BtoB事業・BtoC事業の両方で競合するアスクルとAmazon

BtoB事業・BtoC事業の両方で競合するアスクルとAmazon

アスクルは売上高が3,000億円を越える大手オンライン小売業ですが、対Amazonについて、アスクルの社長のインタビュー記事があります。アスクルはBtoB事業、AmazonはBtoC事業からスタートしましたが、それぞれ、BtoC事業、BtoB事業へと参入しており、両社はBtoB事業・BtoC事業の両方で競合する状況になっています。

BtoC事業において、アスクルは「LOHACO ECマーケティングラボ」を設立して、メーカとECマーケティングの共同研究を行っています。有名メーカーと共同で「LOHACO」のプライベートブランド、オリジナル商品を開発することができれば、Amazonと差別化する大きなポイントになるのではないかと思います。

アスクルとAmazonはともにBtoB事業・BtoC事業を行なう

アスクルは1997年よりBtoBのEC市場に参入していて、オンライン小売業としては長い歴史を持っています。アスクルの2017年5月期決算のデータによると、BtoB事業の売上高は2,919億円(前年比4.8%増)となっていて、売上高は年々増加しています。

また、アスクルは2012年にヤフーと資本業務提携を行い、食品、日用品を販売するBtoC事業の「LOHACO」をスタートさせています。「LOHACO」のコンセプトは「日常使いのEC」となっていて、2017年5月期決算のデータによると、「LOHACO」の売上高は390億円(前年比18.8%増)と高い成長率が続いています。

Amazonは日本を代表するオンライン小売業の一つで、取り扱いカテゴリの拡大を続けています。取り扱いカテゴリの拡大に合わせて、Amazonで購入できる商品数が増えるため、お客さんがAmazonを利用する回数がさらに多くなります。

AmazonはこれまでBtoC事業を行ってきましたが、2017年9月より、BtoC事業の「Amazon Business」を開始しています。「Amazon Business」の品揃えは約2億点で、割引のある法人価格、後払いの支払い方法、見積書のダウンロード、社内の購買システムとの連携など、法人、個人事業主が利用しやすいサービスになっています。

アスクルは最初にBtoB事業を行い、後にBtoC事業に参入、Amazonは最初にBtoC事業を行い、後にBtoB事業に参入しています。アスクルは売上高の規模は大きいものの、BtoB事業であるため消費者の知名度は低く、「LOHACO」はBtoC事業ではあるものの、始まったばかりで売上高の規模は小さく、Amazonほどの知名度はありません。

アスクルとAmazonは競合していますが、EC市場自体が安定的に拡大しているため、今後も両社の売上は伸びると思います。「LOHACO」はインターネット上の評判もよく、忙しい主婦が利用したり、お買い得商品を狙って買うなどの使われ方をしています。

「LOHACO」はメーカーとの共同研究でAmazonと差別化

お客さんがネットショップに期待することは、有名ブランドの商品を安く買いたい、都合の良い時間に迅速に配達してもらいたいというものです。お客さんが「LOHACO」とAmazonを比較する際も、価格と配達サービスが重要な要素になります。

商品の価格については、売上高の規模が大きいAmazon方が優位にあり、配達サービスについては、両社ともに満足できるものです。売上高の規模で劣勢に立たされる「LOHACO」としては、Amazonにはない付加価値を生み出したいところです。

アスクルは2014年に「LOHACO ECマーケティングラボ」をスタートさせており、EC時代の新しいマーケティング手法をメーカーと共同研究しています。Amazonにはこうしたメーカーとの共同研究はなさそうなので、アスクルはメーカーと共同研究を行なうことで、Amazonにはない商品、サービスを提供できるかもしれません。

「LOHACO ECマーケティングラボ」の実績として、キリンビバレッジの「moogy」や、花王の除菌&消臭剤「リセッシュ」など、メーカーのロゴや商品名の目立たない、家庭になじむパッケージの商品が開発されています。多くのお店で売っている有名メーカーの商品であっても、「LOHACO」オリジナルパッケージの商品は、お客さんの「LOHACO」へのロイヤルティを高める効果があるのではないかと思います。

コンビニ業界では有名メーカーと共同で、自社のプライベートブランド、オリジナル商品を開発することが増えています。自社でしか買えない商品であるため、他社との差別化要因になり、店舗の集客力を高めることに貢献しています。

