鳥貴族の2018年7月期決算は値上げにより既存店の客数は減少するも増収増益

鳥貴族の2018年7月期の決算が発表され、売上高、営業利益ともに二桁以上伸びています。鳥貴族は高い人気を活かして順調に新規出店を行っていて、2018年7月期の新規出店数は104店舗と多いです。新規出店により新しいお客さんを獲得できるので、全体の売上高、営業利益は大きく拡大しています。新規出店が好調な一方で、2017年10月に均一価格を280円(税抜)から298円(税抜)へと値上げを実施したことで、既存店の客数は減少しています。新規出店が好調で、売上高、営業利益ともに二桁以上伸びているものの、値上げによる既存店の落ち込みがあったことで、今後の成長を不安視する見方もあります。

人手不足によるアルバイト・パートの時給の上昇、食材価格の高騰を受け、多くの飲食チェーン店が値上げを実施しています。鳥貴族はメディアの露出が多く、人気の飲食チェーン店であり、値上げによる客数の減少はないだろうという予想が多かったです。鳥貴族は値上げによって売上総利益率は改善したものの、既存店の客数が減少したことで、新規出店を控え、既存店を強化する方針を打ち出しています。鳥貴族が提供しているメニューは必要不可欠な食事ではなく、エンターテイメント性を持つ食事であるため、値上げをするのであれば利用しないと考えるお客さんが予想よりも多かったと言えます。

新規出店で店舗数は増えるも値上げにより既存店の客数は減少

鳥貴族の2018年7月期の売上高は33,978百万円(前期比15.8%増)、営業利益は1,681百万円(前期比15.4増)となっています。2018年7月期の営業利益率は4.9%で、2017年7月期の5.0%から0.1ポイント悪化しています。鳥貴族は2017年10月に均一価格を280円(税抜)から298円(税抜)に値上げしたため、売上総利益率は改善されています。2018年7月期の売上総利益率は69.7%となり、2017年7月期の67.9%から1.8ポイント上昇しています。一方、販売費及び一般管理費率は64.7%で、前期の63.0%から1.7ポイント上昇しているため、値上げを実施したにもかかわらず、営業利益率はわずかに悪化しています。

飲食チェーン店の成長戦略は、新規出店で店舗数を増やしながら、既存店の売上も伸ばすことです。鳥貴族の2018年7月期は、新規出店により店舗数は順調に増加していますが、既存店は客数の減少により売上高が減っています。鳥貴族は2017年10月に均一価格を280円(税抜)から298円(税抜)に値上げしていて、既存店の客数の減少は値上げによるものです。鳥貴族は高い人気を背景に新規出店は順調で、毎年安定的に店舗数を増やしています。値上げについても、お客さんに受け入れられると予想されていましたが、お客さんの節約志向は強く、人気チェーン店の鳥貴族であっても客離れが起こっています。

鳥貴族の2018年7月期の直営店の新規出店は85店舗、独立は1店舗、退店は3店舗となっています。直営店のエリア別の新規出店数は、関西は8店舗、関東は54店舗、東海は23店舗です。TCCの新規出店数は19店舗、独立は1店舗、退店は3店舗となっています。TCCのエリア別の新規出店数は、関西は5店舗、関東は14店舗、東海は0店舗です。TCCとは「鳥貴族カムレードチェーン」の略称で、一般的なフランチャイズチェーンよりも強固なビジネスパートナーである、限られた加盟店オーナーのことです。鳥貴族の2018年7月期末の店舗数は665店舗で、2017年7月期末の567店舗から98店舗増加しています。

鳥貴族は中期経営計画の最終年度である2021年7月期には、関東圏・関西圏・東海圏の三商圏で1,000店舗を目標にしています。飲食チェーン店は商圏が狭いため、特定のエリアで店舗数を増やすドミナント出店がうまく機能します。日本は少子高齢化により人口減少が始まっているので、商圏が狭い飲食チェーン店は、既存店の集客がさらに難しくなっていきます。人口が多く、人口減少のスピードが相対的に遅い、大都市圏へのドミナント出店は、飲食チェーン店に共通の出店戦略になると思います。鳥貴族は全国的に人気の飲食チェーン店ではありますが、今後も地方への出店は行われない可能性が高いです。

