2017年の百貨店の売上高はインバウンドの貢献で3年ぶりに増加

2017年の百貨店の売上高はインバウンドの貢献で3年ぶりに増加

1月23日に、日本百貨店協会が2017年度の全国百貨店の売上高速報を発表していて、2017年度の売上高は5兆9,632億円(前年比0.1%増)となっています。インバウンドのお客さんの売上高が伸びたことで、3年ぶりに前年を上回っています。

不調の婦人服・洋服の売上高の減少を食い止め、好調の紳士服・洋服、菓子の売上高を伸ばすことが、百貨店の成長戦略です。時間経過とともに高齢者のお客さんは減少するので、若い世代のお客さんに利用してもらえるお店作りも重要です。

外国人観光客が多い札幌・大阪・福岡は売上高を大きく伸ばす

主要10都市の売上高の合計は4兆1,182億円(前年比1.2%増)となっていて、日本全体の売上高の69.2%を占めています。10都市の前年比は、札幌は3.5%増、仙台は0.6%増、東京は0.5%増、横浜は0.4%増、名古屋は0.4%減、京都は0.1%減、大阪は6.6%増、神戸は9.4%減、広島は2.4%減、福岡は2.5%増です。

札幌、大阪、福岡の3都市の増加が目立っていて、外国人観光客が多い都市の売上高が伸びています。大阪は6.6%増と他の都市よりも突出していますが、大阪はここ数年で韓国人、中国人の観光客が急増しており、百貨店の売上高にも良い影響が出ています。

10都市以外の地区の売上高の合計は1兆8,350億円(前年比2.3%減)となっていて、日本全体の売上高の30.8%を占めています。各地区の前年比は、北海道は6.0%減、東北は4.1%減、関東は0.8%減、中部は2.5%減、近畿は8.5%減、中国は1.6%減、四国は2.2%減、九州は0.7%減で、すべての地区で売上高が前年を下回っています。

日本全体の売上高に占める構成比は小さいものの、北海道、東北、近畿の落ち込みは大きいです。主要10都市以外では、外国人観光客の買い物による売上高の底上げ効果もなく、お客さんの購買力も小さいので、厳しい環境が続いていると言えます。

地方の百貨店の閉店が続いていて、最近では名古屋の老舗百貨店「丸栄」が、2018年6月末で閉店することが発表されました。有名百貨店の店舗でも閉店していますから、ローカルの百貨店は店舗を維持することがさらに難しい状況になっています。

地方の百貨店の売上は小さくなく、お客さんからのニーズもあるのですが、店舗の運営コストが大きいので利益を確保することが困難です。大型店は店舗を運営する固定費が大きいので、売上高の減少に対してコストを削減することができません。

婦人服・洋服の落ち込みを化粧品と美術・宝飾・貴金属で補う

日本全体の売上高は5兆9,532億円(前年比0.1%増)となっていて、各地域では売上高の増減があるものの、全体ではほとんど変化がありません。百貨店は小売業の中でも苦戦しているイメージがありますが、インバウンドの効果で売上高を維持しています。

平成29年度12月単月のデータでは、国内のお客さんの売上高が全体の96.0%、インバウンドのお客さんの売上高が4.0%となっています。国内のお客さんの売上高は1.9%減、インバウンドのお客さんの売上高は45.0%増ですから、国内のお客さんの売上高の落ち込みを、急増しているインバウンドのお客さんの売上高で補っている形です。

前年よりも売上高を伸ばしているカテゴリは、化粧品(17.1%増)、美術・宝飾・貴金属(3.6%増)、紳士服・洋服(0.4%増)、菓子(0.4%)、身のまわり品(0.1%増)などです。化粧品の売上高は5,122億円、構成比は9.8%、美術・宝飾・貴金属の売上高は3,474億円、構成比は6.7%となっていて、この2つが特に重要なカテゴリになっています。

化粧品はインバウンドのお客さんの購入、美術・宝飾・貴金属は国内の富裕層のお客さんの購入が多いと考えられています。化粧品はドラッグストアやディスカウントストアとも競合しますが、マーケットの成長が大きく、しばらくは売上高が伸びそうです。

