カカクコム運営の「キナリノモール」の月間流通額が1億円を突破

カカクコム運営の「キナリノモール」の月間流通額が1億円を突破

カカクコムが運営している「キナリノモール」の月間流通額が、初めて1億円を突破したとのリリースがあります。「キナリノモール」は女性向けのライフスタイルメディア「キナリノ」と連携して商品を販売していて、WEBメディアを使ってネットショップで商品を販売する方法は「メディアコマース」と呼ばれています。

こだわりの商品を丁寧に紹介して販売する「キナリノモール」は、価格や利便性が付加価値のAmazon、日本全国の商品が買えることが付加価値の楽天とは、異なる付加価値をお客さんに提供しています。ネットショップの付加価値の多様化、シェアリングエコノミー、フリマアプリなどお客さんの買い物方法の多様化により、従来の小売業が実店舗で商品を販売することがますます難しくなっていることを感じます。

「キナリノ」と「キナリノモール」が連携した新しい買い物体験

「キナリノ」は2014年にスタートした女性向けのライフスタイルメディアで、価格.comを運営しているカカクコムの新しいメディア事業です。「キナリノ」の記事は、ファッション、雑貨、グルメ、レシピ、インテリアなど、特定のテーマの複数のブランドの商品を一つの記事にまとめ、見やすい形でお客さんに紹介しています。

小売業にもWEBメディアにも当てはまることですが、ライフスタイル系の商品・情報はニーズが高まっています。ワークライフバランスを重視する人が増えたこと、女性の社会進出が進み自由に使えるお金が増えたこと、などが理由として考えられます。

カカクコムは女性向けライフスタイルメディア「キナリノ」に続いて、2016年2月に、ネットモール「キナリノモール」をオープンしています。「キナリノモール」は「キナリノ」のコンセプトにマッチする、ファッション、生活雑貨を販売するネットモールです。

WEBメディアとネットショップが連携した形は「メディアコマース」と呼ばれていて、新しいネットショップの販売方法として注目されています。WEBメディアで商品の価値をお客さんに丁寧に説明して、理解してもらい、納得して購入してもらう販売方法です。

今回、2018年1月の「キナリノモール」の月間流通額が、初めて1億円を突破したことが発表されています。「キナリノモール」で買い物をしているお客さんは、女性向けライフスタイルメディア「キナリノ」から来た人が多くなっています。

比較する対象がないので評価が難しいのですが、月間流通総額が1億円を越えるというのはすごいことだと思います。WEBメディアとネットショップが連携して、お客さんに楽しい買い物体験を提供しており、リピーターの数も多いのではないでしょうか。

商品の価格ではなく価値を丁寧に紹介する「メディアコマース」

小売業の基本戦略であるチェーンストア理論では、店舗数を増やして売上と仕入れを拡大させ、売上原価を下げ、商品を安く売ることが小売業の役割だと考えられています。成功している小売業のほとんどが大規模チェーン店で、低価格の商品を販売しています。

小売業のチェーンストア理論のもとでは、小売業が商品の価値を店頭でお客さんに丁寧に紹介してくれることはありません。小売業がセールをしたい商品にはPOPが付いていることもありますが、多くの商品は棚に並べられているだけの状態になっています。

こだわりの商品を販売している小売業もありますが、多くの場合は、小規模で、店舗数も少ないです。こだわりの商品を買いたいお客さんもいますが、こだわりの商品を販売している小売業が少ないため、両者がマッチングすることは簡単ではありません。

人気のチェーン店には簡単に買い物に行けますが、こだわりの商品を販売しているお店に行くには、自動車で何時間も掛かることもあります。商品を売りたい小売業、商品を買いたいお客さん、どちらもフランスとレーションを抱える状況にあります。

商品の価値を丁寧に説明する「キナリノ」、こだわりの商品が買える「キナリノモール」は、小売業とお客さんのニーズを満たす存在になっています。これまで、小売業もお客さんも商品の価値ではなく価格ばかりを見てきましたが、価格ではなく商品の価値を見たいと考える小売業、お客さんも少なくないはずです。

