食の安全性の問題で業績が悪化したマクドナルドはなぜ復活することができたのか

食の安全性の問題で業績が悪化したマクドナルドはなぜ復活することができたのか

日本マクドナルドホールディングスは、2014年7月に発生した消費期限切れ鶏肉使用問題により業績が悪化しましたが、2017年12月期決算では営業利益が18,912百万円(前期比172.9%増)と復調しています。マクドナルドが復活した理由には、お客さんの声を取り入れて店舗の改装を行ったこと、質の高い新商品の開発・キャンペーンを実施していることなどがあります。マクドナルドの既存店売上高は2018年8月まで33ヶ月連続で前年を上回っていて、お客さんはマクドナルドの商品・サービスを高く評価しています。

マクドナルドの復活はマクドナルドの改革によるところが大きいですが、日本社会の変化・お客さんのライフスタイルの変化もマクドナルドの復活の追い風になっていると思います。マクドナルドの復活に貢献していると考えられる、日本社会の変化・お客さんのライフスタイルの変化について、4つのポイントをまとめました。マクドナルドは質の高い新商品の開発・キャンペーンと、日本社会の変化・お客さんのライフスタイルの変化を追い風に、今後も業績を伸ばしていくのではないかと予想しています。

パートナーがいない人が増えマクドナルドを利用する回数が増える

一緒に生活をするパートナーを持たない人が増えたことによって、マクドナルドを利用するお客さんが増えたというのはありそうです。若い世代を対象に実施した恋愛や結婚に関するアンケート調査を見ると、恋人がいないと回答する人が増加傾向にあり、恋人の有無は普段食事をする店舗の選択に大きく関係しています。一緒に生活をするパートナーがいなければ、1人で食事をする機会が増えることになるので、1人でも気軽に利用できるマクドナルドのようなファーストフード店で食事をする回数が増えます。

日本の若者は給料の大幅なアップが期待できないため、消費活動が保守的になっていて、「若者の○○離れ」という言葉がよく使われています。今まで利用したことがない未知の飲食店を利用するよりも、よく知っているマクドナルドを利用した方がリスクが小さく、マクドナルドを繰り返し利用する人もいるかもしれません。日本マクドナルドホールディングスは不振店の閉店により店舗数が減ったにもかかわらず、2017年12月期決算では売上高が前期比11.9%増と好調で、リピーターが既存店の売上を支えています。

外食産業では居酒屋の不調が続いていますが、お酒を飲む人が減っている、集団行動を好む人が減っている、1人での行動を好む人が増えているなどが要因とされています。日本フードサービス協会の外食産業市場規模推計値によると、居酒屋・ビヤホール等の市場規模は10,652億円(2015年)、10,237億円(2016年)、10,094億円(2017年)と縮小傾向にあります。マクドナルドと居酒屋の売上が直接関係しているわけではありませんが、1人で行動する人が増えたことで、利用する飲食店にも変化が起きていると推測できます。

現代の日本では人間の繋がりが弱くなっていると言われていて、例えば、職場においても、会社で飲み会を行ったり、同僚と飲みに行く回数が減少しているとされています。以前であれば、仕事終わりに同僚と飲みに行っていたものが、現在では一人で帰宅するようになり、帰りに飲食店で1人で食事をすることが増えるといった変化はありそうです。飲食店で料理の見栄えの良い写真にとって、ソーシャルメディアに投稿をする人が増えていますが、こうした趣味があれば1人でも食事を楽しむことができます。

マクドナルドを1人で利用するお客さんが増えているかどうかは、マクドナルドの新店舗、改装店舗で1人用の座席が増えているかどうかをチェックすればヒントが得られます。マクドナルドを含め、ファストフードの店舗では、ファミリーの来客が期待できる郊外の店舗、郊外の商業施設内の店舗は1人用の座席が少ないです。カウンタータイプの座席は1人での利用を想定しているため、郊外の店舗、郊外の商業施設内の店舗にカウンタータイプの座席が増えれば、1人で利用するお客さんが増えていると判断できます。

小売業では単身者に対応した商品が販売されるようになっていて、1人用のクリスマスケーキ、1人用のおせち料理の登場には驚きがありましたが、今では定番商品になっています。マクドナルドは毎日17:00以降、プラス100円でパティが倍になる「夜マック」のサービスを提供していますが、「夜マック」も単身者に向けた商品だと考えられます。小売業、飲食業ともに、これまではファミリーに商品を販売することを想定していましたが、単身者が増えたことで、ファミリー一辺倒のビジネスではなくなっています。

女性の社会進出により女性がマクドナルドを利用する機会が増える

仕事を持つ女性の数が年々増加していて、女性の社会進出が進んでいることによって、女性がマクドナルドを利用する回数が増えるというのはあると思います。仕事や子育てが忙しく、買い物や料理に時間を掛けられない女性が増えたことで、短時間で料理ができる、食材・調味料、レシピがセットになったミールキットが人気になっています。女性が自宅で料理をする機会が減れば、弁当・惣菜を購入したり、外食をする機会が増えるので、女性がマクドナルドを利用する回数も増えています。