鳥貴族の2018年7月期の既存店の前年比は、売上高は3.7%減、客数は5.7%減、客単価は2.1%増です。鳥貴族は2017年10月に均一価格を280円(税抜)から298円(税抜)へと値上げしていて、2017年10月以降、客数の減少、客単価の増加の傾向が見られるようになっています。時間経過とともに客数の減少幅が大きくなっていて、2018年5月は11.4%減、2018年6月は11.4%減、2018年7月は14.2%減です。鳥貴族はメディアでの露出が多く、人気も高まっていたため、値上げによる既存店の客数の減少は少し意外です。価格が安いから鳥貴族を利用していた、節約志向の強いお客さんが多かったことになります。

鳥貴族の既存店の売上高は、2017年10月に実施した値上げにより減少していますが、地域によって減少幅に差があります。地域別の既存店の売上高の前年比は、関西圏は0.1%増、関東圏は5.4%減、東海圏は3.6%減となっています。関西圏が関東圏、東海圏よりも既存店の売上高の減少幅が小さい理由には、関西圏での店舗運営の歴史が長いこと、関東よりも競争が厳しくないことなどが考えられます。鳥貴族の直営店の地域別出店数を見ると、関西圏よりも、関東圏、東海圏の方が出店数が多いです。値上げによる客離れを考慮すると、基盤の強い関西圏で店舗数を増やす方が堅実ではないでしょうか。

値上げの影響は大きく価格に見合ったメニューの価値の向上が必要

鳥貴族は2017年10月に、均一価格を280円(税抜)から298円(税抜)に値上げしています。鳥貴族が値上げを行った理由は、コスト上昇分を吸収して現行価格を続けることは、内部努力だけでは難しいと判断したためです。具体的なコスト上昇要因は、人手不足によるアルバイト・パートの時給の上昇、野菜など食材の価格が高騰したことなどです。時給の上昇、食材の価格の高騰はすべての飲食チェーン店に共通するもので、鳥貴族以外にも値上げを行っている飲食チェーン店は多数あります。鳥貴族は人気の飲食チェーン店であり、280円(税抜)の低価格を売りにしているため、値上げへの注目度は高いです。

鳥貴族が値上げを発表した時には、値上げにより売上総利益率が上昇するので、鳥貴族の収益性は高まるといったポジティブな意見がありました。値上げによって既存店の客数が減少するという意見は、どちらかと言えば少数派でした。鳥貴族はメディアの露出が多く、人気もあるため、値上げをしても客数の減少はないだろうという見方でした。2017年10月の値上げ以降、10ヶ月分のデータしかありませんが、既存店の客数は減少する結果になっています。当初の計画通り売上総利益率は改善していますが、予想外に既存店の客数が減少したことで、鳥貴族の営業利益も当初の計画ほどは増えていません。

鳥貴族の値上げは注目度が高いですが、鳥貴族以外の飲食チェーン店も、ここ数年の間に値上げを実施しています。近年値上げを実施した飲食チェーン店には、いきなり!ステーキ、カレーハウスCoCo壱番屋、串カツ田中、ジョイフル、すかいらーくグループ、すき家、てんや、長崎ちゃんぽんリンガ―ハット、日高屋などがあります。時給の上昇、食材の価格の高騰が起こっているため、飲食チェーン店は値上げをしなければ、営業利益を確保することが難しくなっています。お客さんに値上げを受け入れてもらえるか、既存店の客数が減少するか、飲食チェーン店は店舗の総合力が評価される局面を迎えています。

飲食チェーン店が値上げを行えば、お客さんはメニューに価格に見合った価値があるかどうか、改めて見直しをすることになります。メニューの内容は変わらず、価格だけが高くなるのであれば、お客さんが感じるメニューの価値は減少してしまいます。鳥貴族は国産国消に力を入れていて、2016年10月より、食品表示法(平成27年4月1日施行)で定められた国産基準において、フードメニューで使用する食材(生鮮食品・加工食品)すべてが国産になっています。国産100%は鳥貴族がお客さんにアピールできるものですが、メニューの内容に変化がなければ、値上げによってメニューの価値が減少していると言えます。

飲食チェーン店に値上げが必要な理由は、アルバイト・パートの時給の上昇、食材の価格の高騰など、コスト増加の負担が重いためです。さらに、コストの増加だけではなく、少子高齢化による人口の減少も、飲食チェーン店が値上げを行わなければならない理由の一つとして浮上しています。少子高齢化により人口は減少しますが、飲食チェーン店の競争は激しくなるため、1店舗あたりの客数は時間経過とともに減少していくことは確実です。飲食チェーン店の1店舗あたりの客数が減少する中で、これまでと同程度の売上を確保しようとすれば、メニューの値上げを行い、客単価を高めなければならなくなります。

