小売業は勘と経験ではなくデータを活用しなければ生き残れない

小売業は勘と経験ではなくデータを活用しなければ生き残れない

小売業は勘と経験に基づいた店舗運営ではなく、データを活用しなければ生き残れないという、データの重要性を指摘する記事があります。ネットショップではデータに基づいた生産性の高い店舗運営が行われており、実店舗の勘と経験に基づいた生産性の低い店舗運営では、ネットショップと競争することが難しくなります。

実店舗でもネットショップのようなデータに基づいた店舗運営をするために、実店舗内のデータを取得するソリューションが登場しています。人口が減少して行く日本では、既存店の競争力を高めることが重要になっていますが、実店舗内のデータを取得することは、既存店の問題点を把握することにも役立ちます。

データに基づいて運営されているとネットショップと実店舗の違い

ネットショップでは、お客さんがどこからやって来たのか、どの商品を見たのか、誰が買い物をしたのか、様々なデータを記録することができます。検索をして来たのか、広告をクリックして来たのか、どんな商品と比較したのか、何回目の買い物なのか、購入を決断するまでどれくらいの時間が掛かったのかなど、お客さんの行動データです。

お客さんの行動データがあれば、お店のどの部分に問題があるのかが分かるので、PDCAサイクルを回しながらお店を改善することができます。アクセス数は多いのに売上が悪い商品があれば、商品ページを修正することで売上を伸ばせます。

ネットショップがデータを活用して運営されていることを知ると、実店舗の運営方法に問題があるのではないかと考えるようになります。実店舗はネットショップのようにデータを取得できないので、実店舗の意思決定は勘と経験に基づくものが多いです。

実店舗ではPOSデータを活用していますが、これは最終的に売れた商品しか分からないので、お店の問題がどこにあるのかを把握することができません。お客さんに商品を見てもらえたけど売れなかった場合と、お客さんにそもそも商品を見てもらえていない場合では改善策も異なりますが、実店舗では状況の違いを正確に把握することが難しいです。

ネットショップの脅威が強まる中で、実店舗もネットショップのようにデータに基づいて運営されなければならないと考える人が出てきます。実店舗もネットショップのようにデータを活用するようになれば、もっと売上を増やすことができるはずです。

カメラの映像、Wi-FiやBluetoothの電波、赤外線センサなどを使って、実店舗内のデータを取得するソリューションが登場していますが、小売業がこうしたソリューションに注目しているのは世界的なトレンドです。国内の製品では「ABEJA(アベジャ)」、海外の製品では「RetailNext(リテールネクスト)」を紹介する記事をたまに見ます。

リアル店舗解析ツールを導入することで実店舗に起こる変化

リアル店舗解析ツール「ESASY」は、店舗前の交通量、ショーウインドウディスプレイに関心を持った顧客の年齢や性別、滞在時間などを記録するシステムです。「今日は店舗の前を通る人が多い」「あのお客さんは店舗をよく見ている」といった、店員の曖昧な感覚を、データとして記録することができます。

店舗を見る、店舗に関心を持つ、店舗に入る、商品に関心を持つ、商品を買う、お客さんが実店舗で買い物をするプロセスはこのようなものです。お客さんの行動データがあれば、各プロセスで問題が発生していないか、確認をすることができます。

全国に8店舗を展開しているライフスタイルショップ「インナチュラル」の一部店舗で、リアル店舗解析ツール「ESASY」を使って売上を20%伸ばせたとのことです。データを持つことで問題点を認識・把握することができ、問題点を解決することで売上が伸びます。

リアル店舗解析ツール「ESASY」を導入することによって、「店舗前交通量」、「視認量」の2つが新しいKPI(重要業績評価指標)になります。POSデータは最終的に「何人が購入した」という結果のデータですが、何人がお店の前を通ったのか、何人がお店に関心を持ったのか、何人がお店に入ったのか、購入前のお客さんの数字も把握できます。

