ヤマトホールディングスが「アトレ大森」にEC用の試着室を設置

ヤマトホールディングスが「アトレ大森」にEC用の試着室を設置

ヤマトホールディングスが「アトレ大森」に、ネットショップで注文した洋服を試着するための試着室を設置しています。試着室は「Fittingステーション」と呼ばれるもので、ネットショップとお客さんの買い物を便利にすることが目的です。

洋服をネットショップで購入する人が増え続けているため、洋服の返品個数もそれに合わせて増加します。「Fittingステーション」は洋服の返品作業を効率化する狙いもあり、今後も宅配個数を減らすための新しい取り組みが出てくると思います。

「アトレ大森」で試着室「Fittingステーション」の実証実験

ヤマトホールディングスはネットショップで注文した洋服を、実際に試着してから購入ができるようにするサービスの実証実験を開始しています。実店舗内に「Fittingステーション」と呼ばれる試着室を設置して、注文した商品の保管、試着、決済、受け取り、返品など一連のサービスを、常駐するスタッフが行います。

「Fittingステーション」が設置されるのは商業施設の「アトレ大森」で、期間は2018年1月4日から3月30日まで、参加する企業はかねまつ、三陽商会、ディノス・セシールの3社となっています。ヤマトホールディングスは「Fittingステーション」のニーズがあると見ていて、2018年度中の実用化を目指しています。

「アトレ大森」はJR東日本の大森駅と直結してる商業施設で、お客さんにとってはアクセスしやすい立地にあります。仕事の帰りや買い物中に「Fittingステーション」に立ち寄り、ネットショップで注文した洋服を試着し、便利に買い物をするイメージです。

「アトレ大森」には食品、書籍、雑貨、ドラッグストア、ファッション、レストランなど、様々なテナントが入っています。ファッションの実店舗とネットショップの試着が被ることになりますが、試着した後で別の洋服を実店舗で購入してもらうことも期待できるので、どちらかと言えばポジティブなことではないかと思います。

ネットショッピングの宅配を行うヤマトホールディングスが、商業施設内に試着室を設置することは少し意外な気もします。試着室を設置する目的は返品を減らすことですから、洋服を販売しているネットショップが設置する方が自然な感じです。

ヤマトホールディングスが「Fittingステーション」を設置する目的は、ネットショップ、お客さんの双方が抱えている課題を解消するためです。ヤマトホールディングスはネットショップの宅配を行うだけではなく、ネットショップの業務により深く関わり、自社の影響力を高めて行きそうです。

お客さん・ネットショップ・実店舗のすべてにメリットがある

ネットショップの立場から考えると、「Fittingステーション」には送料を節約する効果があります。個別のお客さん宅に送ると個々に送料が発生しますが、「Fittingステーション」にまとめて送ることができれば、送料も1回分で済むようになります。

返品される商品も「Fittingステーション」一箇所で一元管理されるため、個々のお客さんの返品状況を管理する必要がなくなります。商品の返品が遅れたり、商品が破損することもなくなるので、ネットショップは在庫を効率よく管理することができます。

お客さんの立場から考えると、試着してから買うかどうかを決められるので、ネットショップで洋服が買いやすくなります。ネットショップで洋服を買うことをためらっているお客さんは、「Fittingステーション」を使うことで一歩踏み出すことができます。

自分で返品の手続きや梱包をしなくてもよいことも、お客さんにとってはありがたいです。いついつまでに返品しないといけないとなると、お客さんにもプレッシャーが掛かりますが、「Fittingステーション」を使えばそうしたプレッシャーがありません。

「Fittingステーション」は実店舗内に設置される予定ですが、ホームセンターは設置場所として良さそうです。ホームセンターは決しておしゃれなお店ではないのですが、売り場面積は広く、ファッションアイテムは少ないので競合も少なく、お客さんの利用頻度もそれなりにあるため、理想の設置場所の一つだといえます。

また、郊外にある食品スーパーも、設置場所としての条件は良いです。食品スーパーはお客さんの利用頻度が多く、駐車場と売り場の面積も広く、お店の集客力を高めたい食品スーパーが「Fittingステーション」を設置するのは良いアイデアです。

ネットショップで洋服を買う人が増えれば返品の数も増える

ネットショップで洋服を買う人が増え続けていて、もはやネットショップで洋服を買うことは特別なことではなくなっています。ZOZOTOWNを運営しているスタートトゥデイの2018年3月期第2四半期決算によると、商品取扱高は119,656百万円(前年同期比38.3%増)と、実店舗では考えられないような増加率になっています。

また、洋服を購入するのではなく、レンタルするサービスも人気で、こちらもお客さんが増えています。洋服を買うにしろ、借りるにしろ、起点となるのはネットショップで、インターネットとファッションは切り離すことができないようになっています。

ネットショップで洋服を買う場合、無料で返品できるお店もあり、Amazonやロコンドは返品無料をお客さんにアピールしています。お客さんがネットショップで購入する洋服の数が増え続ければ、それに合わせて返品の数も増え続けることになります。

ネットショップの商品を配達するヤマトホールディングスの立場からすると、返品が無料で行われるのはよいことではありません。商品を配達した家に、後日もう1回返品を受け取りに行かないといけないと考えると、ドライバーもいい気分ではありません。

「Fittingステーション」を設置する目的は、今後も増加するファッションの返品を減らすための対策ではないかと思います。お客さんに「Fittingステーション」を利用してもらえれば、商品の配達、返品の受け取りで、お客さん宅に行く回数を減らせます。

洋服は季節ごとに複数点まとめて買うお客さんも多いので、「Fittingステーション」でまとめて試着すれば便利だと感じてもらえます。「Fittingステーション」を設置する場所にもよりますが、お客さんは積極的に利用してくれるのではないかと予想しています。

ヤマトホールディングスはドライバーの労働環境の改善を重視

ヤマトホールディングスはドライバーの労働環境を改善するため、大口の法人客約1,100社と運賃の値上げや荷物量の抑制の交渉を行っています。ドライバーの労働環境を改善するためには、ある程度の売上減少も致し方ないというような感じです。

値上げを受け入れる企業、契約を辞める企業、それぞれの企業の決断によって、宅配個数と売上高に影響が出ます。ヤマトホールディングスのベストのシナリオは、宅配個数が減って、売上高が伸びることですが、その可能性も十分にあると思います。

最近、ヤマトホールディングス社長のインタビュー記事をよく見るのですが、労働環境の改善についての言及が多いです。インターネットショッピングの宅配個数が増え続けることが確実な一方、人手不足によって人材の採用は難しい状況です。

宅配の仕事は大変で給料も高くないというイメージが固定化してしまうと、ドライバーの採用も難しくなり、宅配ビジネスを続けられなくなります。運賃の値上げや荷物量の抑制を行うことで、利益の確保と従業員の労働環境の改善の両方を実現できれば、増え続けるネットショッピングの宅配個数に対応するための余力が生まれます。

「Fittingステーション」は宅配個数を減らすための取り組みですが、こうしたアイデアはこれからもどんどん出てきそうです。ヤマトホールディングスはネットショップの荷物を配達するだけではなく、ネットショッピングのより上流の業務に関わることで、宅配個数を減らせるチャンスが増えます。

ネットショップもお客さんも宅配業者に特別に配慮してくれることはないので、ヤマトホールディングスが自ら積極的に関与していかなければならない状況です。「Fittingステーション」はヤマトホールディングスが主導権を持って運営することができますから、多くのネットショップとお客さんを取り込みたいところです。