カインズと大都の提携でホームセンターの買い物はどう変わるか

カインズと大都の提携でホームセンターの買い物はどう変わるか

2017年の8月、ホームセンター大手のカインズと、DIYのオンライン小売業の大都は、資本業務提携を行いました。今後、両社が持っている資産・ノウハウがどのように活用され、ホームセンターの買い物体験がどのように変化するのか注目です。

カインズと大都の業務提携は、実店舗とネットショップの融合でもあり、同様の業務提携は小売業で増えて来るのではないかと思います。ホームセンターは競合するオンライン小売業の強敵が多く、テクノロジーを早急に導入しなければならない業種でもあります。

DIYを日本の文化として定着させたいカインズと大都が業務提携

カインズはホームセンターを運営しており、平成30年2月末現在、28都道府県下に208店舗を出店しています。平成29年2月期の売上高は4,035億円となっていて、業界トップのDCMホールディングスの4,433億円(平成29年2月期)に次ぐ業界第2位です。

カインズはプライベートブランドの開発に力を入れていて、オリジナル商品は1万3,000種類以上もあります。TV番組でカインズのプライベートブランドが紹介されることも多く、近くにお店がない人も、名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。

大都は創業80年の「DIY LIFESTYLE COMPANY」で、売上高は28億7,800万円(2016年12月度)となっています。事業概要は、エクスペリエンス事業、メディア事業、物販事業の3つとなっていて、DIY商品をネットショップで販売しています。

大都はDIYのスクール事業を行っていて、DIYに興味があるけどやり方が分からない人を対象に、需要の掘り起こしを行っています。大都のDIYスクールでは女性の参加者が多く、DIYの新しいマーケットを生み出すことが期待されています。

カインズと大都は2016年9月に業務提携契約を締結、2017年8月には、カインズが大都に出資を行っています。カインズが大都と資本業務提携を結んだ理由として、「DIYを日本の文化として定着させたいという理念」が共通していることが挙げられています。

カインズと大都は資本業務提携を行い、店舗、ネットショップ、両方における顧客接点の拡大、プライベートブランドの共同開発、カインズ店内の新たな売り場作り、ネットショップと実店舗を融合させた顧客価値の創出などを行う予定です。実店舗を多数持つホームセンターと、DIYのオンライン小売業が資本業務提携を行うことは、実店舗とネットショップが融合した形になります。

カインズと大都はお互いが持っている資産・ノウハウを共有できる

カインズは2017年9月に、都市型新店舗「Style Factory テラッセ納屋橋店」を名古屋にオープンしています。「Style Factory」は、「毎日のくらしの空間を自分らしくしたい」をコンセプトに、「HOME DESIGN」、「RAKU KAJI(楽カジ)」、「WELLNESS」「DIY STYLE」の4つのカテゴリを中心に構成されています。

都市型新店舗「Style Factory テラッセ納屋橋店」では、DIY工房に加え、観葉植物コーナー、インテリアコーナー、キッチン用品コーナーで体験スペースを設置しています。体験型の売り場を構築するにあたって、大都のノウハウが活用されています。

カインズのデジタルマーケティングの強化においても、大都が持つノウハウが活用されているとのことです。大都は2002年より始めているネットショップ、2015年より始めているWEBメディアがあり、デジタルマーケティングのノウハウを保有しています。

ライフスタイル商品はソーシャルメディアと相性が良く、良品計画、ダイソー、キャンドゥ、IKEAはInstagramのフォロワーを多数抱えています。ホームセンター、DIYは男性の領域のイメージがありますが、女性からの関心も高まっていて、ソーシャルメディアを活用することで集客力を高めることができます。

一方、大都はカインズが持つ実店舗内でDIY教室を行うことで、大きな投資をせずにDIY教室を増やせます。DIY教室に参加したお客さんは、カインズの実店舗でも買い物をすることができますし、大都のネットショップでも買い物をすることができます。

