家具の販売が不調で業績が悪化している大塚家具の取り組みから小売業が学べること

家具の販売が不調で業績が悪化している大塚家具の取り組みから小売業が学べること

小売業を取り巻く競争環境は厳しいですが、高級家具を販売している大塚家具は業績が悪化していて、ビジネスニュースでもよく取り上げられています。大塚家具は業績を回復させるために様々な取り組みを行っていて、その中には危機にあるからこそできる大胆なものもあり、小売業は大塚家具の取り組みから学べることが多くあります。大塚家具の業績悪化は注目度が高いですが、ネット通販の拡大、少子高齢化の進行といった危機はすべての小売業に共通するもので、小売業は競争環境の変化に対応する必要があります。

ネット通販の拡大、少子高齢化の進行を考慮すると、現在の大型店を維持することは難しくなるので、小売業は小型店で商品を販売するようになります。店舗が小型化すれば商品・在庫数が減少するため、売上も減少してしまいますが、ネットショップやタブレットを活用することにより、高収益の店舗へと転換できるチャンスもあります。また、中古品の売買を行う人が増えているため、将来的には新品の販売個数が減少する可能性が高く、中古品の売買の拡大は小売業を悩ませる新しい問題になっています。

大型店の固定費を減らすために店舗面積の縮小・他社への貸出を行う

大塚家具は固定費が大きな大型店で家具を販売してきましたが、ここ数年は売上高の減少が続いていて、店舗の収益性が悪化する問題が出てきています。大塚家具の過去3年間の売上高は58,004百万円(2015年12月期)、46,307百万円(2016年12月期)、41,079百万円(2017年12月期)と減少傾向にあり、2017年12月期は5,136百万円の営業損失を記録しています。大塚家具は高級家具を販売していることもあり、店舗の賃借料、従業員の人件費の固定費が大きく、売上高の減少に対して脆弱な収益構造になっています。

大塚家具は急激に売上高が減少しているため、固定費の大きさが問題になっていますが、店舗の収益性の悪化は大型店を持つ小売業に共通するものです。百貨店、総合スーパーは昔から固定費が大きい大型店で商品を販売してきましたが、専門店やネットショップへのお客さんの流出が続いていて、店舗の収益性が悪化しています。店舗の売上高が減少する本質的な原因は商品に魅力がないことですが、魅力のある商品を開発することは難しく、売上高が減少した大型店の収益性を改善することは簡単ではありません。

大塚家具は店舗の収益性を改善させるため、固定費の削減に取り組んでいて、売上高の減少にあわせて店舗面積を縮小することで、賃借料を減らそうとしています。2017年12月期に店舗面積の縮小が行われた店舗には、有明本社ショールーム(23,285平方メートルから20,187平方メートル)、福岡ショールーム(9,628平方メートルから4,902平方メートル)、 仙台ショールーム(11,291平方メートルから7,483平方メートル)、横浜みなとみらいショールーム(19,500平方メートルから10,649平方メートル)などがあります。

大塚家具の過去3年間の店舗面積は56,227平方メートル(2015年12月期)、44,306平方メートル(2016年12月期)、39,008平方メートル(2017年12月期)となっています。過去3年間の売上高と店舗面積を使って計算した店舗面積1平方メートルあたりの売上高は、174.0百万円(2015年12月期)、259.1百万円(2016年12月期)、250.8百万円(2017年12月期)です。2016年12月期は店舗面積の縮小により、店舗面積1平方メートルあたりの売上高が大きく伸びていて、店舗面積の縮小が店舗の収益性の改善に繋がっています。

大塚家具は2017年11月に、ホテル宴会場・貸会議室・研修施設などを運営するティーケーピーと業務・資本提携契約を締結しています。業務提携の内容には、大塚家具の店舗をティーケーピーの貸会議室、レンタルスペースに活用すること、ティーケーピーの運営する施設に大塚家具の商品の納入が行われることなどが含まれています。余っている店舗面積をティーケーピーの貸会議室、レンタルスペースに活用することで、賃貸料を稼ぐことができ、ティーケーピーのお客さんを大塚家具の店舗へ集客する効果もあります。

百貨店、総合スーパーの大型店は売り場が余っているため、外部の企業と連携することで売り場を有効活用して、収益性を改善しようとする動きが出てきています。人気の専門店にテナント出店してもらえれば、店舗の集客力を強化することができ、賃貸料の収入も発生するので、余った売り場の活用方法として効果的です。大塚家具は急速に売上高が減少していますが、日本では少子高齢化の進行により客数が減少していくので、余った売り場面積をどう活用するかというのはすべての小売業に共通する課題です。

