運営者、お客さんには作業が発生しますが、作業の対価としてインセンティブが受けられます。「ECO HUB(エコハブ)」の運営者には作業に応じて報酬(詳細は不明)が支払われ、「ECO HUB(エコハブ)」に出向いて商品を受け取るお客さんは、商品代金の5%の値引きが受けられます。

ネスレ日本が新・宅配サービス「MACHI ECO便」に期待しているものは、配達の遅延の解消、高騰している物流コストの抑制です。今後も宅配企業の人手不足と物流コストの上昇は継続する可能性が高く、「MACHI ECO便」は人手不足の宅配企業ではなく、地域住民が配達をする仕組みです。「ECO HUB(エコハブ)」の運営者、「ECO HUB(エコハブ)」で商品を受け取るお客さんには、「MACHI ECO便」への協力を促すためのインセンティブが用意されています。ネット通販の商品を店頭で受け取る機会が増えていますが、商品を店頭で受け取ることで割引が受けられれば、利用するお客さんは多いと思います。

「MACHI ECO便」の狙いは物流コストを抑制することですが、その他にも、CO2排出量の削減、ダンボール使用量の削減なども見込まれています。食品ロスが非効率なものとして注目されるようになっていて、食品以外でも、あらゆるものを効率よく消費しようとする方向に向かっていきます。ネット通販では梱包にダンボールを使用しますが、ネット通販の利用が拡大すれば、ダンボールを使いすぎることも無駄だという考えが大きくなります。「MACHI ECO便」では、お客さんはダンボールを自分で処理する必要がないので、商品代金の5%の値引きと合わせて、「MACHI ECO便」を利用するメリットです。

「MACHI ECO便」は物流コストを抑制してコミュニティを創生

ネスレ日本と佐川急便の新・宅配サービス「MACHI ECO便」は、宅配企業の労働力不足を受け、宅配企業以外の労働力を活用しようとする試みです。こうした試みは世界的に行われていて、海外のニュースでも、ネット通販の物流コストの増加は問題だと考えられています。日本の場合、人手不足による物流クライシスが起こっていますが、人手不足が問題になっていない国でも、企業の利益を圧迫する物流コストは減らしたいものです。「MACHI ECO便」は、地域住民の労働力を活用することで、不足している宅配企業の労働力を補おうとする取り組みで、社会には活用されていない労働力がまだあります。

数年前にアメリカのニュースで見たのは、スーパーマーケットを運営するウォルマートが、実店舗の買い物客を配達要員として使い、自社のネット通販の商品を配達してもらうものです。ウォルマートの実店舗に買い物に来たお客さんは、自分の買い物ルートにあるネット通販のお客さんを紹介されます。店舗での買い物を終えたお客さんは、自宅に帰る途中にネット通販のお客さん宅に立ち寄り、商品を手渡すという仕組みです。自社の買い物客を配達要員として活用する画期的な仕組みではありますが、その後、この商品配達方法が拡大したという情報はないので、様々な理由からうまく行かなかったようです。

ネスレ日本と佐川急便の新・宅配サービス「MACHI ECO便」は、地域の住人を配達要員として活用する仕組みです。「MACHI ECO便」では、地域の住人に商品配達の仕事をお願いするだけではなく、地域コミュニティの創出も目的にしています。「ECO HUB(エコハブ)」を通じて、運営者と利用者の接触が発生するため、地域の住人同士の間に新しいコミュニケーションが生まれます。「ECO HUB(エコハブ)」の運営者は、専用ページに氏名、写真、運営日・時間などの情報が公開されます。積極性のある人が「ECO HUB(エコハブ)」の運営者になることで、地域コミュニティが創生される可能性はあります。

日本では少子高齢化が進み、単身者世帯が増えているため、地域の繋がりが弱くなっているとされています。また、地震や台風といった自然災害も不安で、地域の繋がりを強化すべきだという意見もあります。単身で暮らしている人たちの中には、地域の人たちとの関わりを増やして、コミュニケーションを持ちたちと考えている人も少なくないと思います。「ECO HUB(エコハブ)」の運営者になれば、お客さんとコミュニケーションの場を持つことができ、作業に応じた報酬(詳細は不明)も受けることができます。「ECO HUB(エコハブ)」の運営者には高齢者が想定されていますが、興味を持つ人もいるはずです。