マクドナルドの業績がV字回復した要因には様々なものが挙げられていますが、その一つに、母親の意見に耳を傾け、母親が好む店作りを行ったことがあります。マクドナルドの客離れが起こった原因は、食の安全性に疑問符が付いたためですが、子供を持つ母親は特に食の安全性を気にするため、女性客の減少は多かったのではないかと推測されます。一般的に、女性の方が男性よりも店舗の清潔感、サービスを厳しくチェックするため、母親が満足できるクオリティは、すべてのお客さんが満足できるクオリティだと言えます。

現在、世界全体で男女の格差を解消しようとする機運が高まっていて、日本では男女の平均賃金の差が大きく、男女の平均賃金の差は25~30%程度はあると見積もられています。専業主婦が多い年配の世代では男女の平均賃金の差が大きいですが、若い世代は女性の正社員も増えていて、年配の世代よりは平均賃金の差が小さくなっています。長期的には男性の平均賃金は下がり、女性の平均賃金は上がることになるので、女性の所得が増えれば、女性がマクドナルドを利用する回数の増加にも繋がります。

マクドナルドではビジネスマンが1人で食事をしている姿をよく目にしますが、仕事を持つ女性が増えれば、男性と同じように1人でマクドナルドを利用するようになります。ビジネスマンがハンバーガー、牛丼、うどんなどのファストフード店を利用する理由は、手短に食事を済ませるためですが、ビジネスウーマンも同様の行動を取るはずです。女性の社会進出の増加により、飲食店を利用する女性のニーズが大きくなるので、女性のお客さんをうまく取り込めた飲食店は業績を大きく伸ばせる可能性があります。

女性の社会進出により、夫婦ともに正社員で働いている世帯が増えていて、夫婦共働き世帯は自由に使える時間が減りますが、金銭的な余裕は大きくなります。共働き世帯ではミールキット、家事代行、コインランドリーなど、時間を節約するタイプの商品、サービスの利用が増えていて、時間を節約するタイプの商品、サービスには大きなチャンスがあります。飲食店のデリバリーは時間を節約するタイプのサービスの一つで、家族分の食事をまとめて注文してもらえれば、飲食店は売上を伸ばすことができます。

マクドナルドのデリバリーの状況は、2010年に開始した「マックデリバリー」の導入店舗数は約200店舗、2017年6月に開始した「Uber Eats」の導入店舗数は東京、神奈川県で約200店舗、2018年4月より、大阪府内の32店舗でも「Uber Eats」が始まっています。デリバリーは店舗の商圏を拡大する効果があるので、既存店の新しい収益源として期待が大きいです。女性の社会進出によりデリバリー市場は拡大していて、質の高いサービスを提供することで、お客さんのデリバリーの利用を習慣化させたいところです。

YouTubeの商品紹介動画を見てマクドナルドを利用する人が増える

Twitter、Facebook、Instagram、YouTubeといったソーシャルメディアの利用者は多いですが、ソーシャルメディアの普及はマクドナルドの業績に貢献しています。マクドナルドは昔からテレビCMで新商品の宣伝を行っていますが、テレビCMは自宅のテレビで見ることが多いので、テレビCMを見てすぐにマクドナルドに行くことは少ないです。一方、スマートフォンは屋外でも使うことができるので、ソーシャルメディアでマクドナルドの情報(広告)を見たあと、すぐにマクドナルドに行くことはあります。

テレビCMは見た瞬間のインパクトはあるものの、ほとんどの人がすぐにテレビCMの内容を忘れてしまうため、実際に店舗の集客にどれほど貢献しているのかは分かりません。ソーシャルメディアはテレビCMとは異なり、自分から情報を取りに行くことができるので、視聴者と接触する時間が長く、店舗への集客効果は大きいと考えられます。自分がフォローしている人がソーシャルメディアで同じ商品の写真を多く投稿していれば、その商品に価値があるという保証にもなり、自分も買ってみようかという気にもなります。

ソーシャルメディアの中でも特に影響が大きいのがYouTubeで、YouTubeにはファストフード店の新商品、コンビニの新商品を紹介する動画が多数投稿されています。食べ物を紹介する動画が多数投稿される理由には、食べ物に興味がある視聴者が多い、食べ物に興味があるYouTuberが多い、商品の価格が高くない、新商品が多いので動画のネタに困らないなどがあります。YouTubeの食べ物を紹介する動画の視聴回数は多いため、動画を見て商品に興味を持ち、実際に商品を購入している人も少なくないはずです。

