大手ネット通販3社の売上高の合計が百貨店の売上高を追い越す

大手ネット通販3社の売上高の合計が百貨店の売上高を追い越す

Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングの大手ネット通販3社の2017年の売上高の合計が、日本百貨店協会が発表した2017年の全国百貨店の売上高を追い越したとの記事があります。実店舗からネットショップへとお客さんの買い物場所が移動している中で、大手ネット通販が百貨店を追い越すことは象徴的な出来事だと言えます。

百貨店は高齢者世代のお客さん、外国人観光客のお客さんに支えられていますが、若い世代のお客さんはうまく取り込めていません。人口の減少が続く地方では百貨店の閉店が続いていて、買い物場所がなくなった地域のお客さんはネットショップで買い物をするようになるため、ネットショップとの差は広がって行きそうです。

2017年の大手ネット通販3社の売上高の合計は6兆7,000億円

Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングの大手ネット通販3社の2017年の売上高の合計は、前年比13%増の約6兆7,000億円になったとのことです。ネットショップが始まってから20年ほど経ちますが、ここ数年で若い世代、高齢者世代でスマートフォンの保有者が増えたことで、ネットショップの成長スピードが加速しています。

実店舗で商品を販売してきた従来の小売業も、複数のネットモールへ出店したり、自社ECを始めています。ネットショップの買い物体験が優れているため、お客さんの買い物場所が実店舗からネットショップへと徐々に移行しつつあります。

ネットショッピングに関するアンケートを見ると、お客さんがネットショップで買い物をする理由は利便性です。豊富な商品から選ぶことができる、いつでも好きな時間に買い物ができる、自宅から買い物ができる、重たい商品を自宅に配達してもらえる、レコメンドによって買い物の時間が節約できるなど、複数の小さな利便性があり、それらがまとまることで大きな利便性を感じるようになっています。

単身世帯の増加、女性の社会進出といった、日本の社会環境の変化により、ネットショップの成長が続くことは確実視されています。これまでは書籍、CD・DVD・ゲームなど、どこで購入しても同じ商品、家電、ファッションなど信頼できる有名ブランドの商品がネットショップで購入されてきましたが、今後は、食品、日用品など、毎日消費する生活関連商品もネットショップで購入されるようになります。

ネットショップで買い物をするお客さんが増えたことで、従来の買い物場所であった実店舗が苦しくなっています。毎年、地方の百貨店が閉店する状況になっていますが、百貨店の閉店により、買い物場所を失ってしまうお客さんが現れています。

これまで買い物をしてきた実店舗を失い、代替の実店舗を見つけられないお客さんは、ネットショップで買い物をするようになります。ネットショップは実店舗からお客さんを奪っていると言えますが、実店舗が閉店するようになると、実店舗で買い物をしていたお客さんを取り込むことができ、さらに売上を伸ばすことができます。

2017年の百貨店の売上高は衣料品が不調で約5兆9,532億円

日本百貨店協会が発表したデータによると、全国百貨店の2017年の売上高は5,953,256,495千円(前年比0.4%減)となっています。百貨店の売上高は十数年に渡って減少傾向にあり、売上高の前年割れは普通のことになっています。

衣料品は百貨店の売上高の3割近くを占める重要カテゴリで、2017年の売上高は1,839,798,526千円(前年比2.8%減)となっています。衣料品の売上高を回復させたいところですが、ユニクロ、しまむらといった専門店に加え、Amazon、ZOZOTOWNなどのネットショップも登場していて、対応はますます難しくなっています。

百貨店の中でも数少ない好調なカテゴリは、売上高512,278,404千円(前年比16.7%増)の化粧品、売上高347,409,656千円(前年比3.0%増)の美術・宝飾・貴金属の2つです。化粧品は中国人観光客の女性が爆買いしていることがよく知られていて、美術・宝飾・貴金属については、国内外の富裕層が購入しているようです。

百貨店は売上が好調な化粧品の売り場を拡大しようとしていて、売上が不調な衣料品の売り場は縮小される流れになっています。百貨店にとって衣料品が重要であることは事実ですが、中国人観光客の女性に化粧品を販売した方が確実に売上が伸ばせるため、成果の出やすい化粧品への投資が増えるのは仕方がないことかもしれません。

百貨店の衣料品はアパレル企業が製造・販売しているもので、百貨店のオリジナル商品ではありません。百貨店がお客さんに提供している付加価値は、衣料品が買える場所であることで、衣料品そのものの価値を作り出しているわけではありません。