「MACHI ECO便」は地域のコミュニティの創出を目的にしていますが、コミュニケーションが負担、プライバシーが不安だと考える人もいます。こうしたお客さんに対しては、「ECO HUB(エコハブ)」として専用のロッカーが用意されています。専用のロッカーは受け取り時間の制限がなく、地域の住人が運営する「ECO HUB(エコハブ)」よりも利用しやすいといったメリットもあります。ただ、ネスレ日本の立場からすると、専用のロッカーは増やしたくないはずです。地域の住人の方が運営コストが安そうですし、コミュニティの創出の意味でも、地域の住人が運営する「ECO HUB(エコハブ)」が好ましいです。

地域の住人の力を借りて運営する「MACHI ECO便」は、ネット通販の将来を考えるうえでも重要です。ネット通販を利用したいお客さんは多いですが、物流がボトルネックになれば、ネット通販の市場拡大も鈍化してしまいます。今後もネット通販の市場を拡大させるためには、物流の労働力を増やす必要があり、「MACHI ECO便」には期待が集まります。「MACHI ECO便」は「ECO HUB(エコハブ)」の運営者、商品を受け取りに来るお客さんにインセンティブを用意しています。すべての参加者にメリットがある仕組みになっているため、「MACHI ECO便」に参加したい企業・人はいるはずです。

配達を集約する仕組みは企業だけではなくお客さんにもメリット

ネット通販の市場規模は拡大を続けていて、商品を販売したい事業者にとっては、ネット通販は成長が期待できる魅力的な販路です。経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、2017年の日本国内のBtoC-ECの市場規模は16兆5,054億円(前年比9.1%増)、EC化率は5.79%(前年比0.36ポイント増)となっています。一方、ネットショップの数が増えたことによる競争の激化、近年急浮上している物流クライシスなど、ネット通販で利益を確保することは難しくなっています。特に物流クライシスは大きな問題で、物流の問題を解決しなければ、ネット通販の成長も鈍化してしまいます。

ネットショップが物流コストを抑える効果的な方法は、一度に多くの商品を注文してもらい、まとめて一度で配達することです。注文金額が大きいほど、注文金額に占める物流費用が小さくなるため、ネットショップの物流コストの負担は小さくなります。しかし、お客さんは必要な商品を必要なタイミングで購入したいので、配送無料の注文金額を高く設定することは、お客さんの買い物の利便性を損ねることになります。Amazonは年間3,900円(税込)の会員サービス「Amazonプライム」を用意していて、お客さんは「Amazonプライム」の会員になることで、何度でも送料無料で買い物ができます。

お客さんにまとめ買いをお願いすることは物流コストを抑える方法の一つですが、それ以外にも、ネット通販の配達を集約する仕組みが必要です。「MACHI ECO便」では「ECO HUB(エコハブ)」が商品のストックポイントになることで、トラックでの宅配を集約しています。佐川急便は「ECO HUB(エコハブ)」までトラックで商品を運び、それ以降のお客さんへの商品の配達は、「ECO HUB(エコハブ)」の運営者が行う、または、お客さんが「ECO HUB(エコハブ)」に取りに来ます。「MACHI ECO便」では、個別の宅配にトラックを使用しないので、物流コストを抑制する効果が見込まれています。

お客さんの立場では、ネット通販は便利に買い物ができる優れたサービスですが、一週間に何度も自宅で商品を受け取ることは現実的ではありません。ネット通販で購入した商品の配達を集約できれば、お客さんは自宅で商品を受け取る回数が減ります。現在、ネット通販の再配達が多いことが問題として認識され始めていますが、再配達が増える理由の一つは、お客さんにとって自宅で商品を受け取ることの負担が大きいからです。ネット通販の商品の受け取りが大変なことは、お客さんがネット通販の利用を控える要因の一つにもなっていて、ネットショップには見えない機会損失が発生していると言えます。

「MACHI ECO便」ではネスレ日本の商品を配達しますが、将来的には、他の企業の商品も配達する「宅配マッチングプラットフォーム」になる計画です。サービス開始時点では、化粧品・健康食品のメーカーのファンケル、世界のお茶専門店のルピシアの商品も配達する予定です。ファンケル、ルピシアは「MACHI ECO便」に参加することで、物流費用を抑制することができます。ネスレ日本を利用していて、ファンケル、ルピシアも利用している人は、複数企業の商品をまとめて受け取れます。複数企業の定期購入を利用する場合、商品の受け取りが大変になるので、まとめて受け取れるとお客さんは便利です。