飲食チェーン店は値上げを行うと同時に、メニューの価値を高めることにも力を入れなければなりません。鳥貴族はタレ工場以外のセントラルキッチを持たず、各店舗で仕込みを行っている手作りの強みがあります。また、食材の国産100%も、安全志向・健康志向の強いお客さんにはアピールポイントになります。ただ、鳥貴族ではお酒を飲みながら食事をするため、鳥貴族が持っている手作り、国産100%といったメニューの価値が訴求しにくいです。低価格の焼き鳥に参入してくる飲食チェーン店も多いため、鳥貴族は値上げに見合った、メニューの価値を高める施策が必要なのではないかと思います。

値上げにより主要顧客である20代・30代の会社員の客数が減少

鳥貴族の決算説明会資料には、2017年7月期と2018年7月期の既存店の顧客データを比較した、属性別、年齢別のデータがあります。属性別の既存店客数の前期比は、会社員は4.6%減、学生は9.9%減、ファミリーは15.2%減、外国人は21.7%増、その他は29.4%減です。年齢別の既存店客数の前期比は、20代は5.2%減、30代は3.7%減、40代は15.7%減、50代は16.7%減、60代以上は32.5%減です。鳥貴族は値上げにより既存店の客数が減少していますが、お客さんの属性、年齢によって減少幅にバラツキがあります。値上げの金額は18円(税抜)と少額ですが、一部のお客さんに与えた影響は大きいです。

鳥貴族の決算説明会資料では、属性別、年齢別の客数が数字ではなく、バーグラフで表示されています。属性別、年齢別のバーグラフの大きさから判断すると、属性別では会社員、年齢別では20代と30代が鳥貴族にとって重要なお客さんです。属性別の会社員、年齢別の20代と30代は、既存店の客数は減少しているものの、客数の減少幅は他の属性・年齢よりも小さくなっています。若い世代の会社員は友人や同僚と鳥貴族を利用する機会が多く、値上げがあっても鳥貴族の利用を避けられないのではないかと推測できます。一方、ファミリー・中高年のお客さんは、値上げに敏感に反応して利用を控えています。

鳥貴族は主要客層である20代、30代のお客さんが減少したことを受け、鳥貴族の認知度や利用実態に関するWEB統計調査を実施しています。WEB統計調査の概要は、調査対象者は20代・30代の男女、対象エリアは関西・関東・東海の三商圏、サンプル数は20,000サンプルです。鳥貴族の利用については、1年内に利用は27%・1年内に利用していないは7%、3年内に利用は34%・3年内に利用していないは11%となっています。鳥貴族の認知度については、鳥貴族を利用したことがあるは45%・鳥貴族を利用したことがないは32%、鳥貴族を知っているは77%・鳥貴族を知らないは23%となっています。

鳥貴族を1年内に利用していないお客さん(7%)、3年内に利用していないお客さん(11%)は、呼び戻しの対象になります。鳥貴族を利用したことがないお客さん(32%)、鳥貴族を知らない(23%)は、鳥貴族に新規顧客になる可能性があります。鳥貴族の価値を知っていて利用していないお客さんよりも、鳥貴族の価値を知らない・鳥貴族の存在を知らないお客さんの方がポテンシャルが大きいです。鳥貴族が提供するメニューは焼き鳥とお酒ですから、昼食や夕食で利用することはありません。利用機会が飲み会に限定されるので、鳥貴族を知っていても利用していないというお客さんは多いと思います。

鳥貴族は2017年10月に均一価格を280円(税抜)から298円(税抜)に値上げしたことで、既存店の客数が減少する状況に陥っています。鳥貴族は既存店の客数の減少を受け、2019年7月期は既に出店予定である店舗を除き、新規出店を控え、既存店を強化する計画です。鳥貴族はメディアの露出が多く、高い人気を獲得しているため、毎年新規出店は順調に行われています。ただ、新規出店の原資は既存店の売上でもあるため、既存店の客数減少が固定化すれば、将来の新規出店の原資も減ることになります。新規出店で店舗数を増やしても、すぐに客数が減少するのであれば、店舗数の増加も意味がなくなります。