お客さんは安くてそこそこの品質の洋服を買う場合は、ユニクロやしまむらを選び、好きなブランドの洋服を買う場合は、価格や買い物体験で優れているネットショップを選んでいます。百貨店が衣料品の売上を伸ばすには、専門店よりも価値のある洋服を作る、ネットショップよりも優れた買い物体験を提供するといったことが必要になりますが、どちらも実現することは難しく、短期間で解決策を見つけることはできません。

百貨店の売上は高齢者世代と外国人観光客のお客さんに依存

百貨店は小売業の中でも歴史が長く、買い物をしているお客さんを観察していると、高齢者のお客さんが多くなっています。高齢者のお客さんは百貨店の商品、買い物体験に憧れを持っていて、高級品を購入する場所として百貨店を評価しています。

現在、40歳前後の人は、子供の頃に家族や親戚に連れられて、百貨店で買い物をした経験があるのではないかと思います。子供の頃に百貨店に憧れを持った世代の人は、百貨店の価値を理解していて、大人になってからも百貨店で買い物をしてくれます。

現在、20歳前後の人は、子供の頃に百貨店で買い物をした経験が少ない人も多く、中高年世代よりも百貨店への憧れは小さいです。昔は買い物場所と言えば、百貨店、総合スーパー、食品スーパーの3ヶ所くらいしかありませんでしたが、現在はこれに加え、各種専門店、ショッピングモール、ネットショップなど、買い物場所は多様になっていて、若い世代のお客さんは価格と品質のバランスに優れている専門店を好んでいます。

百貨店への憧れが大きくない若い世代のお客さんは、年齢を重ねて金銭的に余裕が出てきても、百貨店で買い物をするようになるとは考えにくいです。若い世代は中高年の世代と比較して人口そのものが少ないため、百貨店への憧れのなさと合わせて、将来的に百貨店の売上に大きなマイナスの影響が与える可能性があります。

ネットショップの脅威が大きくなっていると言われる中でも、百貨店を含めて、従来の小売業の売上高は堅調に推移しています。実店舗で買い物をすることが当たり前の中高年世代の人口が多く、経済力もあるため、若い世代のお客さんを中心にネットショップ利用者が増えていても、実店舗の売上高が急減するようなことは起こりません。

百貨店も若い世代のお客さんを取り込みたいですが、若い世代のお客さんが望む品揃え、買い物体験を提供することは難しいです。簡単に買い物をしてくれる高齢者世代のお客さん、外国人観光客のお客さんが中心の店作りになるので、若い世代のお客さんはますます買い物がしにくくなり、専門店やネットショップを利用するようになります。

人口の減少が続く日本では地方の百貨店の閉鎖は避けられない

百貨店の店舗は減少が続いていて、1999年に311店舗あったものが、現在は約230店舗程度まで減少しているとのことです。小売業のニュースを見ていても、ここ最近になって、百貨店の閉店のニュースが増加しているような印象があります。

百貨店と総合スーパーは小売業の中でも閉店が増えている業種で、店舗が閉店することで、買い物場所がなくなってしまう人が出てきます。買い物をしていた実店舗が閉店することは、ネットショップへと買い物場所を本格的に移すきっかけになります。

アパレル企業のストライプインターナショナルは、2018年2月15日にECデパートメント「ストライプデパートメント」をオープンしています。「ストライプデパートメント」は百貨店のない地域、百貨店が閉店してしまった地域のお客さんをターゲットにしていて、買い物場所を失ってしまったお客さんの受け皿になろうとしています。

百貨店は赤字が理由で閉店しますが、赤字の店舗でも売上の規模は大きく、十数億円、数十億円の売上がある店舗も閉店しています。ネットショップはこうした地域のお客さんを狙うことで、実店舗の売上を取り込んで成長することができます。

百貨店は都市部の店舗は外国人観光客の増加によって売上を伸ばしていて、地方の店舗の不調を補う形になっています。今後、地方の店舗の売上が大きく伸びるような期待はなく、地方の店舗が閉店する流れは続いて行くのではないかと思います。

実店舗が閉店して、閉店した地域のお客さんがネットショップを利用するようになることは、人口が減少する日本で避けられない変化です。商圏内でいくつかの店舗が閉店すれば、同じ商圏内にある店舗にお客さんが分散され、売り場効率の改善効果もあるので、一定数の店舗の閉店はポジティブに考えることができます。