ローソンは電子タグを使ったダイナミックプライシングを検討

ローソンは電子タグを使ったダイナミックプライシングを検討

ローソンは2017年の10月に、次世代店舗の実証実験を行う施設「オープンイノベーションセンター」を開設しています。アプリを使った無人レジの買い物体験が紹介されましたが、価格を自動で変更するダイナミックプライシングの導入も検討されています。

コンビニでは消費期限が近くなった食品は、値下げ販売はせずに、廃棄処理を行っています。将来的に値下げ販売を行う場合、自動で価格を変更できるダイナミックプライシングを導入することで、値下げ作業を行う店員の負担を軽減することが出来ます。

需給状況に合わせて価格の変更を行うダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングとは、需給状況に応じて価格を変動させることで、需要の調整を図る手法です。供給よりも需要が多い場合は、価格を上げることで需要を抑え、供給よりも需要が少ない場合は、価格を下げることで需要を換気することができます。

ダイナミックプライシングは需給が大きく変動する商品・サービスに効果的で、飛行機の運賃、ホテル・旅館の宿泊代、スポーツ施設・娯楽施設の利用料金などに導入されています。需要が少ない時期は料金が安くなるため、需要が少ない時期を狙うことで、低価格で商品を購入したり、サービスを利用することができます。

過去の販売データを利用することで、商品やサービスの適切な価格を自動で計算してくれるアプリケーションも登場しています。これまでは人間の勘や経験に頼っていた価格設定を自動化することによって、業務の標準化を行うことが出来ます。

現在、日本では外国人観光客が増加しているため、ホテル・旅館は需要の変動への対応、適切な価格設定が課題になっています。需要が多い時期はお客さんが支払っても良いと考える最高の価格を設定することで、売上を最大化することができます。

ダイナミックプライシングは需給が大きく変動する商品・サービスで効果的ですが、小売業でも活躍の余地はありそうです。売れない商品は値下げをして処分する必要がありますが、値下げ価格の設定をアプリケーションを使って自動化することで、売上の最大化、人件費の節約、作業の標準化などのメリットがあります。

商品の値下げをする場合、「一律○○%を値下げ」と決めることが多く、利益を最大化するという点では改善の余地があります。各商品ごとに適切な価格を設定することで、従来よりも値下げ幅を抑えて売り切ることができるようになるかもしれません。

電子タグと電子棚札を活用したダイナミックプライシングの仕組み

ローソンの次世代店舗で検討しているダイナミックプライシングの仕組みは、電子タグと電子棚札を使ったものです。電子タグは従来のバーコードよりも大量の情報を保存することが可能になっていて、商品の消費期限を書き込むことができます。

天井に設置している専用の装置で電子タグが付いた商品の消費期限を読み取り、消費期限の短い商品の電子棚札の価格を自動で変更する仕組みです。このやり方であれば、食品スーパーの弁当や惣菜のように、店員が値下げシールを貼る作業がなくなります。

小売業ではPOSシステムと在庫管理システムを使って、店内にどの商品が何個あるのかを管理しています。しかし、在庫管理システムの数字はあくまでも計算上の数字で、商品が正確な場所に、正確な個数、ストックされているかは確実ではありません。

商品に貼り付けてある電子タグを常時チェックすることで、商品の場所、個数を正確に管理することができるようになり、在庫管理の精度が高まります。商品の並び方まで確認できるようになれば、陳列が乱れている棚を店員がすぐに発見・修正することができるので、常に見栄えの良い美しい陳列を維持することができます。

2017年の4月に、経済産業省とセブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズのコンビニ5社は、、2025年までに、すべての取扱商品(推計1,000億個)に電子タグを利用することについて、一定の条件の下で各社と合意したと発表しています。コンビニの商品を電子タグを使って、サプライチェーンで情報を共有することで、製造・物流・卸・小売の流通全体で生産性を高めることが狙いです。

