人手不足を背景に小売業で導入が進むセルフレジの利用動向調査

人手不足を背景に小売業で導入が進むセルフレジの利用動向調査

市場調査・マーケティングリサーチを行っているインテージが、セルフレジの利用動向を調査したレポートがあります。人手不足の解消、レジの待ち時間の短縮を実現したい小売業は、スーパーマーケットを中心にセルフレジを導入する店舗が増えており、実際にセルフレジを利用した経験があるお客さんも増えています。

小売業がセルフレジの利用を定着させるには、セルフレジを利用する際に発生している、お客さん同士でプレッシャーを掛け合っている問題を解決する必要があります。また、小売業がセルフレジを導入することについて、お客さんのニーズに対応する店舗、意欲のある店舗として、ポジティブに評価する意見もあります。

セルフレジの利用経験は性別と年齢によって大きな違いがある

セルフレジの利用状況を男性と女性で比べてみると、すべての年代で男性よりも女性の方がセルフレジを利用した経験が多いです。男性よりも女性の方が買い物をする機会が多いので、女性の方がセルフレジの利用経験が多いことは順当な結果です。

男性は「知っているが使ったことがない」と回答している割合が女性よりも多く、特に中高年の世代が多いです。よく分からないものは使いたくないという心理ですが、小売業にとっては中高年の男性にセルフレジの利用を促すことが課題になりそうです。

年代別のセルフレジの利用状況は、男女ともに若い年代ほど、セルフレジを利用した経験が多くなっています。若い世代は新しいテクノロジーを利用することに対して抵抗が小さいため、不安や失敗を恐れずにセルフレジを利用しているのではないでしょうか。

女性はすべての年代で比較的多くの人がセルフレジの利用経験があるのに対し、男性は中高年はもちろん、若い世代でも利用経験がない人が2割近くいます。小売業の立場から、セルフレジの利用を促進するためには、年代ではなく性別が重要だと言えます。

地域別のセルフレジの利用状況を見ると、北日本でセルフレジの利用経験者が多く、南に行くにつれて利用経験者が少なくなっています。セルフレジに対するお客さんの認識に地域差があるとは考えにくいので、地域ごとでセルフレジの利用状況に差がある点は、セルフレジの設置状況の違いだと考えてよいのではないかと思います。

人手不足でアルバイト・パートの採用が難しくなっているため、レジの人員を確保できない店舗は、お客さんにセルフレジの利用を促さなければなりません。地方では人口の減少ペースが早いですから、セルフレジの導入が加速する要因になります。

セルフレジは主にスーパーマーケットで導入・利用されている

どこでセルフレジを利用したかという問いに対しては、スーパーマーケット(90.4%)が突出して多いです。2位以下の回答は、CD・DVDレンタルショップ(11.0%)、衣料品店・アパレルショップ(9.7%)、ディスカウントストア(6.8%)となっています。

スーパーマーケットの回答が突出している理由については、スーパーマーケットはセルフレジを設置している店舗が多く、買い物をする機会も多いことが考えられます。スーパーマーケットでの買い物は、他の店舗での買い物と比較して購入点数が多く、レジ待ちの機会も多いため、店舗側もお客さん側もセルフレジを利用する動機があります。

普段利用しているスーパーマーケットにセルフレジが設置されている場合、セルフレジの利用状況は条件によって特徴があります。店舗で買い物をする頻度が多く、平均買い物金額が少ないほど、セルフレジを利用する人が多くなっています。

スーパーマーケットを利用する頻度が多いほど、店舗での買い物に慣れてくるため、セルフレジを利用することへの抵抗感も小さくなります。また、買い物金額が安いほどレジに並ぶことが億劫に感じるので、セルフレジで素早く支払いを済ましたくなります。

セルフレジには人手不足によるレジ人員の削減、レジの待ち時間の短縮による買い物体験の改善が期待されています。こうした効果はすべての小売業で見込まれるものですが、スーパーマーケットは特にセルフレジの導入効果が大きいと思います。

スーパーマーケットは客数、購入点数ともに多いため、レジに多くの人員が必要になり、お客さんがレジ待ちをするケースも多くなります。スーパーマーケットでセルフレジで支払いをすることが普通になれば、人件費を削減できることに加え、レジ待ち時間を短縮して買い物体験を改善することで、お客さんの満足度アップにも繋がります。