売上を増やすためにECの品揃えを増やし大手ネットモールにも出店

大塚家具はネット通販を販売チャンネルの一つとして重視していて、品揃えの強化、ユーザビリティーの向上、大手ネットモールへの出店に取り組んでいます。2017年3月には、商品情報ページとECサイトの統合を行い、掲載商品数は2,800品目(2017年3月)、4,000品目(2017年6月)、4,500品目(2017年12月)と短期間で増加しています。大手ネットモールへの出店にも積極的で、2017年9月には「LOCONDO HOME」、2017年10月にはYahoo!ショッピング、2018年5月にはAmazonへ出店しています。

ネットショップでは実物を確認できないうえ、家具はサイズが大きく、価格も高いため、ネット通販に不向きなイメージもありますが、大塚家具のネット通販は好調です。大塚家具の2016年12月期のEC売上高は52百万円でしたが、掲載商品数を増やし、大手ネットモールの出店を増やした結果、2017年12月期のEC売上高は234百万円と約4.5倍に急拡大しています。大塚家具のネット通販は始まったばかりで、売上高は少ないものの、売上高の増加率は非常に高く、ネット通販のポテンシャルを感じる数字になっています。

小売業にとって、ネットショップは商品を販売して売上高を獲得するためのチャンネルの一つですが、売上高を獲得するだけでなく、お客さんとの接点が持てることにも価値があります。インターネットで商品を検索して、ネットショップで購入する環境が整っているため、お客さんは実店舗に買い物に行かなくても、スマートフォンを操作するだけで必要な商品を手に入れることができます。お客さんの実店舗離れは進行していて、小売業はネットショップを持たなければ、商品を販売する機会が減ってしまいます。

実店舗に買い物に行く前にネットショップで商品情報を収集するウェブルーミング、実店舗で商品を確認して、ネットショップで商品を購入するショールーミングは、小売業にとって売上を伸ばすチャンスです。情報収集を行ってから来店してもらえれば、店員の接客の時間が短くて済む、商品が売れる確率が高まるといったメリットがあります。ショールーミングは実店舗の脅威だと考えられてきましたが、お客さんを自社のネットショップへ適切に誘導できれば、他社にお客さんを奪われるリスクは小さくできます。

経済産業省が発表している「電子商取引に関する市場調査」によると、2017年度のBtoCにおける日本国内の市場規模は16兆5,054億円(前年比9.1%増)となっています。BtoCの成長は主にAmazon、楽天、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWNといった大手ECサイトによるものですが、従来の小売業もネット通販に取り組まなければ、将来的には売上高が減少してしまいます。仕事や子育てが忙しく、買い物に時間を掛けられない、掛けたくない人が増えているため、今後もネット通販が拡大していることは確実です。

ファッション、大型家電、家具など、商品の特性によっては、ネット通販に不向きだとされている商品もありますが、基本的にはどんな商品も売れると考えてよいのではないかと思います。2018年8月29日に行われたIKEAの事業説明会では、IKEAのEC事業の売上高構成比は全体の5%を越えていて、ソファーが一番の売れ筋商品であることが発表されています。近くの実店舗に自分が欲しい商品がないお客さん、実店舗での買い物に時間を掛けたくないお客さんは、どんな商品でもネットショップで購入する可能性があります。

収益性の改善のため小型店とネットショップ、タブレットを活用

大塚家具は大型店で家具を販売してきましたが、売上高の減少で大型店の収益性が悪化していることもあり、出店戦略を変更して小型店の出店を増やしています。2017年12月期に新規出店した直営店の店舗面積は、最小184平方メートル(LIFE STYLE SHOP 柏の葉 T-SITE)、最大2,903平方メートル(まるひろ入間店)です。また、いよてつ髙島屋、ボンベルタ橘、八木橋百貨店といった地方の商業施設と連携する形でも小型店を出店していて、店舗面積は240平方メートルから590平方メートルとなっています。

小型店は大型店と比較すると、展示数・在庫数が少なくなるため、売上は小さくなりますが、ネットショップとの連携、タブレットの活用で売上を伸ばすことができます。店舗に展示していない商品、在庫がなかった商品についても、タブレットを使って商品の説明をしたり、ネットショップでの購入へと誘導することができます。大塚家具の店舗は幅広い商品を展示していることが当たり前でしたが、小型店とネットショップ、タブレットを活用すれば、幅広い商品の展示は必ずしも必要ではなくなっています。

運営コストの小さい小型店とネットショップ、タブレットを使って商品を販売する手法は、未来の小売業の店舗フォーマットになるのではないかと思います。ネット通販の市場規模が拡大していることに加え、少子高齢化の進行により、お客さんの減少、従業員の減少も起こるため、運営コストの大きい大型店を維持することは難しいです。郊外のショッピングモールは比較的集客が好調な印象もありますが、自動車を運転しない若者、高齢者が増加しているので、将来的には集客力が弱まる不安があります。