既存店の強化の具体的な施策として、クオリティ、サービス、クレンリネスを改善するプログラムである、「鳥貴族QSC改善プロセス」の徹底があげられています。その他、調理技術、接客などの教育、新たなメニューの開発、継続した正社員の採用と育成、労働環境改善のための店舗改装などもあります。鳥貴族は近年急速に店舗数が増えているため、入社歴の短い、正社員・アルバイト・パートが多数働いていることになります。どの店舗を利用しても、標準化されたメニュー、サービスを利用できることは、お客さんが飲食チェーン店に期待しているものでもあり、各店舗のバラツキをなくすことは重要です。

1,000店舗を目指す「うぬぼれチャレンジ1000」と海外進出

鳥貴族は2018年7月期~2021年7月期の中期経営計画として、「うぬぼれチャレンジ1000」を策定しています。「うぬぼれチャレンジ1000」の目標は、2021年7月期末時点で、関東圏・関西圏・東海圏の三商圏で鳥貴族1,000店舗、営業利益率8%を実現することです。「うぬぼれチャレンジ1000」の数値目標を達成するため、新規出店の強化、人財基盤の強化、経営効率の改善が重点施策にあげられています。「うぬぼれチャレンジ1000」では、鳥貴族を国内No1ブランドとして確立するとともに、訪日外国人(インバウンド)の認知度を高めることで、将来の海外進出への下地を作ることも意図しています。

2018年7月期は4カ年計画である「うぬぼれチャレンジ1000」の1年目ですが、進捗状況は当初の計画を下回っています。売上高は369億円の計画に対して339億円、営業利益は23億円の計画に対して16億円、営業利益率は6.4%の計画に対して5.0%となっています。高い人気を背景に新規出店は好調を続けていますが、値上げによる既存店の客数の減少、アルバイト・パートの時給の上昇、食材価格の高騰などにより、経営指標は全体的に計画を下回る結果になっています。今後も、新規出店は順調に推移していく可能性が高いので、「うぬぼれチャレンジ1000」の成功は既存店の強化がカギになりそうです。

新規出店で店舗数を増やして、調達や物流などの効率を高め、営業利益率を高めることは、飲食チェーン店の成長戦略です。鳥貴族の店舗数の推移を見ると、100店舗を越えたのは2008年7月期ですが、10年後の2018年7月期には6倍以上の665店舗まで増えています。今後も、新規出店を継続して、既存店を強化するためには、正社員・アルバイト・パートの採用と教育が必要です。一般的に飲食業界は就職先としては人気がなく、少子化で若い世代の人口は少ないため、人気の飲食チェーン店である鳥貴族であっても、正社員・アルバイト・パートを安定的に採用することは簡単ではないと思います。

鳥貴族が人気になったことで、焼き鳥業態への新規参入が活発になっていて、鳥貴族の決算短信の中でも競争環境の変化として触れられています。競合する焼き鳥業態には、「やきとりセンター」、「鳥二郎」、「豊後高田どり酒場」、「三代目鳥メロ」などがあります。焼き鳥業態に新規参入してきた飲食チェーン店も、鳥貴族と同様に280円前後で焼き鳥を提供していて、お客さんは各飲食チェーン店の差をあまり感じないかもしれません。鳥貴族には国産100%、手作りといった、時間を掛けて構築してきた強みがあり、こうした点をお客さんに訴求することで、競合店舗と差別化を図りたいところです。

鳥貴族は2017年10月に、均一価格を280円(税抜)から298円(税抜)に値上げしたことで、既存店の客数が減少してしまいました。会社員(4.6%減)、学生(9.9%減)、ファミリー(15.2%減)は揃って客数が減少しましたが、外国人(21.7%増)は値上げの影響なく客数が増加しています。訪日外国人(インバウンド)の間で鳥貴族の認知度が高まっていて、訪日外国人(インバウンド)のお客さんは、日本人のお客さんよりも値上げに寛容です。鳥貴族は2021年7月期以降、海外への進出も計画していて、「うぬぼれチャレンジ1000」には、訪日外国人(インバウンド)への認知度を向上させることも盛り込まれています。

上場している飲食チェーン店の決算書を見ると、海外の新規出店が好調、海外の既存店が好調といった内容が増えてきています。海外での事業が好調な飲食チェーン店には、吉野家ホールディングス、ゼンショーホールディングス、トリドールホールディングスなどがあります。日本は少子高齢化で人口が減少していくため、新規出店は難しくなり、お客さんの奪い合いで既存店の収益性も悪化していきます。一方、訪日外国人(インバウンド)が増え、和食ブームが起きていることで、海外進出の機会が生まれています。鳥貴族は訪日外国人(インバウンド)の利用が増えているため、海外事業でも成功できると思います。