ネットショップは効率よくお客さんに商品を販売することができますが、インターネットだけで集客をすることには限界があります。実店舗からネットショップへの集客も必要になっていて、実店舗を新たに出店するオンライン小売業も増えています。

クリックアンドコレクトを導入して便利な買い物体験を提供

ホームセンターは小売業の中でも歴史が古く、他の小売業と比較して、お客さんも店員も年齢層が高くなっています。お客さんと店員は昔からのお店のあり方、買い物方法に問題を感じておらず、ネットショップ、ショッピングアプリなど、新しいテクノロジーの導入スピードも、他のカテゴリの小売業と比較すると遅いです。

カインズと大都が目指すオムニチャネルの取り組みの1つとして、クリックアンドコレクトが挙げられています。クリックアンドコレクトとは、ネットショップで商品の注文を行い、実店舗、ロッカーなどで商品を受け取る、買い物方法のことです。

クリックアンドコレクトを導入する小売業が増えていますが、ホームセンターは特にクリックアンドコレクトと相性が良いと思います。同じお客さんが繰り返し買い物をしていること、売り場に並べられない商品が多いこと、この2つの特徴を持つホームセンターは、クリックアンドコレクトを導入することで買い物体験を改善できます。

資材・工具は品揃えが多いですが、実店舗に陳列できない商品は、ネットショップ経由で購入してもらうことができます。ホームセンターでは同じ商品を繰り返し購入している事業者のお客さんも多いですが、クリックアンドコレクトを利用すれば、何度も何度も広い店内を歩いて、重い商品を持って、レジに並んで支払いをすることもなくなります。

ホームセンターにクリックアンドコレクトが必要な理由には、ホームセンターと品揃えが競合するオンライン小売業が多いこともあります。アスクル、大塚商会、MonotaROに加え、2017年9月よりスタートしたAmazon Businessは、2億点を越える商品をラインナップしていて、お急ぎ便・お届け日時指定便で届けてくれます。

便利な買い物体験を重視する若い世代のお客さんは、実店舗ではなく、ネットショップのアスクル、大塚商会、MonotaRO、Amazon Businessで買い物をするようになるかもしれません。ホームセンターが若い世代のお客さんに買い物をしてもらうにも、クリックアンドコレクトなど、便利な買い物方法を提供したいところです。

様々なカテゴリで小売業とオンライン小売業の提携が増える

お客さんは実店舗とネットショップの両方で買い物をしていて、買い物の内容によって、実店舗とネットショップを使い分けています。ネットショップでの買い物は便利ですが、実店舗とネットショップが融合すれば、さらに便利に買い物ができます。

ネットショップで購入した商品のサポートが実店舗で受けれたり、返品することができれば便利です。また、自分が欲しい商品があるかどうかをネットショップで検索して、実店舗に行く前に確保できれば、商品を確実に手に入れられるので無駄がなくなります。

従来の小売業はネットショップを強化したいところですが、テクノロジーに強い人材を確保することが難しい状況です。テクノロジーに強い人材は全業界で求められているので、労働条件の良くない小売業は人材獲得競争で遅れを取ってしまいます。

小売業が自社でネットショップを強化することが難しい場合、既に実績のあるオンライン小売業と提携することは効果的です。カインズは大都と業務提携を行うことで、デジタルマーケティングをどのように強化させて行くのか注目です。

今回のカインズと大都の業務提携のようなケースは、これから多くの小売業で起こるのではないかと思います。自社でオムニチャネルを構築できている企業は一部の大企業だけで、大企業であっても、テクノロジーの活用が進んでいない企業はたくさんあります。

各カテゴリのEC化率は年々高まっていて、ネットショップの便利な買い物体験に慣れると、お客さんは実店舗で買い物をしないようになります。実店舗とネットショップが融合したオムニチャネルで便利な買い物体験を提供するとともに、実店舗でしかできない、DIY教室のような体験型のサービスも必要です。