最新のテクノロジーの活用でビジネスが変わるファッション業界

最新のテクノロジーの活用でビジネスが変わるファッション業界

アメリカのファッション業界は人工知能を使った取り組みが進んでいて、IBMの人工知能を紹介する記事があります。人工知能を使って、ファッションのトレンド、商品の需要を予測したり、洋服のデザインを行おうとしています。

日本ではスタートトゥデイが昨年の11月に、瞬時に身体の採寸ができる、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」の無料配布を開始して話題になりました。テクノロジーに強い人材が多いネットショップでは、テクノロジーの開発が進んでいますが、人材が不足している従来の小売業はテクノロジーの活用が難しい状況です。

若い世代のお客さんはパーソナライズされた買い物を求めている

若い世代のお客さんが小売業、オンライン小売業に対して、自分専用にパーソナライズされた買い物体験を求めているというアンケート調査結果がたくさんあります。これは日本だけではなく、アメリカ、イギリス、中国など、全世界に共通して見られる傾向です。

若い世代のお客さんは子供の頃からインターネットを利用しており、インターネット=パーソナライゼーションであるとも言えます。ネットショップでおすすめの商品が表示されるだけでなく、おすすめの記事、おすすめの映画、おすすめの音楽、おすすめのゲームなど、インターネットのいたるところでパーソナライゼーションが活用されています。

若い世代のお客さんがパーソナライゼーションを求める理由は、良い商品が提案された時の満足感が大きいからではないかと思います。過去の買い物履歴、閲覧履歴、検索履歴などを使ってパーソナライズを行うため、自分の興味のあるカテゴリで、これまで知らなかった商品を提案されることがよくあります。

ネットショップには新商品が次々に追加されるため、お客さんは自分の欲しい商品を探すのに時間が掛かるようになっています。パーソナライゼーションには商品を探す手間を減らす効果もあり、ネットショップの品揃えが増えれば増えるほど、お客さんはパーソナライゼーションに利便性を感じるようになります。

ファッションは膨大な品揃えがあるため、買い物に時間が掛かるうえに、良い商品が見つからなかった時は疲労感を感じます。高い金額を出せば必ず満足する商品が買えるわけでもないので、お客さんにとっては買い物が難しいカテゴリの一つになっています。

ファッションを販売している小売業は人工知能を活用して、お客さんに満足してもらえる商品を提案することができれば、競合他社と差別化できる強みになります。豊富な品揃えと満足度の高いパーソナライゼーション、この2つがファッションを販売するオンライン小売業とって、お客さんに買い物をしてもらうための重要な要素になっています。

人工知能を使ってファッションのトレンドと商品の需要を予測する

お客さんが必要としている商品を、必要としているタイミングで販売することが重要になっています。お客さんはネットショップで買い物ができるので、在庫を切らしてしまうと、すぐに別の実店舗やネットショップに行ってしまいます。

ファッションは独自性がある商品ではありますが、お客さんの欲しい時に在庫がなければ、売り逃してしまう可能性が高くなっています。似たようなデザインの商品はネットショップでも見つかるため、商品の独自性の価値も以前よりは小さくなっています。

ソーシャルメディアに投稿されているデータを人工知能を使って分析することで、ファッションのトレンド、商品の需要を予測しようとする取り組みがあります。Twitterに投稿されているテキストを分析して、お客さんが企業、ブランド、商品に対して、どのような印象を持っているのかを分析するサービスは既にあります。

例えば、企業が何らかの新商品の販売を発表した時に、ソーシャルメディアの反応をチェックすることは、商品の売れ行きを予測することに役立ちます。「欲しい」「買いたい」「予約したい」などの感想を投稿している人は、高い確率で購入してくれるお客さんだと考えることができ、売れ行きを予測する変数の一つとして活用することができます。

ファッションは商品によって売れる季節が決まっているので、売れ残った商品は値引きをしながら在庫処分されることになります。人工知能を使ってトレンド、需要を予測することで、売れ残りを減らして、利益率を改善する効果も期待されています。

