トライアルがスマートカメラ・スマートレジカートの実証実験

トライアルがスマートカメラ・スマートレジカートの実証実験

日本全国で217店舗のディスカウントストアを運営しているトライアルが、パナソニック、Remmoの最新のスマートテクノロジーの実証実験を行なうことを発表しています。次世代店舗「スーパーセンタートライアルアイランドシティ店」を2月14日よりオープンしており、スマートカメラ、スマートレジカートが導入されています。

ネットショップの脅威、人口の減少は小売業にとって大きな問題で、売上を増やすことよりも、店舗の生産性を改善することで収益を高めようとする動きがあります。最新のテクノロジーの導入効果は大きいと考えられますが、高齢者のお客さんが多いため、どうすればお客さんに利用してもらえるかということも課題になりそうです。

お客さんと商品棚のデータを記録・分析するカメラ700台を設置

「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」に設置されるカメラ700台のうち、100台はパナソニックが開発したものです。パナソニックのVieurekaプラットフォームとPUX株式会社の画像認識エンジンを用いて、お客さんの属性、店内でのお客さんの買い物行動を記録して、マーケティング活動に活用することができます。

パナソニックのカメラの特徴はお客さんのプライバシーに配慮していることで、カメラ内で画像情報の分析を行い、分析結果のデータだけをクラウドに送信します。小売業向けのカメラを使ったデータ分析ソリューションが増えていますが、お客さんに不安を感じさせないためにも、プライバシーに配慮したものが好ましいです。

残りの600台のカメラはトライアルが開発したもので、自社で開発した画像認識エンジンと連動して、商品棚の陳列状況、お客さんの買い物行動を分析します。トライアルのカメラもパナソニックと同様に、お客さんのプライバシーに配慮したものになっています。

トライアルのように品揃えが豊富で購入点数が多い店舗では、在庫不足をいち早く察知することは重要です。在庫切れの棚に素早く商品の補充を行なうことができれば、機会損失を減らすことができるので、売上の増加とお客さんの不満を抑える効果があります。

店内にカメラを設置する事例が次々に登場していて、サインポストが開発している「スーパーワンダーレジ」、米Amazonのレジのない店舗「Amazon Go」は注目度が高いです。ニュース記事を読む範囲では、カメラの設置で実現したいことは共通していて、レジの無人化を実現する、データを蓄積してマーケティングに活かすなどです。

人口の減少で客数を増やすことが難しい状況を考えれると、既存客に少しでも多くの商品を買ってもらいたいところです。お客さんの買い物行動を詳しく分析することで、店内の買い物体験を改善して、購入点数を増やすことは充分に可能だと思います。

商品をスキャンしながら買い物をして簡単に決済できるレジカート

「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」では700台のカメラの他に、Remmoと共同開発したタブレット決済機能付きのレジカートが導入されます。お客さんは買い物の前に専用のプリペイドカードをカートに読み込ませ、商品をスキャンしながら買い物を行い、買い物後はボタン一つで簡単に決済が完了する仕組みです。

お客さんのレジでの待ち時間を解消するとともに、レジの作業を減らすことで、アルバイト・パートの人件費を抑える効果があります。アルバイト・パートの時給の上昇が続いているため、人手不足を解決するソリューションの重要性が高まっています。

レジカートに取り付けられたタブレットには、お客さんが売り場でスキャンした商品に基づいてレコメンドが表示されるようになっています。例えば、お客さんが食パンをスキャンした時に、本日の特売品のマーガリン、チーズ、ピザソース、ベーコン、ピーマンなどの関連商品をレコメンドできれば、セットで購入してもらえる確率が高くなります。

また、タブレットに広告を表示することで、店頭メディアとして各メーカー・ベンダーに広告、販促の機会を提供することができます。各メーカー・ベンダーはトライアルの店内にある自社の商品をお客さんにアピールできるので、需要は大きいと思います。

現在、小売業ではセルフレジ、セミセルフレジの導入が進んでいますが、レジカートはセルフレジ、セミセルフレジと並ぶオプションになります。レジカートはセルフレジ、セミセルフレジよりも管理が大変でコストも高そうですが、メリットは大きいです。

お客さんの負担の面では、セルフレジで最後にまとめてスキャンをするよりも、カートに商品を入れながらその都度スキャンをした方が楽です。また、レジカートはタブレットを通じて買い物中にお客さんとコミュニケーションができるので、購入点数を増やせる可能性があり、これはセルフレジ、セミセルフレジにはないものです。

