食品スーパーは売上総利益率の高い弁当・惣菜の販売を強化することで利益を増やせる

食品スーパーは売上総利益率の高い弁当・惣菜の販売を強化することで利益を増やせる

食品スーパーの業績は小売業の中でも堅調な方ですが、コンビニとの競争に加え、ドラッグストア、ネットショップも食品の販売を強化しています。生鮮食品、日配食品、加工食品の価格競争が激しくなる一方、お客さんのライフスタイルの変化・多様化によって、中食需要が拡大していて、惣菜・弁当の売上高を伸ばすチャンスを迎えています。惣菜・弁当はお客さんの需要が増えていることに加え、売上総利益率が高く、競合店と差別化できる商品でもあるため、食品スーパーにとって惣菜・弁当の重要性が増しています。

小売業では少子高齢化の進行、ネット通販の拡大の影響を受けており、昔のような大型店の運営は難しく、小型店とネットショップを使って売上を伸ばそうとする企業が増えています。将来的に食品スーパーの店舗が小型化すると、弁当・惣菜の品揃えが増え、生鮮食品、日配食品、加工食品の品揃えは減る可能性があります。食品スーパーで弁当・惣菜を買うついでに、ネットショップで注文した日用品、雑貨などの生活用品を受け取ることができれば、若い世代のお客さんを取り込むことができると思います。

女性の社会進出や単身世帯の増加により中食市場は安定的に拡大

中食市場は昔から拡大すると言われてきましたが、ここ数年は、店舗で買い物をしていても、データを見ても、中食市場の拡大が実感できるようになっています。日本惣菜協会が2018年5月に発表した資料によると、2017年の中食の市場規模は10兆550億円(前年比2.2%増)で、初めて10兆円を突破しています。業態別ではコンビニと食品スーパーが好調で、売上高の増加率はコンビニは3.7%増、食品スーパーは3.1%増、中食市場に占める売上高の構成比は、コンビニは32.1%、食品スーパーは26.1%です。

コンビニで販売している惣菜は、個人がおやつや間食で食べる商品が多いですが、最近は家族が夕食のおかずで食べる商品を強化しています。セブンイレブンは2018年6月1日~16日の間、金曜日・土曜日限定で一度に同じ揚げ物・フランクを2個買うと、2個目が半額となるセールを実施していて、家族向けの販売数量を増やすキャンペーンを行っています。これまで、コンビニと食品スーパーの惣菜は競合だとは考えられていませんでしたが、コンビニの惣菜は食品スーパーと同じ中食需要を取り込もうとしています。

近年、中食市場の拡大が続いている理由は、日本の社会の構造変化により、お客さんのライフスタイルの変化・多様化が起こっているためです。女性の社会進出が進み、仕事を持つ女性の数が増えていますが、仕事や子育てが忙しくて料理に時間を掛けられない、掛けたくない人は、料理の負担を減らすために弁当・惣菜を購入する回数が増えます。また、若い世代の晩婚化・非婚化、少子高齢化の進行により、単身世帯の数が増加していて、積極的に料理をしたくない人も、弁当・惣菜を購入する回数が増えます。

仕事を持つ女性の増加、単身世帯の増加は今後も続いていくと予想されているので、弁当・惣菜を購入する人も増え、中食市場も順調に拡大していきます。結婚の有無、子供の有無、家族形態によりお客さんのライフスタイルは多様化していて、多様化したニーズに対応した弁当・惣菜の品揃えが必要になっています。弁当・惣菜を購入する回数が増える家族のお客さんに対しては、飽きが来ないよう定期的に新商品の開発が求められますし、食の細い高齢者のお客さん対しては、食べやすい少量の商品が求められます。

中食市場が安定的に拡大している事実は、全体的な流れとして、生鮮食品を購入して料理をする人が減少していくことを意味しています。食品スーパーの決算書を見ていると、生鮮食品、日配食品、加工食品・惣菜のすべてが好調に推移している印象ですが、これは商品の値下げを行っているため、販売数量が増加しているのではないかと推測されます。弁当・惣菜と生鮮食品が同時に伸びる状況が長く続くとは考えにくく、このまま中食市場の拡大が続いていけば、将来的には生鮮食品の売上高は減少する可能性が高いです。

食材・調味料・レシピがセットになったミールキットが人気になっていて、料理の時間を節約したい女性の購入が増えています。弁当・惣菜を買うことは家事の手抜きだと考え、罪悪感を感じる女性もいるそうで、ミールキットは自分で調理をする点も人気の理由の一つとのことです。ミールキットは生鮮食品と弁当・惣菜の中間にあるような商品で、食品スーパーがお客さんの時短と調理をしたいニーズに応えるために、販売している生鮮食品をミールキット化するというのはあるかもしれません。

