ECサイトは商品数の増加で買い物がしにくくなる問題をどのように解決できるか

ECサイトは商品数の増加で買い物がしにくくなる問題をどのように解決できるか

便利に買い物ができるネット通販の利用者が増えていて、ネット通販の市場規模は年々拡大しています。24時間買い物ができて、自宅に商品を届けてくれるネット通販は快適で、幅広いカテゴリの商品が買えることもネット通販が人気になる理由です。実店舗で買えば、複数の店舗を買い回らないと揃わない商品も、ネット通販であれば、Amazonだけですべてが揃うといったこともあります。ECサイトが品揃えを拡大することで、お客さんはますます便利に買い物ができるようになります。しかし、商品数が多くなると、お客さんは必要な商品を探すために、以前より多くの時間が掛かるという問題も出てきます。

ECサイトは売上を伸ばすために品揃えの拡大を続けますが、同時に、お客さんが商品を探しやすい環境を構築しなければなりません。ECサイトが活用できるツールとして、検索エンジン、レコメンドシステム、商品レビューの3つが効果的です。ECサイトの商品数が増えていることをうけ、ECサイト専用の検索エンジンが開発されるようになっています。また、レコメンドシステムについても、AI(人工知能)を使ったレコメンドシステムが登場しています。ECサイトの商品数が増加しても、優れた検索エンジン、レコメンドシステムがあれば、お客さんは商品を探す負担を強く感じることはありません。

ECサイトの品揃えの増加にはメリットとデメリットがある

ネット通販の利用者が増えていて、ネット通販の市場規模は安定的に拡大しています。スマートフォンを持つ若い世代の新規参入が続くので、ネット通販の拡大は今後も続いていきます。経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、2017年度のBtoCにおける日本国内のEC市場規模は16兆5,054億円(前年比9.1%増)です。2010年度のEC市場規模は7兆7,880億円でしたから、7年間で倍以上の市場規模に成長しています。忙しい人が増えている日本の現状を考えると、24時間いつでも注文できて、自宅に商品が届く、便利なネット通販の利用者が増えることは順当です。

ネット通販が拡大している要因には様々なものがありますが、ECサイト側の努力も大きいです。ECサイトは継続的に商品数を増やしているため、お客さんの買い物回数、購入点数は増加することになり、EC市場規模の拡大に繋がっています。直近のデータによると、楽天市場の商品数は約2.5億点、「Amazon Business」の商品数は約2億点、Yahoo!ショッピングの商品数は約2.8億点となっていて、実店舗とは比較にならない規模の商品を販売しています。Amazonで買い物をすると、複数のカテゴリの商品が1回の配達でまとめて届くので、お客さんは少ない労力で多くの商品を手にすることができます。

買い物をするお客さんの立場からすると、ECサイトの商品数が増えれば、より買い物が便利になるので嬉しいことです。一方で、商品を探す作業、商品を比較する作業は増えるため、買い物に掛かる時間が長くなるというデメリットもあります。ECサイトではキーワードで商品を検索することが多いですが、検索をすると、キーワードにヒットした複数の商品が表示されます。お客さんは商品の検索、商品のチェック、商品の購入を複数回繰り返すことになるので、ECサイトでの買い物に疲労感を感じる人も出てきます。

ECサイトが売上を伸ばしていくためには、継続的に商品数を増やしていくことが不可欠です。しかし、商品数を増やせば売上も増えますが、お客さんの買い物の負担も増えるため、ECサイトはお客さんの買い物の負担の軽減にも取り組まなければなりません。ネット通販に慣れていなかったお客さんは、ネット通販のメリットばかりに注目してくれていました。また、ECサイト側も安定的に売上が伸びているので、お客さんの買い物体験への意識も低かったです。商品数の増加によって、商品の探しにくさ、買い物のしにくさは、ECサイトが解決しなければならない問題として認識され始めています。