リアル店舗解析ツール「ESASY」のようなソリューションは、小売業の視点を商品からお客さんへと移してくれる効果も期待できます。これまではお客さんの行動を把握できないこともあり、小売業のマーケティング活動は商品を中心としたものが多いです。

商品が売れる前に、店舗、商品に関心を持ってもらう必要があり、お客さんが店舗、商品に関心を持っているかどうか、小売業はもっと注視するべきではないでしょうか。例えば、店員が店舗前通行量、入店率、売り場での滞在時間を毎日意識するようになれば、よりお客さんに近い立場でお店を見ることができます。

小売業ではテクノロジーが重要になっているが人材の確保は難しい

ネットショップはデータに基づいて運営されていて、PDCAサイクルを回しながら、売上を伸ばそうとしています。検索順位は落ちていないか、ソーシャルメディアにいいねが付けられたか、バナー広告はクリックされたか、ランディングページは読まれたか、商品は売れているか、すべてデータを使って検証されています。

ネットショップ担当者に求められるスキルは体系化されていて、データの分析方法を学習するセミナー・書籍も多数あります。グーグルアナリティクスの基本的なスキルを持っている人であれば、誰でもネットショップの問題点を見つけることができます。

一方、実店舗はデータを取得するソリューションが登場しても、データを分析する人材をどう育成するかという問題があります。実店舗で働いている正社員、アルバイト・パートの主な仕事は、発注、商品補充、接客などの作業ですから、短期間でデータをうまく活用できるスペシャリストになってもらうことは難しいです。

本部にデータ分析ができるスペシャリストを外部から採用して、各店舗に指示を行うやり方が現実的な方法だと思います。現在、小売業では各店舗に裁量権を持たせる「個店主義」が広がっていますが、データの分析に関しては本部主導になりそうです。

小売業はテクノロジーへの投資が不可欠で、ネットショップ、ショッピングアプリがなければ生き残れないという意見が多いです。しかし、テクノロジーに強い人材を確保することは難しく、ネットショップ、ショッピングアプリに大きな進化は見られません。

リアル店舗解析ツールが登場したことで、情報処理部門だけではなく、店舗で働く正社員、アルバイト・パートでさえも、ITスキルが求められるようになっています。小売業はアルバイト・パートへの依存率が高いため、テクノロジーに強い人材を育成することも難しく、テクノロジー活用の問題は大きくなるばかりです。

既存店の競争力を高めるためにはお客さんをよく知ることが不可欠

実店舗は一度出店すれば、その後に店舗の場所、規模を変えることは難しく、閉店まで同じ設備で店舗運営を行うことが多いです。また、実店舗には商圏がありますから、出店したと同時に、お店に買い物に来る潜在的な客数も決まります。

店舗設備とお客さんは閉店までほとんど同じ環境が続きますから、店舗の周りのあらゆるデータを取得しておきたいです。店舗前通行量を毎日把握することは大切で、もし、何らかの理由で店舗前通行量が減っているのであれば、それは重大な外部環境の変化です。

今後、日本では一部の大都市を除いて人口減少が続くことが確実ですから、それに合わせて、ほとんどの店舗で客数が減ることになります。既存店の客数の減少は既に始まっていて、商圏の狭いコンビニでも既存店の客数の減少が2年前くらいから起こっています。

客数が減る中で売上を伸ばそうとすれば、1人のお客さんの来店回数、購入点数を増やさなければなりません。商品を並べてお客さんが買ってくれるのを待つのではなく、お客さんの視点に立って、お客さんがお店に何を期待しているのかを考える必要があります。

店舗設備が固定的な実店舗の特徴、人口の減少が続く日本の状況を合わせて考えると、既存店の競争力を高めることが小売業の成長戦略です。小売業の出店戦略を見ると、新規出店よりも既存店の改修に大きな投資を行う企業も出てきています。

既存店の競争力を高めるためには、既存店のお客さんをよく知る必要があり、店舗内のデータを取得・分析するソリューションの活用が不可欠です。既存店の客数の減少が進めば進むほど、リアル店舗解析ツールが重要な存在になると思います。