ローソンが検討しているダイナミックプライシングの仕組みも、多くの情報を扱える電子タグの特性を活かしたものです。今後も、電子タグを活用して、店舗の生産性、サプライチェーンの生産性を高める施策がたくさん出てくることが期待されます。

食品を廃棄することへの問題意識の高まりと食品の販売競争の激化

コンビニはたくさんの食品を販売していますが、消費期限が迫った商品は値下げ販売をせずに廃棄しています。値下げ販売をすれば売上が発生するのでプラスになりますが、一方で、値下げ販売によるブランドイメージの毀損、粗利益率の悪化を引き起こすことに繋がり、現状では値下げ販売を行わないことになっています。

コンビニは狭い商圏でビジネスを行っているため、お客さんは徒歩や自転車で簡単に買い物に行くことができます。例えば、マンションの1階に入っているコンビニで値下げ販売を行うと、マンションに住んでいるお客さんに値下げ商品ばかりを狙われる状況が定着してしまい、お店の利益が減ってしまう可能性が高いです。

最近は食品の廃棄を減らそうとする機運が高まっていて、全世界で食品の廃棄を減らすための取り組みが行われています。格差社会の拡大、子どもの貧困は、日本だけではなく全世界で共通の課題で、食品の廃棄が社会的に受け入れられなくなって来ています。

コンビニは季節商品・イベント商品である、恵方巻き、クリスマスケーキの大量発注・大量販売を行い、結果的に大量の売れ残りと廃棄を生み出しています。これまではこうした事実が社会に知られることはなかったのですが、ソーシャルメディアに大量の廃棄商品の写真が投稿されるようになり、批判的な意見も寄せられています。

食品の廃棄に対する目が厳しくなっていることを考えると、コンビニでも近い将来値下げ販売が行われるようになると予想しています。食品の廃棄を減らすことに加えて、食品を販売している小売業との競争が激しくなっていることもあります。

節約志向の強いお客さんが増えていて、節約をしたいお客さんは高価格のコンビニでの買い物を控えて、時間を掛けてでも、遠方の食品スーパーやドラッグストアに買い物に行くようになっています。競合する食品スーパーやドラッグストアが値下げ販売を行っている中で、コンビニだけがやらないとなると、お客さんが離れてしまいます。

人口が減少する時代に求められるダイナミックプライシング

電子タグは従来のバーコードよりも大量の情報を保存できるので、小売業の商品管理での活用が期待されています。コンビニ業界やファッション業界が率先して電子タグの活用に取り組んでいますが、将来的には多くの小売業で導入されることになると思います。

電子タグと電子棚札を使ったダイナミックプライシングも、多くの小売業の売り場で導入されます。売り場の商品の価格を簡単に変更できるようになれば、今よりもセールの回数を増やすことができ、セール関連の店員の業務を減らすことができます。

アメリカのニュース記事で読んだことがあるのですが、Amazonは一つの商品の価格を1日に何度も変更しているそうです。需給状況によって価格を変動させるダイナミックプライシングを行うことで、獲得できる売上を最大化することを目的にしています。

実店舗の売り場でもダイナミックプライシングが導入されれば、ネットショップと同様に売上が伸びる可能性が高いです。ただ、実店舗は店員や他のお客さんも同じ空間にいるので、頻繁に価格を変動させると、様々な不平不満、トラブルが発生しそうです。

小売業では値下げを行う企業が増えていて、イオン、セブンイレブン、西友、無印良品、IKEAなど、幅広い商品で値下げが行われています。人口の減少により、客数を増やすことが難しいため、値下げを行うことで需要を喚起して、販売数量を増やす狙いです。

人口が減少して行く時代においては、値下げ戦略で成功を収めることが小売業には重要になっています。自動で適切な価格を設定してくれて、店員の価格変更の業務負担も小さいダイナミックプライシングは、多くの小売業が導入したいと考えるはずです。