楽天が運営している楽天市場では、2018年10月より、商品画像に関するガイドラインの変更が予定されています。楽天市場の商品画像をシンプルにすることにより、情報量を減らし、お客さんの買い物の負担を軽減することが狙いです。具体的に実施されるガイドラインの変更は、「テキスト要素20%以内」、「枠線なし」、「幾何学模様の背景なし」というものです。楽天市場の商品画像は、出品者が情報をたくさん盛り込んでいて、お客さんは1つ1つの画像を見るのが大変です。今後は商品画像が今までよりもシンプルになるので、お客さんは同じ時間で多くの商品画像を見ることができるようになります。

楽天市場のコンセプトは「Shopping is Entertainment!」というものですが、このコンセプトにも変化が見られます。お客さんはネット通販にエンターテイメント性を求めておらず、品揃えが豊富、価格が安い、配達が便利、買い物がしやすいといった実質的なものを求めるようになっています。最近はAmazonと楽天が比較されることが増えていて、買い物の利便性の点でAmazonの方を高く評価する意見が多いです。今回、楽天が商品画像をシンプルにするガイドラインの変更を行うことは、楽天市場のエンターテイメント性を抑え、利便性を高めていくことへの戦略転換だと言えます。

商品数が多いECサイトには優れた検索エンジンが必要になる

お客さんはECサイトで自分が必要な商品を探すときに検索を利用します。ECサイトとしては、お客さんが必要としている商品を適切に表示したいです。お客さんの検索キーワードで多いのは、商品の名前、商品の型番での検索です。商品の名前、商品の型番での検索の場合、当該商品を表示すればよいので、商品数が増えても大きな問題にはなりません。一方、キーワード、色、サイズ、容量で検索をする場合は、多くの商品がヒットします。商品数が増えれば増えるほど、検索にヒットする商品数も増えるため、適切に商品を表示しなければ、お客さんは商品のチェックに時間を取られてしまいます。

ECサイトの商品数が増え続けているため、ECサイト専用の検索エンジンも開発されるようになっています。ECサイトは検索エンジンを導入することにより、売上アップ、買い物体験の改善などの効果が見込めます。お客さんはECサイトでキーワードを入力して商品を検索しますが、入力ミスやひらがな・カタカナ、全角・半角の表記ゆれがあります。検索エンジンはこれらのトラブルを吸収して、適切な商品を表示することで、機会損失を解消することができます。また、カテゴリ、色、サイズ、価格帯などで絞り込む機能は、お客さんの商品探しの負担を軽減して、商品が売れる確率を高める効果があります。

ECサイトの検索はテキストで行いますが、最近は画像を使った検索システムも登場しています。画像を使った検索システムは、ファッションアイテムを販売するECサイトを中心に導入が拡大しています。ファッションアイテムを販売するECサイトでは、お客さんは主にカテゴリ、色、サイズ、価格帯で検索をします。ファッションアイテムは商品数が多いため、膨大な商品が検索にヒットすることになります。ファッショアイテムの買い物では、たくさんの商品を見ることにも楽しみはあります。しかし、希望する商品を素早く探したいお客さんもいるので、お客さんの希望に合った商品を的確に表示したいです。

スマートフォンのカメラで撮った画像は、小さな色の付いた点が集合したものです。画像を使った検索システムでは、お客さんがアップロードした画像と商品の画像を比較して、似た特徴を多く持っている商品を表示する仕組みです。画像検索システムの仕組みを考えると、お客さんがアップロードした画像と似ている商品を表示することはそれほど難しくないように思います。お客さんが強い関心を持っている商品を適切に表示できれば、商品が売れる可能性が大きくなります。お客さんは日々、多くの写真を撮っているので、お客さんが持つ画像をECサイトで活用することは効率がよいです。

ECサイトが商品を探しやすい環境を作るにあたって、検索エンジンの強化は最も効果が大きい施策ではないかと思います。検索エンジンがお客さんが希望する商品を的確に表示することができれば、お客さんは検索、購入をスムーズに繰り返すことができます。ECサイトの商品数が多くなれば、お客さんの購入点数も多くなるので、お客さんが検索で商品を探す回数も多くなります。1回1回の検索で希望する商品が簡単に見つかれば、お客さんが感じる疲労感も小さいです。商品の検索に時間が掛かってしまうと、購入点数が減ったり、買い物自体をやめてしまうといったネガティブな結果に繋がります。