コンビニで行われているプライベートブランド、オリジナル商品の開発は、「LOHACO」でも行われるようになると予想しています。メーカーはお客さんに自社のブランドをアピールできるほか、まとまった規模の売上高が期待できる、販売、物流を「LOHACO」に委託できるなど、商品の共同開発にはメリットがあります。

BtoC事業・BtoC事業により物流センターの稼働率アップ

小売業のニュースを見ていると、オンライン小売業の成長において、物流の重要性を指摘する意見が増えています。お客さんに安売りをするためには売上高の拡大が不可欠ですが、売上高を拡大するためには、大量の商品を出荷する物流施設が必要になります。

2018年2月より稼働している、大阪府吹田市の「アスクル・バリュー・センター関西」は、年間1,000億円規模の出荷をこなすことが期待されています。「アスクル・バリュー・センター関西」はアスクルの8拠点目の物流センターとなっていて、アスクルの事業拡大に合わせて、物流センターの数も増加していくことになります。

BtoB事業のアスクルでは、注文の約92%が平日の利用で、注文が入る時間帯は午前と夕方に集中しているとのことです。一方、BtoC事業の「LOHACO」では、夜の10時から12時のあいだに注文のピークを迎え、受け取りは週末が多くなっています。

アスクルは出荷曜日、出荷時間が異なるBtoB事業とBtoC事業を両方行うことで、物流センターの稼働率を高めています。曜日、時間帯に関係なく、物流の取扱量が増えれば生産性が高まりますし、お客さんに提供する配達サービスの利便性も良くなります。

Amazon、アスクル、スタートトゥデイ、ロコンド、MonotaROなどオンライン小売業が、物流センターへの投資を行うという記事をよく見ます。これらの企業はECの売上高を伸ばし続けていますが、売上高の伸びと物流センターへの投資はセットです。

こうしたECのプラットフォーム企業が複数存在することは難しく、新しいプラットフォームがこれから増えることは考えにくいです。将来的にECの市場拡大が停滞する時が来れば、豊富な商品を品揃える、商品を安く販売する、商品を一度にまとめて迅速に配達するといった、ECプラットフォーム間の競争も激しくなりそうです。

EC市場において「LOHACO」がお客さんに提供する付加価値

Amazonの影響力が大きくなるのに合わせて、様々な業種の企業がAmazonをライバルとして意識するようになっています。Amazonで複数のカテゴリの商品をまとめて買う人が増えると、価値があるオリジナルの商品を製造・販売している企業であっても、お客さんに買い物をしてもらえなくなる可能性はあります。

例えば、これまでユニクロで下着を買っていた人も、面倒くさいからもうAmazonで売っているのを買おうというふうになるかもしれません。もしそこで、Amazonで売っている下着に満足すれば、次からもAmazonで買い続けることになります。

Amazonの売上高が伸びることで、商品の価格が安くなり、配達サービスの質が高まることが期待されます。一方で、Amazonの影響力が強くなりすぎると、Amazonでビジネスを行なう企業は販売手数料を引き上げられる、Amazonで買い物をするお客さんも、Amazonプライム料金、配送料を値上げされる不安があります。

お客さんの立場としては、一つのオンライン小売業が巨大化した方が都合が良さそうに感じるのですが、先のことはどうなるかは分かりません。お客さんにとって、Amazonの代替えになりそうなのは、「LOHACO」と「ヨドバシ・ドットコム」くらいですが、両社が今後、Amazonとどのように差別化を行なうのかに注目です。

「LOHACO」のお客さんは30代、40代の女性が多く、子育ての合間に自由になれる、夜の時間帯に買い物をしています。「LOHACO」がお客さんに提供している付加価値は、仕事と子育ての両立に忙しい女性に対して、買い物に掛かる時間、商品を運ぶ負担を減らしたり、食品、日用品をお得な価格で提供することです。

Amazonに対して売上規模で劣る「LOHACO」は、お客さんを絞り込んで、関係を強化することで、EC市場の中でポジションを得られるのではないかと思います。「LOHACO」はビッグデータを使ったワン・ツー・ワン・マーケティングを重視していて、メーカーと共同で開発する「LOHACO」でしか買えないオリジナル商品と、お客さんそれぞれに合ったパーソナライゼーションの2つがアピールになりそうです。