お客さんとの関わりを増やす無印良品のデジタルマーケティング

お客さんとの関わりを増やす無印良品のデジタルマーケティング

無印良品はライフスタイル商品で人気のチェーン店ですが、無印良品のデジタルマーケティングについての記事があります。無印良品はお客さんとの繋がりを強化することをデジタルマーケティングの目標にしていて、お客さんとの関係を強化できれば、それが最終的には実店舗やネットショップでの買い物に繋がるという考え方です。

無印良品のアプリ「MUJI Passport」は利用者が多く、インターネットと実店舗が融合したオムニチャネルで重要な役割を果たしています。デジタルマーケティングで商品の価値をお客さんに伝え、「MUJI Passport」を使ってネットショップで購入してもらえるようになれば、実店舗を増やさなくても売上を伸ばすことができます。

無印良品のデジタルマーケティングでは理念の共有が目標

無印良品のデジタルマーケティングでは、お客さんに無印良品の理念を伝えることを目標にしています。無印良品の理念に共感してもらい、無印良品が行うイベントなどのアクティビティに参加してくれるお客さんを増やすことができれば、最終的には実店舗やネットショップでの買い物に繋がるという考え方です。

インターネットを活用することで、お客さんに様々な情報を提供することができるので、昔よりもお客さんに企業のことを知ってもらいやすくなっています。また、企業とお客さんを繋げているインターネットが物理的になくなることはなく、企業が有益な情報を提供できれば、お客さんはずっと企業と繋がっていてくれます。

無印良品は多くのファンを抱えていることで知られていますが、ソーシャルメディアのフォロワー数も多いです。グローバルでのソーシャルメディアのフォロワー数は、2017年11月時点で、Facebookが350万人、LINEが335万人、Instagramが90万人、Twitterが57万人となっています。

ソーシャルメディアのフォロワー数の多さについては、無印良品のファンの年齢層と関係しているのではないかと思います。無印良品のファンの年齢層はおそらく35-45歳くらいの女性が多いですが、この年代は若年層よりも比較的人口が多く、インターネットを若い頃から利用しているので使い慣れています。

無印良品のデジタルマーケティングでは、ソーシャルメディアのいいねの数、シェアの数、コメント数、アプリのダウロード数などを、ユーザーとのエンゲージメントを重視しています。以前は購入プロセスの最終結果である売上を見る以外に評価の方法がなかったのですが、購入プロセスの上流をより評価するようになっていると言えます。

例えば、ソーシャルメディアでいいねやコメントの数は多かったけど、商品は売れなかったというようなケースも出てきます。従来であれば「売れなかったからダメ」と評価されますが、ソーシャルメディアでいいねやコメントが付いているので、お客さんの意見・感想を次の商品開発に活用することができます。

お客さんとコミュニケーションの場である「くらしの良品研究所」

良品計画がデジタルマーケティングに取り組む理由に、広告で消費者の購買行動を促すことが難しくなっていることが挙げられています。新聞・チラシを見る人が少なくなった、インターネットのバナー広告がクリックされなくなった、メールマガジンが読まれなくなったなど、消費者の広告離れはあると思います。

本当に必要なものがあればお客さんは自ら積極的に買い物をするのですが、そうでない場合は買い物をしなくなっています。生活に必要なものは一通り揃っているので、広告で単に商品の写真、価格、サイズを見せても、お客さんを動かすことは難しいです。

無印良品は自社のオウンドメディア「くらしの良品研究所」を運営していて、無印良品のブランド、商品、生産者、ユーザーに関連するコンテンツを発信しています。「くらしの良品研究所」に投稿されているコンテンツを見ると、衣食住に関するものが多く、各記事で「人」にスポットライトが当たっていることが特徴です。

オウンドメディアを運営している企業が増えていますが、読者を満足させるコンテンツを継続的に作成することが課題になっています。「くらしの良品研究所」は更新頻度も多く、読者からのコメントやいいねもたくさん付いていて、オウンドメディアの成功事例として参考にできるところが多くあります。

「くらしの良品研究所」の中には、お客さんから商品のリクエストやアイデアを募集する、「IDEA PARK」というコミュニティがあります。「MUJI passport ID」を持っているお客さんは、「IDEA PARK」でアンケートに回答したり、アイデアを投稿することで、ショッピングポイントと交換できる「MUJIマイル」をもらうことができます。

