アマゾンエフェクトに対抗するために小売業は何をすればよいか

アマゾンエフェクトに対抗するために小売業は何をすればよいか

Amazonの存在感が年々大きくなっていて、Amazonが従来の小売業へ影響を与えていることを意味する、アマゾンエフェクトという言葉が登場しています。Amazonの影響を大きく受けている、書店、家電量販店、百貨店、ショッピングモール、総合スーパー、食品スーパーについて、Amazonへの対抗策を考えてみました。

Amazonが提供している価値は、価格、品揃え、買い物の利便性であり、対抗することが難しいカテゴリもあります。Amazonへの対策としてよく言われるのが、実店舗ならではの買い物体験であり、商品の価値以外のところで個性を発揮したいところです。

書店はAmazonへの対抗策を見いだせず店舗数の減少が続く

Amazonの影響を受けている小売業といえば、真っ先にイメージされるのが書店です。Amazonで書籍を買うお客さんが増えることによって、書店の数が年々減少していることはよく知られていて、もはや当然の成り行きとして受け止められつつあります。

経済産業省が出している商業統計によると、2014年の書店数は8,169店舗となっていて、ピークである1988年の28,216店舗の約30%まで減少しています。店舗数の減少には少子化の影響もありますが、店舗数は右肩下がりで減少を続けています。

書店からAmazonへと書籍を買う場所が移っていることに加え、書籍そのものがデジタル化していることも書店が苦戦する理由です。10年前は専門書で手に入れていたような知識・情報も、今はインターネットのコンテンツとして得られるようになっています。

また、全国大学生活協同組合連合会の17年調査によると、大学生の1日の平均読書時間は24.4分と過去最低を更新しています。若い世代はスマートフォンを使って情報収集をしますから、今後、書店で書籍を買ってくれるお客さんになることは期待しにくいです。

書店がお客さんに提供している価値は、目的の書籍を確実に買えること、新しい本との出会いを提供することの2つだと思います。この2つの価値がAmazonによって脅かされている状況ですが、現在の状況を挽回することは難しく、対応策を見いだせません。

目的の書籍を確実に買えることについては、Amazon、セブンネットショッピングで注文をしてコンビニで受け取った方が、遠方の書店に行くよりも手間が掛かりません。新しい本との出会いについても、ソーシャルメディア経由、Amazonのレコメンド経由で新しい本を知ることができるので、常に興味がある書籍を何冊か抱えている状態になります。

家電量販店はAmazonの影響を受けながらも成長の余地はある

家電は書籍に次いでAmazonの影響が大きいと考えられているカテゴリで、数年前はAmazonの脅威が心配されていました。当時と今を比べると、そうした意見はあまり聞かれなくなっていて、家電量販店の決算を見ても、しっかりと利益を確保しています。

最大手のヤマダ電機の売上高は緩やかに減少していますが、店舗網の再構築を行うことで、営業利益率は回復しつつあります。家電量販店にとってAmazonが脅威であることには変わりないのですが、Amazonに対抗する施策も次々に登場しています。

家電量販店は白物家電の好調が売上を支えていて、日本電機工業会(JEMA)の調べによると、2017年度上半期(4月~9月)の白物家電の国内出荷金額は1兆2,720億円で、過去10年で最高の金額になっています。女性の社会進出や単身世帯の増加のような、お客さんのライフスタイルの変化が起こっており、白物家電が拡大するチャンスになっています。

共働き世帯では家事をする時間が取れないので、時間を節約できる大容量の洗濯機がよく売れています。あるいは、自分で料理をする男性が増えたことで、高機能の電子レンジが売れるなど、白物家電にお客さんの新しいニーズが生まれています。

家電以外のカテゴリの売上を増やすため、ヤマダ電機、ビックカメラは新しい店舗フォーマットを開発しています。ヤマダ電機はインテリア、家具、リフォーム商品がワンストップで見れる「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」をオープンしていて、ビックカメラは外国人観光客や若い女性をターゲットに、家電製品だけでなく、化粧品、くすり、日用品を揃えた「ビックカメラセレクト 原宿店」をオープンしています。