「MACHI ECO便」は参加する企業は増えるほど、全体の物流コストが小さくなり、お客さんは商品の受け取りが便利になる仕組みです。一週間に一回、ネット通販の商品がまとめて自宅に届く、あるいはまとめて「ECO HUB(エコハブ)」に受け取りに行くような仕組みは、企業・お客さんの双方にとって都合が良いと思います。ネットショッピングに関するアンケート調査を見ても、当日配達を希望する意見は多くはありません。ネット通販の配達を集約することで、受け取り回数が減り、ダンボールを処分する必要もなくなり、商品代金の値引きも受けられるので、お客さんには多くのメリットがあります。

中小企業・個人事業主は物流クライシスの影響がさらに大きい

ネスレ日本が佐川急便と共同で、新・宅配サービス「MACHI ECO便」を始めるきっかけは、従来の宅配業者であったヤマト運輸との契約が打ち切られたためです。2018年1月にヤマト運輸が発表した内容によると、大口の法人顧客約1,100社との値上げ交渉を行い、約4割の顧客がヤマト運輸との契約を打ち切り、他社と契約したとのことです。ネスレ日本の定期購入サービスの利用者は約90万人で、ヤマト運輸にとって多くの荷物が見込める重要な顧客のように見えます。しかし、実際には契約が打ち切られていますから、ヤマト運輸の立場としては、ネスレ日本は収益性の低い、儲からない顧客という評価です。

ネスレ日本のような大企業、有名企業であっても、ヤマト運輸から契約を打ち切られている事実は、物流クライシスの問題の大きさを物語っています。ネスレ日本ではヤマト運輸との契約終了後、佐川急便や日本郵政に宅配業者を切り替えたものの、物流コストの上昇や配達の遅延といった問題を抱え、新・宅配サービス「MACHI ECO便」の開始に至っています。ネスレ日本の事業戦略発表会で話された内容によると、物流コストは従来の2~3倍になっているとのことです。ネット通販の市場規模は安定的に拡大していますが、物流コストを抑制することができなければ、企業の収益性は悪化してしまいます。

物流クライシスはネスレ日本のような大企業、有名企業にとっても大きな問題になっているため、中小企業、個人事業主はさらに厳しい状況にあると考えられます。荷物を集荷に来てくれなくなったので、自分で宅配企業の拠点に持ち込むようになったというような話もインターネットにはあります。中小企業、個人事業主は人的リソースが少ないですから、集荷に来てくれなくなるのは大きな負担です。運賃の値上げと荷物の持ち込みがセットで起これば、収益性が大きく悪化してしまいます。ネット通販は中小企業、個人事業主の重要な販路ですが、物流クライシスにより将来が不透明になっています。

今後、ネット通販では単価の安い商品を販売することは難しくなるため、高単価の商品の品揃えを増やさなければならなくなります。また、宅配企業が集荷をしてくれなくなれば、ある程度まとまった販売数量がなければ、荷物の持ち込みの効率も悪化します。同じ商品を販売するネットショップが増えたため、価格競争が激しくなり、ネットショップの収益性は悪化しています。ここに物流クライシスによる物流コストの高騰がやってくるため、中小企業、個人事業主は生き残りがさらに大変になります。中小企業、個人事業主の話題は少ないですが、大企業以上に利益の確保が難しくなっていると推測できます。

物流クライシスが起こったことで、Amazon、楽天、ZOZOTOWNなど、物流プラットフォームを持つ大手EC事業者の存在価値が大きくなります。大手EC事業者は複数の企業の商品を物流センターで管理していて、商品をまとめて配達するため、物流コストの上昇を吸収する役割を果たしています。Amazonが提供しているフルフィルメント by Amazon (FBA)では、商品の保管から注文処理、配送、返品対応までをAmazonが代行してくれます。フルフィルメント by Amazon (FBA)の利用料金は契約内容により異なりますが、大口出品の場合、月額4,900円(税抜)と販売手数料で利用することができます。

中小企業、個人事業主が自社で在庫管理をして、自社で発送業務を行うことは難しくなっています。今後、中小企業、個人事業主がネット通販で利益を確保するためには、Amazon、楽天、ZOZOTOWNのような物流プラットフォームを持つ企業と契約をするか、あるいは、ネット通販専用の在庫管理事業者と契約することが不可欠になると思います。また、物流コストの上昇に合わせて、付加価値のある商品、単価の高い商品を販売することにも取り組まなければなりません。ネット通販は小売業の未来のように語られてきましたが、物流クライシスの発生により、収益性が大きく悪化する状況を迎えています。