ECサイトが売上を伸ばすためには、商品数を増やし続けなければなりません。しかし、商品数が増えれば、お客さんは商品を探すことが大変になります。ECサイトは商品数を増やすだけでは、お客さんに適切な商品を見てもらえない可能性があり、検索エンジンの強化は商品数の増加とセットで行われるのが理想です。大手ECサイトで商品を探す時にはあまり感じませんが、中小ECサイトで商品を探す時には、検索の不便を感じることがあります。検索エンジンへの投資が難しい中小ECサイトは、品揃えの豊富さをお客さんに充分にアピールできないため、商品の探しにくさが成長のボトルネックになってしまいます。

レコメンドシステムには利便性とエンターテイメント性がある

ECサイトの商品ページの下部には、「こちらの商品もおすすめです」、「こちらの商品を購入したお客さんはこちらの商品も購入しています」といったレコメンド商品が表示されています。こうしたレコメンド商品は、お客さんの購入履歴、商品閲覧履歴、商品検索履歴など、過去のデータを元に設定されています。レコメンド商品はECサイト側からお客さんに提案するものであり、お客さんが自分から探している商品ではありません。商品の検索は自主的、レコメンド商品は受動的という違いはありますが、レコメンドシステムも検索エンジンと同様に、お客さんの買い物の負担を軽減する仕組みです。

レコメンド商品は多くのECサイトで表示されるようになっていて、これはECサイトの売上を伸ばすことが主たる目的です。ECサイトはお客さんの購入履歴、商品閲覧履歴、商品検索履歴を分析して、お客さんが買いそうな商品をレコメンドすることで、売上を伸ばそうとしています。お客さんの立場からすると、レコメンド商品は検索エンジンほど重要ではありませんが、自分の好みに合ったレコメンド商品が表示されればありがたいです。忙しいお客さんは時間を掛けて商品を探すことが難しいですが、適切な商品を紹介してくれる優れたレコメンドシステムがあれば、ECサイトでの買い物がしやすくなります。

レコメンドシステムには様々なアルゴリズムがありますが、最近はAI(人工知能)を活用したレコメンドシステムが開発されています。AI(人工知能)はあらゆる分野での活用が見込まれていて、レコメンドシステムにどれほど効果があるのか注目です。カラフル・ボードが開発している「SENSY ソムリエ」は、AI(人工知能)が利用者一人一人にあったワインを提案するアプリです。ワインは種類が豊富にあるので、どれを買えばいいのかよく分からないという意見が多いです。「SENSY ソムリエ」はAI(人工知能)を活用したレコメンドを行い、お客さんのワイン選びの負担を軽減することを目的としています。

「SENSY ソムリエ」の利用者は、スマートフォンのカメラ機能やアプリ内の検索機能を使って、自分が飲んだワインの評価を行います。評価するデータは、5つの味の特性(甘味・酸味・苦味・渋味・余韻)と好き嫌いの評価で、それぞれ5段階で評価する仕組みです。「SENSY ソムリエ」のAI(人工知能)は、利用者が評価したワインのデータを学習して、利用者にワインの「お薦めスコア」を表示します。例えば、スーパーのワイン売り場でワインのラベルを「SENSY ソムリエ」でスキャンすると、利用者のこれまでのワインの評価データを元に、そのワインがどれくらい利用者にお薦めなのかを表示します。

レコメンド商品はECサイトが売上を伸ばすためのものという認識でしたが、最近は買い物体験の一部になっています。ECサイトの商品数が増えたため、お客さんは欲しい商品を見つけるのにも、以前よりも時間が掛かってしまいます。自分が欲しい商品をレコメンドで適切に表示してくれれば、お客さんは商品を探す手間が掛かりません。お客さんがECサイトで買い物をする理由は、24時間買い物ができる、商品を自宅に届けてくれるといった利便性です。レコメンドシステムも、ECサイトが提供できる利便性の一つであり、検索エンジンとともに、お客さんが商品を探しやすくするために不可欠なシステムです。