レジを通過するだけで支払いが完了するウォークスルー型のレジ

「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」のカメラとレジカートの実証実験とは別に、RFIDタグを使った決済の実証実験がトライアル本社構内の店舗「トライアル ラボ店」で行われます。パナソニック スマートファクトリーソリューションズと共同で行うもので、レジを通過するだけで支払いが完了するウォークスルー型の決済方法です。

お客さんは最初にプリペイドカードをウォークスルーレジカウンターに読み込ませ、その後、商品を入れた袋を読み取りエリアに通すことで商品の識別と決済が行われます。商品にはあらかじめRFIDタグが貼り付けられていて、RFIDタグをまとめて識別することで、プリペイドカードの読み込みから決済の完了まで10秒以内となっています。

2017年4月、経済産業省は2025年までに、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズの全ての取扱商品に電子タグ(RFIDタグ)を利用することについて、一定の条件の下で各社と合意することができたと発表しています。RFIDタグによって、商品1個1個の状態を管理(個体管理)することが可能になり、コンビニの店舗だけではなく、サプライチェーン全体での生産性アップが期待されています。

一方、RFIDタグが抱えている課題は、RFIDタグ1枚あたりの単価が高いこと、各商品にRFIDタグを貼り付ける作業の負担が大きいことなどがあります。どちらもコスト的な問題ですが、RFIDタグの価格については今後下がる見通しとなっていて、貼り付けの作業については、メーカー、物流業者、店舗、誰が担うのがベストなのかは定まっていません。

小売業向けの商品管理、決済のソリューションでは、カメラの画像を使ったものと、RFIDタグを使ったものの2種類があります。カメラの画像を使ったものには、サインポストの「スーパーワンダーレジ」、米Amazonのレジのない店舗「Amazon Go」があり、今回、トライアルとパナソニック スマートファクトリーソリューションズのレジを通過するだけで支払いが完了する決済方法では、RFIDタグが使用されています。

小売業では品揃え、商品管理の方法も企業、業種によって異なりますから、カメラの画像かRFIDタグか、それぞれの企業に合ったものが採用されるようになると思います。カメラの画像を使うソリューションでは、商品1個1個にRFIDタグを貼り付ける作業がないため、カメラの画像を使うソリューションの導入が増えるのではないかと予想しています。

小売業向けのソリューションは効果的だが普及には時間が掛かる

ネットショップの脅威、人手不足が同時に起こっていて、小売業を取り巻く環境はここ数年でさらに厳しくなっています。そうした中で、カメラの画像認識、RFIDタグ、キャッシュレス、アプリなど、小売業向けのソリューションへの注目が高まっています。

各ソリューションによってもたらされる効果も知られるようになり、店内のお客さんの買い物行動が分かれば、売り場替えや店内販促の効果が高まる、キャッシュレスが進めば、現金の管理業務、レジ業務が削減できるといったものです。新しいテクノロジーの実証実験を行なう小売業が増えていて、これからノウハウも共有されるようになります。

少子高齢化によって日本の人口は6年連続で減少しており、この流れがすぐに変わることは考えにくいです。小売業が売上の増加を成長戦略にすることは難しく、売上を伸ばすことではなく、店舗の生産性を改善することで収益性を高める方向になると思います。

小売業は新規出店を増やすことを重要視してきたため、既存の店舗オペレーションは洗練されておらず、改善できる点がたくさんあります。店舗の収益性が高まれば、商品の価格を下げたり、従業員の待遇を改善することで、店舗の質を高めることができます。

最新のソリューションをうまく機能させるためには、従業員に使いこなしてもらい、お客さんに使いこなしてもらう必要があります。日本ではなぜ諸外国のようにキャッシュレスが進まないのかというニュースを毎日目にしますが、高齢者が多い日本では、新しいテクノロジーが浸透するには時間が掛かるという考え方が一般的です。

小売業の立場としては、最新のソリューションを導入して生産性を高めたいところですが、すぐにはそうならない可能性が高いです。お客さんがテクノロジーを受け入れるようになるまで投資を待つのか、それとも自社が他社とお客さんを引っ張っていく形で積極的に投資を行うのか、小売業の投資戦略にも難しいものがあります。