「キナリノ」と「キナリノモール」は、こだわりの商品を製造・販売する、小規模の製造小売業と相性が良いのではないかと思います。小売業はプライベートブランドの開発に力を入れていますが、どこのお店で買ってもそこそこの商品が手に入るようになっているため、尖った商品、個性的な商品を買うことが難しくなっています。

「キナリノ」と「キナリノモール」ではアプリで便利に買い物

「キナリノ」は2017年5月にアプリをリリースしていて、アプリで記事を読んで、買い物をすることができます。2017年7月にはアプリ限定コンテンツ「キナリノマガジン」を開始して、写真中心のコンテンツ、アプリならではの操作性が特徴です。

「キナリノモール」では、商品再入荷の連絡にアプリのプッシュ通知を導入しており、お客さんの離脱を防いでいます。電話は迷惑になる、メールはすぐに見てもらえないという問題があり、アプリのプッシュ通知はマーケティング活動に効果的です。

「キナリノ」と「キナリノモール」、アプリを使った買い物体験は、とても洗練されていると思います。WEBメディアで商品に関心を持ってもらう、アプリを使ってネットショップで注文をしてもらう、商品がない場合はプッシュ通知で知らせるという流れです。

再入荷にプッシュ通知を使うネットショップが増えていて、プッシュ通知は売上アップに大きく貢献しているはずです。メールのように情報の送り手と受け手で時間の差が発生しないので、物事が非常にスピーディーに進む感覚で、お客さんの印象も良くなります。

「キナリノ」と「キナリノモール」、アプリを使った便利な買い物体験を見ると、実店舗にはいろいろと改善する点があります。お店に行く前に在庫があるかどうか分からない、色違い・サイズ違いがあるかどうか分からない、お店に来ても在庫がすぐに分からない、いつ入荷するのかも分からない、などはお客さんが実店舗に持っている不満点です。

これらの一つ一つはお客さんが買い物を止めるポイントですから、問題を解決することで、お客さんの離脱を減らせば、売上を伸ばすことができます。ネットショップはアプリのプッシュ通知で連絡して来るけど、実店舗は電話で連絡が来るので面倒くさい、というように考える若い世代のお客さんもいます。

従来の小売業の脅威となる新しい買い物方法が次々に登場している

従来の小売業にとって、ネットショップの存在は脅威ですが、新しいタイプのネットショップが次々に登場しています。Amazonは丁寧な商品紹介はせず、低価格で販売することを重視していますが、「キナリノ」と「キナリノモール」では、それほど価格を意識することなく、価値のある商品を丁寧に紹介して販売しています。

お客さんが買い物をスタートする場所が、実店舗からインターネットへと移っていることも重要な変化です。インターネットで商品と出会い、インターネットで商品を購入することが増えれば、お客さんは実店舗にわざわざ出掛ける必要がなくなってしまいます。

小売業はネットショップを持たなければならないと言われていますが、今では、小売業はインターネットに「顧客接点」を持たなければならないと言えます。実店舗とネットショップはお客さんを奪い合うのではなく、「顧客接点」を奪い合う状況です。

インターネット上で一番最初にお客さんと接触できるお店が、お客さんの買い物時間を多くもらうことができ、お客さんから注文をもらえる可能性が一番高いです。お客さんは店舗・商品を比較してからの買い物を好みますが、一番最初にお客さんと接触したお店で買い物をされると、他のお店はお客さんと接触することも難しくなります。

インターネットを使った新しい買い物方法が登場していて、シェアリングエコノミー、フリマアプリは小売業への影響が大きいです。一つの商品を複数人で長く使用するようになるので、小売業が販売する新品の商品の個数は減って行くことになります。

少子高齢化の中でも、小売業の業績が比較的堅調に推移しているのは、実店舗で買い物をする高齢者のお客さんの基盤が強いからです。若い世代のお客さんは高齢者のお客さんとは異なる買い物行動をしているので、実店舗は高齢者のお客さんに依存しすぎずに、若い世代のお客さんの獲得にも力を入れるべきではないでしょうか。