パルコはAmazonのスマートスピーカー「Echo」を接客に活用

パルコはAmazonのスマートスピーカー「Echo」を接客に活用

ファッションビル「PARCO(パルコ)」を運営しているパルコは、小売業の中でもテクノロジーの導入に意欲的ですが、Amazonのスマートスピーカー「Alexa」を使った店頭接客が紹介されている記事があります。 お客さんはスマートフォンを利用することに慣れており、小売業ではアルバイト・パートの採用が難しくなっていることもあり、テクノロジーを接客の一部として活用することは、顧客満足と人手不足の解消の両方に貢献します。

小売業ではテクノロジーへ投資が重要だと言われていますが、これは若い世代のお客さんを引き付けるだけではなく、若い世代の従業員を引き付けるためにも重要です。お客さんにとって買い物がしにくい不便なお店は、従業員にとって働きにくい生産性の低いお店でもあるので、お客さんと従業員の満足は同じものになっています。

テクノロジーを使った情報提供は人手不足を解消する新しい接客

日々の生活でスマートフォンを使うことが定着したことで、お客さんの実店舗での買い物の仕方は変化しています。実店舗に出掛ける前にお店の場所、目当ての商品を検索したり、実店舗での買い物中に気になる商品があれば、レビューを見たり、価格を調べたり、写真を撮ったりして、インターネットの情報を調べながら買い物をしています。

欲しい時にすぐに必要な情報が手に入ることは、お客さんが買い物体験に求める重要な要素になりつつあります。情報があるお店と情報がないお店があれば、お客さんは情報があるお店を利用するので、情報がないお店はお客さんを失ってしまうことになります。

スマートフォンを使った情報収集に慣れたお客さんは、店内でも同様の情報提供機能を求めるようになります。商品の陳列棚の場所、在庫を調べられるタブレットが設置してあれば、自分で必要な情報を調べて買い物をするお客さんはたくさんいます。

今のところ、店内の在庫を検索するシステムは不可欠なものであるとは言えませんが、将来的には多くのお店で設置されるようになると思います。テクノロジーを活用して、店内でお客さんに買い物に必要な情報を提供することは、新しい接客の形だと言えます。

テクノロジーを使った情報提供は、アルバイト・パートの採用が難しい、人手不足の状況を解決する手段にもなります。ネットショップの脅威が大きくなる中で、実店舗は人間にしかできない優れた接客をするべきだという意見があるのですが、接客をするためのアルバイト・パートを採用することがますます難しくなっています。

自分から進んで情報を取りに行くお客さんには、テクノロジーを使って情報を提供することで人件費を抑えることができます。丁寧な接客を求めるお客さんに人間のリソースを投入することで、お客さんのニーズに合った買い物体験を提供することができます。

ロボットの接客は気軽に利用しやすくビッグデータの蓄積にもなる

パルコは2016年7月1日から31日に掛けて、仙台パルコ2にて、日本の対話型ロボット「Pepper」と、アメリカの自走式ロボット「NAVii」を組み合わせた接客の導入実験を行っています。お客さんが「Pepper」にお店のことを問い合わせると、そのデータが「NAVii」に渡り、「NAVii」が売り場までお客さんを案内するというものです。

ロボット導入期間の1日あたりの利用件数は、有人のインフォメーションカウンターでの対応回数が134回、「Pepper」と「NAVii」のロボットの対応回数が約3倍の403回となっています。「Pepper」はメディアで頻繁に紹介されているため、物珍しさもありますが、多くのお客さんがロボットの情報案内を問題なく利用しています。

有人のインフォメーションカウンターよりも、ロボットの情報案内の方が利用しやすいというのはあります。カウンターが混雑していたり、店員が忙しそうにしていると、お客さんは話し掛けることを躊躇しますが、ロボットの場合はそうしたことがありません。

お客さんの問い合わせは売上に繋がることが多いですから、ロボットを導入することで、問い合わせ件数が増えたことは前向きなデータです。単に売り場の場所を案内するだけでなく、お客さんのニーズを汲み取って適切な商品、サービスまで提案できるようになれば、人件費の削減と売上アップの両方が一度に実現できる可能性もあります。

対話型のロボットやタブレットを通じてお客さんと情報のやり取りをすることは、ビッグデータを蓄積することにもなります。フリーワードでお客さんに検索をしてもらえれば、お客さんがお店に何を求めているのかを可視化することができます。

