ZOZOTOWNの影響力が強まる中でアパレル企業は自社ECを強化

ZOZOTOWNの影響力が強まる中でアパレル企業は自社ECを強化

スタートトゥデイが運営するZOZOTOWNの商品取扱高が拡大する中で、難しい対応を迫られるアパレル企業についての記事があります。アパレル企業はZOZOTOWNに出店することで売上を伸ばしていますが、手数料のアップ、クーポンによる値下げ競争、顧客データが取れないなど、ZOZOTOWNへ依存することの問題もあります。

アパレル企業にとって自社ECを強化することは重要ですが、エンジニアを採用することは難しく、自社ECの売上を大きく伸ばしている企業は少ないです。お客さんがZOZOTOWNでの買い物を好んでいること、アパレル企業のエンジニア採用が難しいことを考慮すると、ZOZOTOWNへの依存度を下げることは難しそうです。

優れた買い物体験を提供するZOZOTOWNは高い成長率が続く

スタートトゥデイの2017年3月期の決算によると、商品取扱高は212,090百万円(前年比33.0%増)と大きく伸びています。ZOZOTOWNに出店している店舗数は買取ショップ、受託ショップ合わせて954店舗で、毎年順調に店舗数が増加しています。

商品取扱高は2,000億円を越えており、ビジネスの規模は大きくなっているのですが、まだなお二桁台の伸びを維持しています。新規顧客を獲得するとともに、既存顧客の離脱も少ないので、お客さんを囲い込んで高い成長率を続けています。

お客さんがZOZOTOWNで買い物をする理由は、複数のブランドの商品を比較しながら選ぶことができて、1回の配達でまとめて届くことです。また、クーポンによるセールを常に行っているので、お客さんは欲しい商品をお得に買うことができます。

地方では百貨店の閉店、衣料品売り場の縮小が行われていて、オシャレな洋服を買うことが難しくなっている人も増えています。ファッションには興味があるものの、近くに洋服を販売しているお店が少ない環境にある人たちにとっては、複数のファッションブランドの洋服がまとめて買えるZOZOTOWNはありがたい存在です。

ネットショップは物理的な商圏がある実店舗とは異なり、お客さんとの関係が途切れることがありません。お客さんが日本全国を引っ越しして回ることがあったとしても、スマートフォンを使って、どこからでもZOZOTOWNで買い物をすることができます。

ZOZOTOWNで買い物をしているアクティブ会員の平均年齢は、男性が32.0歳、女性が33.2歳、全体が32.8歳となっています。現在の若いお客さんが、30年、40年と長期に渡ってZOZOTOWNで買い物を続けてくれることも十分に期待できます。

アパレル企業がZOZOTOWNに出店するメリット・デメリット

アパレル企業がZOZOTOWNに出店する目的は、ZOZOTOWNの集客力、優れた買い物体験によってもたらされる売上です。サイトの管理、物流をスタートトゥデイが代行してくれるので、自社ECよりも相対的に少ない人員で商品を販売できる利点もあります。

スタートトゥデイが儲かっているということは、ZOZOTOWNに出店しているアパレル企業も儲かっていると考えるのは妥当です。ただ、ZOZOTOWNの影響力が大きくなるに連れて、ZOZOTOWNへ過度に依存する状況を危惧する意見が出てきています。

ZOZOTOWNに出店するアパレル企業が心配する点の一つは、販売手数料の上昇によって収益性が悪化することです。ZOZOTOWNの販売手数料は公開されていませんが、手数料は上昇し続けているとされていて、現状は30%程度になっているとのことです。

ZOZOTOWNではクーポンによる値引き販売が積極的に行われていて、クーポンによる価格競争が激しくなれば、商品の販売価格を押し下げることに繋がります。お客さんがクーポンありきで商品を探すようになると、知名度のある人気ブランドであっても、クーポンを出さなければお客さんに商品を見てもらえなくなってしまいます。

アパレル企業の商品がZOZOTOWNで売れた場合、どんなお客さんが購入したのか、どんな商品と一緒に購入したのかなど、細かい販売データを取得できないことは問題になります。アパレル企業の売上全体に占めるZOZOTOWNの売上の割合が大きくなればなるほど、アパレル企業はお客さんのことが分からなくなってしまいます。