売れない商品は在庫処分が行われることは避けられないのですが、高い価格で買ってしまったお客さんには不満を持たれてしまいます。トレンド、需要を予測することで、在庫処分の回数を減らすことができれば、お客さんの不満を回避することができます。

人工知能を使って売れる可能性の高い洋服のデザインを行う

多くの人がスマートフォンのカメラで写真を撮って、お気に入りの画像(写真)をインターネットに投稿しています。画像は多くの人にとって馴染みのあるものになっていて、企業は人工知能を使って画像を分析することで、ビジネスに役立てようとしています。

小売業でも画像分析技術の活用が始まっていて、米Amazonの「Amazon Go」、日本のサインポストの「スーパーワンダーレジ」では、画像を分析してお客さんが購入した商品を識別しています。画像を分析して、来店者数を数える、在庫数を数える、商品の品質をチェックするなど、小売業には画像処理技術を活用できる業務がたくさんあります。

洋服のデザインは人間にしかできないクリエイティブな業務に見えますが、人工知能がクリエイティブな業務を担うようになることも期待されています。ソーシャルメディアで話題になっている洋服、ネットショップでよく売れている洋服、よく検索されているキーワードを学習すれば、人工知能がよく売れる洋服をデザインできるかもしれません。

デザイナーやブランドに強い関心を示すお客さんもいれば、洋服にほとんど関心がないお客さんもいます。人工知能がデザインする低価格の洋服が販売されるようになれば、多くのお客さんが特に抵抗感もなく、購入することができるのではないでしょうか。

人工知能が洋服のデザインを行うようになると、ファッションビジネスにも大きな変化が出てくると思います。洋服のデザイン・製造に掛かる時間が短縮されるので、お店には次々に新商品が並ぶようになり、お客さんは多くの洋服から選べるようになります。

洋服は生活用品でもあり、嗜好品でもあるので、自分が気に入るものがあれば、必要でなくても買ってしまうことがあります。人工知能でファッションをより楽しいものにすることができれば、お客さんの関心を引き付け、企業は売上を伸ばすことができます。

実店舗で商品を売る従来の小売業はテクノロジーの強化が難しい

お客さんが洋服を購入するお店は、百貨店・総合スーパー、専門店、ネットショップへと移り変わっています。百貨店・総合スーパーから専門店へ移る理由は価格、専門店からネットショップへ移る理由は、品揃えと買い物の利便性だと言えます。

別の見方をすると、古いお店から新しいお店へ、テクノロジーに弱いお店からテクノロジーに強いお店へと考えることもできます。ネットショップの技術革新のスピードが早く、百貨店・総合スーパー、専門店は変化について行くことが難しいです。

ZOZOTOWNを運営しているスタートトゥデイは、昨年の11月に、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」の無料配布を開始しました。お客さんの身体のサイズデータを活用することで、ZOZOTOWNでサイズの合った洋服を探しやすくしたり、究極のフィット感を提供するプライベートブランド「ZOZO」の製造に活用する計画です。

スタートトゥデイは競合企業が持たない身体のサイズデータを取得したことで、お客さんにより満足してもらえる商品、買い物体験を提供することができます。スタートトゥデイが競合企業に先駆けて、「ZOZOSUIT」のような革新的な製品を生み出すこができるのは、テクノロジーに強い人材を採用しているからです。

ネットショップの動きで気になるのは、Amzon、楽天、スタートトゥデイ、ロコンドなどが、自社で洋服を製造して販売するようになることです。これらの企業はファッションブランドとお客さんをマッチングするビジネスを行っていますが、自社で洋服の製造・販売を行うようになれば、ファッション業界にも大きなインパクトがあります。

ネットショップの強みは保有しているビッグデータで、お客さんの検索履歴、閲覧履歴、購入履歴など、洋服の製造に役立つデータを蓄積しています。スタートトゥデイは「ZOZOSUIT」を活用して、プライベートブランド「ZOZO」を発売する計画がありますが、他のネットショップもプライベートブランドを製造するのか注目です。