Amazon、楽天などのネットショップが豊富なビッグデータを元に買い物体験を改良させる一方、情報力で劣る実店舗は難しい状況が続いています。実店舗もネットショップと同じようにビッグデータを蓄積する必要があり、店内にロボットやタブレットを導入することは、お客さんのニーズを収集するための一つの方法になります。

Amazonのスマートスピーカー「Echo」を使った店内での接客

パルコはAmazonのスマートスピーカー「Echo」が持つ音声認識技術「Alexa」に対応したスキル(機能)を提供していて、現在のところ、池袋PARCOのショップ、レストラン、取り扱い商品、周辺施設を音声で検索できるようになっています。音声検索はこれから成長が確実視されている領域で、インターネット企業を中心に「Alexa」のスキルを提供していますが、小売業が提供しているスキルはまだほとんどありません。

Amazonのスマートスピーカー「Echo」は自宅で利用するデバイスですが、パルコでは「Echo」を店舗に設置して、接客に活用しようとしています。お客さんの「子供服は何回で取り扱っていますか?」という質問に対して、子供服を販売しているショップを音声で回答して、連携するタブレットにショップの場所を表示する仕組みです。

これまで蓄積してきたよくある質問を元にシナリオを作成することで、600種類以上のバリエーションの質問に応えることができるとのことです。お店がどこにあるかというのが一番よく聞かれる質問だと思うのですが、聞かれ方も応え方の文言も定形のものが多いので、「Alexa」に置き換えることに大きな問題はありません。

開発で難しかったポイントとして、ショップの名前をきちんと発音すること、お客さんによって異なる言い回しに対応することが挙げられています。「タワーレコード」と「タワレコ」は同じショップを意味していますが、お客さんによってお店の呼び方が異なることがあるので、こうした文言に一つ一つ対応する手間が掛かります。

お店のあちこちにAmazonのスマートスピーカー「Echo」が設置されていれば、お客さんは気になることがあればすぐに質問をすることができます。スマートフォンのアプリでも情報提供をすることができるのですが、「Echo」はスマートフォンを使わない人にも情報提供ができるので、お客さんを取りこぼすことがなくなります。

問題になりそうな点は、日本人は音声検索を利用することを恥ずかしがる傾向があるらしいので、店内で積極的に利用するかどうかは分かりません。周りの人に検索内容を聞かれてしまいますから、プライバシーに配慮する仕組みは必要になるかもしれません。

テクノロジーへの投資は若い世代のお客さん・従業員を引き付ける

パルコは小売業の中でもテクノロジーの活用に積極的に取り組んでいて、テクノロジー関連のニュース記事で紹介されることが多いです。小売業はテクノロジーへの投資が不可欠だと言われていますが、パルコの動向を見ていると、未来の買い物体験が分かります。

ネットショップ、ショッピングアプリ、タブレット、ロボットなど、小売業にテクノロジーが導入されると、それぞれが顧客接点となり、ビッグデータが蓄積されるポイントにもなります。テクノロジーの導入が進めば、お客さんの買い物体験が便利になるだけでなく、小売業の店舗運営もデータに基づいた効率的なものへと洗練されて行きます。

若い世代のお客さんに買い物をしてもらうためには、テクノロジーを使った便利な買い物体験を提供しなければなりません。さらに、アルバイト・パートの採用が難しくなっていることを考えると、若い世代の従業員を引き付けるためにもテクノロジーが重要です。

少子高齢化の時代においては、若い世代の人材はお客さんとしても、従業員としても貴重な存在になっています。小売業はお客さんを引き付けることには関心が強いですが、従業員を引き付けることにも気を配らなければ、ますます採用が困難になります。

パルコがテクノロジーの導入に積極的なのは、お客さんも従業員も若い世代であることが関係していると思います。お客さんも従業員も中高年が多い小売業では、実店舗での買い物体験に問題を感じておらず、売上高も比較的安定していることが多いです。

小売業各社でテクノロジーへの投資に差がありますが、今後、高齢者の減少がさらに加速した時に、投資の差が売上高の差になって現れそうです。若い世代のお客さんが買い物をしてくれているかどうかは、何らかの仕組みを作って管理する必要があると思います。