アパレル企業はお客さんが欲しがる新商品を開発したいですし、ZOZOTOWN以外の販路である、実店舗、自社ECでは、お客さんのニーズに合った買い物体験を提供したいです。ZOZOTOWNの売上が増え、顧客とのコミュニケーションが減少すると、新商品の開発、ZOZOTOWN以外の販路でのマーケティングに活動にマイナスの影響が出ます。

自社ECは重要な顧客接点ではあるがエンジニアの採用は難しい

アパレル企業を含めて、小売業のEC事業では、自社ECとAmazon、楽天、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWNなどのネットモールへの出店を分けて管理しています。ほとんどの小売業は自社ECをうまく運営することができておらず、外部のネットモールの売上が急増していて、EC事業に占める自社ECの割合は小さいことが多いです。

EC事業の売上を外部のネットモールに依存しすぎることは良くないので、自社ECの強化に取り組もうとする動きが出てきています。お客さんの買い物場所が実店舗からネットショップへと徐々にシフトしている中で、自社ECで買い物をしてもらえなければ、将来的に顧客接点を失ってしまう大きなリスクがあります。

アパレル企業の中でもベイクルーズは自社ECの売上(2017年度は前年比43%増)を伸ばしていて、EC事業に占める自社ECの売上は5割近くあります。自社ECを強化するためにはエンジニアの採用が不可欠ですが、ベイクルーズでは他社からの引き抜きや中途採用を行い、現在15人のエンジニアを自社で抱えているとのことです。

ベイクルーズが自社ECで行っていることは、店舗別の在庫情報を10秒ごとに更新、試着したよう商品の店舗での取り置き、おすすめ商品、近隣店舗の商品のレコメンドなどです。自社ECと実店舗を連携させ、優れた買い物体験を提供することで、売上を伸ばすだけでなく、お客さんとの関係を強化することもできます。

多くのアパレル企業が自社ECを強化したいと考えていますが、エンジニアを採用することはますます難しくなっています。十分な資金のある大手小売業のイオン、セブン&アイホールディングスでも、自社のECサイトを使った買い物体験を確立することができておらず、エンジニアの採用は大企業であっても簡単なことではありません。

小売業がデジタル化を迫られる中で、これまでに存在していなかった職種のエンジニアをどのように組織に組み入れるかは、小売業にとって新しい課題になります。店舗で働く従業員とエンジニアは、賃金だけではなく、仕事に対する考え方、ライフスタイルもまったく異なるもので、同じ組織の中で共存することはかなり難しそうです。

ZOZOTOWNへの依存度が高まる中でアパレル企業がすること

スタートトゥデイの業績は毎年安定して伸びていますが、今後もこの傾向は続く可能性が高いです。お客さんはZOZOTOWNの品揃え、価格、配達サービスといった総合的な買い物体験に満足しており、他のネットモールで買い物をする理由は見当たりません。

アパレル企業は自社ECを強化したいところですが、エンジニアの採用は難しく、自社ECを強化できるのは一部の大手アパレル企業だけです。多くのアパレル企業は自社ECを強化するよりも、ZOZOTOWNでの販売を伸ばす方へ注力するはずです。

ZOZOTOWNへの依存度が高まる中で、アパレル企業にできることは、お客さんが期待するものを確実に提供することではないでしょうか。シーズンごとに魅力的な新商品を開発する、魅力的なコーディネートの提案を行なうといったものです。

手数料のアップ、クーポンによる価格競争の中で利益を確保するためには、購入回数、購入点数を増やす必要があります。シーズンごとに魅力的な新商品があれば、お客さんは自社の商品を積極的に探してくれますし、魅力的なコーディネートの提案があれば、コーディネートをセットで購入してくれるので客単価が伸びます。

また、将来的には、実店舗は商品を販売する場所ではなく、ショールーム的な使われ方をするようになると思います。実店舗に買い物に来たお客さんを自社EC、あるいは、ZOZOTOWNなどのネットモールへと誘導する施策に取り組みたいです。

ネットショップで買い物ができるようになれば、お客さんは実店舗で急いで買い物をする必要はなくなります。アパレルスタッフの売り込みを嫌うお客さんは少なくありませんが、今後は無理な押し売りはさらに嫌われることになるため、実店舗では販売よりも体験を重視して、スムーズにネットへとお客さんを誘導したいところです。