弁当・惣菜は売上総利益率の高さが魅力で店舗の集客力にも影響

弁当・惣菜を求めるお客さんが増えていることは、食品スーパーにとって売上を伸ばす機会ですが、弁当・惣菜は一般的に売上総利益率が高いことも利点です。スーパーマーケット「ライフ」を運営するライフコーポレーションの2018年3月期の決算資料によると、食品部門全体の売上総利益率は28.4%であるのに対して、惣菜部門の売上総利益率は52.5%もあります。弁当・惣菜はお客さんの需要が伸びているだけでなく、売上総利益への貢献も大きいため、食品スーパーにとっては最も売上を伸ばしたい商品だと言えます。

生鮮食品、日配食品、加工食品は仕入れた商品をそのまま販売するため、商品の付加価値で差別化することが難しく、価格競争になることが多いです。一方、弁当・惣菜はコストを掛けて調理を行っているため、調理をした分の付加価値が生まれ、調理をしていない商品のような激しい価格競争は起こりにくいです。お客さんは弁当・惣菜の付加価値を認め、各店舗が販売している弁当・惣菜の味・容量の差をしっかりと認識してくれるので、商品の付加価値で差別化ができ、高い価格で販売することができます。

生鮮食品は食品スーパーがお客さんに品質をアピールできる商品だと考えられていて、何となく生鮮食品の品質が食品スーパーの選択に影響を与えているようなイメージがあります。しかし、多くのお客さんは品質のよくない生鮮食品は判別できても、どの生鮮食品の品質がいいのかを見たり、触ったり、実際に食べてみても評価することは難しいのではないでしょうか。お客さんが買い物をする食品スーパーを決めるのは価格の安さで、生鮮食品の品質で食品スーパーを選んでいる人はそれほど多くはないと思います。

自分で調理する生鮮食品と比べて、食品スーパーが調理する弁当・惣菜は品質の評価がしやすく、店舗によって明確に違いがあります。唐揚げが美味しい食品スーパー、コロッケが安い食品スーパー、弁当の容量が多い食品スーパーといった感じでお客さんに評価され、弁当・惣菜の好みが食品スーパーを選ぶ理由になります。今後、生鮮食品を購入して自分で調理する人が減り、弁当・惣菜を購入する人が増えて来ると、生鮮食品の品質よりも、弁当・惣菜の品質が食品スーパーの集客力に影響します。

お客さんに弁当・惣菜の品質で選ばれる食品スーパーになることは、弁当・惣菜の売上が伸びる以外のメリットもあります。生鮮食品、日配食品、加工食品は価格競争に巻き込まれることが多いですが、お客さんの目的が好きな弁当・惣菜を買うことになると、生鮮食品、日配食品、加工食品はそれほど価格が安くなくても、弁当・惣菜のついでに買ってもらえるチャンスがあります。共働きの世帯は時間がない一方、所得が増えている世帯もあるので、価格に厳しくないお客さんを取り込めれば収益性が改善されます。

中食市場が安定的に拡大している状況においては、弁当・惣菜でどれだけお客さんの人気を集められるかというのは、食品スーパーとしての総合力を評価する指標になります。弁当・惣菜の価格が安く、容量が多ければ、優れた調達力があることになりますし、新しい弁当・惣菜が次々に新登場すれば、優れた企画力・開発力があることになります。弁当・惣菜に魅力があり、売り場に活気と清潔感があれば、お客さんが店舗に持つイメージもよくなり、弁当・惣菜の以外の部分でも店舗の評価が高まります。

食品を販売する企業が増えたことで弁当・惣菜の重要性が増す

コンビニはずっと食品スーパーの競合ですが、最近はドラッグストアが食品の販売を強化していて、コンビニとともに食品スーパーの競合になっています。食品の販売を強化しているドラッグストアでは、九州に店舗を多く持つコスモス薬品が有名で、コスモス薬品の2018年5月期の一般食品の売上高は313,470百万円(前期比12.1%増)と大きく増加しています。ドラッグストアは日配食品、加工食品を低価格で販売していて、店舗数も急速に増えているため、近所で手軽に食品が買える店舗として地位を固めています。

コンビニ、ドラッグストアに続いて、ネットショップも食品スーパーの競合になることは確実で、食品のネット通販サイトでは、Amazon、LOHACO、オイシックスがよく知られています。ネットショップは生鮮食品の販売に適していないと考えられていますが、食材・調味料・レシピがセットになったミールキットは人気が高まっています。Amazonは2017年4月21日より、東京の一部地域で生鮮食品・日用品を販売する「Amazonフレッシュ」を開始しており、今後も品揃えとサービスは改善されていきます。

コンビニ、ドラッグストア、ネットショップとの競争が激しくなると、食品スーパーも競合の価格に合わせなければ商品が売れなくなるため、食品スーパーの売上総利益率は低くなります。ドラッグストアの日配食品、加工食品の価格は、食品スーパーよりも既に安い印象で、今後も売上高の規模を拡大させていくので、さらに低価格で販売されるようになります。イオン、イズミ、西友などは食品の値下げを数回に分けて実施していて、購入点数を増やすことによって、食品の売上高を伸ばそうとしています。