マクドナルドは新商品の販売、キャンペーンが多く、動画のコンテンツに適していることもあり、食べ物を紹介するYouTuberは必ずマクドナルドの商品を紹介しています。食べ物の紹介動画が好きな視聴者は、食べ物の紹介動画を投稿する複数のYouTuberをフォローしているため、同じ商品の紹介動画を短期間に何度も視聴します。視聴者は食べ物に強い関心を持っていますが、動画を投稿しているYouTuberにさらに強い関心を持っていて、好きなYouTuberが紹介する食べ物には良いイメージを持ちます。

YouTubeにはマクドナルドの商品を紹介する動画が日々蓄積されていて、YouTubeの動画がきっかけで、マクドナルドを利用する人は増えているのではないかと思います。最も売上が期待できるのがデリバリーで、デリバリーはインターネットを使って注文ができるので、YouTubeを見て興味を持ったお客さんはすぐに注文をしてくれます。また、通勤・通学の電車の中でスマートフォンを利用している人も多く、通勤・通学時にYouTubeの動画を見て、その日の昼食、夕食にマクドナルドを利用するというのはありそうです。

マクドナルドはスマートフォンアプリを提供していて、スマートフォンアプリのクーポンには、お客さんに来店してもらう確率を高める効果があります。スマートフォンアプリは定期的に起動してもらうことが難しいのですが、YouTubeの動画はスマートフォンアプリを起動するきっかけになり、クーポンを取得してもらうことができます。デリバリーやネットショッピングとは異なり、飲食店の注文はお客さんが実店舗に来て初めて確定するので、クーポンの取得は来店に繋がる重要なアクションだと言えます。

訪日外国人(インバウンド)はよく知っているマクドナルドを利用する

日本政府、企業は訪日外国人(インバウンド)の取り込みに力を入れていて、訪日外国人(インバウンド)の増加はマクドナルドの売上アップに貢献していると思います。訪日外国人(インバウンド)のアンケート調査を見ると、日本での食事を楽しみにしている人が多く、食のジャンルを問わず飲食店には売上を伸ばすチャンスがあります。チャンスが大きいのは寿司、うどん、ラーメン、牛丼、焼き肉などの和食ですが、世界的なブランドであるマクドナルドは、よく知っているファストフード店として選ばれます。

マクドナルドが訪日外国人(インバウンド)の増加で売上を伸ばしているといったデータはありませんが、マクドナルドの店舗、ソーシャルメディアへの投稿を見ると、マクドナルドを利用する訪日外国人(インバウンド)は多いです。自国のマクドナルドと日本のマクドナルドを比較するコンテンツは人気があり、YouTubeにはマクドナルドを紹介する動画がたくさんあります。マクドナルドは訪日外国人(インバウンド)にも親しみがあるブランドですが、ソーシャルメディアへの投稿はマクドナルドの集客に貢献しています。

マクドナルドは電子マネー決済を導入していましたが、2017年11月20日より、全国の店舗(約2,900店舗、一部除く)でクレジットカード決済を開始しています。海外で普及している後払い型の電子マネー、「Visa payWave」、「Mastercardコンタクトレス」も導入されていて、クレジットカード決済の導入は訪日外国人(インバウンド)も意識しています。訪日外国人(インバウンド)はクレジットカード決済を好む人が多いため、クレジットカード決済の導入で訪日外国人(インバウンド)の利便性は良くなります。

世界的にキャッシュレス化が進んでいますが、日本はキャッシュレス化の動きが遅く、訪日外国人(インバウンド)の増加が日本のキャッシュレス化を推し進めるのではないかと注目されています。店舗の立場では決済手数料の負担が大きいものの、店舗の安全性・清潔感が改善させる、現金管理業務が減る、レジの支払い時間が短くなる、客単価が高くなる、などのメリットもあります。クレジットカードは手持ちの現金以上の金額を使うことができるので、店舗の売上(客単価)が伸びる可能性はかなり高いです。

日本マクドナルドホールディングスは売上高、営業利益ともに回復傾向にあり、比較的価格の高い新商品の開発・キャンペーンがうまく行っているように見えます。昔はマクドナルドに低価格の商品を期待するお客さんが多かったのですが、最近はそうした意見は少なくなっていて、高価格の商品も問題なく売れるように変わってきています。訪日外国人(インバウンド)は日本人によく売れている商品を注文するので、日本人に高価格の商品を売ることができれば、訪日外国人(インバウンド)の客単価も高くなります。

訪日外国人(インバウンド)のアンケート調査を見ると、日本は食べ物の価格が安いという意見もあり、さらに高価格の商品を販売するチャンスがあると言えます。訪日外国人(インバウンド)は日本への関心が強いため、日本の食材を活用した高価格のハンバーガーを開発できれば、日本人と訪日外国人(インバウンド)の両方に売れると思います。粗利益率の高い商品を開発して、大量に売ることがビジネスの成功パターンですから、日本人と訪日外国人(インバウンド)の両方に売れる商品を開発して、大きく儲けたいところです。