お客さんがセルフレジを利用する目的と不満を感じている点

お客さんがセルフレジを利用する理由は、対面式のレジよりも空いているから(51.0%)、自分のペースで会計できるから(41.7%)、対面式のレジよりも早く会計できるから(37.1%)、といったものが上位です。セルフレジはお客さんに負担がかかるものですが、自分でレジ作業をしてでも、早く支払いを済ませたいというニーズがあります。

対面式のレジに行列ができている時に、セルフレジが空いていると、セルフレジを使おうかと考えるお客さんもいます。自分のペースでできるからという理由が2位に来ていて、セルフレジを利用している自分の後ろに別のお客さんが待っているような状況がなければ、お客さんはさらに快適にセルフレジを利用することができます。

セルフレジについて不満に感じている点は、うまくスキャンできないことがある(33.1%)、操作に時間がかかっている人がいる(26.6%)、バーコードがない商品が面倒(20.7%)、といったものが上位です。セルフレジの操作方法の不満点は、問題を解決することで、セルフレジの利用者を増やすことができそうです。

操作に時間がかかっている人がいるという意見については、お客さん同士でプレッシャーを掛けたり、掛けられたりしていることになります。セルフレジを利用したい気持ちはあるものの、他の利用者に迷惑をかけるのが怖いので控えている人は多そうなので、お客さん同士のプレッシャーを小さくする施策が欲しいところです。

小売業の立場から、セルフレジの利用者を増やすためには、1人でも多くのお客さんにまずは使ってもらうことが重要ではないかと思います。セルフレジの利用経験者が多ければ多いほど、セルフレジの利用がスムーズに行われることが期待できます。

店舗で買い物をしているお客さんはリピーターがほとんどですから、今後も長期にわたって買い物をしてくれます。セルフレジがもたらすメリットを考えると、時間や費用を掛けてでも、お客さんにセルフレジの利用方法を丁寧に説明する価値はあります。

セルフレジの導入は店舗のイメージアップに繋がる効果もある

セルフレジ設置によるお店の印象の変化に関しては、とても良くなった(4.8%)、良くなった(33.0%)、どちらともいえない(59.9%)、悪くなった(2.0%)、とても悪くなった(0.4%)との回答があります。約4割近くの回答者がセルフレジの導入をポジティブに評価していて、セルフレジはレジ人員の削減、待ち時間の短縮といった確実な効果だけではなく、お店のイメージを高める効果もあることになります。

セルフレジの導入をポジティブに評価する理由としては、お客さんへの配慮、お店としての意欲、お客さんのニーズに応える姿勢などが挙げられています。買い物に時間を掛けたくないお客さんにとっては、レジの待ち時間を短縮するセルフレジはありがたいものであり、そうした設備投資を積極的に行う店舗は良い店舗だと評価されます。

安く便利に買い物をすることができるネットショップが普及したことで、実店舗に対するお客さんの見方も厳しくなっています。実店舗の価格はネットショップの価格と常に比較されますし、実店舗で欲しい商品が在庫切れになっていれば、次の商品が入荷するのを待つのではなく、ネットショップで注文をするお客さんも出てきます。

お客さんの立場から厳しく見ると、オペレーションの効率が悪い店舗は、それだけ商品の価格に無駄なコストが乗っていると考えることもできます。セルフレジの導入など、店舗効率化への投資をお客さんにアピールすることは、商品の価格の信頼性アップにも繋がり、粗利益率を改善するためにも良い効果があります。

小売業の売上の多くが中高年のお客さんで成り立っているという事実は、セルフレジの導入が進まない要因の一つではないかと考えられます。中高年のお客さんは対面式のレジでの支払いに慣れており、レジで並んで待つことへの耐性もあるので、セルフレジを利用することへのモチベーションはそれほど高くはありません。

若い世代のお客さんのセルフレジへのニーズは感じるものの、中高年のお客さんが多いため、セルフレジの導入に消極的な小売業もあると思います。店舗の生産性を高めるという観点からすると、すべてのお客さんにセルフレジを利用してもらいたいところですが、実際にそのような状況が実現できるのかどうかは分かりません。