日配食品、加工食品では価格競争が激しくなり、生鮮食品は料理をしない人が増えるので需要が減るので、食品スーパーにとっては弁当・惣菜がさらに重要になります。弁当・惣菜は品質で差別化することが可能で、コンビニとの競合はありますが、ドラッグストア、ネットショップとの競争はまだ先のことでどうなるかは分かりません。現在、消費の二極化が進んでいるため、低価格の商品と高価格の商品の両方が売れていて、弁当・惣菜は他の食品と比べて、高価格で販売できるチャンスが大きい商品でもあります。

ドラッグストアが販売している食品は、日配食品、加工食品が中心ですが、生鮮食品、弁当・惣菜を強化しようとする動きがあります。イオングループのドラッグストアのウェルシア薬局では、一部の店舗で同じイオングループのオリジン東秀の弁当を販売していて、北海道の人気コンビニのセイコーマートからも弁当・惣菜を調達して販売しています。セイコーマートの弁当・惣菜は美味しいとの意見が多いため、ウェルシア薬局はセイコーマートの弁当・惣菜を販売することで、店舗の集客力を高めることができます。

お客さんがドラッグストアが販売する弁当・惣菜をどのように評価するのかは、食品スーパーは気になるところです。コンビニの弁当・惣菜は近くの店舗で買えて美味しけど高い、食品スーパーの弁当・惣菜は安く買えて美味しいけど店舗が遠いといった感じで、ドラッグストアの弁当・惣菜はコンビニと食品スーパーの中間のポジションを獲得できるかもしれません。弁当・惣菜の味も価格もほどほどでよいお客さんは、食品、日用品、雑貨と弁当・惣菜がドラッグストアの一つの店舗で買えれば喜ぶと思います。

食品スーパーの店舗は小型化して商品の保管・配送の機能を持つ

小売業を取り巻く環境は常に変化していますが、現在の環境変化で特に注目しなければならないものは、少子高齢化の進行、ネット通販の拡大の2つではないでしょうか。少子高齢化の進行は小売業の客数の減少、アルバイト・パートの採用難の問題を引き起こしていて、大型店で商品を販売してきた歴史の長い小売業ほど大きな影響が出ています。若い世代のお客さんは便利なネットショップでの買い物を好んでいて、ネットショップで買い物をする人が増えると、実店舗で買い物をする人は減少してしまいます。

少子高齢化の進行、ネット通販の拡大の影響を考慮して、一部の小売業では大型店ではなく、相対的に運営が簡単でリスクの小さな小型店の出店数を増やそうとしています。少子高齢化の進行は、小売業で買い物をするお客さん、小売業で働く従業員の減少を意味しているため、昔のような大型店を運営することはますます難しくなっていきます。小型店は大型店のようにたくさんの商品を持つことはできませんが、ネットショップと連携した買い物方法を提供することによって、売り場面積の小ささを補うことができます。

少子高齢化の進行、ネット通販の拡大による影響は、小売業の中でも業種によって程度の差がありますが、食品スーパーには今のところ大きな影響は出ていないように見えます。食品はネット通販の拡大スピードが遅く、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2017年度の食品のEC化率は2.41%と他の商品よりもかなり低いです。また、食品は消耗品であるため、価格を下げることで販売数量を増やすことができるので、少子高齢化の進行で客数が減少する中でも、売上高を伸ばせる余地はあります。

小売業の他の業種と比較すると、食品スーパーは少子高齢化の進行、ネット通販の拡大による影響をそれほど感じませんが、小売業の他の業種と同じように店舗は小型化していくのではないかと思います。食品のネット通販の拡大スピードは遅いですが、ドラッグストアやコンビニとの競争は激しく、アルバイト・パートの採用が難しいこともあります。食品スーパーも小売業の他の業種と同様に、運営が簡単でリスクの小さな小型店を出店して、ネットショップと連携して商品を販売する方法はうまく機能するはずです。

将来的に食品スーパーの店舗が現在よりも小型化すれば、全体の品揃えも減ることになり、各商品の競争環境に応じて品揃えの増減が行なわれます。ライフスタイルの変化・多様化により需要が増加している弁当・惣菜の品揃えは増え、相対的に需要がなくなる生鮮食品の品揃えは減る可能性が高いです。日配食品、加工食品はドラッグストアとネットショップが価格競争力を強めているため、お客さんが食品スーパーで日配食品、加工食品を買わなくなれば、日配食品、加工食品の売り場も小さくなるかもしれません。

小売業の店舗はお客さんに買い物をしてもらう場所ですが、今後は買い物場所としての機能だけではなく、商品を保管する場所、配達をする場所としての機能も持つようになります。ネットショップを使って買い物をする若い世代は、食品スーパーに生鮮食品や弁当・惣菜を買いに来たついでに、ネットショップで注文した日用品や雑貨を一緒に受け取れると便利です。店舗に買い物に来れない高齢者が増えれば、食品スーパーからも配送を行うようになるので、食品以外の様々な商品を保管する倉庫機能が必要になります。