家電、家具、インテリア、雑貨などの従来のカテゴリは境界がなくなり、ライフスタイル商品として統合されつつあります。価値ある商品をどうやって用意するかという課題はありますが、家電量販店にはカテゴリを拡大して、売上を伸ばす余地があります。

ファッションはネットショップの勢いを止めることは難しい

Amazonのファッションはあまり話題になることはありませんが、日本で最も重要視しているカテゴリの一つだとされています。Amazonはお客さんの買い物の不安を解消するために、試着後30日以内であれば送料無料で返品できる仕組みを用意しています。

Amazonは売上を公開していないので詳細は分かりませんが、スタートトゥデイ、ロコンドの流通総額の伸びを見ると、Amazonのファッションもよく売れていると考えて間違いありません。ファッションについてはAmazonだけではなく、スタートトゥデイ、ロコンドなど意欲的なネットショップが多数あり、実店舗に与える影響は大きいです。

お客さんは品揃え豊富なネットショップで洋服を買うことを好んでおり、ファッションブランドも実店舗よりもネットショップの売上アップに力を入れています。ファッションブランドの立場では、従来の販路である実店舗の重要性が落ちるので、百貨店、ショッピングモールは今後、テナントの誘致に困るようになる可能性があります。

総合スーパーでは低価格のカジュアルウェア、スーツ、ネクタイ、シャツ、下着など、コモディティ品を販売していますが、こうした商品もネットショップで買う人が増えています。Amazonで買い物をして、日用品や雑貨とシャツや下着も一緒に届くのであれば、ファッションも実店舗ではなくAmazonでまとめて買った方が便利です。

百貨店、ショッピングモール、総合スーパーがAmazonなどのネットショップに対抗するためには、ネットショップで人気になっている商品を取り揃えることではないかと思います。お客さんは実店舗に出掛ける前にネットで検索をしていて、「こんな商品はないかな」「この商品を確認したいな」という具体的なイメージを持って実店舗へ来ています。

お客さんのイメージしている商品と近いものがあれば、その場で購入してもらえる可能性が高くなります。ネットショップを追随する個性のない売り場になりますが、お客さんのニーズに応えるためには、このような品揃えが好ましいのではないでしょうか。

ネットスーパーの拡大への効果的な対抗策は買い物の快適性

2017年4月21日より、AmazonはAmazonプライムの会員向けに、東京の一部地域で「Amazonフレッシュ」のサービスを開始しています。「Amazonフレッシュ」は野菜、果物、鮮魚、精肉、乳製品など17,000点以上の食料品のほか、キッチン用品、健康・美容用品、ベビー用品、ペット用品などの日用品・雑貨も取り扱っています。

インターネットを検索しても、「Amazonフレッシュ」のレビュー記事は少なく、大人気というような感じではありません。「Amazonフレッシュ」のアピールポイントは、生鮮食品の品質ではなく、生鮮食品、日用品・雑貨が一度に届く利便性にあります。

ネットショップで食品を買う必要性をあまり感じない人が多いですが、海外のニュースを見ると、全世界でネットショップで食品を買う人が増えるとの意見が多いです。ネットショップの利便性に慣れたお客さんは、実店舗に買い物に出かける時間を無駄に感じるようになり、食品もネットショップで買うようになるという予測です。

レシピ、下ごしらえされた食材、調味料がセットになったミールキットが話題になっていて、調理時間を節約したいニーズは高まっています。お客さんは質の良い食品を購入するよりも、調理時間を短縮することの方を重視しているような感じです。

実店舗がAmazonなどの食品を販売するネットショップに対抗するためには、商品以外の買い物体験が重要になるのではないかと考えています。Amazonと競うのは食品の価格や品質ではなく、いかに快適に買い物ができるのかという点です。

具体的には、駐車場が広い、店内が綺麗で明るい、商品がきれいに並んでいる、店員に清潔感があって親切といった、実店舗で買い物をする時に感じる快適さです。お客さんに時間の節約を追求されると分が悪いですから、気持ちよく買い物ができるお店であり続けることが、実店舗ができる効果的な対抗策だと思います。