こうした商品が欲しいというリクエストをユーザーが投稿すると、他のユーザーも参加して意見を出したり、いいねを付けることができます。リクエストに付いているコメントやいいねの数は、その商品にどれだけの需要があるかの指標になります。

アプリ「MUJI Passport」はインターネットと実店舗を融合する

無印良品のアプリ「MUJI Passport」は利用者が多く、累計ダウンロード数は2017年9月時点で約1,000万件、アプリを月1回以上起動するアクティブユーザーは約720万人となっています。アプリが提供している機能は、ネットショッピング、会員カード、クーポン、店舗チェックイン、店舗の在庫検索、口コミの投稿などです。

「MUJI Passport」はインターネットと実店舗での行動を記録しており、オムニチャネルの中心にあると言えます。お客さんがアプリの利用をやめてしまうと、オムニチャネルも成立しなくなるので、アプリを継続して利用してもらうことが重要になります。

「MUJI Passport」の優れている点は、インターネットと実店舗のすべての買い物プロセスに関わり、記録している点です。インターネットで見て実店舗で買う「ウェブルーミング」、実店舗で見てインターネットで買う「ショールーミング」、どちらの買い物方法でも、お客さんの買い物プロセスを追跡できるようになっています。

お客さんの買い物プロセスは、「友人のソーシャルメディアから商品を知る(ネット)」→「ネットショップで商品を検索・閲覧する(ネット)」→「商品を確認する(実店舗)」→「商品を購入する(ネットor実店舗)」→「問い合わせやコミュニティに投稿する(ネット)」→「ソーシャルメディアで商品の感想を投稿する(ネット)」という感じです。お客さんが最初に商品に接触するところから、購入後の感想(お客さんがネットに投稿した場合)までを追跡できるので、問題点の把握と改善が行いやすくなっています。

無印良品のデジタルマーケティングを見ると、小売業はネットショップを持たなければならないと改めて思います。実店舗だけでお客さんからの注文を貰おうとすると、必ずどこかで機会損失が生まれたり、ネットショップを持つ競合にお客さんを奪われます。

「最終的にはネットショップで注文を受けられる」という安心感があれば、あらゆる広告が無駄にはなりませんし、店員もお客さんにしつこい接客をしなくても済みます。無印良品の商品はソーシャルメディアやブログで紹介されることが多いですが、いつ何時紹介されても、ネットショップがあるので注文を逃すことはありません。

価値のある商品はデジタルマーケティングを通じて日本全国へ届く

無印良品を運営している良品計画は業績好調の人気チェーンで、日本だけではなく、中国でも売上と店舗を増やしています。平成30年2月期第3四半期の連結業績は、営業収益が279,951百万円(13.3%増)、営業利益が33,538百万円(13.1%増)となっています。

昔からシンプルなデザインの商品で人気がありましたが、売上規模が拡大したことで、価格面でも競争力を持っています。2017年11月には、年明けから発売する家具や雑貨など2,400品目(標準的な店舗の品揃えの約4割)の値下げを発表していて、お客さんが感じる商品の価値はさらに高まります。

もともと無印良品の商品の価値は高く評価されていたのですが、インターネットの普及によって、その価値が広く知られるようになりました。無印良品のデジタルマーケティングの戦略は素晴らしいのですが、「商品に価値がある」というのが、デジタルマーケティングの成功には不可欠だと思います。

セブンイレブン、ローソン、ニトリ、セリア、キャンドゥなど、ソーシャルメディアで多くのフォロワーを獲得できている小売業は、ほとんどすべてが価値のある商品を販売している企業です。逆から考えると、ソーシャルメディアでフォロワーを獲得できない小売業は、お客さんに商品を評価されていないとも言えます。

従来の実店舗での買い物では、商圏の制約があるため、お客さんは常に自分が欲しい商品を購入できるわけではありませんでした。本当は人気のA店で買い物をしたいけど、近くにお店がないので、仕方なくB店で買い物をすることはよくあります。

しかし、ネットショップで買い物ができるようになったことで、近くにお店がなくても、常に自分が欲しい商品を購入できるようになりました。価値のある商品を持っている小売業は、デジタルマーケティングで商品の価値を広く伝えることで、実店舗を増やさなくてもネットショップで売上を増やすことができます。