ECサイトは目的買いには便利ですが、買い物のエンターテイメント性の点では、実店舗に見劣りする部分があります。実店舗でのウインドーショッピングには楽しさがありますが、ECサイトのウインドーショッピングはそれほど楽しくはありません。お客さんの購入履歴、商品閲覧履歴、商品検索履歴を活用したレコメンドは、ECサイトの買い物体験にエンターテイメント性を付加してくれます。例えば、机を購入したお客さんにデスクスタンドを提案すれば、お客さんはデスクスタンドの購入をイメージします。適切なレコメンドは次の買い物へのインスピレーションになり、お客さんの買い物意欲を刺激します。

豊富な商品レビューがあればお客さんは短時間で決断ができる

商品レビューは検索エンジン、レコメンドシステムと同様に、お客さんのECサイトでの商品探しを支援するツールです。商品を買う買わないの判断は難しいものですが、実際に商品を使っている人の商品レビューは、お客さんの意思決定に役立ちます。ECサイトで買い物をする場合、何を買うのかカテゴリは決まっていることが多いです。ECサイトで自分が探してるカテゴリをクリックすれば、高評価の商品レビュー順に商品が表示されるため、商品の絞り込みが行われている状態です。商品レビューを使った商品の絞り込みにより、お客さんは自分で商品を探す手間が省け、買い物時間の短縮に繋がっています。

海外のマーケティング会社の調査で、商品レビューが高い商品ほどよく売れるという検証結果を見たことがあります。商品レビューは実際に商品を利用している人の感想ですから、これから商品を買おうとしている人には価値があるものです。以前は商品レビューは参考にならないという意見も存在していましたが、現在では確実に価値があるものとして定着しています。時間経過とともに商品レビューは蓄積されていくので、時間経過とともに商品レビューの質は高まります。高い評価の商品レビューばかり付く商品は間違いなく良い商品であり、その商品を買えば、高確率で購入者のニーズを満たしてくれます。

ECサイトの検索エンジン、レコメンドシステムは、お客さんが商品と接触する機会を生み出すものです。しかし、お客さんは商品を見ただけでは良い商品かどうかが分からないので、その商品が良い商品かどうかを確認しなければなりません。商品の評判をインターネットで検索することになりますが、この作業には時間が掛かります。豊富な商品レビューを持つECサイトでは、お客さんは商品の確認作業が減るため、お客さんにとって買い物がしやすい店舗だと言えます。商品レビューは時間経過とともに蓄積されるため、歴史の長い大手ECサイトほど商品レビューが多く、買い物がしやすい店舗になっています。

ECサイトがお客さんに優れた買い物体験を提供するためには、検索エンジン、レコメンドシステム、商品レビュー、すべてが重要です。ECサイトの売上に貢献するという点では、商品レビューが果たす役割は大きいです。お客さんはECサイトで検索したり、レコメンド商品を見ながら良さそうな商品を探します。自分が良さそうだなと考えている商品に高評価のレビューがたくさん付いていれば、お客さんがその商品を購入する確率は高まります。商品レビューには、お客さんの買い物時間を短縮するだけでなく、良い商品を確信を持って購入してもらうことで、購入後の満足度を高める効果もあります。

ECサイトが検索エンジン、レコメンドシステムを導入しようとする場合、システム会社に依頼すれば比較的簡単に導入することができます。一方、商品レビューの蓄積には時間が必要で、短期間で商品レビューを豊富に持つECサイトになることは難しいです。ECサイトにとって、商品レビューはブランドのようなものです。お客さんは良さそうなECサイト、良さそうな商品を見つけても、商品レビューがなければ購入を躊躇してしまいます。例えば、同じ商品を複数のECサイトで見つけた場合、商品レビューを多く持っている、お客さんから信頼されているECサイトで購入するという人もいると思います。

Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングなど、豊富な品揃え、商品レビューを持つ大手ECサイトは、お客さんの囲い込みを進めています。大手ECサイトには必要な商品、商品レビューがあるので、お客さんは大手ECサイトだけで買い物が完結します。価格.comは商品レビューサイトとして昔から人気がありますが、現在では、大手ECサイトも充分な量の商品レビューを保有するようになっています。後発のECサイトが商品レビューの量で、Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングといった大手ECサイトに追い付くことは難しく、今後も大手ECサイトがお客さんを囲い込む流れは続いて行きそうです。