小型店とネットショップ、タブレットを活用している小売業は、大塚家具以外にも、ニトリ、日本トイザらスがあります。ニトリの出店戦略は郊外の大型店、日本トイザらスの出店戦略は郊外の商業施設内でしたが、ネット通販の拡大、自動車を運転しない人の増加を受け、新しいお客さんの獲得が見込める都市部に小型店を増やそうとしています。店舗が小型化すれば出店できるエリアが増え、スクラップビルドもやりやすくなるので、人口減少によって商圏が変化するリスクに対しても柔軟に対応することができます。

運営コストの小さい小型店で、ネットショップ、タブレットを使って、効率よく商品を販売することができれば、従来の店舗よりも高収益の店舗になれる可能性があります。自分が欲しい商品が在庫切れだった場合、注文をせずに帰るお客さんも多いため、小売業には在庫切れによる機会損失が存在しています。商品の在庫切れに対して、タブレットで素早く注文処理を行う、または、ネットショップへと誘導すれば、注文をしてくれるお客さんもいるなので、小売業はこれまで逃していて売上を確保できます。

運営コストの大きな大型店は収益性の悪化の問題を抱えていますが、大型店を多く持つ小売業ほど、小型店の活用で収益性を高めるチャンスがあります。多くの商品・在庫を持てることは大型店の強みですが、ネットショップで便利に買い物ができる時代においては、お客さんとの距離の遠さが弱点になり、集客力が落ちる要因になっています。大型店で商品を販売してきた小売業は、運営コストの小さい小型店を増やすことで、お客さんとの距離を縮め、ネットショップ、タブレットの活用で売上を伸ばせます。

お客さんとの接点を増やすため中古品の家具の買取・販売を開始

大塚家具は2016年9月より、中古品の買取・販売を行うリユース事業を開始していて、新品を販売してきた小売業がリユース事業を始めるのは新しい動きです。大塚家具のリユース事業は、買い取った家具にクリーニング、修繕、加工を施して付加価値を加え、お客さんに販売する仕組みで、従来の中古品の売買とは少し違いがあります。以前は中古品の売買を嫌うお客さんが多かったのですが、最近はシェアリングエコノミーの概念も知られるようになり、中古品の売買が活発に行われるようになっています。

大塚家具のリユース品の売上高の詳細データはありませんが、決算説明資料のグラフから判断すると、2016年12月期は100~120百万円ほど、2017年12月期は約350~370百万円ほどです。家具を購入する場合、現在使っている家具を処分しますが、古い家具を買い取ってもらえれば、お客さんは新しい家具を購入しやすくなります。中古品を買い取ってもらいたいお客さん、中古品を購入したいお客さんが存在しているため、リユース品の売上高は伸びていて、大塚家具のリユース事業は好調なスタートを切っています。

インターネットを通じて日本全国の人々が繋がったことで、中古品の売買が簡単にできるようになり、フリマアプリ「メルカリ」で中古品を売買する人が増えています。フリマアプリ「メルカリ」のGMV(総流通総額)は3,468億円(2018年6月期)、前期からの増加率は48.1%と高く、若い世代を中心に中古品の売買が人気になっています。フリマアプリ「メルカリ」は、大型の家具・家電の配送サービス「大型らくらくメルカリ便」を提供していて、大型の家具・家電の中古品売買もこれから拡大していきそうです。

新品を販売している小売業の立場からすると、フリマアプリ「メルカリ」は新品の販売個数を減らすことに繋がるため、小売業の業績に影響を与えます。若い世代のお客さんはインターネットで欲しい商品の情報収集を行い、ネットショップ、フリマアプリ「メルカリ」の商品をチェックした後、最後に実店舗の商品をチェックするようになります。ネットショップは実店舗の売上を減らしていますが、フリマアプリ「メルカリ」にも同様の効果があるため、実店舗の売上を伸ばすことはさらに難しくなります。

新品を販売してきた大塚家具がリユース事業を開始したことは、大きな注目を集めましたが、大塚家具のようにリユース事業を始める小売業は今後も出てくると思います。中古品を購入する人が増えれば、実店舗で新品が売れにくくなるため、自社で中古品の売買を行う事業を運営しなければ、お客さんとの接点が減少します。フリマアプリ「メルカリ」で中古品を購入する人は、多くのカテゴリーの商品を中古品で購入するようになるので、新品の販売個数の減少も多くのカテゴリーに広がっていきます。

フリマアプリ「メルカリ」の影響を特に大きく受けるのは、売上総利益率の高い、高付加価値のプライベートブランドを販売している製造小売業です。高付加価値のプライベートブランドは、競合店の商品と差別化することができ、ネットショップの影響も小さいため、高付加価値のプライベートブランドを持つ製造小売業は高い営業利益率を確保しています。人気のある商品ほど中古品の売買が活発に行われるので、フリマアプリ「メルカリ」が製造小売業に与える影響は小さくないと考えられます。