上記の5つのカテゴリを除くと、ほとんどのカテゴリで売上高が減少していて、百貨店の厳しさを感じさせるデータになっています。婦人服・洋服は売上高が1兆1,703億円、構成比が19.7%と百貨店の主力商品ですが、前年比2.8%減と下げ幅は大きいです。

婦人服・洋服はネットショップで買うお客さんが増えていて、百貨店の売上高が減少する原因の一つになっています。対抗策を生み出すことが難しく、このペースで売上高の減少が続くと、インバウンドのお客さんの売上でも支えられなくなるかもしれません。

高齢者のお客さんの減少を補う若いお客さんの獲得が重要になる

現在、百貨店で買い物しているお客さんは、昔から百貨店で買い物をしている高齢者のお客さんが多いです。若い世代のお客さんよりも自由に使えるお金を多く持っているので、長くデフレが続いている中でも、高額な商品を買い物してくれます。

ただ、高齢者のお客さんも歳を取るに連れて気力が落ちて来るので、行動範囲が狭くなり、物を欲しがらなくなります。婦人服・洋服の売上高の減少幅が大きいのは、高齢者のお客さんが買い物をしなくなることが大きな原因ではないかと考えています。

高齢者のお客さんの売上高の減少を若いお客さんで補いたいのですが、若いお客さんを獲得することは難しいです。若いお客さんは高齢者のお客さんのようにお金を持っていないので、百貨店が販売している高額の商品を買うことができません。

また、若いお客さんは子供の頃から専門店での買い物に慣れ親しんでいて、百貨店での買い物経験が少ない人もいます。百貨店が販売している多くのカテゴリには、競合する低価格の専門店が存在していて、若いお客さんは専門店の商品に問題を感じていません。

2017年の人口データでは、60~64歳が約800万人いるのに対し、20~24歳は約600万と4分の3にまで減少しています。若いお客さんをうまく獲得できたとしても、以前のような売上高を期待することはできないので、非常に厳しい状況にあります。

オンライン小売業は若いお客さんの獲得に力を入れていて、Amazon、楽天には学生向けのインセンティブプログラムがあります。従来の小売業も若いお客さんの獲得に力を入れなければ、高齢者のお客さんの減少に合わせて、売上が減り続けることになります。

紳士服・洋服と菓子はさらに売上を伸ばせるチャンスがある

婦人服・洋服は売上の規模も大きく、百貨店の最重要カテゴリですから、婦人服・洋服が最も売上を伸ばしたいカテゴリです。高齢者のお客さんの売上の減少を止めることは難しいですから、将来性のある30~40代のお客さんがターゲットになります。

ネットショップで一番洋服を買っている世代でもあるので、ネットショップとは異なる商品、買い物体験が必要になります。具体的には、百貨店独自のプライベートブランドの開発、実店舗とネットショップが融合した新しい買い物体験です。

百貨店は女性向けファッションのイメージがありますが、紳士服・洋服の売上高は3,992億円(前年比0.4%増)と前年よりもわずかながら伸びています。婦人服・洋服(1兆1,703億円)よりも規模は小さいものの、売上高が伸びているのは良い兆しです。

婦人服・洋服とは逆に、紳士服・洋服では高齢者のお客さんを獲得できる、大きなチャンスがあるのではないかと思います。最近は、退職した男性が様々な社会活動に参加する機会が増えているので、ファッションへの関心・支出も高まる可能性があります。

菓子の売上高は4,640億円(前年比0.4%増)、構成比は7.8%となっていて、有望なカテゴリであると言えます。菓子はいろいろなお店で買うことができますが、百貨店の菓子は差別化ができていて、贈り物など特別な用途で買う高価格・高品質の商品です。

また、インバウンドのお客さんも菓子に関心を持っていて、キットカットがよく売れていたり、ドラッグストアやディスカウントストアでも買い物をしています。競合店とは違う、高品質をアピールできれば、インバウンドのお客さんの売上を伸ばせそうです。